恋人たちの婚約者たち~真実の愛をつかむのはどっち⁈

金剛@キット

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21話 無関心

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 人が滅多めったに来ない、王立学園内の日当たりの悪い小さな裏庭に、講義が終わった後で来るようにと、フリオから伝言を受け取ったが… デシルはわざと待ち合わせの時間よりも、遅れて行くことにした。

 これまではデシルが、フリオを呼び出すことがほとんどで… フリオは約束の時間通りに、待ち合わせ場所に来たことが無く、必ずデシルは待たされるとわかっていたからだ。

 ミラドルや他の友人たちと、楽しいおしゃべりをした後、デシルは嫌々フリオとの待ち合わせ場所へ行く。


「遅いぞ! オレを待たせて、何をしていたんだ?!」
 珍しくデシルよりも、待ち合わせ場所に少しばかり、早く来たと言うだけで、フリオは自分には怒る権利があると言いたげに、イライラと怒鳴った。


「僕にだって、コンドゥシル男爵家の付き合いがあるんだよ… フリオにばかり、合わせてはいられないよ! 君だっていつも、伯爵家の付き合いがあるからと、僕の頼みを断って来たじゃないか?」
 デシルは、今まで絶対にしなかった冷ややかな態度で、フリオに言い放った。

「何だと?!」
 フリオはカッ… と怒りをあらわにするが… デシルは以前のように動揺したりしないで、黙ってフリオを見ている。

「ねぇ、早く用件を言ってよフリオ! そうやって怒鳴ってるばかりで、僕の時間をつぶす気なら、僕は自分の用事を済ませたいから、帰るけど?」
 正直に言って… 僕はもう2度と、フリオの顔は見たくないと思うほど、会うのは嫌だった。
 伝言なんか無視して、家に帰ろうかと思ったぐらいだよ! でも、サリダ様との計画を確実に進めるには、フリオやアオラ様が警戒しないように、今まで通りの行動をした方が良いと、サリダ様やお父様に言われたから… 僕は本当に嫌々だけど、ここに来たんだ。


「このっ…! 生意気だぞ、デシル―――ッ!!」
 腹を立てたフリオは、おどすようにデシルの上着をつかんで、グイッ… と引っ張ったが… デシルは少しも動じることは無かった。

「別にフリオに生意気だと思われても、僕はかまわないよ? それで用件が無いなら、本当に僕は帰るけど良い?」
 フリオの顔を見たら少しは悲しいかな? と思ったけど… 僕は自分で思うよりも、今までのフリオの態度に怒りを感じていたんだなぁ? だって顔を見ると、フリオの裏切り行為が許せなくて、嫌悪感がいっぱいで、側に寄られるだけで気持ち悪いと思うし…

 デシルは無表情で、フリオを見あげた。

「クソッ! 何なんだよ、お前は!」
 いくら怒鳴っても、脅しても、表情の変わらないデシルを見て、フリオはひるみ… デシルの上着を放して後ずさる。

「それで?」
 やれやれ面倒だと、ため息をつきながら… デシルはベストのポケットに手を入れた。
 ベストのボタンホールに留めた、金の鎖でつないだ金色の懐中かいちゅう時計を取り出し、パチンッ! と手の中でふたをあけると、デシルはわざとらしく時間を確認する。


「この、いい加減にしろデシル!! おまえ、わざとやっているだろう?! 何が不満なんだよ、ハッキリ言えよ!」
 自分にまったく関心を示さなくなったデシルに、フリオは本気であわてていた。

 昼食時に聞いた友人の話が、フリオの頭をぎったからだ。


「…もう、5分過ぎたけど? これ以上フリオといても、意味無さそうだから、僕は帰るよ…? この後、人と会う約束があるんだ! 次からは手紙に用件を書いて、家に送ってよ… それじゃぁ、僕は急いでいるから失礼!」
 パチンッ! と懐中時計の蓋を閉めて、ベストのポケットにしまうとデシルは顔をあげて、冷ややかにフリオの戸惑とまどう顔を見て、さっさと背中を向けて歩き去る。


「何なんだよ… デシルの奴?」

 1人残されたフリオは、不安そうにつぶやいた。





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このお話の登場人物たちの命名は、スペイン語にお世話になりました。 デシル→言う。 騎士サリダ→出口。 婚約者フリオ→寒い。 サリダの婚約者アオラ→今。 デシルの友人ミラドル→展望台。 ミラドルの兄パルケ→公園。 今回も面白い響きの名前ばかりになりました(*´ω`)。覚えにくかったら、すみません! ◯命名センスが最悪なので、異世界モノのお話の時はいつも外国の単語からもらうことにしています☆彡
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