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第四章 クラウディアを得んと暗躍する者達。
叔父様って呼んでもいいですか?
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「姫様、先触れが届きましたが、如何致しますか?
先日よりも顔色も良いようですので、そろそろ陛下以外の方の面会を受け入れてもいいかもしれませんが。」
「先触れってことは、お伺いしているって事でいいの? 会わなくてもいいし会ってもいいみたいな。」
「そうですね。皇女であれば派閥の関係性や力のある貴族等との交流も兼ねて、お会いした方がいいか、しないで大丈夫なのかを決められますが。
我が帝国は陛下の力が強いので。
数多の属国を従えられているのも陛下と宰相閣下のお力に寄るものが大きいので、
他貴族の発言力は然程大きくありません。
派閥等はありますが、宰相閣下の手のひらの上のような感じですね。
我が家もそれなりに力がありますが、私達は皇家至上主義ですので、貴族としての発言権や力などあっても、皇家の為以外にそれらを振るう事はありませんので。」
「そうなの……アンナのお家って私とお兄様と宰相様の味方なのね。」
「そうですよ。私は特に姫様の味方です。この命尽きるその瞬間まで。」
「……命は大事にしてね。ということは、誰の先触れなのかなー? あ! 誰の先触れか当ててみるから、教えたらダメよ!」
クラウディアはアンナに口止めをする。
アンナは苦笑して頷いた。
本人がどんなに元気だと言い募ろうとも、皇宮の皇女専属侍医が診察後に「快癒致しました。」と太鼓判を押そうとも、本日まではベッドの住人になるようシュヴァリエにしつこく言い聞かせられているクラウディア。
正直、全く元気なのにお見舞いに来られるのは申し訳ないのだけど。
皇女であるクラウディアを訪問出来る相手はかなり限られている。
かなりの上位貴族であっても、お披露目されていない皇女に会う事は当然許されないが、クラウディアはお披露目は済ませている。
しかし、あの時はシュヴァリエがずっと張り付いていたし、シュヴァリエが居ない時は隣国のゲームの攻略対象者の双子王子と居たし、聖女の女の子に絡まれてたりと、他の貴族との交流など出来ていない。
となれば、お見舞いの品だけ送るだけは許されるが、会いに来るのは許可されないだろう。
そういうのを全て関係なく会いに来れるとしたら――――
ピコーン! とクラウディアは答えに辿り着いた!
きっと相手は“アレス・セルヴァン大公閣下”以外にないのである。
「宰相様からの先触れな気がする! アンナ、どう?」
正解を確信しているような得意げな顔をしてクラウディアはアンナに正解か問う。
アンナは得意げな顔をするクラウディアの表情が可愛いらしく感じる。
思わずニッコリすると、正解ですと告げるのだった。
脳内や、本人が居ない場所ではポロっと叔父様と言ったりしているが、
本人に言えた事はない。言ってもいいか許可を取りたいが、本人を前にすると緊張してしまって、何も言葉にする事が出来なかった。
「どうされますか?」
アンナが再度クラウディアに問う。
「お受けします! 叔父様ですからね、肉親を断るのはおかしいわ。何度かお会いした事はあるハズなのだけど、いつも始めは凄く緊張してしまうの……。
今日はお願いしたい事もあるから、頑張るわ!」
ベッドの上で上半身を起こしたまま、胸元で小さな拳を握りやる気に満ちた決意表明をする。
「では、承諾の返事を出しておきますね。」
そう言ってアンナは部屋を退室する。
それと入れ替わるように専属護衛騎士が室内に入室し、三人娘のうちの一人モニカも入室した。
アンナが居る時は、護衛もメイド仕事も全て一人でこなせるので、アンナだけの時が多い。
室内の外にて護衛したり待機したりしていた二人に、
「いつも有難う。二人とも、今日も宜しくね。」とクラウディアが声をかけた。
二人はニッコリ微笑んで会釈をすると、
「しっかりとお護りさせて頂きます」エリアスが言う。
エリアス・ラシュレーは、クラウディアの専属護衛騎士の中でも頻繁に姫様の私室の護衛の任に選ばれている。
理由は――――護衛騎士達の配置の采配やスケジュールを決めているので(最終決定権はシュヴァリエ)、アンナが良く知っている事だろう。
一番近くでクラウディアをアンナは見ているので、クラウディアの表情で全て察せられていたりする。
ヴァイデンライヒ騎士団の大勢のイケメン騎士の中でも、特にエリアスが推しである、と。
全てアンナにはバレバレなのだが、クラウディアはそんな事には気付いておらず、
「よくエリアス様が配置されてるのよね。私って運がいいわぁ」と思ってたりする。
クラウディアは今日こそはと決意していた。
「叔父様って呼んでもいいですか?」って聞くのだと。
それから一時間程して、宰相閣下の訪れをアンナが告げる。
室内に滞在して護衛したままの護衛騎士エリアスが扉に手をかけ開いた。
ドキドキしながら、宰相閣下の姿が見えるのを待つのだった。
黄金の髪色がチラリと見えた。
シュヴァリエを大人にしたらの要素が濃縮されている。
美麗な青年。
女性的にも思える程に美しい顔。
甘いマスクを厭うように付けるようになったモノクロ。
それが美しさを薄め怜悧な知的さをプラスさせていた。
「クラウディア皇女殿下、お体は大丈夫ですか?
