29 / 82
第二十九話 リフレッシュ!
しおりを挟む
リーンハルトが屋敷に到着する前に、公爵家では既にいつでも昼食を出せる準備が整っていた。
王弟である公爵の甥であっても、王族でそれも第一王子である。
次期王太子は間違いないと優秀な第一王子を屋敷にお迎えするにあたり、失礼があってはならないと、公爵家使用人はピリピリしながら準備を終えた。
リーンハルトの馬車が到着したと報告されたと同時に昼食のテーブルに飾ってある花やテーブルクロスの皺を丁寧にダブルチェックする。
ガヤガヤと騒がしい音が静かになった所で、給仕をする者とテーブルセッティングをする者が壁際に寄り待機した。
公爵が半ば強引にリーンハルトを引き摺って屋敷内に入った後、しばらくした後に家族でいつも食事をしている食堂(賓客用の豪奢なダイニングホールではなく家族用の)にリーンハルトを伴って現れる頃には、リティシアと公爵夫人は静かに座って待っていた。
随分早い段階でリーンハルト様を引き摺るように連れてった割に、一番最後に到着したお父様たち。
リーンハルト様の目元が少し赤い気がするのは気のせいかしら? とリティシアはジッと観察する。
お父様とリーンハルト様が席に付き、昼食を持ってくる合図をお父様が給仕をする使用人へと送ると、テキパキとカトラリー等のテーブルセッティングが始まる。
前菜の瑞々しい生野菜のサラダが最初に出されて、我が家特製のサラダドレッシングがかけられた生野菜を一口食べたリーンハルト様が目を真ん丸になった。
咀嚼をし飲み込んで次の生野菜をまた口に入れながら驚き続けている。
「お、美味しい…! 何だろうこの味。食べた事ない味だ。」
リーンハルト様は、パクパクと口に次々と運びながら思案するような顔をしている。
「この味だと生野菜がとても美味しいね。これはシェフのオリジナルレシピ?」
「今日、いきなりシアが閃いたらしくてね、シェフに急遽作って貰った“サラダドレッシング”というもの何だよ。クリーム状の“マヨネーズ”という物も考案してくれただけれど、そちらは今度作る事にして、生野菜だからという事でサラダドレッシングを作って貰った訳さ。」
お父様が得意げな顔で饒舌に語っている。
サラダドレッシングはシンプルな味なんだけどね。
塩と油とレモン汁とニンニクを混ぜてかけただけのドレッシング。
リーンハルト様はだいぶお気に入りになったのか、名残惜しそうな顔で完食したサラダの皿を見つめている。
「リーンハルト様、大丈夫ですよ。また次に来て頂く時にもっと美味しいサラダを作ってお待ちしてます。」
思わずそう言ってしまった。
私の言葉に凄く嬉しそうに笑ったリーンハルト様は「それは楽しみだ、リティ、明日また来ちゃってもいい?」と甘えるようにお願いしてきた。
それをお父様がすぐに「ダメだ。最低でも一週間後だ」と釘をさしている。
「一週間……」と呟いたリーンハルト様の頭に、垂れた犬耳が見えたのは気のせいに違いない。
捨てられたワンコのようなキュゥンとした表情で私を見つめてくるけれど、
お父様の決定は我が家では絶対で、それを覆せるのはお母様だけである。
お母様が何も言わない以上、私には何も出来ないのだ。
リーンハルト様ごめんね、次来るときには何かまた美味しそうなの考えておくからね。
私はそう口にする事はせず「一週間後お待ちしていますね」とだけ伝えた。
次々と運ばれる料理に舌鼓を打ちつつ、時折、リーンハルト様の下に居る双子の兄弟の面白話をおかしく話して貰ったりしながら、和やかに昼食を食べ終えた。
昼食後、ファミリールームへと場所を移して、チェス盤を持って来たお父様。
駒を並べてリーンハルト様とチェス始めた。
そんな二人の近くのソファにお母様と二人で並んで座り、チクチクと刺繍を始める私達。
お父様は中々チェスの名手だと思うのだけど、リーンハルト様から時々「チェックメイト」と口にする声が聴こえる。
お父様は「ああーー!そこは」とか「うーむ…やるな、じゃあこれは?」と楽しそうに話していて、チラリと見遣るとリーンハルト様が頬を紅潮させて楽しそうな顔をしていた。
リーンハルト様が城へと戻る馬車に乗り込む前「凄く凄くリフレッシュできたよ! またすぐ来たい。では叔父上、伯母上、そしてリティ、本日はステキな時間をどうも有り難う!」と話し、ニッコリと嬉しそうに笑うと、とてもスッキリした表情になって帰って行った。
リーンハルト様は我が国の第一王子、きっと常に気を張り詰めているのだろう。
王子様もツライよね。としみじみ思うのだった。
王弟である公爵の甥であっても、王族でそれも第一王子である。
次期王太子は間違いないと優秀な第一王子を屋敷にお迎えするにあたり、失礼があってはならないと、公爵家使用人はピリピリしながら準備を終えた。
リーンハルトの馬車が到着したと報告されたと同時に昼食のテーブルに飾ってある花やテーブルクロスの皺を丁寧にダブルチェックする。
ガヤガヤと騒がしい音が静かになった所で、給仕をする者とテーブルセッティングをする者が壁際に寄り待機した。
