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第四章 クラウディアを得んと暗躍する者達。
豪華な宿泊先。
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海の幸を食べに旅行気分………
が、現実になっている!
馬車で順調に視察先へと進みながら、馬車内の空気の入れ替えと称して時々小窓を開けていたクラウディア。
森に敷かれた綺麗に整備されている道を優雅に進むうち、懐かしい潮の匂いを感じていた。それは段々としっかりと香ってきて―――
「美味しい! 」
カルパッチョというものだろうか、オリーブオイルと細かく砕いた岩塩に生魚の切り身が美しく装飾された皿に綺麗に盛り付けてある。
その切り身を一切れ口にした瞬間思わず大きな声が出てしまったクラウディアである。
クラウディアと対面する形でテーブルに座っていたシュヴァリエは、クラウディアを眺め満足そうに微笑む。
「そうか、気に入ったか?」
シュヴァリエに問われ、口に入れたものを咀嚼しながらコクコクと頷く。
大きな瞳は蕩けうっとりとしている。
「……俺のも食べるか?」
「…絶対お兄様にも食べて欲しいのでいらないです! 美味しいものを独占するのも好きですけど、お兄様と美味しいものを美味しいねって分け合う方はもっと好きですから」
咀嚼したのをごくんと飲み込んだ後、テーブルに置いてある果実水のグラスを持ち上げ一口飲むと、クラウディアはキリッとした顔で話す。
「……そうか。では、頂こう」
「ええ、是非! 驚く程に美味しいですよ!」
満面の笑みで勧められ、生魚を食した事のなかったシュヴァリエは恐る恐る一切れ口に入れた。
ゆっくりと咀嚼し嚥下する。
どの所作ひとつとってもクラウディアとは次元の違う優雅さが漂う。
(同じヒト科な筈なのにどうしてこう違うのかしら)
厳しいマナー講師にビシバシ教育され、クラウディアも所作に自信を付けてきた所ではあるが、シュヴァリエは年季が違うからか分からないが、食事をする姿に思わず見惚れてしまう程に指の先まで美しい。
容姿が人外めいて美しいからかなー? 天使様だもんね。
などとクラウディアが考えていると、
「本当だな、驚く程にうまい。生魚はとろけるように柔らかいな」
「油と塩でしか味付けしていないのに、それだけでこれ程美味しいんですから凄いですよね」
クラウディアの話に頷き耳を傾けながら、ひとつまたひとつと口に入れていくシュヴァリエ。
シュヴァリエの皿に乗せてあったカルパッチョは綺麗に完食された。
カルパッチョの無くなった皿を寂しそうに見ている気がして、クラウディアは最後の一切れをシュヴァリエにアーンしてあげたのだった。
「最後に食べた生魚が一番うまかったな」
と笑顔でシュヴァリエが口にしたのは言うまでもない。
大貴族御用達の宿の部屋は皇宮には及ばないものの、たいへん豪華だ。
前世でネズミの国が大好きだったクラウディアは、某姫のお城に似たこの宿にときめきが止まらない。
美しい布が天井からいくつも垂れ下がる天蓋ベッドや、艶々と輝く白い浴槽の足が金色の猫足である事や、置かれている小物が青と白である事も甘すぎないで好ましい。
「ふぅ…いいお湯だった……」
アンナにお風呂上りのお手入れをして貰いながら、クラウディアはうっとりと満足の吐息を零す。
艶やかな髪から丁寧に水気をふき取った後は、クラウディア専用に配合した特別なオイルを万遍なく髪に塗り込み、クラウディアが作成してアンナに教えた火と風の混合魔法で髪を乾かす。
「ようございました」
アンナが嬉しそうに微笑んだ。
「アンナも入ってきてもいいよ? アンナの部屋に浴室ってある?」
「私の部屋は姫様の横にある護衛騎士用の部屋になりますので…お風呂は無いかと思われます、ただ一階に大きな浴場があるらしく―――」
「えっ、大きな浴場があるの「姫様は絶対に入る事は出来ません。貸切…ならいけますが陛下が許可されないかと」」
(ですよねー…皇女に入られちゃ護衛が大変だしな。貸切なんて他に入りたい人に迷惑しかかけないよ。諦めよう)
凄く楽しそうではあるし、興味津々だが周囲に無茶を敷いてまで叶えたい事でもない。我儘は極力言わないクラウディアである。
「じゃあアンナはこの部屋のお風呂堪能したらいいよ。ゆっくり入ってきて大丈夫だから」
「いえ、皇女様である姫様の部屋で入浴など……」
「その皇女がいいっていってるんだから、入ってきて!凄くいいお湯だったよ!
ここら辺の水質がいいのかもねぇ」
何やらブツブツいっているが、アンナが断っても一切引く事がなさそうである。
「……では、お言葉に甘えまして……頼んだ」
クラウディアの提案を受け入れ、アンナが頷いた事に喜ぶクラウディアの耳にはアンナの囁く声は聴こえなかった。
アンナが入浴するという事は、クラウディアの警護に隙が出来るということ。
付けていた影を二倍にして、アンナが入浴をささっと終えるまで配置させたのだった。
イレギュラーな影増員…姫様の提案…これはもしや…もしかしたらご褒美が…!? と影達は色めきたち警護にも常にない力が入ったが、残念な事に今回の件ではご褒美はアンナから差し出される事はなかったという。
が、現実になっている!
