上 下
48 / 82

第四十八話 奴隷商館へ②

しおりを挟む
 入室してきた男性を見て、リティシアはボウっとなってしまった。

 現在八歳であるが、前世の年齢もプラスすると、心の成熟年齢とすれば、もう成人年齢などとっくに過ぎている。
 つまり、好みだけでいうなら、成人を迎えた男性の方にときめくのだ。

 そう、目の前で柔和な表情で微笑みつつ目線だけで色気垂れ流すような相手に、目が釘付けになってしまうのも致し方ない。
 入室してきた青年は、深い紫色の髪に、黒曜石のような黒い瞳、端正な顔立ちの口元に小さな黒子を持つ美男子だったのだから。

 アーモンド型にくっきりとした瞳は、少し目尻が下がっていて、美しく整った美貌に柔らかさを添えている。
 それらが口元の黒子とあわさって、何ともいえぬ色香を放っているのだ。
 八歳の女の子では気付かない色香だろうが、リティシアは真実の姿は八歳ではない。この青年の持つ色香にバッチリ魅了されいてた。


「これはこれは可愛いお客様だ」
 見目麗しい男には美声になる骨格や喉骨が標準装備されているのであろうか、いつまでも訊いていたい程に耳に心地の良い低音の主は、リティシアを見つめている。

「はは、どの年齢の女子も君には魅了されるらしい。
 紹介するよ、幼い頃からの腐れ縁が今の今まで続いている幼馴染のレイフェだ。
 レイフェ、私の大切な恩人の三人だよ。
 左からユキくん、リティシアちゃん、スノウくんだ。
 今回奴隷を買いたいという事で、私を信頼して任せてくれたんだ。
 私はレイフェなら、リティシアちゃん達が気に入ってくれるだろう奴隷を用意してくれるだろうと思って、ここに来たんだ。」

「……懐かしいな、ルスのそういう所。私に物を頼む時に求めるレベルを高く設定するの変わらないな。」

 レイフェさんは苦笑しながら、レグルスさんの肩を叩いた。
 日頃おっとりしているレグルスさんは、口の端を引き上げた笑顔をレイフェさんに向けている。

 幼馴染という事からいっても、レグルスさんにとって気兼ねなく接する事が出来る相手なんだろうな。


「リティシアといいます、本日は奴隷を購入しにきました。初めての高額な取引になるので、少し…いや大分緊張していますが、宜しくお願いします。」

「ご丁寧な挨拶有り難う、小さなレディ。こちらこそ宜しくね。
 ……本日は、奴隷商館ハイリヒトゥームへようこそお越し下さいました。
 どのような奴隷をお望みでしょうか?
 我がハイリヒトゥームはお客様と奴隷の御縁を繋ぐお手伝いをさせて頂いております。今日は素敵な縁が結ばれるお手伝いをさせて下さいね。」

 何だかとっても丁寧だ。
 奴隷商館を経営する人ってもっと怖い人だと思っていた。
 奴隷の売り買いをすること、今の世界では違法ではないけれど…
 どうも前世の価値観が混ざっているせいか、奴隷の売買に犯罪だと思ってしまう気持ちが全く消えたわけではなかったから。

「まずはどのような奴隷を探しているか、教えて頂けますか?」

 私は説明した。
 商売経営の経験がある方か、商売経営の補佐をしていた方、もしくは…商売経営を勉強していた人など、何処か商売に携わっていた人が欲しいと。
 後、商売するに当たって、商会をまずは立ち上げる予定だから商会の店や事務所を護衛する人も欲しい。
 後はそこで働く従業員数名……と、考えられる限りは説明した。


 レイフェさんは口元に手を当てしばらく考えていた。
 脳内にある奴隷リストを、今言われた条件を元に高速で照合しているかのようだ。

「…まずは四名ほど、こちらへ連れて参りますので、少々お待ち頂けますか?」

 照合を終えたようで、眩い微笑みを浮かべたレイフェさんはそう話すと、颯爽と退室していった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼子は最強のテイマーだと気付いていません!

akechi
ファンタジー
彼女はユリア、三歳。 森の奥深くに佇む一軒の家で三人家族が住んでいました。ユリアの楽しみは森の動物達と遊ぶこと。 だが其がそもそも規格外だった。 この森は冒険者も決して入らない古(いにしえ)の森と呼ばれている。そしてユリアが可愛い動物と呼ぶのはSS級のとんでもない魔物達だった。 「みんなーあしょぼー!」 これは幼女が繰り広げるドタバタで規格外な日常生活である。

