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第6話 変わってしまわれた婚約者様 ①
しおりを挟むちょっとした黒歴史はあるものの、概ね皇子とはいい関係を築けていた。
その関係が少しずつ変わっていったのはいつ頃か―――
シリウスが十歳になった時、隣国へ見聞を広める為として第二皇子と共に留学する事になった。
隣国は強固な同盟国で、隣国の現王妃は皇国の皇帝の妹である。
見聞とは名ばかりで、シリウス達を溺愛する王妃が兄である皇帝に強請ったのではないかという話だ。
「姉は隣国の王妃となっても夢見がちなところが抜けきってない」と、お父様がお母様に愚痴っていた。
ちなみにお父様は皇帝の弟である。
臣下に下り大公の位を与えられたが、大公の位は皇弟であるお父様一代限りなので、お父様が亡き後は公爵となる。
代替わりで大公から公爵になるのかと思えば、お父様がレイゲンベルグ大公家に籍を置き生存してる限りは大公の位なのだそう。
今いる第二王子も臣下に下る時に大公になるのかと思えば、実力が伴った地位が用意されるので、実力が伴わなければ大公の位は与えられないのだとか。
お父様は凄いらしい。
魔法騎士団の団長、皇国騎士団団長…それらの更に上の役職で纏め役でもある総長職なのだ。
皇帝の弟という身分だけでは与えられない役職で、実力が伴わないとダメらしい。
国の攻守を担うのだから、ただのお飾りには与えられないのだ。
そんなカッコイイお父様もお母様の前では子供っぽかったりする。
私や兄の目の前ではカッコイイ姿を保っているけれど―――
私は知っている。
お母様と二人だけの時の態度を。
何故ならお母様が私にお父様の事を細かく愚痴るからだ。
嫉妬深くて独占欲が強くて甘えん坊でお母様至上主義なお父様は、お母様を時々うんざりさせるらしい。
そのガス抜き役が娘の私というわけである。
…とまぁ、お父様の話はこれくらいにして、皇子二人が隣国に三年間留学してしまった。
その間、定期的に手紙の遣り取りと、たまに贈り物を送り合ったりして、婚約者として仲良くしていた。
シリウス皇子から送られてくる手紙は、いつも気遣いと優しさに溢れていて、フィーリアの心を温かくした。
逢えない日々は寂しいけれど、次に会う時にシリウス皇子に「美しくなったね」と言って貰えるように。
シリウス皇子が居なくとも、当たり前のように続く厳しい皇太子妃教育を必死に学び「よく頑張ったんだね」と言われたい。
シリウス皇子は帰国後すぐに皇太子に指名される。
皇太子叙任式も既に日取りが決められ、帰国してから一週間後に既に決定している。
その時、隣に並び立つに相応しい私でなければ。
フィーリアは美も知識も立ち居振る舞いも一層の努力を重ねるのだった。
三年後、満を持して帰国してきた婚約者は―――
ちょっとチャラチャラしていた。
いつも想像していた「十歳だったシリウス殿下も、帰国時には十三歳。どのような立派なお姿に成長される事かしら」と。
三年後にチャラチャラしている……?
もしかして、自分の容姿のスペックを隣国で令嬢たちにチヤホヤされて色々と気付いてはっちゃけちゃいました?
いやしかし、毎日鏡で自分の姿は見ているのだ。
それなのに隣国へ行ってからようやく人外めく程に美しい…! とか、今更気付くとかあるのかな?
元々、皇国でも物凄くチヤホヤされてる。
いつも微かに鬱陶しそうにしていたくらいだ。
自国以外に行ったから色々箍が外れたのかしら……ついでに頭のネジも。
あの立派な皇子がそんな訳がない。
ああそうだ。容姿を活かした外交術でも学んだのかしらね?
帰国した婚約者と接して何となく感じた直感めいたものではあったけれど、フィーリアにはそれが事実のように思えた。
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