7 / 8
第二章 婚約者はやり手。
第七話 夜空のようなドレス。
しおりを挟む
正式な婚約者として書面を交わし、ティアローザ王女の婚約者はルカリオン・コルベール公爵子息に決定した。
まるで横槍をさせないとばかりに異例の速さで二人の婚約式の日取りが決まったのである。
婚約式の衣装はお互いの色味を合わせた方が周囲に好印象を与える。
ティアローザは衣装の色味を合わせるつもりだがルカリオンはどうだろうか。
そもそも、昔一度会ったきりのルカリオン。
兄と懇意にしていたとはいえ、公爵子息だというのに、王女の私とは全くの接点がなかった。
婚約者候補にすら上がっていなかったのは、兄の側近候補だったから…?
あれ? むしろ側近が王女と結ばれるのは悪くないわよね?
両親と宰相が候補選定を行っていたようだから、政略的に不都合と判断されたのだろうか。
少しモヨリとするものを感じるが、結局最終的には兄がルカリオンを推して、私が快諾して婚約……? あれだけの候補がいながらも、婚約は結ばれなかったのは何故だろうか。
私が気に入った方は次々に候補をから外れたり、辞退を申し出てきたりだった。
なら、今回のルカリオンは何故ここまでスムーズにいくことができたのか。
悶々と考え、何となく可能性の高い「王女が乱心したと噂を立てられないため、私が気に入った子息とさっさと婚約させた」などという、少しばかりふざけた理由だったりするかもしれない。
おまけに相手は公爵子息、しかも嫡男。
王女の降嫁先としても大変魅力的だろう。
容姿も美男とはいえず、美男を嫌がった私が選ぶ中では最高の相手というわけだ。
そんな感じかしらね。
当たらずとも遠からずだろうと思いつつ、大事な衣装の事に思考をシフトした。
衣装といっても、ルカリオンの好みも分からない。
直接ルカリオンに手紙を送って色々訊いておこうかしら。
ああ、兄にも送っておこうかしら、長い間兄の傍に居たルカリオンの好みを兄は良く知ってるかもしれない。
「そうとすれば早速…!」
とペンを取ったところで、扉をノックされた。
許可を得て入室した侍従が抱えていたのは、大きな箱。
メッセージカード付きだったので、ティアローザはメッセージカードを抜き取り読む。
“婚約式はこれを着て私の隣で微笑んで居て欲しい。気に入ってくれると嬉しい。ルカ”
「……。」
ティアローザは頬を染めて、何度もその文を読んだ。
「ルカ…」
まるでそう呼んで欲しいとばかりに、愛称で名が書かれてある。
直筆かどうかは分からないが、流れるように書かれた文字は男らしい癖がありつつも美しい。
文を指でするりとなぞると、ティアローザは早速お礼の手紙を書くことにした。
お気に入りの便箋と封筒を持ってくるようにメイドに指示する顔は未だに赤い。
手紙を書き終え王女専用の蝋印を押すと、メイドに書き終えた手紙を渡す。
先程から中身を見たくて堪らなかったティアローザは、丁寧に箱に巻きつけてある藍色のリボンを解き、胸を高鳴らせて箱を開けた。
このドレス、まるでルカリオン様のようだわ。と、ティアローザは思った。
最高級の素材なのだろう、そっと触る指先に触れる感触はとても柔らかく滑らかだ。
夜空のようなルカリオンの瞳の色に似た藍色のドレスは、装飾自体はシンプルだが最高級の布を使い、全体に金糸で細かな花の刺繍が所狭しとあしらわれてある。
コルベール公爵家の領地の特産でもある天然真珠が胸元に連なるように縫い付けられており、またドレス全体にも夜空に輝く星のようにあちらこちらにと、縫い付けられてあった。
「何て美しいドレスなの。」
ティアローザはこの夢見るようなドレスを一目見てとても気に入ったのだった。