断罪寸前の悪役令嬢になってしまいました

柚木ゆず
恋愛
「タチアナ、早く歩け」 「……え? わっ、わたしはタチアナではありません!」  わたしロズリーヌは気が付くと、タチアナ・ルレーラという名の女性になっていました。  その方は隣国の侯爵令嬢であり、罪人。複数の罪を犯した罰として、まもなく断罪が始まろうとしていたのです。  ――このままだとわたしが代わりに処刑されてしまう――。  幸いにも近くに居た方・侯爵令息オディロン様は別人だと信じてくださりましたが、明確な証拠がないと処刑は回避できないそうです。  オディロン様の機転のおかげで、1週間の猶予ができました。その間に、なんとしてもタチアナさんを見つけないと――。

【BL】王子は騎士団長と結婚したい!【王子×騎士団長】

彩華
BL
 治世は良く、民も国も栄える一国の騎士団長・ギルベルト。 年はとうに30を過ぎ、年齢の上ではおじさんに分類される年齢だった。だが日ごろの鍛錬を欠かさないせいか、その肉体は未だに健在。国一番の肉体にして、頼れる騎士団長として名を馳せている。国全体からの信頼も厚く、実直真面目な人物だった。だが一つだけ。たった一つだけ、ギルベルトには誰にも言えない秘密があった。表立って騎士団長という肩書を持つ彼には、もう一つの仕事があって……──。 「ああ、可愛いね。ギルベルト」 「ん゛……、ぁ、あ゛……っ♡」 穏やかな声と、普段とは異なるギルベルトの声が静かな部屋に響いて。 ******** という感じの、【王子×おっさん騎士団長】のBLです 途中Rな描写が入ると思います。 お気軽にコメントなど頂けると嬉しいです(^^)

「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう

天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。 侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。 その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。 ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

虚弱高校生が世界最強となるまでの異世界武者修行日誌

力水
ファンタジー
 楠恭弥は優秀な兄の凍夜、お転婆だが体が弱い妹の沙耶、寡黙な父の利徳と何気ない日常を送ってきたが、兄の婚約者であり幼馴染の倖月朱花に裏切られ、兄は失踪し、父は心労で急死する。  妹の沙耶と共にひっそり暮そうとするが、倖月朱花の父、竜弦の戯れである条件を飲まされる。それは竜弦が理事長を務める高校で卒業までに首席をとること。  倖月家は世界でも有数の財閥であり、日本では圧倒的な権勢を誇る。沙耶の将来の件まで仄めかされれば断ることなどできようもない。  こうして学園生活が始まるが日常的に生徒、教師から過激ないびりにあう。  ついに《体術》の実習の参加の拒否を宣告され途方に暮れていたところ、自宅の地下にある門を発見する。その門は異世界アリウスと地球とをつなぐ門だった。  恭弥はこの異世界アリウスで鍛錬することを決意し冒険の門をくぐる。    主人公は高い技術の地球と資源の豊富な異世界アリウスを往来し力と資本を蓄えて世界一を目指します。  不幸のどん底にある人達を仲間に引き入れて世界でも最強クラスの存在にしたり、会社を立ち上げて地球で荒稼ぎしたりする内政パートが結構出てきます。ハーレム話も大好きなので頑張って書きたいと思います。また最強タグはマジなので嫌いな人はご注意を!  書籍化のため1~19話に該当する箇所は試し読みに差し換えております。ご了承いただければ幸いです。  一人でも読んでいただければ嬉しいです。

最初から間違っていたんですよ

わらびもち
恋愛
二人の門出を祝う晴れの日に、彼は別の女性の手を取った。 花嫁を置き去りにして駆け落ちする花婿。 でも不思議、どうしてそれで幸せになれると思ったの……?

好きな人ができたなら仕方ない、お別れしましょう

四季
恋愛
フルエリーゼとハインツは婚約者同士。 親同士は知り合いで、年が近いということもあってそこそこ親しくしていた。最初のうちは良かったのだ。 しかし、ハインツが段々、心ここに在らずのような目をするようになって……。

処理中です...