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第二章 皇帝はシスターコンプレックス。
ゲームとキャラ違くないですか?
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「……大丈夫なのか?」
シュヴァリエの心配気な声が聞こえた。
突き上げた拳を下ろし、ガクンと膝をついて蹲っていた私。
真下にブラックホールでも出現して、私を呑み込んでくれませんか。
「………。」
――――心配するくらいなら退室して欲しい。出来るなら記憶も失って欲しい。
無言の私に更にシュヴァリエは言い募る。
「えー…っと、俺は、何も見てないから。安心しろ。」
蹲り隠していた火照った顔をバッと勢い良く出してシュヴァリエを見る。
「はぃ…?」
「いや、だから、俺は、何も、見て、いない。」
いや区切らなくても分かります。
「見てたよね…?バッチリ。目合ったもん。間違いなく見てた!」
うぅ、メンタルごりごりやられる。
「…いや、アレは…一瞬だけ見えた。」
「いいです、もう。忘れて下さい!!記憶を司る大脳から綺麗に抹消して下さい!」
「だいのう…?なんだソレは。」
訝しげな顔つきのシュヴァリエ。
口にはしないが、拳は突き上げるわ、よく分からない言葉を話すわ「こいつ大丈夫か?」と顔に書いてある。
「昨夜、またお前は倒れたんだ。あまり興奮しない方がいいぞ。まだ寝ておけ。」
「もう一回失神したい気分です。」
「拳突き上げるくらい元気なのは分かるが、まだ熱があるだろう?奇行も出ている。」
ハァ!?
ぐわっと目を剥いてシュヴァリエを凝視した。
それ恥ずかしさからですから!
私を変人扱いしないでよね、こちとら5才児だぞ。
5才児は奇行をする年じゃない?
意味もなく急に踊りだしたりしてたよ、幼稚園児って。
ぼーっと考えてたら、またクラクラして来たので、癪だけどベッドに横になる。
「お前、病弱みたいだな。すぐ死にそうだ。」
「まだ5才ですからね。体調崩しやすいみたいです。わたくし」
「そうか。内包している魔力量が大き過ぎて、器である身体の生命力に干渉してるかもしれないのか。」
「魔力量が多いと体が弱くなるのですか?」
「理論上はそうなる。魔力は血液の様に体を巡っている、
体が小さい子供はそれを支える器がまだ脆い。
器以上の莫大な魔力を抑えきれなければ、魔力暴走を起こし、器が破壊される。
器が破壊されるという事は肉体の死だ。
常に零れ落ちそうな魔力を支える器は維持するだけでも体力の消耗が激しくなる。
幼い体はそれに耐えれず虚弱になる……という仕組みだ。」
真面目な話をしている時の表情のシュヴァリエって、やっぱりシュヴァリエだわ。
白金の髪、切れ長の目、髪色と同じ長い睫毛、スッと通った鼻筋、薄い唇。
ゲームのシュヴァリエを二次元にしたら、そっくりこのままだと思った。
けど、髪色も含めて全体的に色素が薄い冷たい美貌でも、9才だからかどこかあどけなさがあって…
――――天使。これに尽きる。
私の邪な眼差しから何か伝わるものがあるのか、シュヴァリエの目付きが悪くなる。
「……おい、お前真面目に聞いてたか?お前にとって大事な事だってわかってるか?」
ムスッとされてしまった。
「…すみません。5才児の私には難しくて。理解するのに必死でした。」
分かりやすい説明のお陰で、何とか理解は出来たけど、話してる相手の顔に見惚れていたとは言えない。
そういえば、アンナ何処行ったんだろう。
今は何時なのだろうか。
「そういえばアンナは……?」
「お前を心配してずっと眠らず一日中傍に居た。他の人間が替わると言っても聞かないから、
強制的に寝させて連れて行かせた。
眠らせた俺が責任を取って、代わりにここでお前を見ていた。」
アンナ……心配かけてばっかりだ。
後で謝らないと。
アンナを思い出しクラウディアはシュンとなる。
「そう気に病むな。5才児なんだろう?お前が気にするのは自分の体の事だけにしろ。」
5才児って所をやけに強調してくるな…
疑われてるとは思わないけど、何かを察してるのかもしれない。
気をつけよ…
沈む気持ちで目を伏せたままのクラウディア。
「はーい…」
「と、この話が終わったところで…」
体をベッドに横たえながら視線だけシュヴァリエに向けた。
「俺は次期皇帝“シュヴァリエ・ヴァイデンライヒ”、そしてお前の兄だ。
お前は変態だと叫んで暴れたが、変態ではない。」
(変態は自分で変態だとは言わない気もするけど…黙っておこう)
「あと5日後には俺は十の齢を迎える。そこから一週間後戴冠式だ。お前はまだお披露目をしていない。
だから、戴冠式には参加する事は出来ない。
だが、こっそり覗くくらいなら…んんっ…変装なりして端から見るだけなら許可する。
勿論、護衛で固めるがな。」
ポカーーン
脳が停止した様にシュヴァリエを見つめる事しか出来ない。
「フハッ、お前、その顔…くくっ」
笑い声を堪える様に口に当て、それでも堪えきれず目を細めて微笑った――――
――――えっ、あの冷徹皇帝のシュヴァリエが!?