馬車で順調に視察先へと進みながら、馬車内の空気の入れ替えと称して時々小窓を開けていたクラウディア。
森に敷かれた綺麗に整備されている道を優雅に進むうち、懐かしい潮の匂いを感じていた。それは段々としっかりと香ってきて―――
「美味しい! 」
カルパッチョというものだろうか、オリーブオイルと細かく砕いた岩塩に生魚の切り身が美しく装飾された皿に綺麗に盛り付けてある。
その切り身を一切れ口にした瞬間思わず大きな声が出てしまったクラウディアである。
クラウディアと対面する形でテーブルに座っていたシュヴァリエは、クラウディアを眺め満足そうに微笑む。
「そうか、気に入ったか?」
シュヴァリエに問われ、口に入れたものを咀嚼しながらコクコクと頷く。
大きな瞳は蕩けうっとりとしている。
「……俺のも食べるか?」
「…絶対お兄様にも食べて欲しいのでいらないです! 美味しいものを独占するのも好きですけど、お兄様と美味しいものを美味しいねって分け合う方はもっと好きですから」
咀嚼したのをごくんと飲み込んだ後、テーブルに置いてある果実水のグラスを持ち上げ一口飲むと、クラウディアはキリッとした顔で話す。
「……そうか。では、頂こう」
「ええ、是非! 驚く程に美味しいですよ!」
満面の笑みで勧められ、生魚を食した事のなかったシュヴァリエは恐る恐る一切れ口に入れた。
ゆっくりと咀嚼し嚥下する。
どの所作ひとつとってもクラウディアとは次元の違う優雅さが漂う。
(同じヒト科な筈なのにどうしてこう違うのかしら)
厳しいマナー講師にビシバシ教育され、クラウディアも所作に自信を付けてきた所ではあるが、シュヴァリエは年季が違うからか分からないが、食事をする姿に思わず見惚れてしまう程に指の先まで美しい。
容姿が人外めいて美しいからかなー? 天使様だもんね。
などとクラウディアが考えていると、
「本当だな、驚く程にうまい。生魚はとろけるように柔らかいな」
「油と塩でしか味付けしていないのに、それだけでこれ程美味しいんですから凄いですよね」
クラウディアの話に頷き耳を傾けながら、ひとつまたひとつと口に入れていくシュヴァリエ。
シュヴァリエの皿に乗せてあったカルパッチョは綺麗に完食された。
カルパッチョの無くなった皿を寂しそうに見ている気がして、クラウディアは最後の一切れをシュヴァリエにアーンしてあげたのだった。
「最後に食べた生魚が一番うまかったな」
と笑顔でシュヴァリエが口にしたのは言うまでもない。
大貴族御用達の宿の部屋は皇宮には及ばないものの、たいへん豪華だ。
前世でネズミの国が大好きだったクラウディアは、某姫のお城に似たこの宿にときめきが止まらない。
美しい布が天井からいくつも垂れ下がる天蓋ベッドや、艶々と輝く白い浴槽の足が金色の猫足である事や、置かれている小物が青と白である事も甘すぎないで好ましい。
「ふぅ…いいお湯だった……」
アンナにお風呂上りのお手入れをして貰いながら、クラウディアはうっとりと満足の吐息を零す。
艶やかな髪から丁寧に水気をふき取った後は、クラウディア専用に配合した特別なオイルを万遍なく髪に塗り込み、クラウディアが作成してアンナに教えた火と風の混合魔法で髪を乾かす。
「ようございました」
アンナが嬉しそうに微笑んだ。
「アンナも入ってきてもいいよ? アンナの部屋に浴室ってある?」
「私の部屋は姫様の横にある護衛騎士用の部屋になりますので…お風呂は無いかと思われます、ただ一階に大きな浴場があるらしく―――」
「えっ、大きな浴場があるの「姫様は絶対に入る事は出来ません。貸切…ならいけますが陛下が許可されないかと」」
(ですよねー…皇女に入られちゃ護衛が大変だしな。貸切なんて他に入りたい人に迷惑しかかけないよ。諦めよう)
凄く楽しそうではあるし、興味津々だが周囲に無茶を敷いてまで叶えたい事でもない。我儘は極力言わないクラウディアである。
「じゃあアンナはこの部屋のお風呂堪能したらいいよ。ゆっくり入ってきて大丈夫だから」
「いえ、皇女様である姫様の部屋で入浴など……」
「その皇女がいいっていってるんだから、入ってきて!凄くいいお湯だったよ!
ここら辺の水質がいいのかもねぇ」
何やらブツブツいっているが、アンナが断っても一切引く事がなさそうである。
「……では、お言葉に甘えまして……頼んだ」
クラウディアの提案を受け入れ、アンナが頷いた事に喜ぶクラウディアの耳にはアンナの囁く声は聴こえなかった。
アンナが入浴するという事は、クラウディアの警護に隙が出来るということ。
付けていた影を二倍にして、アンナが入浴をささっと終えるまで配置させたのだった。
イレギュラーな影増員…姫様の提案…これはもしや…もしかしたらご褒美が…!? と影達は色めきたち警護にも常にない力が入ったが、残念な事に今回の件ではご褒美はアンナから差し出される事はなかったという。
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