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第一章 転生しました。
レスト・イン・ピース。
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薄暗い室内の中、私の眠るベッドを見下ろす様に立つ誰かが居た。
物の輪郭が分かる程度の明るさの室内は、窓からほんのり入る月明かりを背に、真っ黒い塊の様に見えた。
やがて暗闇に目が慣れ、何となく顔っぽい位置が分かる。
異様な空気の中、その両眼が爛々として、ベッドで固まる私を見つめている事も。
コクリ……と喉が鳴ってしまった。
肉食獣に出遭った、草食動物の気持ちが痛い程わかる。
この黒い塊は暗殺者とかじゃないのだろうか……殺されるというには、刺す様な殺気は感じない。
(こんなに時間はかけないよね?暗殺者の類なら。大声出される可能性もあるし。)
……今の様に見つめ合ったりはしない筈だと思う。
相手が何もアクションをして来ない為、考える時間はたっぷりあった。
(……暗殺者?幽霊?悪魔的な類なの?それとも、魔法もある世界だから、まさか精霊とか!?)
どよーんとなったり、びくびくしたり、パッと顔を輝かせてみたり…と、考える内容の順番に合わせて、百面相の様に表情がコロコロ変わる。
思考に耽るその間さえ黒い塊から見える両眼は一度足りとも逸らされない。
私も怖すぎて逸らせない。
少しでも逸せば、喉元を噛まれそうな気さえした。
気不味い時間が流れる……。
それにしてもさ…
……ねぇ、こんな見つめ合ったりしなくない?
「「・・・・・・」」
お互いにどれくらい見つめ合い固まっていたのか。
何もかも見抜こうとする様にジッと見つめられている。
「誰なの……?」と尋ねようとしてやめる。
何故かわからないけど、刺激してはいけない気がした。
森の中でクマに出遭ったら目を逸らさず後ろ向きに去っていくって言われたよね?
目を逸らさずにそっとベッドから降りて、後ろ向きに去っていけばおとなしいかも?
もう人食いクマと一緒に列である。
それから更に暗闇に目が慣れてくると、真っ黒いのはそんなに大きくないと分かった。
大人というより、むしろ子供だよね……?
最初は得体の知れない塊に思えたけど、目が慣れてきた今なら分かる。人間だ。
髪色は明るい感じ。
色までは分からないけれど、茶色とかの暗い色だったら黒色に見えるはずだから、金髪とかそんな感じの色かもしれない。
身体の大きさは中学生くらい?の男の子、多分。
正面から判断出来るのはこのくらい。
見つめ合い真っ最中だというのに冷静に分析中。
相手、シルエットからして少年だし。
長い時間見るだけで何もして来ない事に安心して、段々と警戒心が薄れてくる。
まして中身が女子大生の私からしたら、可愛い男の子だ。
恐れるに足らずだわ!オーッホッホと脳内で悪役令嬢笑いを想像してしまい1人でニヤリとした。
それにしても、何も言わないよね、この子。
私からは話しかけにくい。
恐らく間抜けな寝顔も見られちゃったよね。
何の用かくらい自分から言いなさいよねー。
半目になってしまったに違いない。
分析しながらも目を逸らさず、むしろ少しずつふてぶてしい態度で見つめ続けていると、ふいにその子が腕をあげ私に手を伸ばしてきた。
やっぱり暗殺稼業の御方!?
私、ほっとかれてる姫だよ?殺す価値あるの!?