9才の時のシュヴァリエってこんな感じなの?
ゲームでのキャラと違いすぎる。
唖然としながら見つめ続けた。
「アンナが言っていた。お前が俺に会いたがって居たと。戴冠式を見たがっていたと。
それを叶えてやろうというだけで、何をそんなに驚く。」
「アンナが……。ありがとうございます…?」
「だから、早く良くなれ。皆が心配する。」
先程の笑いを目元に残したまま、優しい声で話しかけられる。
その顔と声にまた衝撃を受けて固まる。
シュヴァリエがソファから立ち上がり、クラウディアのベッドのすぐ傍まで来る。
そのまま手を伸ばし、クラウディアの額に掛かる髪を指先で横に流す。
その指先はそのまま瞼までなぞり………
――――えっコレってまた例のアレじゃ!?もしかしてアンナにもしたの!?
「 rest in peace 」
――――やっぱりね!!
私の意識は深い眠りに引きずり込まれた。
シュヴァリエの心配気な声が聞こえた。
突き上げた拳を下ろし、ガクンと膝をついて蹲っていた私。
真下にブラックホールでも出現して、私を呑み込んでくれませんか。
「………。」
――――心配するくらいなら退室して欲しい。出来るなら記憶も失って欲しい。
無言の私に更にシュヴァリエは言い募る。
「えー…っと、俺は、何も見てないから。安心しろ。」
蹲り隠していた火照った顔をバッと勢い良く出してシュヴァリエを見る。
「はぃ…?」
「いや、だから、俺は、何も、見て、いない。」
いや区切らなくても分かります。
「見てたよね…?バッチリ。目合ったもん。間違いなく見てた!」
うぅ、メンタルごりごりやられる。
「…いや、アレは…一瞬だけ見えた。」
「いいです、もう。忘れて下さい!!記憶を司る大脳から綺麗に抹消して下さい!」
「だいのう…?なんだソレは。」
訝しげな顔つきのシュヴァリエ。
口にはしないが、拳は突き上げるわ、よく分からない言葉を話すわ「こいつ大丈夫か?」と顔に書いてある。
「昨夜、またお前は倒れたんだ。あまり興奮しない方がいいぞ。まだ寝ておけ。」
「もう一回失神したい気分です。」
「拳突き上げるくらい元気なのは分かるが、まだ熱があるだろう?奇行も出ている。」
ハァ!?
ぐわっと目を剥いてシュヴァリエを凝視した。
それ恥ずかしさからですから!
私を変人扱いしないでよね、こちとら5才児だぞ。
5才児は奇行をする年じゃない?
