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世話焼き侍従と訳あり王子 第四章

1-2 思いがけない再会

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 エリオットは舌打ちする。

 めんどくさいな。いっそチケット買って入るか。

 ここでゴネて警察を呼ばれたら厄介だし、中にさえ入ってしまえば、あとは勝手知ったる「実家」だ。子どものころ、散々迷子になって泣きべそかいたおかげで、案内図なんてなくても王宮の構造は熟知している。

「すみませんでした。西門へ回ります」

 通用口に入って来た車をよけながら、エリオットは西門へ向かって歩き出す。


「エリオット?」

 名前を呼ばれて振り返ると、身分証の確認で止まった車の窓が開く。

 ワゴンタイプの黒塗り。助手席側の後部座席の窓が下がり、栗色のロングヘアーとぱっちりカールしたまつげが印象的な愛嬌のある顔が現れた。

「エリオットでしょう?」
「お知合いですか?」

 衛兵が困惑気味に尋ねるのにも構わず、女性は内側からスライドドアを開けた。

「どうぞ、お乗りになって」
「タウンゼントさま、困ります」
「いいのよ。彼を通してちょうだい」

 手招かれるままにエリオットが乗り込むと、ぽかんと口を開けたままの衛兵を残して車は王宮の敷地へ入って行った。

 三列シートの最後尾、レザーの座席に収まって、エリオットは恐る恐る尋ねる。

「ミリーなの?」
「驚いた?」
「テレビで見た人だなと思ったら、ほんとにミリーだった」

 背中まである髪をくるくるカールさせ、ラベンダー色のワンピースを着た、強烈な美人ではないけれど、子どものころから変わらないたれ目のかわいらしい女性。

「毛虫が怖いって泣いてたミリーが、『通してちょうだい』なんて」
「あら、わたしこれでも王太子妃になる予定なのよ」

 サイラスの結婚相手、ミシェル・タウンゼントはいたずらっぽく笑った。

「よくおれが分かったね」
「髪の色が違ったってすぐ分かるわ。だってラスったら、部屋中にあなたの写真を置いてるんだもの」
「えっ」

 なにそれ怖い。

「正確には、あなたも一緒に写ってる家族写真をね。ちっとも弟離れができないのよ」
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