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5.涙とりんごのクランブル
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目のふちからこぼれた涙が、頬を伝って落ちる。
あまりに静かに泣くオリヴァーを、ジルは歌うのも縫うのも忘れて見つめた。針を指に突き立てなかったのは幸いだった。
曲が終わり、ほんの数秒すべての音が途切れた。通り過ぎる天使に告げるように、オリヴァーがささやく。
「好きなひとがいるんだ」
言葉が、勝手に口からこぼれ出しているみたいだった。
ようやく自分が泣いていることに気付き、両手で顔を覆う。指の隙間から、くぐもった声がした。
「親同士が仲良くて、家族ぐるみの付き合いでさ。幼馴染ってやつ。ずっとおれだけが、あいつを好きだった」
それが幸せな告白ではないことは、どんなに愚かな人間だって理解できただろう。
「……そのひとは、きみの心に気付いてないんだな」
ジルはためらいがちにそう尋ねた。この問いかけが、自分をさらけ出そうとしているオリヴァーを追い詰めないかと恐れながら。
けれど彼は、ジルの質問で勢いがついたようにしゃべりだした。
「もしかしたら、気付いてくれてるかもしれない。だってただの友達よりずっと近くにいたんだ。好きな音楽も嫌いな食べ物も、お互いに全部知ってた。じっと見つめても目をそらしたりしなかった。だからもしかして……って、ずっとそう思ってた。でも、あいつはおれの気持ちには一ミリだって気付いてない。それを思い知らされたんだ」
オリヴァーの気持ちは届かなかったのだ。
彼がどれほどその幼馴染を愛していたかは、ジルを見上げた真っ青な顔を思い出せば容易に想像できる。
ベールを脇に置いて、ジルはロッキングチェアから立ち上がる。ソファの肘掛に軽く尻をのせて、オリヴァーの肩を引き寄せた。ジルよりずっとたくましい肩が、頼りなく震えている。
「結婚するんだって」
なんてことだ。
そんな残酷な愛の終わりかたがあるだろうか。
「おとといディナーに誘われて、そこでいわれた。すげーうれしそうな顔でさ。一番に伝えたかったって。おれに……介添え人になってくれっていうんだ。笑っちゃうだろ」
「大馬鹿野郎だな」
オリヴァーの頭を抱えた胸に、彼の悲しみややるせなさが伝わってきて、窓のほうを向いて息を吐き出した。
「夜が明けてほしくなかったし、ずっと曖昧なままでいたかったなぁ」
オリヴァーに失恋の衝撃をフラッシュバックさせたラジオは、そ知らぬふりで定時のニュースを読んでいる。世の中ではきょうも様々な事件や事故が起きていた。彼はそうした犯罪に巻き込まれたわけではなかったけれど、安全な家にいられず、知り合いの誰も頼れないほどショックを受けて傷ついていた。
カウンセラーの資格なんて持っていないし、理想的な父親のように人生について諭してやれるほどの経験を積んでいるわけでもない。だいたい、出会って一日もたっていないやつにそんなことをされたって不快だろう。だからオリヴァーが落ち着くまでのあいだ、余計な口をきかずに肩を温めてやるくらいしか、やれることがなかった。
昼寝から目覚めた猫が、出窓から飛び降りて近くまでやって来た。お気に入りのオリヴァーの膝にのぼると、「みゃあ」とひと鳴きして丸くなる。
珍しく気が合うじゃないか。
オリヴァーの肩の震えが、泣き笑いのそれになる。
「なんだ」
「だって……泣くとハグしてくれるの、クィア・アイの番組みたい……」
「忘れたのか? そいつはアントニだぞ」
「そうだった」
