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第五十三話 成長促進。
しおりを挟むリティシアの目の前には土魔法で耕されふっくらとなった畑もどき。
ユキの土魔法で耕して貰った。
リティシアはまだ各属性魔法を習得していない。
やっと念話が出来る様になったが、それ以外の魔法というと創造魔法で編み出した生活魔法といったところだった。
「よーし、この種を植えて」
人差し指で柔らかい土に少し広めに間隔を取りブスプスと穴を開ける。
その穴のひとつひとつに種を落とし土をそっと被せていく。
「これでよし」
手に付着した土をパンパンと叩いて落としながら、クラウディアは畑を見渡す。
( 試験的にするならこれくらいの大きさが一番いいかな )
「ねぇねぇ、何の種を植えたの?」
好奇心いっぱいの顔でスノウはリティシアに尋ねる。
「見てのお楽しみっ」
「言うと思ったぁ、ちぇー」
「創造魔法“成長超促進”」
頭の中に種から発芽して葉を開きぐんぐんと成長するイメージを浮かべながら魔力を放出した。
ポン、ポンポンポン
ポップコーンが弾けた音のような小さな破裂音の後に芽が出た。
それはグングンと伸びて―――リティシアの背丈よりも三十センチ程高い木になった。
その木にはピンポン玉の様な大きさの実がなっている。
リティシアはその実に顔を近づけ香りを嗅ぐ。
「んー、創造していたのとは違うけれど、成功かな?」
ひとつ実を取り親指と人差し指で持つ。
グッと両指に力を入れると実は潰れて中から黒茶っぽい液体が出た。
「あ、良かった。液体なんだ。」
リティシアが嬉しそうに声をあげた。
「ユキ、スノウ、これが――――」
と背後を振り返ると、ユキとスノウが苦笑していた。
「創造魔法で豊穣の加護以上の魔法を作るとは…凄いな。女神様から授かった力とはいえ想像以上だ」
ユキは木のそばへと近づき、くんくんと匂いを嗅いでいる。
「この匂いは今まで嗅いだ事ないな」
ユキは物珍しそうに木の周りをぐるぐると周る。
「この実は醤油っていってね、調味料だよ」
「ショウユ? 調味料の素になる実なのか?」
「素っていうより、調味料そのものかな? 液体が調味料だよ」
「塩と一緒なのか?」
「私の居た世界では塩を使って作る調味料って感じかな?」
スノウも木の側へと近づき、実をひとつ採る。
そしてそれをパクリと食べた。
「スノウ!?」
「……っっ!」
スノウが口元に手を当てると、リティシアの方に涙目の顔を向けた。
「うええ、なにこれーー、しょっぱい!」
「もう、それは直接食べる果実のようなものじゃなくて、調味料だって言ったじゃない」
リティシアは苦笑する。
「こんな味だと思わなかったよ、ううう、水……」
スノウはパチンと指を鳴らす。
すると空中に水球が現れた。
そのまま手のひらを上にして手をかざす。
手のひらの真上に降りてきた水球にそのまま口を直接つけてゴクゴクと水を飲む。
「スノウもこれに懲りたら、今から私が作る木に成るこの形の実は食べちゃダメだよ?」
「はあい…うう、まだ口の中がしょっぱい…」
また水球に口をつけてゴクゴクと飲むスノウなのだった。
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