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10話
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婚約式は盛大に行われた。
国内外に知らしめるが如く盛大に。
いつ作成されていたのか不思議だったが、アルベルティーナのドレスの色はライネリオ皇子の瞳の色だった。
黄金色に艷やかに輝くドレスを纏うアルベルティーナは殊の外美しい。
隣で寄り添い立つライネリオ皇子の衣装の差し色は銀である。
胸ポケットに差してあるスカーフはロイヤルパープルであり、これもアルベルティーナを思わせた。
他国の王子と婚約していたが解消との噂が出始めたばかりですぐに電光石火の婚約式。
様々な憶測を呼んだのだが、婚約式に参加した者達は「相思相愛の二人だった」と口々に話した。
ファーストダンスを見事に踊り終えた後、他の誰とも踊らずに仲睦まじく談笑する姿は、
この国の未来は明るいと思わせる。
半年後に婚姻式を迎える事も発表され、その期間の短さに会場は驚きに包まれる。
しかし、王女を見つめる皇子の熱い眼差しを見て「皇子が待てないのだろう」と微笑ましく結論づけられた。
婚約式の翌日からライネリオ皇子の猛攻が始まった。
早朝に届けられる一輪の花。
茎部分に金色のリボンが結ばれた、ベゴニアが最初に届けられる。
花と共に白地に金色で装飾が施されたカードも渡される。
「どうか私の思いが貴方に届きますように。」
と恥ずかしくなるような甘い台詞が書いてある。
アルベルティーナ付きの侍女が「ベゴニアの花言葉は“愛の告白・片思い”です。と教えてくれた。
ルシアノ王子の時は一度もこういう事をされた事が無く、耐性もないアルベルティーナは頬を染めた。
その日の午後に共に時間を過ごした二人。
「花は気に入って頂けましたか?」
甘い笑みをアルベルティーナに向けるライネリオ皇子。
「ええ…あ、有難うございます。」
花を気に入ってくれた事が、己の気持ちも受け入れて貰えたように感じて、ライネリオは幸せそうにまた微笑んだ。
「明日の朝も贈ります。楽しみにしていて下さいね。」
「はい…」
初々しい態度のアルベルティーナから片時も目を離さず、甘い空気が場に漂う。
(何なの……凄い心臓が煩い。)
アルベルティーナは切ない吐息をつく。
子供の頃の思い出や、今興味のある事など、他愛もない雑談だというのに、時間を忘れて夢中で話した。
二時間程してお開きになったが、去り際に皇子が
「明日は朝食後、一緒に庭園を散策しませんか?朝露がまだ残る花はとても綺麗でしたよ。」と言われて約束したのだが、
自分でもちょろいと思うが、とても楽しみになってしまった。
翌日の朝に届けられた花は、赤いゼラニウム。
独特の香りがするが、アルベルティーナは好きな香りだった。
花の香りを嗅ぐと心が穏やかになる。
昨日の侍女が笑顔で告げる「赤いゼラニウムの花言葉は“君ありて幸福”ですよ。」と。
お茶の時間のライネリオ皇子の甘い笑みが浮かび、生まれて初めて胸がキュンっと鳴った気がした。
朝食後、ライネリオ皇子と共に庭園を散策する。
目元を赤く染めたライネリオ皇子が「手を繋いでもいいですか?」と恥ずかしそうに言うものだから、
アルベルティーナまで恥ずかしくて頬を染めてしまった。
差し出された手に震えてしまった手をそっと置くと、優しい力で手を握られた。
庭園に咲く花々よりライネリオ皇子が気になってしまい花を眺める余裕がなくなってしまう。
(私…ライネリオ皇子を好ましく思い始めてるのね)
アルベルティーナは不思議な気持ちになる。
今までにない気持ちに足取りがフワフワとする。
これは恋の始まり…なのだろうか。
「明日の朝も貴方に花を贈ります。」
囁くように話され、手の甲に触れるだけのキスを贈られる。
頭が沸騰するような熱と甘い痺れが体を駆け抜けた。
そして翌日、マリーゴールドの花が一輪贈られる。
花言葉は“変わらぬ愛”
連日のように贈られる花に、侍女も心得たように花言葉を教えてくれた。
「皇子様は姫様の事をとても愛されているのですね。」
侍女の言葉が耳に心地よく響く。
「王族なら当然の事だけれど、政略なのよ私達。」
薄っすらと頬を染めながら話すアルベルティーナに侍女は笑顔で諭す。
「姫様、政略結婚だからと愛が生まれない訳はないですよ。皇子は姫様に夢中ではないですか。
あの熱い眼差しを一目見れば誤解しようもありません。
愛されておいでですよ、姫様は。」
その日はライネリオ皇子との約束もなく、両親も居る中で共にする夜の晩餐までライネリオ皇子とは逢えなかった。
連日会っていた二人。
