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世話焼き侍従と訳あり王子 第二章
3-2 一名様ご招待
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特に返事をしなくても、ゴードンは最近行った実験やフィールドワークについて勝手に話すから、エリオットはいつもラジオのように聞き流す。そして決まって最後は同じ話題に行きついた。
『エリオット。以前から言っているが、わたしの研究室へ来ないか? 遺伝子のほうはまだ手付かずだろう。アプローチを変えるのも一つの手だ』
「教授……」
『まだ難しいかね』
「すみません」
遺伝子やバイオに興味がないと言ったらうそになる。あの花をもっと改良したいとも思う。しかし同時に現実を見る決心がつかない。まだ、自分は努力している途中なのだと思っていたかった。
『気が変わったら、いつでも言ってくれ。開花の報告も待っているよ』
「はい」
グラスを通してシンクで揺れる水の影を見つめ、終話ボタンを押す。
資産も時間もあって、勝手を許してくれる家族がいる。それでも世界は怖いものだらけだ。
「失礼いたします。ヘインズさま、よろしいでしょうか」
いつ戻って来たのか、リビングに立つバッシュに声を掛けられて、エリオットはスマートフォンの電源を切り顔を上げた。
「なに」
「一階に種苗会社の配送員が来ております」
「もう? いつから苗屋は二十四時間営業になったんだ」
早いわ、と思って時計を見ると八時半を過ぎていた。
「うわ」
ゴードンの話しが長すぎだった。
「どちらへ搬入いたしますか」
「じ………」
自分でやるからいい、と言おうとして、エリオットは思いなおす。
もういいか。
毎日靴を汚して帰って来るのを見ていれば、屋上に何があるかくらい想像がついているだろう。せいぜいこき使ってやる。
エリオットは水を飲みほしたグラスをシンクへ置くと、天井を指さした。
「屋上。あんたも手伝え」
ゴリラ並みの体力を期待してるぞ。
「承知いたしました」
つられて天井を見上げたバッシュは、なぜか満足げにうなずく。どうせ「やっぱりな」とか思ってるんだろう。すみませんね、意外性がなくて。
『エリオット。以前から言っているが、わたしの研究室へ来ないか? 遺伝子のほうはまだ手付かずだろう。アプローチを変えるのも一つの手だ』
「教授……」
『まだ難しいかね』
「すみません」
遺伝子やバイオに興味がないと言ったらうそになる。あの花をもっと改良したいとも思う。しかし同時に現実を見る決心がつかない。まだ、自分は努力している途中なのだと思っていたかった。
『気が変わったら、いつでも言ってくれ。開花の報告も待っているよ』
「はい」
グラスを通してシンクで揺れる水の影を見つめ、終話ボタンを押す。
資産も時間もあって、勝手を許してくれる家族がいる。それでも世界は怖いものだらけだ。
「失礼いたします。ヘインズさま、よろしいでしょうか」
いつ戻って来たのか、リビングに立つバッシュに声を掛けられて、エリオットはスマートフォンの電源を切り顔を上げた。
「なに」
「一階に種苗会社の配送員が来ております」
「もう? いつから苗屋は二十四時間営業になったんだ」
早いわ、と思って時計を見ると八時半を過ぎていた。
「うわ」
ゴードンの話しが長すぎだった。
「どちらへ搬入いたしますか」
「じ………」
自分でやるからいい、と言おうとして、エリオットは思いなおす。
もういいか。
毎日靴を汚して帰って来るのを見ていれば、屋上に何があるかくらい想像がついているだろう。せいぜいこき使ってやる。
エリオットは水を飲みほしたグラスをシンクへ置くと、天井を指さした。
「屋上。あんたも手伝え」
ゴリラ並みの体力を期待してるぞ。
「承知いたしました」
つられて天井を見上げたバッシュは、なぜか満足げにうなずく。どうせ「やっぱりな」とか思ってるんだろう。すみませんね、意外性がなくて。
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