箱庭の子ども〜世話焼き侍従と訳あり王子〜

真木もぐ

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世話焼き侍従と訳あり王子 第七章

2-1 切り替えが大事

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 ベッドに横になりながらも、ろくに眠れないまま朝を迎えた。目の奥がじんじん痛み、頭がぼうっとしている。明らかな睡眠不足だ。

 あんな風にだれかに対して怒鳴り散らすなんて、初めてだった。
 バッシュにどんな顔をして会ったらいいのか。その前に、迷惑をかけたイェオリに謝らないとと思うものの、動くのも億劫だ。

 きょうは一日家にいたい。キャンセルできるものはなかったかと、事前に伝えられている予定を思い浮かべてみたけれど、到底無理なことを思い出してベッドから足を下ろした。

 リビングへ顔を出したときには、すでにイェオリは肘掛け椅子の前に立っていた。昨夜、エリオットが寝室に籠城した後で、どこかへ電話をかけていた声は漏れ聞いている。思い当たるのはベイカーかバッシュだが、あえて知らないふりをした。

「おはようございます」
「……おはよ。昨日は夜中にごめん。わざわざ来てくれたのに態度悪くて」
「わたくしの勝手でしたことでございます。こちらこそ、呼ばれもせず上がり込みまして、申し訳ございません」

 かすかに疲れをにじませているものの、寝癖ひとつないイェオリは、普段と変わりなく生真面目に頭を下げた。

 電話の話し声以外には存在を感じさせなかったが、綺麗にたたまれたブランケットも、エリオットの座るくせのついた肘掛け椅子も、昨夜寝具として使われたかどうかは判別できない。もしかしたら一睡もしていないのではと、その状況を作った張本人ながら心配になった。

「本日は、午前中に国王陛下がご帰国なさいます。ヘインズさまにおかれましては、十四時から衣装合わせ、夕方に陛下のお時間が空き次第お招きがございますが、ご予定通りでよろしいでしょうか」

 私服姿のイェオリが、それでも侍従らしく尋ねる。

「うん、大丈夫」

 宿舎に一度戻り、昼過ぎに迎えに来るように言うと、「朝食を買って参りましょうか」と聞かれたので首を振った。

「適当に済ませる。ベイカーには連絡しとくから、早く帰って少しでも寝なよ。昼食べて迎えに来てくれればいいから」

 Tシャツで王宮に上がるわけにもいかないし、打ち合わせ中にあくびなどできるはずもない。
 エリオットが昨夜よりはまともに見えたからか、憂慮の色を薄くしたイェオリが、なにかあればすぐ電話をするよう言い含めてフラットを辞去した。

 ひとりになったエリオットは、まずベイカーへ電話をかけた。そしてイェオリを十一時まで待機扱いにするよう伝えたあと、着替えもしないまま陰気な共有廊下を通って屋上にのぼる。見つけたときは、ショックのあまり手が付けられなかった庭の修復をするためだ。

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