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番外編 重ねる日々
運転免許に関する顛末(Twitter小話4)
しおりを挟む「運転免許って、おれも取れる?」
「無理だろ」
即答したバッシュに、エリオットの機嫌は分かりやすく低下した。
「……それはなにか、おれが運転できないくらい鈍くさいって意味?」
「出たよネガエリー」
「はぁ?」
「ネガティブエリオット」
「不敬罪!」
なんでだ。
ビシッと指をさされて、バッシュは少し考える。ここからだと──。
「一番近いのはダナン刑務所か。面会には来てくれよ」
「誰が行くか!」
「薄情だな。……で、免許?」
「そうだよ。くだらない冗談で腰を折るな」
話を戻すと、肘掛け椅子におさまったエリオットが尋ねて来た。
「学科と実地試験に受かればいいんだろ?」
「そうだな。でもお前、学科はいいとして、実地はどうするんだ?」
「ヘインズの私有地で練習する」
なるほど。ドームがいくつも入るような本邸の中なら、たしかに素人がいくら走らせたところで、ぶつかるのは木か石垣くらいなものだろう。
「誰に教わる?」
「あんたでいいじゃん。免許保持五年以上なら監督できるって、知ってるんだからな」
なかなかの博識だ。
バッシュは子どものように胸を張るエリオットの姿に、吹き出しそうになる。しかしここで笑えば、またへそを曲げるだろうから我慢した。
「じゃあ、試験はどうするつもりだ?」
「ん?」
「実地試験で乗る車は、助手席にブレーキがついてる」
「そうなのか?」
国家機密でも聞くような慎重さで、エリオットは身を乗り出す。
「つまり当然、安全確保と審査のために試験官は助手席乗る」
一メートル以内で。
「……むり」
「だろうな。おとなしくベイカーたちに任せておけ」
「そうする」
肘掛け椅子に引っ込んだエリオットに、バッシュは手を差し出した。反射のように重ねられた指先を、親指で撫でる。
「車なら出してやる」
「ドライブ?」
「行き先考えておけよ」
「うん」
◇◇◇
おまけのバッシュとベイカー
「と、いう話を、エリオットとしたんだが」
「さようでございますか」
「バイクならいけるんじゃないかと思ったけど、黙っておいた」
「踏みとどまっていただけて、なによりでございます」
「そのうち気付くだろ」
「その場合は、我々一同が全力で阻止いたします」
「過保護……」
「なんとでも仰ってください」
過保護上等でございます。
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