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第六十一話 気付いた時にはとんでもなく大きく育っていた。
しおりを挟むレストランをオープンさせてから私がお手伝いに入った一週間。
開店から閉店までを手伝えたのは、実は初日だけ。
後は一日のうち二時間程度のお手伝いが精いっぱいだった。
本人すら忘れがちになるけれど、私は貴族令嬢だったりする。
数年後の学院への入学試験の為に、淑女教育真っ最中である。
入学するにはある程度の学力が無いと許可されない為、入学前試験というのもあるので、試験勉強もしなければならない。
どんな試験がという事も毎年曖昧な為、丸暗記すればいけるというものでもない試験なのだ。
後六~七年で学園入学。
試験に向けで広く深く勉強していかなければいけない。
学園にいったら性悪なヒロインに会うらしいし……
ティナ様(女神様)にはザマァ的なの期待されてるし(女神様ご自身でやって頂きたい)入学して学園生活エンジョイ! 何てことにはならなさそうで、入学に及び腰である。
貴族だからには学院に入学する事は常識なので、お父様たちに迷惑かけない為にも入学は確定なんだけどさ……。
というわけで、一日のうちに昼の二時間程度をのスケジュールをどうにか空けてお手伝いしたのである。
そんな私がたった一週間といえど朝から夜までの丸々空く事はないのである。
そもそも嫁入り前の貴族令嬢は朝から夜まで連日外出というのも外聞が悪すぎるので、してはいけないんだけど。ょう
ちなみに、レストランの人員は厨房一名フロア二名追加で雇いました。
一週間運営しててんてこ舞い過ぎて、あの人数で回すのは厳しいとのことだった。
即戦力が欲しいとの事だったので、商業ギルド経由で紹介して貰った。
商業ギルト経由だと身元がしっかりしていたり、何かあった時のサポートをギルドがしてくれるのて安心安全なんだけど、仲介手数料というものが一年程取られるらしく、通常より少し高くなってしまう。
経費が増えても、始めが肝心だからそこは惜しまない。
いい店でも注文に取りに来るのが遅れたり、注文した料理やデザートが中々届かなかったりが多くあれば、来なくなっちゃうし。
それが口コミで広がれば、最悪集客に影響が出る。
ルカはそこを心配して、初日が終了してすぐに増員の検討をお願いしてきた。
一週間様子見した所、人数は上り調子で増えて行く。
人員増加が直ぐに必要だという事は分かったけれど、今から従業員を募集して面接して採用して、そこから教育しても即戦力になるまでに少々時間が掛かるなぁと考えこんでいると、アイヴァンから前世のハローワークみたいな事を商業ギルドがしているって聞いて、即お願いしたのだった。
仕事を募集して商業ギルドに登録してる人も居るのでその中から職業経験者をこちら側にピックアップしたのち紹介してくれるとのこと。
だから、色々スムーズだった。
商会も設立して、レストランもオープンして、やりたい事をやる土台の最初の一歩は踏み出せた気がする。
ただ、商会のお仕事にアイヴァンとセレスが付いて、レストランがルカ。
拠点で作り始めた物たちのお世話をする人が居ないので、奴隷をもう一人買う事にした。
男性か女性か迷ったのだけれど、すでに拠点には男性が三人住んでいる……。
女性一人そこに混ざるのは不安だろうなと思い、男性の奴隷にすることにした。
レグルスさんにまた連絡して、ユキとスノウも連れてまた以前行った奴隷商館に行った。
そこで全身に怪我を負い、治療もおざなりにされた可哀想な境遇の奴隷を買う事になった。
前の持ち主が酷い人間で、使えなくなったから最安値でいいから引き取ってくれと奴隷商館に連れてきたんだって……。
スノウもユキも治癒魔法が使えるから治して貰おう。
奴隷の名前はシュリスさんというらしい。
とても整った優し気な顔立ちに穏やかな気性の人で、一緒にいると癒されるような雰囲気の人だった。
こんな酷い大怪我を負わされて、棄てるように売られるような人じゃない。
拠点の庭の作物を育てる事や、屋敷の管理を一任することにした。
商品開発等の素案もいくつかアイヴァンに渡した。
レストランはほぼルカが管理出来ているので、アイヴァンやセレスには商会に力を注いで貰いたい。
お抱えの職人のスカウトだったり、材料の確保だったりと動いて貰っている。
自工場を作って大きな仕事をするつもりはないので、親方さんとかがいる工房に声を掛けて貰って、そこで商品を依頼する形だ。
見慣れない物を頼むのだから、設計図や説明は詳細に記さなければならない。
そういうのは私の役目なので頑張った。
―――そうして学園に入学するまでの七年間を色々やってるうちに、いつの間にかレディシークレット商会は、ドレスやランジェリー、宝飾品や雑貨品、魔道具類、食品類を取り扱う王都でも三本の指に入るような大商会になっていた。
レストランは三店舗目をオープンしているし……。
商会もアイヴァンさんとセレスさんの下に、三十人程の従業員がいるそうで……会長である私が直接遣り取りするのはアイヴァンさんとセレスさんだけなので、どんな人が働いてるのか詳しくは知らない。
数人かは買い物に行く時に会う事が出来るので、従業員の人からはお得意様である貴族のご令嬢との扱いを受けてるだけで、この商会の会長が私だと知ってる人はいない。
自分が欲しいものでこの世界に無いものを作りたくて立ち上げて貰った商会。
あれよあれよと大商会になってますけど……。
アイヴァンさん達が毎日楽しそうだからいいか。うん。
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