大きく鼻をすすったオリヴァーは、赤くなった目元を両手で何度もこすった。
「ごめん、急に泣いたり変なこといって」
「ぼくでよければ、いくらでも話すといい。耳だけは自由な仕事だ」
オリヴァーがまた鼻を鳴らす。
「ありがとう。花嫁のベール、ジルに依頼してもらうね」
強がってそんなことをいうから、「ぼくのは高いぞ」と脅してやる。
「そこは特別価格でさ」
「残念ながら、仕事に私情は持ち込まない主義なんだ」
最後にぽんと肩を叩いて、ジルはオリヴァーのそばを離れた。トレーナーの袖をひじまで引き上げ、アントニの頭をぐりぐりと撫でるオリヴァーを振り返る。
「きみ、りんごのクランブルは好き?」
「好き、だけど」
「じゃあ作ろう」
充血した瞳が、キッチンに入るジルを追ってぱちぱちと瞬いた。オリヴァーには文脈が繋がらないらしい。
「泣くとお腹がすく。祖母はいつもそういって、おやつを作ってくれたんだ」
「いつもってことは、ジルって泣き虫だったのか?」
「そうか分かった、きみは食べないんだな」
「わー! 食べる食べる!」
慌てたオリヴァーは、猫を抱えてキッチンまで追いかけてくる。せっかく二度寝をしようとしていたのにベッドが動いたものだから、アントニが不機嫌そうにしっぽでその腕を叩いた。
「おお、ブリティッシュ・ベイクオフの世界だ」
調理台にボウルや薄力粉の袋を並べるのを眺めて、オリヴァーがいった。
「そういう番組も見るのか」
なんとなく、スポーツチャンネルばかり見ているタイプのようなイメージがある。タンパク質へのこだわりと、ほどよく引き締まった体つきがそう思わせるのだろうか。
「姉が……」
「お姉さん?」
「……姉が好きなんだ。かわいいお菓子と互いへのリスペクトが、社会につかれた心の栄養なんだって」
「クィア・アイも?」
「タンのファン。姉はストレートだけど。その、クィアじゃないって意味ではね」
「そうか」
ロキシーに教わったレシピのなかでも、りんごのクランブルはクッキーと同じくらい簡単な部類に入る。材料はりんごがひとつ、薄力粉、バターと砂糖。シナモンがあるとなおよし。
オリヴァーが「おれもやる!」というので、手を洗わせて粉と砂糖を混ぜてもらうあいだに、ジルはバターを冷蔵庫から取り出す。室温に戻さなくていいところが、またありがたい。思い立ったときにすぐ作ることができる。
小さめの角切りにしたバターを、オリヴァーのボウルに投入。
「指でバターを潰す感じで混ぜて。馴染んできたら、ぽろぽろのそぼろ状に」
「はーい」
オーブンに予熱を入れ、りんごの皮を剥く。
みゃあみゃあ鳴いて足元をうろつく猫に「うんうん」と律儀に返事をしながら、オリヴァーは手術を行う医者のように真剣な表情でバターをすり潰している。その右手の指に、けっこうしっかりしたたこがあるのに気付いた。
ジルも編み物を始めたばかりのころ、力の抜き加減が分からずにペンだこのようなものができた覚えがあるが、オリヴァーの指のそれは治る暇もなく使い込んでいる結果のように見えた。
「そぼろ状って、これくらい?」
「あぁ、それくらいでいい。ラップをして、冷蔵庫に入れておいてくれ」
いわれた通りにしたオリヴァーは指についた粉を水で洗い流し、ジルが剥いたりんごの皮を見て「めっちゃ繋がってる!」とひとしきりはしゃいだ。
小さめに切ったりんごを耐熱のグラタン皿に入れて、砂糖とシナモンを振りかけて混ぜる。パイだと先にりんごだけ火を入れたりするが、それも不要。とことん手間いらずのお菓子だ。
シナモンでうっすら茶色になったりんごの上に、冷やしておいたクランブルを溢れないように敷き詰め、あとはオーブンで焼くだけ。
「どれくらい?」