体調を崩されてるとのお話を訊きまして、やっと陛下の不在時に溜まった仕事が一区切り付きましたので、お見舞いにと参りました。」
(シュヴァリエとは似て非なるオーラ……圧倒的な雰囲気を持つ人だ……。
毎度こうやって圧倒されちゃって緊張するのよ。うう……。)
「宰相閣下、お見舞いに来て下さって、有難う。
わ、私と宰相閣下は叔父と姪の関係です。堅苦しい会話は……あの……。」
クラウディアは緊張したらダメだと思えば思う程にどんどん頭が真っ白になっていく。
まずは、アンナにお茶を出すよう伝えて……
それと……
「そうですね、姪との会話にしては堅苦し過ぎますか。」
フフッと宰相閣下が笑う。
扉が閉まり、アレスがクラウディアの傍へと歩いて来る。
(えーっと……叔父様っていっても……って)
「叔父様って呼んでもいいですか!」
距離が近づいて慌てたクラウディアは、突然大声を出してしまった。
(あ、やっちゃった……。)
先日よりも顔色も良いようですので、そろそろ陛下以外の方の面会を受け入れてもいいかもしれませんが。」
「先触れってことは、お伺いしているって事でいいの? 会わなくてもいいし会ってもいいみたいな。」
「そうですね。皇女であれば派閥の関係性や力のある貴族等との交流も兼ねて、お会いした方がいいか、しないで大丈夫なのかを決められますが。
我が帝国は陛下の力が強いので。
数多の属国を従えられているのも陛下と宰相閣下のお力に寄るものが大きいので、
他貴族の発言力は然程大きくありません。
派閥等はありますが、宰相閣下の手のひらの上のような感じですね。
我が家もそれなりに力がありますが、私達は皇家至上主義ですので、貴族としての発言権や力などあっても、皇家の為以外にそれらを振るう事はありませんので。」
「そうなの……アンナのお家って私とお兄様と宰相様の味方なのね。」
「そうですよ。私は特に姫様の味方です。この命尽きるその瞬間まで。」
「……命は大事にしてね。ということは、誰の先触れなのかなー? あ! 誰の先触れか当ててみるから、教えたらダメよ!」
クラウディアはアンナに口止めをする。
アンナは苦笑して頷いた。
本人がどんなに元気だと言い募ろうとも、皇宮の皇女専属侍医が診察後に「快癒致しました。」と太鼓判を押そうとも、本日まではベッドの住人になるようシュヴァリエにしつこく言い聞かせられているクラウディア。
正直、全く元気なのにお見舞いに来られるのは申し訳ないのだけど。
皇女であるクラウディアを訪問出来る相手はかなり限られている。
かなりの上位貴族であっても、お披露目されていない皇女に会う事は当然許されないが、クラウディアはお披露目は済ませている。
しかし、あの時はシュヴァリエがずっと張り付いていたし、シュヴァリエが居ない時は隣国のゲームの攻略対象者の双子王子と居たし、聖女の女の子に絡まれてたりと、他の貴族との交流など出来ていない。
となれば、お見舞いの品だけ送るだけは許されるが、会いに来るのは許可されないだろう。
そういうのを全て関係なく会いに来れるとしたら――――
ピコーン! とクラウディアは答えに辿り着いた!