伸ばされた手はそのまま私の顔に触れた。そして私の目を掌で覆う。
ビクゥッと肩が恐怖で跳ねた。
触れられた瞼に置かれた手をどかす事も出来ない。
意味が分からず固まり続ける私。
ふと何かを小声でぶつぶつ呟く声が聞こえた。
「…rest in peace…」
最後に聞こえたのは英語の発音だった。
rest in peace…って、それ…っ…て…
意味を考える間もなく急激に睡魔が襲ってきて、真っ暗な闇に包まれた。
物の輪郭が分かる程度の明るさの室内は、窓からほんのり入る月明かりを背に、真っ黒い塊の様に見えた。
やがて暗闇に目が慣れ、何となく顔っぽい位置が分かる。
異様な空気の中、その両眼が爛々として、ベッドで固まる私を見つめている事も。
コクリ……と喉が鳴ってしまった。
肉食獣に出遭った、草食動物の気持ちが痛い程わかる。
この黒い塊は暗殺者とかじゃないのだろうか……殺されるというには、刺す様な殺気は感じない。
(こんなに時間はかけないよね?暗殺者の類なら。大声出される可能性もあるし。)
……今の様に見つめ合ったりはしない筈だと思う。
相手が何もアクションをして来ない為、考える時間はたっぷりあった。
(……暗殺者?幽霊?悪魔的な類なの?それとも、魔法もある世界だから、まさか精霊とか!?)
どよーんとなったり、びくびくしたり、パッと顔を輝かせてみたり…と、考える内容の順番に合わせて、百面相の様に表情がコロコロ変わる。
思考に耽るその間さえ黒い塊から見える両眼は一度足りとも逸らされない。
私も怖すぎて逸らせない。
少しでも逸せば、喉元を噛まれそうな気さえした。
気不味い時間が流れる……。
それにしてもさ…
……ねぇ、こんな見つめ合ったりしなくない?
「「・・・・・・」」
お互いにどれくらい見つめ合い固まっていたのか。
何もかも見抜こうとする様にジッと見つめられている。
「誰なの……?」と尋ねようとしてやめる。
何故かわからないけど、刺激してはいけない気がした。
森の中でクマに出遭ったら目を逸らさず後ろ向きに去っていくって言われたよね?
目を逸らさずにそっとベッドから降りて、後ろ向きに去っていけばおとなしいかも?
もう人食いクマと一緒に列である。
それから更に暗闇に目が慣れてくると、真っ黒いのはそんなに大きくないと分かった。
大人というより、むしろ子供だよね……?
最初は得体の知れない塊に思えたけど、目が慣れてきた今なら分かる。人間だ。
髪色は明るい感じ。
色までは分からないけれど、茶色とかの暗い色だったら黒色に見えるはずだから、金髪とかそんな感じの色かもしれない。
身体の大きさは中学生くらい?の男の子、多分。
正面から判断出来るのはこのくらい。
見つめ合い真っ最中だというのに冷静に分析中。
相手、シルエットからして少年だし。
長い時間見るだけで何もして来ない事に安心して、段々と警戒心が薄れてくる。
まして中身が女子大生の私からしたら、可愛い男の子だ。
恐れるに足らずだわ!オーッホッホと脳内で悪役令嬢笑いを想像してしまい1人でニヤリとした。
それにしても、何も言わないよね、この子。
私からは話しかけにくい。
恐らく間抜けな寝顔も見られちゃったよね。
何の用かくらい自分から言いなさいよねー。
半目になってしまったに違いない。
分析しながらも目を逸らさず、むしろ少しずつふてぶてしい態度で見つめ続けていると、ふいにその子が腕をあげ私に手を伸ばしてきた。
やっぱり暗殺稼業の御方!?
私、ほっとかれてる姫だよ?殺す価値あるの!?
伸ばされた手はそのまま私の顔に触れた。そして私の目を掌で覆う。
ビクゥッと肩が恐怖で跳ねた。
触れられた瞼に置かれた手をどかす事も出来ない。
意味が分からず固まり続ける私。
ふと何かを小声でぶつぶつ呟く声が聞こえた。
「…rest in peace…」
最後に聞こえたのは英語の発音だった。
rest in peace…って、それ…っ…て…
意味を考える間もなく急激に睡魔が襲ってきて、真っ暗な闇に包まれた。
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