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異世界転生でドラゴンとして生きてみる。
第19話
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私の名前は「海棠凪咲」である。
ここまできてやっと出た私の名前。
さっき書いた書類には、名字を省くのはもちろんだけど、念には念を入れて凪咲ではなく、凪とだけ書いた。
これからはこの世界では「凪」と名乗っていこうと思う。
関所を抜けるとすぐ街かと思えば少し歩くようだ。
マシロはよく訓練された動物のように、隣にぴったりと並んで歩いている。
私の歩調に合わせて前に出る事もなく下る事もなく傍にいてくれる。
うー、マシロがかわいい。
マシロはそんなつもりで歩いてるわけじゃないかもしれないけど、寄り添うように着いて来てくれる姿がどうしてもいじらしくて心の中で悶えた。
そのままマシロの頭をナデナデしてしまう。
そして気付いた。
マシロの隣にムッキムキのふっとい腕があることに。
そのまま視線を上へと向けると、そこには強面のご尊顔が。
「冒険者ギルドまで案内してやろうと思ってな」
私の表情から察してくれたのか、筋肉の人が説明してくれる。
お兄さんだけにお仕事任せちゃって大変なんじゃないのかな。
長蛇の列はまだまだ遠くまで続いてたけど。
「ああ、俺が戻るまで他の者が代わりに対応してくれるから大丈夫だ」
私の表情ってそんなにバレバレなんですかね。
考えたことをまた察されたようだ。
「冒険者ギルドに寄って登録を済ませたら、今度は泊まる場所を探さないとな。冒険者ギルドと提携している宿を選ぶといい。その方が安全だからな」
「わかりました。教えてくれてありがとうございます」
「分からないことがあったら何でも聞いてくれ」
強面の顔で微笑まれると凄みが増すな……と大変失礼なことを考えていたら、大きな手で頭をくしゃくしゃと撫でられた。
筋肉の人は力加減下手なのか、私の首ががっくんがっくん揺れる。
強制的に首のストレッチになったくらい前後左右にぐるんぐるんとよく揺れた。
「い、いたいです……」
「おお! すまんすまん」
焦ったように頭から手を退けてくれたけど、ちょっとクラクラする。
どんだけ力強いんだ筋肉の人。
筋肉の人をジト目で見つめていると、ハハハ! と男らしい高笑いをしながら歩き出す。その背中を立ち止まったまま見つめていたら、パッと振り返った筋肉の人が「ほら行くぞ!」と片手をあげて促してきた。
「はーい……」
私とマシロは筋肉の人の後ろをついていくのだった。
ギルドへ向かう途中、寄り道したくなる誘惑にたっぷりかられる。
街は活気に溢れ、たくさんの店が建ち並び大勢の人が行き来している。
大きな声で呼び込む売り子さんの横を通り過ぎながら「あとでもう一度見に来よう」と決意する。
想像していた城塞都市よりも明るく騒がしい雰囲気の街だ。
建物の見た目も統一されているみたいで、景観としては美しい街並みである。
ゴシック建築っぽいなと思ってたけれど、近くで見るとますますソレっぽい。
建物全体が高さがあり、光溢れる開放的な空間をイメージして作られてる感じがゴシック建築っぽい。
大きい建物にある光を取り入れる為に作ったような小さな丸い窓には、何種類もの色ガラスを合わせてガラス絵画のようにしたステンドグラスような窓ガラスがはめ込んであった。
ゴシック建築っていったらステンドグラスだもんね。
神の象徴だった光を幻想的に取り込むことで、建物の内部が明るかったはず。
小さな窓をいくつも使用して光を取り込んでいるようなのは一緒っぽい。
きょろきょろと物珍しそうに建物を見ていたから注意散漫ではぐれてしまうと思ったのか、筋肉の人と手を繋がれてしまった。
手がすっごい大きい。
私の手の二倍以上は絶対にありそう。
剣を使う人だからか手のひらが硬くてゴツゴツしている。
「あー、そういえば名乗ってなかったな。ジェイクだ」
「あ、はい。凪といいますよろしくお願いします」
突然、筋肉の人ジェイクさんに自己紹介をされたので、私も自己紹介する。
名は体を表すっていうけれど、ジェイクって名前が似合ってる。
ランボーっていうのも似合いそう。
あ、でもランボーって名字だったか。
ジョン・ランボーで、ジョンが名前だった。
ジェイクさんの顔を見ながら、どうでもいいことを考えていた。
「何ぼーっとしてるんだ。ほら、いくぞ」
軽い力でくいっと繋いだ手を引っ張られて、ハッと上の空だった意識がもどる。
悪いなと思い謝罪を口にするかわりに子供らしくぺこりと頭を下げると、ふっとニヒルな笑顔を向けられた。
強面にニヒルな笑顔はバッチリ似合っている。
兵士の格好をしていなければ、幼子を悪の道に誑かす悪い大人に見えなくもない。
情に脆くていい人そうだけど見た目でいろいろと損してそう。
と、割と酷いことを考えながら無言で付いていった。
「さあ、着いたぞ。こっちだ」
目の前には冒険者ギルドというよりTHE大聖堂。
「目の前に見えますのは長い歴史のある建造物で、◯◯大聖堂です」と言われた方がすんなりと違和感なく納得出来るような荘厳な建造物が。
本当にここ冒険者ギルドなの?
