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異世界転生でドラゴンとして生きてみる。
第17話
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最前列になった私の前には、木製で分厚くて正面とサイドが板張りをしている為、向こう側の足元が見えないタイプの横長の机がデデンと主張している。
その机を挟んで対面する形の向こう側に、屈強な兵士が二人横並びに立っていた。勿論その二人だけではなく、関門の左右とにも門兵が配置されている。
馬車側の関門の方はもっと人員が割かれていて、積み荷等のチェックを厳重にしているようで、当然こちら側よりも物凄く進みが遅い。
「お嬢ちゃん、ひとりかい?」
若い兵士の人に訊かれて内心「お嬢ちゃん・・・?」と思ったが、初対面はイメージが大切だと余計な事は考えず、丁寧に「はい」と答える。
「そうか。小さいのに保護者がいないなんて危ないな」
兵士のお兄さんが心配してくれている。
お兄さんは茶髪で緑の目をした爽やかイケメンだ。
胸当てと篭手と膝当だけの軽装の防具が似合っている。
「顔を隠したままでは関門は通せないんだ。フードを外して貰ってもいいかい?」
あ、そうなんだ。そうか確かに顔を隠したままじゃ怪しいもんね。
言われるままに素直にフードを取るとお兄さんが口元に手を当てて驚いた顔をして固まった。
え、何かおかしな所がある? お兄さんの反応が不安になるが、スルーする事にしてそのまま話を続けた。
「母が亡くなって働き口を探しに街に来ました」
たった今の間に即興で考えたばっかりの適当な設定をお兄さんに語る。
「あ、ああ・・・・・・幼くてこんなに可愛いのに、たった一人でここまで来ただなんて、それは本当に大変だっただろう? 頑張ったね」
お兄さんは眉をへにょっと下げて労ってくれた。
お兄さんいい人だ。
幼いってワードがちょっと気になるけど、私は転移で来たんだからそのままの年齢の容姿じゃないの?
可愛い、幼い等と言われて目の前のお兄さんを見る。
机越しでちょっと距離あるから気にしなかったけど、お兄さんは結構な長身である。
お兄さんの隣には、お兄さんよりちょっと年上そうな筋肉隆々の人が居て眉間に皺を寄せてムッとしている。
めちゃめちゃ不機嫌そうで怖くて嫌である。
そしてこの筋肉の人はお兄さんより大きい。
ずっと泉くんと話してて並ぶ人達よく見てなかったけど、気になって周囲を見てみれば、私と同じくらいの身長の大人らしき人がいない。
この世界の人の平均身長って随分と高いのかも。
お兄さんはその筋肉の人に小声でボソボソ話している。
筋肉の人も私をチラチラと見ながら、うんうんと頷いている。
何だろう。もしかして、私ドラゴン感でも滲み出ているとか?
ちょっと不安になっていると、
「こんな小さく凄く可愛い子を一人にしてしまうだなんて、お母さんはとても心配だったろうなあ。辛い出来事に負けず働き口を探して一人でここまで・・・・・・偉いぞ」
筋肉の人はグスッと鼻を啜り始めた。
もしかして、泣いて・・・・・・?
あ、目がうるうるしてる。
この人強面だけど情に脆い系だ。
筋肉の人も、いい人。
私、同情されたうえに、何か褒められている。
いい人達だから吐いた嘘に罪悪感を感じるが、これが一番怪しまれない設定なんだから仕方ない。
「お嬢ちゃん、身分証か通行証は持っているかい? もしくはギルドカードとか」
筋肉の人がぐすぐすと鼻を鳴らしているが、お兄さんは慣れているのかスルーして私に問いかけてきた。
「すみません。私の村は小さすぎて教会とかなかったので身分証はありません・・・通行証もありません。お金も持っていないので・・・」
と、とにかく悲壮感たっぷりの様子で語る。
「そうか。そういう場合もあるからね。そんな状況の人の為に臨時措置で仮の身分証発行が出来るんだよ。仮の身分証作成するのにもちょっとした検査とかもあるけどね、お嬢ちゃんなら問題ないだろう。仮の身分証の有効期限が二週間なんだ。その期間が過ぎると街に居る事は出来なくなるから気をつけるようにね。その期間の間に冒険者ギルドで冒険者登録をしてギルドカードを発行して貰うといい。その際にお金が掛かるけど、幼い子供の場合は銅貨一枚で登録出来るから、登録料のお金を手に入れるのはそう難しくないだろう。冒険者ギルドには子供が登録料を稼ぎ易くする為に登録していなくても受ける事が出来る街のお手伝い程度の依頼を紹介していているから、何か紹介して貰うといいよ」
「はい!」
とっても懇切丁寧な説明を受けた。
それから、お兄さんが蓋付きの四角い箱を私の目の前に置く。箱の蓋を開けると中に丸い球体の水晶みたいなものが入っていた。
「このクリスタルに手を乗せて貰っていいかな」
お兄さんに言われるままそっと手を乗せる。
手を乗せた瞬間にクリスタルと呼ばれている無色透明な球体が白く光った。
「うん。問題ないね。仮の身分証を作るから、この紙に必要な情報を書いて貰っていいかな。もし文字が書けない場合は僕達が代筆するから大丈夫だよ」
あ、言われて気付いたけど、私はこの世界の文字とか書けたっけ・・・・・・?
