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世話焼き侍従と訳あり王子 第一章
5-2 ネコ何匹分?
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「……は?」
こいつ、いまなんて言った?
エリオットは、ぽかんとバッシュの横顔を見上げる。そうとうな間抜け面だろうが、一分の隙もない侍従の口からFワードが飛び出せば、それは思考も止まる。
昨日はただ整っているだけの石膏像だったのに、冷たそうだと思った瞳を噴火寸前のマグマみたいに滾らせてドアの覗き穴を睨んでいる。
こんな顔した客が来たら、居留守を使うどこか即通報するわ。
バッシュは通販会社のロゴ入り段ボール箱を抱えたまま、エリオットに向き直ることもせずに低く呪詛を吐いた。
「こちらの都合もお考えいただきたい。十年下積みしてようやく侍従に昇進したというのに、あなたをお連れできなければ衣装係に逆戻り。どんな貧乏くじでしょうね。――いざとなったら首に縄付けてでも引きずっていくからな。覚悟しろニート公爵」
「なっ…なっ…」
突然垂れ流されたバッシュ側の都合に言葉を失うエリオットへ、完ぺきな侍従の顔を張り付けて悪魔がほほ笑む。
「と言うことで、しばらくお側におりますので、ご用は何なりとお申し付けくださいませ」
なんだそれ! なんだそれ!
そっちの出世なんか知ったことか。首に縄って人権侵害じゃないか。やってみろ強要罪で訴えてやる。しかも言うに事欠いてニート公爵だと? 名誉棄損も追加だ。なによりどんだけ分厚い猫かぶっていやがったんだ、このくそ侍従。
「詐欺だろ!」
叫びながら、バッシュからクローゼットの匂いがしたのは勘違いではなかったな、とも思った。
こいつ、いまなんて言った?
エリオットは、ぽかんとバッシュの横顔を見上げる。そうとうな間抜け面だろうが、一分の隙もない侍従の口からFワードが飛び出せば、それは思考も止まる。
昨日はただ整っているだけの石膏像だったのに、冷たそうだと思った瞳を噴火寸前のマグマみたいに滾らせてドアの覗き穴を睨んでいる。
こんな顔した客が来たら、居留守を使うどこか即通報するわ。
バッシュは通販会社のロゴ入り段ボール箱を抱えたまま、エリオットに向き直ることもせずに低く呪詛を吐いた。
「こちらの都合もお考えいただきたい。十年下積みしてようやく侍従に昇進したというのに、あなたをお連れできなければ衣装係に逆戻り。どんな貧乏くじでしょうね。――いざとなったら首に縄付けてでも引きずっていくからな。覚悟しろニート公爵」
「なっ…なっ…」
突然垂れ流されたバッシュ側の都合に言葉を失うエリオットへ、完ぺきな侍従の顔を張り付けて悪魔がほほ笑む。
「と言うことで、しばらくお側におりますので、ご用は何なりとお申し付けくださいませ」
なんだそれ! なんだそれ!
そっちの出世なんか知ったことか。首に縄って人権侵害じゃないか。やってみろ強要罪で訴えてやる。しかも言うに事欠いてニート公爵だと? 名誉棄損も追加だ。なによりどんだけ分厚い猫かぶっていやがったんだ、このくそ侍従。
「詐欺だろ!」
叫びながら、バッシュからクローゼットの匂いがしたのは勘違いではなかったな、とも思った。
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