ゴシック建築っぽい建築物が多いなという印象だったけど、ギルドまでそっち系だと思わなかったなー。
ジェイクさんに手を引かれるまま冒険者ギルドの中へと向かったのだった。
ここまできてやっと出た私の名前。
さっき書いた書類には、名字を省くのはもちろんだけど、念には念を入れて凪咲ではなく、凪とだけ書いた。
これからはこの世界では「凪」と名乗っていこうと思う。
関所を抜けるとすぐ街かと思えば少し歩くようだ。
マシロはよく訓練された動物のように、隣にぴったりと並んで歩いている。
私の歩調に合わせて前に出る事もなく下る事もなく傍にいてくれる。
うー、マシロがかわいい。
マシロはそんなつもりで歩いてるわけじゃないかもしれないけど、寄り添うように着いて来てくれる姿がどうしてもいじらしくて心の中で悶えた。
そのままマシロの頭をナデナデしてしまう。
そして気付いた。
マシロの隣にムッキムキのふっとい腕があることに。
そのまま視線を上へと向けると、そこには強面のご尊顔が。
「冒険者ギルドまで案内してやろうと思ってな」
私の表情から察してくれたのか、筋肉の人が説明してくれる。
お兄さんだけにお仕事任せちゃって大変なんじゃないのかな。
長蛇の列はまだまだ遠くまで続いてたけど。
「ああ、俺が戻るまで他の者が代わりに対応してくれるから大丈夫だ」
私の表情ってそんなにバレバレなんですかね。
考えたことをまた察されたようだ。
「冒険者ギルドに寄って登録を済ませたら、今度は泊まる場所を探さないとな。冒険者ギルドと提携している宿を選ぶといい。その方が安全だからな」
「わかりました。教えてくれてありがとうございます」
「分からないことがあったら何でも聞いてくれ」
強面の顔で微笑まれると凄みが増すな……と大変失礼なことを考えていたら、大きな手で頭をくしゃくしゃと撫でられた。
筋肉の人は力加減下手なのか、私の首ががっくんがっくん揺れる。
強制的に首のストレッチになったくらい前後左右にぐるんぐるんとよく揺れた。
「い、いたいです……」
「おお! すまんすまん」
焦ったように頭から手を退けてくれたけど、ちょっとクラクラする。
どんだけ力強いんだ筋肉の人。
筋肉の人をジト目で見つめていると、ハハハ! と男らしい高笑いをしながら歩き出す。その背中を立ち止まったまま見つめていたら、パッと振り返った筋肉の人が「ほら行くぞ!」と片手をあげて促してきた。
「はーい……」
私とマシロは筋肉の人の後ろをついていくのだった。
ギルドへ向かう途中、寄り道したくなる誘惑にたっぷりかられる。
街は活気に溢れ、たくさんの店が建ち並び大勢の人が行き来している。
大きな声で呼び込む売り子さんの横を通り過ぎながら「あとでもう一度見に来よう」と決意する。
想像していた城塞都市よりも明るく騒がしい雰囲気の街だ。
建物の見た目も統一されているみたいで、景観としては美しい街並みである。
ゴシック建築っぽいなと思ってたけれど、近くで見るとますますソレっぽい。
建物全体が高さがあり、光溢れる開放的な空間をイメージして作られてる感じがゴシック建築っぽい。
大きい建物にある光を取り入れる為に作ったような小さな丸い窓には、何種類もの色ガラスを合わせてガラス絵画のようにしたステンドグラスような窓ガラスがはめ込んであった。
ゴシック建築っていったらステンドグラスだもんね。
神の象徴だった光を幻想的に取り込むことで、建物の内部が明るかったはず。
小さな窓をいくつも使用して光を取り込んでいるようなのは一緒っぽい。
きょろきょろと物珍しそうに建物を見ていたから注意散漫ではぐれてしまうと思ったのか、筋肉の人と手を繋がれてしまった。
手がすっごい大きい。
私の手の二倍以上は絶対にありそう。
剣を使う人だからか手のひらが硬くてゴツゴツしている。
「あー、そういえば名乗ってなかったな。ジェイクだ」
「あ、はい。凪といいますよろしくお願いします」
突然、筋肉の人ジェイクさんに自己紹介をされたので、私も自己紹介する。
名は体を表すっていうけれど、ジェイクって名前が似合ってる。
ランボーっていうのも似合いそう。
あ、でもランボーって名字だったか。
ジョン・ランボーで、ジョンが名前だった。
ジェイクさんの顔を見ながら、どうでもいいことを考えていた。
「何ぼーっとしてるんだ。ほら、いくぞ」
軽い力でくいっと繋いだ手を引っ張られて、ハッと上の空だった意識がもどる。
悪いなと思い謝罪を口にするかわりに子供らしくぺこりと頭を下げると、ふっとニヒルな笑顔を向けられた。
強面にニヒルな笑顔はバッチリ似合っている。
兵士の格好をしていなければ、幼子を悪の道に誑かす悪い大人に見えなくもない。
情に脆くていい人そうだけど見た目でいろいろと損してそう。
と、割と酷いことを考えながら無言で付いていった。
「さあ、着いたぞ。こっちだ」
目の前には冒険者ギルドというよりTHE大聖堂。
「目の前に見えますのは長い歴史のある建造物で、◯◯大聖堂です」と言われた方がすんなりと違和感なく納得出来るような荘厳な建造物が。
本当にここ冒険者ギルドなの?
ゴシック建築っぽい建築物が多いなという印象だったけど、ギルドまでそっち系だと思わなかったなー。
ジェイクさんに手を引かれるまま冒険者ギルドの中へと向かったのだった。
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