箱庭の子ども〜世話焼き侍従と訳あり王子〜

真木もぐ

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番外編 重ねる日々

チームカルバートンのミーティング2(Twitter小話12)

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「以前より話のあった執事候補ですが、わたしとしては彼を推薦するつもりです」

 ベイカーの挙げた名前に、ロダスとフランツはやや渋い顔をした。

 職員の配属を決定するのは王宮の人事局だが、筆頭侍従に意見が求められた場合、彼が推薦すればもう内定のようなものだ。

 イェオリは手元のタブレットを見下ろす。
 ディスプレイに流れているのは、人事局が行った面接のようすを映した動画だ。

「大学では歴史学を専攻、優秀な成績で学位を取得しています。フットマンとしての働きにも上司は満足していますし、周囲の評判も良い。人間性に問題はないでしょう」
「しかしベイカー……」
「彼はあまりにもその、毛色が異なるように感じるのですが……」

 同じくタブレットを凝視した先輩侍従ふたりが、互いの認識を横目で確かめ合う。イェオリとしても、気持ちは分からなくもない。

 そしてベイカー自身も、チームの意見にはおおむね同意した。

「たしかに、我々とはかなりタイプの違うユニークな人物です」

 しかしながら、と彼はこの人物の選出理由を示す。

「殿下はまだお若いのですから、長くお側に仕える者を、いまから教育する必要があります。イェオリは、このまま侍従として務めるつもりなのでしょう?」
「はい」

 イェオリはしっかりと答える。屋敷を取り仕切る執事というのも職業としては魅力的だが、エリオットの側で働ける侍従ほどではない。

「では、やはりできるだけ若い方がよいと思います。王太子殿下のチームほどの若返りをするつもりはありませんが、我々の年齢的にもイェオリの物静かな気質的にも、このチームにはやや活気に欠けるところがありますからね」
「ですが、二十代や三十代の候補なら他にもいます。率直に申し上げて、物怖じしすぎない彼は殿下にとって、なんというか……えぇ、その……」
「圧が強い?」

 言葉に詰まったロダスに、フランツが助け舟を出す。

「そう、圧が強いように感じます」

 部下たちが示す懸念に、ベイカーは丁寧に頷く。イェオリはその大らかな目じりに尋ねた。

「ベイカーは、殿下と彼の相性について心配はしていないんですか?」
「えぇ、していません。ロダスがいうとおり、少々圧が強いほどの明るさですが、面接の様子を見る限り裏表のない人物です。それに」
「それに?」
「殿下は犬好きでいらっしゃいます」

 あぁ……。とテーブルに納得の声が落ちる。

 タブレットの中で、ベイカーの目に留まった大型犬、クレシェンツォ・クロフ・クレイヴが、キラキラと目を輝かせて志望動機を語っていた。
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