まるで横槍をさせないとばかりに異例の速さで二人の婚約式の日取りが決まったのである。
婚約式の衣装はお互いの色味を合わせた方が周囲に好印象を与える。
ティアローザは衣装の色味を合わせるつもりだがルカリオンはどうだろうか。
そもそも、昔一度会ったきりのルカリオン。
兄と懇意にしていたとはいえ、公爵子息だというのに、王女の私とは全くの接点がなかった。
婚約者候補にすら上がっていなかったのは、兄の側近候補だったから…?
あれ? むしろ側近が王女と結ばれるのは悪くないわよね?
両親と宰相が候補選定を行っていたようだから、政略的に不都合と判断されたのだろうか。
少しモヨリとするものを感じるが、結局最終的には兄がルカリオンを推して、私が快諾して婚約……? あれだけの候補がいながらも、婚約は結ばれなかったのは何故だろうか。
私が気に入った方は次々に候補をから外れたり、辞退を申し出てきたりだった。
なら、今回のルカリオンは何故ここまでスムーズにいくことができたのか。
悶々と考え、何となく可能性の高い「王女が乱心したと噂を立てられないため、私が気に入った子息とさっさと婚約させた」などという、少しばかりふざけた理由だったりするかもしれない。
おまけに相手は公爵子息、しかも嫡男。
王女の降嫁先としても大変魅力的だろう。
容姿も美男とはいえず、美男を嫌がった私が選ぶ中では最高の相手というわけだ。
そんな感じかしらね。
当たらずとも遠からずだろうと思いつつ、大事な衣装の事に思考をシフトした。
衣装といっても、ルカリオンの好みも分からない。
直接ルカリオンに手紙を送って色々訊いておこうかしら。
ああ、兄にも送っておこうかしら、長い間兄の傍に居たルカリオンの好みを兄は良く知ってるかもしれない。
「そうとすれば早速…!」
とペンを取ったところで、扉をノックされた。
許可を得て入室した侍従が抱えていたのは、大きな箱。
メッセージカード付きだったので、ティアローザはメッセージカードを抜き取り読む。
“婚約式はこれを着て私の隣で微笑んで居て欲しい。気に入ってくれると嬉しい。ルカ”
「……。」
ティアローザは頬を染めて、何度もその文を読んだ。
「ルカ…」
まるでそう呼んで欲しいとばかりに、愛称で名が書かれてある。
直筆かどうかは分からないが、流れるように書かれた文字は男らしい癖がありつつも美しい。
文を指でするりとなぞると、ティアローザは早速お礼の手紙を書くことにした。
お気に入りの便箋と封筒を持ってくるようにメイドに指示する顔は未だに赤い。
手紙を書き終え王女専用の蝋印を押すと、メイドに書き終えた手紙を渡す。
先程から中身を見たくて堪らなかったティアローザは、丁寧に箱に巻きつけてある藍色のリボンを解き、胸を高鳴らせて箱を開けた。
このドレス、まるでルカリオン様のようだわ。と、ティアローザは思った。
最高級の素材なのだろう、そっと触る指先に触れる感触はとても柔らかく滑らかだ。
夜空のようなルカリオンの瞳の色に似た藍色のドレスは、装飾自体はシンプルだが最高級の布を使い、全体に金糸で細かな花の刺繍が所狭しとあしらわれてある。
コルベール公爵家の領地の特産でもある天然真珠が胸元に連なるように縫い付けられており、またドレス全体にも夜空に輝く星のようにあちらこちらにと、縫い付けられてあった。
「何て美しいドレスなの。」
ティアローザはこの夢見るようなドレスを一目見てとても気に入ったのだった。
10
お気に入りに追加
668
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