その机を挟んで対面する形の向こう側に、屈強な兵士が二人横並びに立っていた。勿論その二人だけではなく、関門の左右とにも門兵が配置されている。
馬車側の関門の方はもっと人員が割かれていて、積み荷等のチェックを厳重にしているようで、当然こちら側よりも物凄く進みが遅い。
「お嬢ちゃん、ひとりかい?」
若い兵士の人に訊かれて内心「お嬢ちゃん・・・?」と思ったが、初対面はイメージが大切だと余計な事は考えず、丁寧に「はい」と答える。
「そうか。小さいのに保護者がいないなんて危ないな」
兵士のお兄さんが心配してくれている。
お兄さんは茶髪で緑の目をした爽やかイケメンだ。
胸当てと篭手と膝当だけの軽装の防具が似合っている。
「顔を隠したままでは関門は通せないんだ。フードを外して貰ってもいいかい?」
あ、そうなんだ。そうか確かに顔を隠したままじゃ怪しいもんね。
言われるままに素直にフードを取るとお兄さんが口元に手を当てて驚いた顔をして固まった。
え、何かおかしな所がある? お兄さんの反応が不安になるが、スルーする事にしてそのまま話を続けた。
「母が亡くなって働き口を探しに街に来ました」
たった今の間に即興で考えたばっかりの適当な設定をお兄さんに語る。
「あ、ああ・・・・・・幼くてこんなに可愛いのに、たった一人でここまで来ただなんて、それは本当に大変だっただろう? 頑張ったね」
お兄さんは眉をへにょっと下げて労ってくれた。
お兄さんいい人だ。
幼いってワードがちょっと気になるけど、私は転移で来たんだからそのままの年齢の容姿じゃないの?
可愛い、幼い等と言われて目の前のお兄さんを見る。
机越しでちょっと距離あるから気にしなかったけど、お兄さんは結構な長身である。
お兄さんの隣には、お兄さんよりちょっと年上そうな筋肉隆々の人が居て眉間に皺を寄せてムッとしている。
めちゃめちゃ不機嫌そうで怖くて嫌である。
そしてこの筋肉の人はお兄さんより大きい。
ずっと泉くんと話してて並ぶ人達よく見てなかったけど、気になって周囲を見てみれば、私と同じくらいの身長の大人らしき人がいない。
この世界の人の平均身長って随分と高いのかも。
お兄さんはその筋肉の人に小声でボソボソ話している。
筋肉の人も私をチラチラと見ながら、うんうんと頷いている。
何だろう。もしかして、私ドラゴン感でも滲み出ているとか?
ちょっと不安になっていると、
「こんな小さく凄く可愛い子を一人にしてしまうだなんて、お母さんはとても心配だったろうなあ。辛い出来事に負けず働き口を探して一人でここまで・・・・・・偉いぞ」
筋肉の人はグスッと鼻を啜り始めた。
もしかして、泣いて・・・・・・?
あ、目がうるうるしてる。
この人強面だけど情に脆い系だ。
筋肉の人も、いい人。
私、同情されたうえに、何か褒められている。
いい人達だから吐いた嘘に罪悪感を感じるが、これが一番怪しまれない設定なんだから仕方ない。
「お嬢ちゃん、身分証か通行証は持っているかい? もしくはギルドカードとか」
筋肉の人がぐすぐすと鼻を鳴らしているが、お兄さんは慣れているのかスルーして私に問いかけてきた。
「すみません。私の村は小さすぎて教会とかなかったので身分証はありません・・・通行証もありません。お金も持っていないので・・・」
と、とにかく悲壮感たっぷりの様子で語る。
「そうか。そういう場合もあるからね。そんな状況の人の為に臨時措置で仮の身分証発行が出来るんだよ。仮の身分証作成するのにもちょっとした検査とかもあるけどね、お嬢ちゃんなら問題ないだろう。仮の身分証の有効期限が二週間なんだ。その期間が過ぎると街に居る事は出来なくなるから気をつけるようにね。その期間の間に冒険者ギルドで冒険者登録をしてギルドカードを発行して貰うといい。その際にお金が掛かるけど、幼い子供の場合は銅貨一枚で登録出来るから、登録料のお金を手に入れるのはそう難しくないだろう。冒険者ギルドには子供が登録料を稼ぎ易くする為に登録していなくても受ける事が出来る街のお手伝い程度の依頼を紹介していているから、何か紹介して貰うといいよ」
「はい!」
とっても懇切丁寧な説明を受けた。
それから、お兄さんが蓋付きの四角い箱を私の目の前に置く。箱の蓋を開けると中に丸い球体の水晶みたいなものが入っていた。
「このクリスタルに手を乗せて貰っていいかな」
お兄さんに言われるままそっと手を乗せる。
手を乗せた瞬間にクリスタルと呼ばれている無色透明な球体が白く光った。
「うん。問題ないね。仮の身分証を作るから、この紙に必要な情報を書いて貰っていいかな。もし文字が書けない場合は僕達が代筆するから大丈夫だよ」
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