今日はたまたま約束しておらず、ただライネリオ皇子に少しの間逢えないだけだというのに、とても寂しく感じたのだった。
国内外に知らしめるが如く盛大に。
いつ作成されていたのか不思議だったが、アルベルティーナのドレスの色はライネリオ皇子の瞳の色だった。
黄金色に艷やかに輝くドレスを纏うアルベルティーナは殊の外美しい。
隣で寄り添い立つライネリオ皇子の衣装の差し色は銀である。
胸ポケットに差してあるスカーフはロイヤルパープルであり、これもアルベルティーナを思わせた。
他国の王子と婚約していたが解消との噂が出始めたばかりですぐに電光石火の婚約式。
様々な憶測を呼んだのだが、婚約式に参加した者達は「相思相愛の二人だった」と口々に話した。
ファーストダンスを見事に踊り終えた後、他の誰とも踊らずに仲睦まじく談笑する姿は、
この国の未来は明るいと思わせる。
半年後に婚姻式を迎える事も発表され、その期間の短さに会場は驚きに包まれる。
しかし、王女を見つめる皇子の熱い眼差しを見て「皇子が待てないのだろう」と微笑ましく結論づけられた。
婚約式の翌日からライネリオ皇子の猛攻が始まった。
早朝に届けられる一輪の花。
茎部分に金色のリボンが結ばれた、ベゴニアが最初に届けられる。
花と共に白地に金色で装飾が施されたカードも渡される。
「どうか私の思いが貴方に届きますように。」
と恥ずかしくなるような甘い台詞が書いてある。
アルベルティーナ付きの侍女が「ベゴニアの花言葉は“愛の告白・片思い”です。と教えてくれた。
ルシアノ王子の時は一度もこういう事をされた事が無く、耐性もないアルベルティーナは頬を染めた。
その日の午後に共に時間を過ごした二人。
「花は気に入って頂けましたか?」
甘い笑みをアルベルティーナに向けるライネリオ皇子。
「ええ…あ、有難うございます。」
花を気に入ってくれた事が、己の気持ちも受け入れて貰えたように感じて、ライネリオは幸せそうにまた微笑んだ。
「明日の朝も贈ります。楽しみにしていて下さいね。」
「はい…」
初々しい態度のアルベルティーナから片時も目を離さず、甘い空気が場に漂う。
(何なの……凄い心臓が煩い。)
アルベルティーナは切ない吐息をつく。
子供の頃の思い出や、今興味のある事など、他愛もない雑談だというのに、時間を忘れて夢中で話した。
二時間程してお開きになったが、去り際に皇子が
「明日は朝食後、一緒に庭園を散策しませんか?朝露がまだ残る花はとても綺麗でしたよ。」と言われて約束したのだが、
自分でもちょろいと思うが、とても楽しみになってしまった。
翌日の朝に届けられた花は、赤いゼラニウム。
独特の香りがするが、アルベルティーナは好きな香りだった。
花の香りを嗅ぐと心が穏やかになる。
昨日の侍女が笑顔で告げる「赤いゼラニウムの花言葉は“君ありて幸福”ですよ。」と。
お茶の時間のライネリオ皇子の甘い笑みが浮かび、生まれて初めて胸がキュンっと鳴った気がした。
朝食後、ライネリオ皇子と共に庭園を散策する。
目元を赤く染めたライネリオ皇子が「手を繋いでもいいですか?」と恥ずかしそうに言うものだから、
アルベルティーナまで恥ずかしくて頬を染めてしまった。
差し出された手に震えてしまった手をそっと置くと、優しい力で手を握られた。
庭園に咲く花々よりライネリオ皇子が気になってしまい花を眺める余裕がなくなってしまう。
(私…ライネリオ皇子を好ましく思い始めてるのね)
アルベルティーナは不思議な気持ちになる。
今までにない気持ちに足取りがフワフワとする。
これは恋の始まり…なのだろうか。
「明日の朝も貴方に花を贈ります。」
囁くように話され、手の甲に触れるだけのキスを贈られる。
頭が沸騰するような熱と甘い痺れが体を駆け抜けた。
そして翌日、マリーゴールドの花が一輪贈られる。
花言葉は“変わらぬ愛”
連日のように贈られる花に、侍女も心得たように花言葉を教えてくれた。
「皇子様は姫様の事をとても愛されているのですね。」
侍女の言葉が耳に心地よく響く。
「王族なら当然の事だけれど、政略なのよ私達。」
薄っすらと頬を染めながら話すアルベルティーナに侍女は笑顔で諭す。
「姫様、政略結婚だからと愛が生まれない訳はないですよ。皇子は姫様に夢中ではないですか。
あの熱い眼差しを一目見れば誤解しようもありません。
愛されておいでですよ、姫様は。」
その日はライネリオ皇子との約束もなく、両親も居る中で共にする夜の晩餐までライネリオ皇子とは逢えなかった。
連日会っていた二人。
今日はたまたま約束しておらず、ただライネリオ皇子に少しの間逢えないだけだというのに、とても寂しく感じたのだった。
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