貴方の事を愛していました
ハルン
恋愛
幼い頃から側に居る少し年上の彼が大好きだった。
家の繋がりの為だとしても、婚約した時は部屋に戻ってから一人で泣いてしまう程に嬉しかった。
彼は、婚約者として私を大切にしてくれた。
毎週のお茶会も
誕生日以外のプレゼントも
成人してからのパーティーのエスコートも
私をとても大切にしてくれている。
ーーけれど。
大切だからといって、愛しているとは限らない。
いつからだろう。
彼の視線の先に、一人の綺麗な女性の姿がある事に気が付いたのは。
誠実な彼は、この家同士の婚約の意味をきちんと理解している。だから、その女性と二人きりになる事も噂になる様な事は絶対にしなかった。
このままいけば、数ヶ月後には私達は結婚する。
ーーけれど、本当にそれでいいの?
だから私は決めたのだ。
「貴方の事を愛してました」
貴方を忘れる事を。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

冷遇された王妃は自由を望む
空橋彩
恋愛
父を亡くした幼き王子クランに頼まれて王妃として召し上げられたオーラリア。
流行病と戦い、王に、国民に尽くしてきた。
異世界から現れた聖女のおかげで流行病は終息に向かい、王宮に戻ってきてみれば、納得していない者たちから軽んじられ、冷遇された。
夫であるクランは表情があまり変わらず、女性に対してもあまり興味を示さなかった。厳しい所もあり、臣下からは『氷の貴公子』と呼ばれているほどに冷たいところがあった。
そんな彼が聖女を大切にしているようで、オーラリアの待遇がどんどん悪くなっていった。
自分の人生よりも、クランを優先していたオーラリアはある日気づいてしまった。
[もう、彼に私は必要ないんだ]と
数人の信頼できる仲間たちと協力しあい、『離婚』して、自分の人生を取り戻そうとするお話。
貴族設定、病気の治療設定など出てきますが全てフィクションです。私の世界ではこうなのだな、という方向でお楽しみいただけたらと思います。

心の中にあなたはいない
ゆーぞー
恋愛
姉アリーのスペアとして誕生したアニー。姉に成り代われるようにと育てられるが、アリーは何もせずアニーに全て押し付けていた。アニーの功績は全てアリーの功績とされ、周囲の人間からアニーは役立たずと思われている。そんな中アリーは事故で亡くなり、アニーも命を落とす。しかしアニーは過去に戻ったため、家から逃げ出し別の人間として生きていくことを決意する。
一方アリーとアニーの死後に真実を知ったアリーの夫ブライアンも過去に戻りアニーに接触しようとするが・・・。

悪名高い私ですので、今さらどう呼ばれようと構いません。
ごろごろみかん。
恋愛
旦那様は、私の言葉を全て【女の嫉妬】と片付けてしまう。
正当な指摘も、注意も、全て無視されてしまうのだ。
忍耐の限界を試されていた伯爵夫人ルナマリアは、夫であるジェラルドに提案する。
──悪名高い私ですので、今さらどう呼ばれようと構いません。

最後に報われるのは誰でしょう?
ごろごろみかん。
恋愛
散々婚約者に罵倒され侮辱されてきたリリアは、いい加減我慢の限界を迎える。
「もう限界だ、きみとは婚約破棄をさせてもらう!」と婚約者に突きつけられたリリアはそれを聞いてラッキーだと思った。
限界なのはリリアの方だったからだ。
なので彼女は、ある提案をする。
「婚約者を取り替えっこしませんか?」と。
リリアの婚約者、ホシュアは婚約者のいる令嬢に手を出していたのだ。その令嬢とリリア、ホシュアと令嬢の婚約者を取り替えようとリリアは提案する。
「別にどちらでも私は構わないのです。どちらにせよ、私は痛くも痒くもないですから」
リリアには考えがある。どっちに転ぼうが、リリアにはどうだっていいのだ。
だけど、提案したリリアにこれからどう物事が進むか理解していないホシュアは一も二もなく頷く。
そうして婚約者を取り替えてからしばらくして、辺境の街で聖女が現れたと報告が入った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる