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5話 レセプシオン伯爵家のサリダ
しおりを挟む「初めまして、僕はコンドゥシル男爵家のデシルと申します… 今日の主役のミラドル嬢とは、学園で親しくさせてもらっています」
「実はミラドル嬢とは、今日初めてお会いしましたが、とても明るくて素敵なお嬢さんですね」
ニコニコと微笑みながら、サリダは観察するようにデシルをジッ… と見つめる。
「はい、僕は彼女の友人になれて、とても幸運だと思っています」
今日がミラドルと初対面だった?! んんん? ミラドルのお兄様はどういうつもりで、僕にこの人を紹介したのだろう? 欠席しているとはいえ、僕には婚約者がいるのに… 独身のアルファを紹介するなんて?
それもエリート騎士が集まる、王立騎士団の騎士なんて… これまでも、これからも、僕とはまったく接点がなさそうな人なのに?!
ああ! もしかするとミラドルの婚約者候補だから、友達の僕と仲良くさせようと思っているとか… かなぁ? んんんん~?!
デシルが首を捻っていると… 先にサリダが理由を教えてくれた。
「今日は君の婚約者、ヌブラド伯爵家のご子息について、話したいことがあり、友人のパルケに君を紹介してもらえるよう頼み込んだのです」
一段、声を低くして顔を寄せると、サリダは他の誰かに聞かれないよう、デシルにだけ自分の本当の目的を伝えた。
初対面のサリダから、この場にはいない婚約者の名前を聞き、青紫色の瞳を見開きデシルは驚く。
「僕の婚約者?! サリダ様はフリオのことをご存知なのですか?!」
「はい、少し難しいお話になるので、友人に応接間を借りました… 今からそちらに移動しませんか? もちろん初対面の私と2人っきりになるのは、不安に思うのも分かります… ですが、大切なお話なので、どうかお願いします!」
未婚のオメガが親族以外のアルファと2人っきりになることは、貴族の常識からはずれた、はしたない行為だとされていて… 特にデシルは婚約者が別にいるため、貞操を疑われ醜聞となる恐れまで出て来る。
「ええっと… あの…」
口調は柔らかだが、サリダの雰囲気はガラリと変わり、アルファの凄みのようなものでデシルは圧倒され、その場で思わず一歩下がった。
だが、フリオのようにわざとデシルを脅して、威圧するような意地の悪いものではなく… あくまでもサリダ自身が持つ、能力の高いアルファの強いエネルギーが内側からにじみ出て、デシルがオメガの本能で感覚的に感知してるだけだった。
ミラドルの兄の友人なら、変な人ではないだろうと、デシルはサリダの話を聞くことにした。
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このお話の登場人物たちの命名は、スペイン語にお世話になりました。 デシル→言う。 騎士サリダ→出口。 婚約者フリオ→寒い。 サリダの婚約者アオラ→今。 デシルの友人ミラドル→展望台。 ミラドルの兄パルケ→公園。 今回も面白い響きの名前ばかりになりました(*´ω`)。覚えにくかったら、すみません! ◯命名センスが最悪なので、異世界モノのお話の時はいつも外国の単語からもらうことにしています☆彡
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