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第二十四話 ソレを早く言って欲しかった。

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 リティシアは悩んでいた。

 日々、貴族令嬢としての教育と、次期領主としての教育を並行して学んでいるリティシアには、変装してお出かけして冒険者ギルドに行く程の時間的余裕がないと、数日様子を伺ううちに気付いたのだった。


 記憶が戻る前も真面目で勤勉だったリティシア。
 記憶が戻ったからといって怠け者になるのは、何だか嫌でその後も真面目に学んでいる。
 父や母はもっと子供らしく肩の力を抜く事を望んでいるのが伝わってくるのだけど、じゃあ! と今までのルーティンになっていた学びの時間を減らせれる程切り替えが上手なタイプでもない。
 少しずつ、段々と―――と、思ってはいるが。
 タイミングを計るのも下手である。

 下手なりにタイミングを計っていた頃、父親が休息日を設けようといった話を晩餐時に提案して来たので、リティシアは大喜びで賛成したのだが―――
 休息日イコール家族の時間だったらしい。
 朝から父と母が張り切っているなと思っていたら、遠乗りへ行くらしい。
 えっ…意外だと思ってるうちにあれよあれよという間に子供用乗馬服へと着替えて、馬に騎乗する父の前に座っていた。
 お母様は何処へと周囲を見渡せば、母は一人で馬に騎乗している。
 隣国のお姫様は乗馬も得意らしい。

 そんな両親に連れられて遠乗りへ出発した私。
 公爵家のシェフが腕によりをかけて用意したピクニックセットを馬の脇腹に括り付け、気付けば少し小高い丘の花の群生地の真っただ中。
 揺さぶられて少しふらつく体をお父様に抱っこされ、お母様が機嫌よく笑い声をあげる。
 風は気持ちよく頬を撫で、風に揺らされた花から花びらがはらりはらりと舞う。
 あー幸せだなぁ、私。と、手渡されたサンドイッチをパクつきながら実感したのだった――――

 ……という素晴らしい休息日を過ごしたのだけれど。

 幸せなんだけど、これでは行く時間が作れない。
 休息日に個人行動等を提案できる雰囲気でもない。
 次の休息日はここに行きましょう! 雨が降ったら図書室で―――と、仲良さ気に身を寄せ微笑みながら語り合う両親を見て、言えやしない。

 貴族令嬢って七歳でもスケジュールびっしりなのね…と、遠い目になった。

 リティシアが詰め込み過ぎてるだけなのだが、友達も居ないのでそういう事を知る事もないリティシア。


「冒険者ギルドは私に余裕が出来てからになります。」
 と、リティシアはユキとスノウに断言した。

『えっ、なんで!?』
 スノウが驚いて問うも、リティシアは「暇が無さすぎるのよ……」と言うばかり。
『時間とは作るものであろう。』と、ごもっともな言葉をユキに言われる始末。

「こそこそっと変装して、誰にもばれずにそっと出かけるだけでもそこそこ時間掛かるし、徒歩で行くしかないから往復を考えると数時間は欲しいのよね。
 でも、日々過ごしてよく分かるけど、私に数時間も空いた時間がないの。
 じゃあ、作ろうとすると両親に言わないといけないでしょ?
 その時に理由を尋ねられて、いい言い訳が浮かばないのよね………」

『それこそ魔法ではないのか?』
 ユキが首を傾げながら言う。
 何で悩んでるの? といった風に。

『別人になれば良くない? 大人の誰かみたいな。
 そもそも創造魔法ってスキルがあるなら、変身魔法も作れそうだけど。』
 スノウの言葉に、私は目から鱗状態になる。

 あ、そうか――――
 すっかり忘れてたけど、その手があった。

 メイドの誰かに変身魔法で変身して、お嬢様に頼まれたとかで買い物に行く振りで街に出るとか?
 そうじゃなくても色々とやりようがありそうだった。

 ええー、私の悩みに悩んでた日々は……!?

「ユキもスノウもソレを早く言って欲しかった。」

『訊かれていないからな。』
『言われないし……』

 それもそうだけどさ……
 私が悩んでたの分かってたでしょお!?
 うう、と悶々しながら拗ねる私に『…元気だして、ぺろぺろしてあげるから。』とスノウ。

 そのままスノウに頬をざらざらした舌でザリザリ舐められつつ慰められたのだった。

「少し痛い」
『えっ、そう? じゃあもっとそっとするね。』

 などとやり取りしながら。
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