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第四章 クラウディアを得んと暗躍する者達。

出発。

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 皇帝自らが出向く視察という事もあり、ただの視察でも出発するだけでも仰々しい。

 愛馬に私を乗せて駆けたかったシュヴァリエは、アンナとマルセルさんに「陛下と一緒にしないで下さい!姫様は人間ですから!」と一歩間違えたら不敬としか思えない窘め方をされて、かなり渋々馬車に乗り込む事を了承したらしい。

「視察程度で盛大に送り出すな。まだ視察先はいくらでもあるのだぞ、その度に仰々しく送られては堪らない。」
 とのことで…。それには私も同意しかないけれども。

 ―――それでもヴァイデンライヒ騎士団総出で見送られたわけですが。
 護衛を任される部隊がいるのは当然の事として、それ以外の者達も出てきた事にシュヴァリエは面倒そうな顔をしていたが、内心は嬉しく思っていたのかもしれない。シュヴァリエは騎士団の人達には気易い。
 皇帝ではあるけれど偉ぶってないというか、皇帝の覇気が無いというと失礼かもしれないが、いたって普通だ。
 苦楽を共にし、戦という血生臭い命のやり取りがある運命を共に経験した者同士に生まれる絆みたいなものなのかな。
 そういうものを経験した事がないから、あくまで想像でしかないけれど。

 私からすればイケメン、美丈夫、イケオジという、眼福な面々に見送られるのは最高だ。
 この世界に転生して一番何が幸せかって、毎日イケメンを拝める事が出来る事だと思っている。割と真剣に。


「どうした? 乗るぞ」
 イケメン観察に忙しかった私をシュヴァリエが訝しげな表情をしながら見ていた。

(あ、ヨダレ出てたかな。気を引き締めないと口元が緩々だわ…)

 エスコートするようにスッと伸ばされたシュヴァリエの掌にそっと手をのせる。
 乗せた手を軽く包み込むように握られた。

 馬車まで移動しながら、横を歩くシュヴァリエをチラリと見遣った。
 今日のシュヴァリエの装いは、前世の軍服を更に華美にしたような服でクラウディアの好みど真ん中である。
 シュヴァリエは美しさも麗しさもずば抜けている為、軍服姿であっても天使のような美貌の王子様っぽく見える。
 私がそっと手をのせた瞬間に、少し口元が上がるとこがまた悪そうな感じでカッコイイ。

 ポーっとしてしまったクラウディアはさっさと誘導され、殆ど揺れない馬車に二人で対面するように乗り込み出発した。


 一緒に馬車に乗ると思ってたアンナは、女性騎士用の騎士服を着用して凛々しい姿で馬車の横を騎士達と共に馬で併走していた。

 馬車の小窓からその姿をしばらく見つめていると、アンナが視線だけチラリとこちらに向けてくる。
 私と目が合い優しく微笑んでくれるアンナ。
 その姿になんだかホッとして、微笑み返す。
 いつの間にか力んでいたみたいだ。
 体の力を抜いて座席の背もたれに体を預けるとシュヴァリエが見ていた。

「海の幸を食べに行くくらいの気楽な気持ちで行け。視察の難しい所はすべて俺が引き受ける。お前は小旅行に行くようなものだ」
「少しはお仕事させて下さい。せっかくの視察なのですから」
「お前の仕事は余計な事をせずおとなしくしている事だからな」
「…そんなに頼りないですか?」
「お前の事が心配なんだよ。
 ―――詳しくは今は話せないが、時期が来たらクラウディアに全て話す。
 今は不安で心配でまともに仕事が出来なくなりそうな俺の気持ちを守るのが仕事だと思ってくれ。害虫駆除が進んだらもっと色々手伝って貰うから。いいな?」
「はい。(害虫駆除…?)」

 何かヤバイことが起こってるのだろうか。
 馬車を囲むようにぐるりと並ぶ騎士達を見て思う。
 シュヴァリエは最強である。
 最強な人間を護衛するにしては多い人数だ。
 皇帝が移動してますよ!的なパフォーマンスが入ってると思ってたけど…
 そうじゃなかったら?

 ――この物々しい人数がシュヴァリエと私の護衛ではなく、ただ私を守るためだけに配置された人数だったり…?

 私専属の護衛騎士達は居るというのに、さらに数を増やす理由は…
 かなりヤバイことに私が巻き込まれそうになってるって事なのだろうか…

 …まさかね?

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