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世話焼き侍従と訳あり王子 第三章

1-6 侍従の恋愛事情

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 番組は、ミシェルのウェディングドレスにどれほどの予算が計上されるかと言う、下世話で人目を惹く話題に移り、エリオットはテレビを消して料理が並ぶダイニングにつく。

 テーブルには葉物野菜のボウルにレンズ豆のスープとバゲット、パイはあふれたチーズが皿から垂れて、香ばしく焦げ付いていた。

 バッシュは遠慮なくパイの真ん中にスプーンを入れ、伸びるチーズを器用にプレートまで導くと、エリオットの前に置く。それから自分の分を取り分け、「失礼します」と一言断ってから向かいの席に座った。

 さっそく取り分けられた山をフォークで崩し、パスタのようにチーズをくるくる巻きつける。数回息を吹いて冷ました牛肉は、噛むとほろほろになった。
 唇に貼りつくチーズを舐めとってから、エリオットは聞く。

「あんた、家でもいつも自炊してんの?」
「あまりいたしません。自分のためだけに作るのは味気ないので。こちらへお邪魔するようになって、ランチは毎日作らせていただいておりますが」

 サラダのドレッシングを取ったりグラスに水を注いだりとエリオットの世話を焼きながらも、バッシュはどんどん自分の食事を進めていく。いつ見てもいい食べっぷりだった。

「おれのほかに、作ってやるやつはいないわけ」
「ほかと申しますと……殿下や侍従長ですか?」

 違うわボケ。天然か。

 胡乱な目を向けると、小さく肩をすくめる。

「失礼いたしました。つまり、交際相手がいるかと言うご質問でしょうか」
「それだけ家事ができれば、さぞおモテになりますでしょうね」
「お褒めいただき光栄でございますが、侍従と言う職業は交際相手としてふさわしくないと思われるようです。不規則な勤務形態で、常に王族の方を優先しお仕えしておりますので、お相手には物足りないかと存じます」
「そうなの? 侍従ってフットマンよりかなり給料上がるんじゃなかったか? 高給取りなのに」
「ですから、使用人として上級職を目指す者はまず、先輩からこう教わります。結婚相手はフットマンのうちに探せ。でなければ……」
「でなければ?」

 エリオットが身を乗り出すと、バッシュはにやっと笑った。

「犬を飼え」
「……どう言うこと?」
「そのまま、その先の結婚は無理だから一人寂しくペットを飼え、と言うことです」

 ひどいな。

「それで? あんたは犬を飼っているのか?」
「残念ながら、犬より手のかかる方のお世話で手一杯ですね」
「このくそ侍従」

 だれもオチを付けろなんて言ってないだろ。

 エリオットは卓上にあった布巾を掴み、バッシュに投げつけた。
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