きっと相手は“アレス・セルヴァン大公閣下”以外にないのである。
「宰相様からの先触れな気がする! アンナ、どう?」
正解を確信しているような得意げな顔をしてクラウディアはアンナに正解か問う。
アンナは得意げな顔をするクラウディアの表情が可愛いらしく感じる。
思わずニッコリすると、正解ですと告げるのだった。
脳内や、本人が居ない場所ではポロっと叔父様と言ったりしているが、
本人に言えた事はない。言ってもいいか許可を取りたいが、本人を前にすると緊張してしまって、何も言葉にする事が出来なかった。
「どうされますか?」
アンナが再度クラウディアに問う。
「お受けします! 叔父様ですからね、肉親を断るのはおかしいわ。何度かお会いした事はあるハズなのだけど、いつも始めは凄く緊張してしまうの……。
今日はお願いしたい事もあるから、頑張るわ!」
ベッドの上で上半身を起こしたまま、胸元で小さな拳を握りやる気に満ちた決意表明をする。
「では、承諾の返事を出しておきますね。」
そう言ってアンナは部屋を退室する。
それと入れ替わるように専属護衛騎士が室内に入室し、三人娘のうちの一人モニカも入室した。
アンナが居る時は、護衛もメイド仕事も全て一人でこなせるので、アンナだけの時が多い。
室内の外にて護衛したり待機したりしていた二人に、
「いつも有難う。二人とも、今日も宜しくね。」とクラウディアが声をかけた。
二人はニッコリ微笑んで会釈をすると、
「しっかりとお護りさせて頂きます」エリアスが言う。
エリアス・ラシュレーは、クラウディアの専属護衛騎士の中でも頻繁に姫様の私室の護衛の任に選ばれている。
理由は――――護衛騎士達の配置の采配やスケジュールを決めているので(最終決定権はシュヴァリエ)、アンナが良く知っている事だろう。
一番近くでクラウディアをアンナは見ているので、クラウディアの表情で全て察せられていたりする。
ヴァイデンライヒ騎士団の大勢のイケメン騎士の中でも、特にエリアスが推しである、と。
全てアンナにはバレバレなのだが、クラウディアはそんな事には気付いておらず、
「よくエリアス様が配置されてるのよね。私って運がいいわぁ」と思ってたりする。
クラウディアは今日こそはと決意していた。
「叔父様って呼んでもいいですか?」って聞くのだと。
それから一時間程して、宰相閣下の訪れをアンナが告げる。
室内に滞在して護衛したままの護衛騎士エリアスが扉に手をかけ開いた。
ドキドキしながら、宰相閣下の姿が見えるのを待つのだった。
黄金の髪色がチラリと見えた。
シュヴァリエを大人にしたらの要素が濃縮されている。
美麗な青年。
女性的にも思える程に美しい顔。
甘いマスクを厭うように付けるようになったモノクロ。
それが美しさを薄め怜悧な知的さをプラスさせていた。
「クラウディア皇女殿下、お体は大丈夫ですか?
体調を崩されてるとのお話を訊きまして、やっと陛下の不在時に溜まった仕事が一区切り付きましたので、お見舞いにと参りました。」
(シュヴァリエとは似て非なるオーラ……圧倒的な雰囲気を持つ人だ……。
毎度こうやって圧倒されちゃって緊張するのよ。うう……。)
「宰相閣下、お見舞いに来て下さって、有難う。
わ、私と宰相閣下は叔父と姪の関係です。堅苦しい会話は……あの……。」
クラウディアは緊張したらダメだと思えば思う程にどんどん頭が真っ白になっていく。
まずは、アンナにお茶を出すよう伝えて……
それと……
「そうですね、姪との会話にしては堅苦し過ぎますか。」
フフッと宰相閣下が笑う。
扉が閉まり、アレスがクラウディアの傍へと歩いて来る。
(えーっと……叔父様っていっても……って)
「叔父様って呼んでもいいですか!」
距離が近づいて慌てたクラウディアは、突然大声を出してしまった。
(あ、やっちゃった……。)
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