意味もなく急に踊りだしたりしてたよ、幼稚園児って。
ぼーっと考えてたら、またクラクラして来たので、癪だけどベッドに横になる。
「お前、病弱みたいだな。すぐ死にそうだ。」
「まだ5才ですからね。体調崩しやすいみたいです。わたくし」
「そうか。内包している魔力量が大き過ぎて、器である身体の生命力に干渉してるかもしれないのか。」
「魔力量が多いと体が弱くなるのですか?」
「理論上はそうなる。魔力は血液の様に体を巡っている、
体が小さい子供はそれを支える器がまだ脆い。
器以上の莫大な魔力を抑えきれなければ、魔力暴走を起こし、器が破壊される。
器が破壊されるという事は肉体の死だ。
常に零れ落ちそうな魔力を支える器は維持するだけでも体力の消耗が激しくなる。
幼い体はそれに耐えれず虚弱になる……という仕組みだ。」
真面目な話をしている時の表情のシュヴァリエって、やっぱりシュヴァリエだわ。
白金の髪、切れ長の目、髪色と同じ長い睫毛、スッと通った鼻筋、薄い唇。
ゲームのシュヴァリエを二次元にしたら、そっくりこのままだと思った。
けど、髪色も含めて全体的に色素が薄い冷たい美貌でも、9才だからかどこかあどけなさがあって…
――――天使。これに尽きる。
私の邪な眼差しから何か伝わるものがあるのか、シュヴァリエの目付きが悪くなる。
「……おい、お前真面目に聞いてたか?お前にとって大事な事だってわかってるか?」
ムスッとされてしまった。
「…すみません。5才児の私には難しくて。理解するのに必死でした。」
分かりやすい説明のお陰で、何とか理解は出来たけど、話してる相手の顔に見惚れていたとは言えない。
そういえば、アンナ何処行ったんだろう。
今は何時なのだろうか。
「そういえばアンナは……?」
「お前を心配してずっと眠らず一日中傍に居た。他の人間が替わると言っても聞かないから、
強制的に寝させて連れて行かせた。
眠らせた俺が責任を取って、代わりにここでお前を見ていた。」
アンナ……心配かけてばっかりだ。
後で謝らないと。
アンナを思い出しクラウディアはシュンとなる。
「そう気に病むな。5才児なんだろう?お前が気にするのは自分の体の事だけにしろ。」
5才児って所をやけに強調してくるな…
疑われてるとは思わないけど、何かを察してるのかもしれない。
気をつけよ…
沈む気持ちで目を伏せたままのクラウディア。
「はーい…」
「と、この話が終わったところで…」
体をベッドに横たえながら視線だけシュヴァリエに向けた。
「俺は次期皇帝“シュヴァリエ・ヴァイデンライヒ”、そしてお前の兄だ。
お前は変態だと叫んで暴れたが、変態ではない。」
(変態は自分で変態だとは言わない気もするけど…黙っておこう)
「あと5日後には俺は十の齢を迎える。そこから一週間後戴冠式だ。お前はまだお披露目をしていない。
だから、戴冠式には参加する事は出来ない。
だが、こっそり覗くくらいなら…んんっ…変装なりして端から見るだけなら許可する。
勿論、護衛で固めるがな。」
ポカーーン
脳が停止した様にシュヴァリエを見つめる事しか出来ない。
「フハッ、お前、その顔…くくっ」
笑い声を堪える様に口に当て、それでも堪えきれず目を細めて微笑った――――
――――えっ、あの冷徹皇帝のシュヴァリエが!?
9才の時のシュヴァリエってこんな感じなの?
ゲームでのキャラと違いすぎる。
唖然としながら見つめ続けた。
「アンナが言っていた。お前が俺に会いたがって居たと。戴冠式を見たがっていたと。
それを叶えてやろうというだけで、何をそんなに驚く。」
「アンナが……。ありがとうございます…?」
「だから、早く良くなれ。皆が心配する。」
先程の笑いを目元に残したまま、優しい声で話しかけられる。
その顔と声にまた衝撃を受けて固まる。
シュヴァリエがソファから立ち上がり、クラウディアのベッドのすぐ傍まで来る。
そのまま手を伸ばし、クラウディアの額に掛かる髪を指先で横に流す。
その指先はそのまま瞼までなぞり………
――――えっコレってまた例のアレじゃ!?もしかしてアンナにもしたの!?
「 rest in peace 」
――――やっぱりね!!
私の意識は深い眠りに引きずり込まれた。
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