「四十分くらい。焼き色を見ながらね。ぼくは切りのいいところまで仕事をするから、見張りを頼んでもいいかな」
「任せて」
あまりに静かに泣くオリヴァーを、ジルは歌うのも縫うのも忘れて見つめた。針を指に突き立てなかったのは幸いだった。
曲が終わり、ほんの数秒すべての音が途切れた。通り過ぎる天使に告げるように、オリヴァーがささやく。
「好きなひとがいるんだ」
言葉が、勝手に口からこぼれ出しているみたいだった。
ようやく自分が泣いていることに気付き、両手で顔を覆う。指の隙間から、くぐもった声がした。
「親同士が仲良くて、家族ぐるみの付き合いでさ。幼馴染ってやつ。ずっとおれだけが、あいつを好きだった」
それが幸せな告白ではないことは、どんなに愚かな人間だって理解できただろう。
「……そのひとは、きみの心に気付いてないんだな」
ジルはためらいがちにそう尋ねた。この問いかけが、自分をさらけ出そうとしているオリヴァーを追い詰めないかと恐れながら。
けれど彼は、ジルの質問で勢いがついたようにしゃべりだした。
「もしかしたら、気付いてくれてるかもしれない。だってただの友達よりずっと近くにいたんだ。好きな音楽も嫌いな食べ物も、お互いに全部知ってた。じっと見つめても目をそらしたりしなかった。だからもしかして……って、ずっとそう思ってた。でも、あいつはおれの気持ちには一ミリだって気付いてない。それを思い知らされたんだ」
オリヴァーの気持ちは届かなかったのだ。
彼がどれほどその幼馴染を愛していたかは、ジルを見上げた真っ青な顔を思い出せば容易に想像できる。
ベールを脇に置いて、ジルはロッキングチェアから立ち上がる。ソファの肘掛に軽く尻をのせて、オリヴァーの肩を引き寄せた。ジルよりずっとたくましい肩が、頼りなく震えている。
「結婚するんだって」
なんてことだ。
そんな残酷な愛の終わりかたがあるだろうか。
「おとといディナーに誘われて、そこでいわれた。すげーうれしそうな顔でさ。一番に伝えたかったって。おれに……介添え人になってくれっていうんだ。笑っちゃうだろ」
「大馬鹿野郎だな」
オリヴァーの頭を抱えた胸に、彼の悲しみややるせなさが伝わってきて、窓のほうを向いて息を吐き出した。
「夜が明けてほしくなかったし、ずっと曖昧なままでいたかったなぁ」
オリヴァーに失恋の衝撃をフラッシュバックさせたラジオは、そ知らぬふりで定時のニュースを読んでいる。世の中ではきょうも様々な事件や事故が起きていた。彼はそうした犯罪に巻き込まれたわけではなかったけれど、安全な家にいられず、知り合いの誰も頼れないほどショックを受けて傷ついていた。
カウンセラーの資格なんて持っていないし、理想的な父親のように人生について諭してやれるほどの経験を積んでいるわけでもない。だいたい、出会って一日もたっていないやつにそんなことをされたって不快だろう。だからオリヴァーが落ち着くまでのあいだ、余計な口をきかずに肩を温めてやるくらいしか、やれることがなかった。
昼寝から目覚めた猫が、出窓から飛び降りて近くまでやって来た。お気に入りのオリヴァーの膝にのぼると、「みゃあ」とひと鳴きして丸くなる。
珍しく気が合うじゃないか。
オリヴァーの肩の震えが、泣き笑いのそれになる。
「なんだ」
「だって……泣くとハグしてくれるの、クィア・アイの番組みたい……」
「忘れたのか? そいつはアントニだぞ」
「そうだった」
大きく鼻をすすったオリヴァーは、赤くなった目元を両手で何度もこすった。
「ごめん、急に泣いたり変なこといって」
「ぼくでよければ、いくらでも話すといい。耳だけは自由な仕事だ」
オリヴァーがまた鼻を鳴らす。
