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異世界転生でドラゴンとして生きてみる。

第16話

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 ドラゴンの姿から人の姿へと人化した時、私の姿は毛玉モドキと初対面した時の仕事帰りの服そのままだった。
 上下スーツで森の中を徘徊するのは正直動きにくい。
 上下スーツとかじゃなくて、上下ジャージだったら凄い助かったのに、毛玉モドキは私にチートなスキルや能力と加護を詰め込むのに注力し過ぎていて、そこに落とされた私の生活面でのサポートは一切考慮していなかった。

 体はドラゴンでも心は人間な私は、この世界でも基本的には人として生活したかったけれど、こんな動きづらい格好しか出来そうにないなら、少なくとも今着てる服以外の衣類が手に入らない限りは、食事の時だけ人化して量を減らすくらいの利用になりそうだ。

 そもそも落とされた場所がこんな辺鄙で危険な魔窟の森だとは普通は思わないよね。
 ずっと人間として生きてきて、いきなり異世界に転移させられたと思ったらこんな場所って・・・・・・。
 どんだけ毛玉モドキが私を配慮せずに落としたか分かろうというものである。

 こんな魔物しか生息してない森の中に服屋などあるわけないし、例えあったとしてもお金がないから買えなかったけどさ。
 心の中で盛大に拗ねる。
 マジで毛玉モドキ覚えてなさいよ。

 罵詈雑言を心の中で気の済むまで吐き出したら、少し怒りが落ち着いてきた。
 私の生活の事は一切配慮はないが、スキルは色々くれたよな、モドキ。

 そこで私は閃いた。
 私の数多のスキルの中のひとつにクラフトというものがあったではなかったかと。

 これをうまく使えば! 自分が望む好みの服が作れる!
 上下ジャージだっていけるんでは!? と期待が膨らむ。

 さぁ早速作っちゃうぞ! と意気込んだはいいものの・・・・・・

 正直、めんどくさい。

 泉くんに説明された内容を聞いて作る気が萎えた。
 もうその工程聞いただけで萎えまくりである。
 。
 だってさ、魔窟の森で素材採取から始まるって説明されたらねぇ。
 糸を作れる素材を採取してから糸を作り出して、糸から布を作り、自分が欲しい服を型紙として脳内にイメージして、イメージが定着したらそこから布を裁断して縫製して・・・・・・

 一体何工程あるんだよ!! となってやめた。
 好きな事は物凄い手間が掛かろうとも突き詰めて頑張れるけど、服は欲しいけれど好きな事ではないからモチベーションアップに繋がらない。

 クラフトは素材さえあれば作業の全てがスキルで賄えるらしく裁縫道具も不要らしいけど。
 クラフトはモノ作りを目指す人が喉から手が出るほど欲しい最強スキルらしいから、これから先何か作りたいと思ったら大変有り難いと思うだろうし、型紙も縫うのもデザインも全てイメージだけでスキルでいけるって説明されたけどさ・・・・・・。
 段階を踏んで服が作りあがるのを楽しむっていう心の余裕が、その時はなかった。

 そんな私に泉くんがしてくれた助言は――――
 洞窟の奥にあるナニカ。

 教えられて洞窟の奥へと探しに行ってみれば、そこはまるでゴミ屋敷のような惨状がありました。

 魔窟の森に迷い込んでしまったのか追放されてしまったのか。
 それともそういうのをコレクションとする魔物がいて洞窟に溜め込んでいたのか。

 洞窟の奥には武器や防具や衣類がたくさん置き去りにされていたのだ。
 整理整頓を知らないのか、ただポイポイと投げ捨てたかのように転がっている。
 防具なら防具、武器なら武器と分けられてる事はなく、あちらこちらに適当に投げ捨てられた感じで転がっている。

 これは、魔窟の森を訪れた人間の持ち物らしい。
 知識の泉の泉くんでも誰がここに集めてるかまでは情報がない。
《装備を着たまま白骨化している人間はいないようですので、憶測ですが魔物か魔族かもしれませんね。》との事。
 魔族というパワーワードを泉くんからの説明で知った私は、びくびくしながら魔族について聞いたけど、私が想像しているような怖い存在ではないらしい。

 この世界の人口で一番多いのが人族であるが、他にも様々な種族がいて、魔族というのはそういう様々な種族の中のひとつといった認識なんだって。
 怖い存在というものではないとのことだった。
 それならいいやと、魔族についていろいろ考えるのはやめた。
 たくさんの種族がいるというところに興味がいったので。

 話が横に逸れたけれど、服はその中から着れそうなものを何着か拝借した。
 剣とか防具とかもちょこちょこと。
 アイテムボックス持ちですので、うふふ。

 という訳で、長蛇の列におとなしく並んでいる私の姿は冒険者スタイルで、そして魔法使いのスタンダードな装備を身に着けた見た目なのである!

 真っ黒なローブを着てしっかりと前をボタンで閉じて、
(いつかファスナーとか作りたい。ボタン面倒)
 頭から大きなフードを被っている。口元しか見えないくらい深々と。

 長蛇の列はまだまだ長くて時間が掛かりそうだけど、泉くんとは脳内だけで遣り取りが出来るから、その間にいろいろ聞いておこうかな。

 泉くんにアレコレ質問して色々教えて貰っていたら、少しずつ列が進んでいてあっという間に最前列になっていた。


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