恋人たちの婚約者たち~真実の愛をつかむのはどっち⁈

金剛@キット

文字の大きさ
上 下
3 / 47

2話 デシルの婚約事情2

しおりを挟む

 顔を上げたデシルは、小さくなってゆく婚約者フリオの背中を見つめながら…
 ハァ―――ッ… と長いため息をついた。

「学園に入学する前のフリオは、あんな人では無かったのに… 確かに少しだけ、言葉が乱暴なところはあったけど…」
 今のフリオはあんまり好きじゃないよ…? なぜ変わってしまったの?! 昔のフリオに戻ってよ! 僕が大好きだった頃のフリオに戻ってよ!

 以前のフリオは、素直な明るい性格で、デシルや男爵家をけなすような、傲慢ごうまんな人間では無かった。
 それどころか同じ年齢のせいか、フリオとはすごく気が合うとデシルは思っていたぐらいだ。


「やっぱり付き合ってる、友達のせいだよなぁ…?」
 元々性格が素直だから、フリオは他人に影響されやすいんだよね…

 フリオの親しい友人たちは、学園でも有名な伯爵以上の高位貴族出身のアルファばかりで… その友人たちと付き合うようになってから、フリオの言葉づかいや好みが、ガラリと変わってしまったのだ。

 好んで使うフリオの持ち物も、一流の店があつかう高級品ばかりを選び、友達と一緒に流行の最先端を、追わずにはいられないらしい。


 父に頼みデシルが手に入れた、外国で採掘された珍しい宝石を使った、カフスボタンとタイピンのセットを、フリオの誕生日に贈った時も、デシルの目の前で中身を見て… 
『王都で流行の店で買った物以外はダサいから、こんな物をオレが使うわけ無いだろう?!』 …とその場でデシルはプレゼントを返された。

 学園の外ではフリオに会う時間を作ってもらえず、仕方なく学園の休憩時間にプレゼントを渡しに行ったせいで、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべるフリオの友達が側にいたのも、運が悪かった。

 数ヶ月後、デシルの父が大量に輸入した、その珍しい宝石が、王都で流行った時は、さすがにフリオも悔しそうな顔をしていたけど。
(ちなみにフリオに返されたプレゼントは、来年学園に入学する弟にあげた)

 学園に入学して4年目になるのに、デシルはフリオの友人に、一度も紹介されたことがない。 

 もうすぐ学園も卒業するのにだ。
 

 学園に通う生徒は貴族だけのため、デシルの父親が元商人の平民だと、フリオのようにさげすみバカにする者が多く… デシルにも仲の良い友人はいるが、そんな環境のせいで、とても少ないのだ。
 その少ない友人に招待されたパーティーだからこそ、デシルは婚約者のフリオにエスコートしてもらいたかった。


「また1人で僕が参加したら、きっと友達に気をつかわせてしまうよね? 困ったなぁ…」


 優しい友人たちの顔を思い浮かべデシルは… 今日は何度目になるかわからない憂鬱ゆううつなため息を、ハァ―――ッ… とついた。





しおりを挟む
このお話の登場人物たちの命名は、スペイン語にお世話になりました。 デシル→言う。 騎士サリダ→出口。 婚約者フリオ→寒い。 サリダの婚約者アオラ→今。 デシルの友人ミラドル→展望台。 ミラドルの兄パルケ→公園。 今回も面白い響きの名前ばかりになりました(*´ω`)。覚えにくかったら、すみません! ◯命名センスが最悪なので、異世界モノのお話の時はいつも外国の単語からもらうことにしています☆彡
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完】三度目の死に戻りで、アーネスト・ストレリッツは生き残りを図る

112
BL
ダジュール王国の第一王子アーネストは既に二度、処刑されては、その三日前に戻るというのを繰り返している。三度目の今回こそ、処刑を免れたいと、見張りの兵士に声をかけると、その兵士も同じように三度目の人生を歩んでいた。 ★本編で出てこない世界観  男同士でも結婚でき、子供を産めます。その為、血統が重視されています。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

【完結】オーロラ魔法士と第3王子

N2O
BL
全16話 ※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。 ※2023.11.18 文章を整えました。 辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。 「なんで、僕?」 一人狼第3王子×黒髪美人魔法士 設定はふんわりです。 小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。 嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。 感想聞かせていただけると大変嬉しいです。 表紙絵 ⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

処理中です...