「ありがとう。花嫁のベール、ジルに依頼してもらうね」
強がってそんなことをいうから、「ぼくのは高いぞ」と脅してやる。
「そこは特別価格でさ」
「残念ながら、仕事に私情は持ち込まない主義なんだ」
最後にぽんと肩を叩いて、ジルはオリヴァーのそばを離れた。トレーナーの袖をひじまで引き上げ、アントニの頭をぐりぐりと撫でるオリヴァーを振り返る。
「きみ、りんごのクランブルは好き?」
「好き、だけど」
「じゃあ作ろう」
充血した瞳が、キッチンに入るジルを追ってぱちぱちと瞬いた。オリヴァーには文脈が繋がらないらしい。
「泣くとお腹がすく。祖母はいつもそういって、おやつを作ってくれたんだ」
「いつもってことは、ジルって泣き虫だったのか?」
「そうか分かった、きみは食べないんだな」
「わー! 食べる食べる!」
慌てたオリヴァーは、猫を抱えてキッチンまで追いかけてくる。せっかく二度寝をしようとしていたのにベッドが動いたものだから、アントニが不機嫌そうにしっぽでその腕を叩いた。
「おお、ブリティッシュ・ベイクオフの世界だ」
調理台にボウルや薄力粉の袋を並べるのを眺めて、オリヴァーがいった。
「そういう番組も見るのか」
なんとなく、スポーツチャンネルばかり見ているタイプのようなイメージがある。タンパク質へのこだわりと、ほどよく引き締まった体つきがそう思わせるのだろうか。
「姉が……」
「お姉さん?」
「……姉が好きなんだ。かわいいお菓子と互いへのリスペクトが、社会につかれた心の栄養なんだって」
「クィア・アイも?」
「タンのファン。姉はストレートだけど。その、クィアじゃないって意味ではね」
「そうか」
ロキシーに教わったレシピのなかでも、りんごのクランブルはクッキーと同じくらい簡単な部類に入る。材料はりんごがひとつ、薄力粉、バターと砂糖。シナモンがあるとなおよし。
オリヴァーが「おれもやる!」というので、手を洗わせて粉と砂糖を混ぜてもらうあいだに、ジルはバターを冷蔵庫から取り出す。室温に戻さなくていいところが、またありがたい。思い立ったときにすぐ作ることができる。
小さめの角切りにしたバターを、オリヴァーのボウルに投入。
「指でバターを潰す感じで混ぜて。馴染んできたら、ぽろぽろのそぼろ状に」
「はーい」
オーブンに予熱を入れ、りんごの皮を剥く。
みゃあみゃあ鳴いて足元をうろつく猫に「うんうん」と律儀に返事をしながら、オリヴァーは手術を行う医者のように真剣な表情でバターをすり潰している。その右手の指に、けっこうしっかりしたたこがあるのに気付いた。
ジルも編み物を始めたばかりのころ、力の抜き加減が分からずにペンだこのようなものができた覚えがあるが、オリヴァーの指のそれは治る暇もなく使い込んでいる結果のように見えた。
「そぼろ状って、これくらい?」
「あぁ、それくらいでいい。ラップをして、冷蔵庫に入れておいてくれ」
いわれた通りにしたオリヴァーは指についた粉を水で洗い流し、ジルが剥いたりんごの皮を見て「めっちゃ繋がってる!」とひとしきりはしゃいだ。
小さめに切ったりんごを耐熱のグラタン皿に入れて、砂糖とシナモンを振りかけて混ぜる。パイだと先にりんごだけ火を入れたりするが、それも不要。とことん手間いらずのお菓子だ。
シナモンでうっすら茶色になったりんごの上に、冷やしておいたクランブルを溢れないように敷き詰め、あとはオーブンで焼くだけ。
「どれくらい?」
「四十分くらい。焼き色を見ながらね。ぼくは切りのいいところまで仕事をするから、見張りを頼んでもいいかな」
「任せて」
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