公爵が半ば強引にリーンハルトを引き摺って屋敷内に入った後、しばらくした後に家族でいつも食事をしている食堂(賓客用の豪奢なダイニングホールではなく家族用の)にリーンハルトを伴って現れる頃には、リティシアと公爵夫人は静かに座って待っていた。
随分早い段階でリーンハルト様を引き摺るように連れてった割に、一番最後に到着したお父様たち。
リーンハルト様の目元が少し赤い気がするのは気のせいかしら? とリティシアはジッと観察する。
お父様とリーンハルト様が席に付き、昼食を持ってくる合図をお父様が給仕をする使用人へと送ると、テキパキとカトラリー等のテーブルセッティングが始まる。
前菜の瑞々しい生野菜のサラダが最初に出されて、我が家特製のサラダドレッシングがかけられた生野菜を一口食べたリーンハルト様が目を真ん丸になった。
咀嚼をし飲み込んで次の生野菜をまた口に入れながら驚き続けている。
「お、美味しい…! 何だろうこの味。食べた事ない味だ。」
リーンハルト様は、パクパクと口に次々と運びながら思案するような顔をしている。
「この味だと生野菜がとても美味しいね。これはシェフのオリジナルレシピ?」
「今日、いきなりシアが閃いたらしくてね、シェフに急遽作って貰った“サラダドレッシング”というもの何だよ。クリーム状の“マヨネーズ”という物も考案してくれただけれど、そちらは今度作る事にして、生野菜だからという事でサラダドレッシングを作って貰った訳さ。」
お父様が得意げな顔で饒舌に語っている。
サラダドレッシングはシンプルな味なんだけどね。
塩と油とレモン汁とニンニクを混ぜてかけただけのドレッシング。
リーンハルト様はだいぶお気に入りになったのか、名残惜しそうな顔で完食したサラダの皿を見つめている。
「リーンハルト様、大丈夫ですよ。また次に来て頂く時にもっと美味しいサラダを作ってお待ちしてます。」
思わずそう言ってしまった。
私の言葉に凄く嬉しそうに笑ったリーンハルト様は「それは楽しみだ、リティ、明日また来ちゃってもいい?」と甘えるようにお願いしてきた。
それをお父様がすぐに「ダメだ。最低でも一週間後だ」と釘をさしている。
「一週間……」と呟いたリーンハルト様の頭に、垂れた犬耳が見えたのは気のせいに違いない。
捨てられたワンコのようなキュゥンとした表情で私を見つめてくるけれど、
お父様の決定は我が家では絶対で、それを覆せるのはお母様だけである。
お母様が何も言わない以上、私には何も出来ないのだ。
リーンハルト様ごめんね、次来るときには何かまた美味しそうなの考えておくからね。
私はそう口にする事はせず「一週間後お待ちしていますね」とだけ伝えた。
次々と運ばれる料理に舌鼓を打ちつつ、時折、リーンハルト様の下に居る双子の兄弟の面白話をおかしく話して貰ったりしながら、和やかに昼食を食べ終えた。
昼食後、ファミリールームへと場所を移して、チェス盤を持って来たお父様。
駒を並べてリーンハルト様とチェス始めた。
そんな二人の近くのソファにお母様と二人で並んで座り、チクチクと刺繍を始める私達。
お父様は中々チェスの名手だと思うのだけど、リーンハルト様から時々「チェックメイト」と口にする声が聴こえる。
お父様は「ああーー!そこは」とか「うーむ…やるな、じゃあこれは?」と楽しそうに話していて、チラリと見遣るとリーンハルト様が頬を紅潮させて楽しそうな顔をしていた。
リーンハルト様が城へと戻る馬車に乗り込む前「凄く凄くリフレッシュできたよ! またすぐ来たい。では叔父上、伯母上、そしてリティ、本日はステキな時間をどうも有り難う!」と話し、ニッコリと嬉しそうに笑うと、とてもスッキリした表情になって帰って行った。
リーンハルト様は我が国の第一王子、きっと常に気を張り詰めているのだろう。
王子様もツライよね。としみじみ思うのだった。
0
お気に入りに追加
2,617
あなたにおすすめの小説
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
乙女ゲームの悪役令嬢は生れかわる
レラン
恋愛
前世でプレーした。乙女ゲーム内に召喚転生させられた主人公。
すでに危機的状況の悪役令嬢に転生してしまい、ゲームに関わらないようにしていると、まさかのチート発覚!?
私は平穏な暮らしを求めただけだっだのに‥‥ふふふ‥‥‥チートがあるなら最大限活用してやる!!
そう意気込みのやりたい放題の、元悪役令嬢の日常。
⚠︎語彙力崩壊してます⚠︎
⚠︎誤字多発です⚠︎
⚠︎話の内容が薄っぺらです⚠︎
⚠︎ざまぁは、結構後になってしまいます⚠︎
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
【完結】ドレスと一緒にそちらの方も差し上げましょう♪
山葵
恋愛
今日も私の屋敷に来たと思えば、衣装室に籠もって「これは君には幼すぎるね。」「こっちは、君には地味だ。」と私のドレスを物色している婚約者。
「こんなものかな?じゃあこれらは僕が処分しておくから!それじゃあ僕は忙しいから失礼する。」
人の屋敷に来て婚約者の私とお茶を飲む事なくドレスを持ち帰る婚約者ってどうなの!?
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる