私だけを愛してくれたなら、それだけで。

iBuKi

文字の大きさ
上 下
2 / 8
第一章 王女に婚約者が出来るまで。

第二話 周囲の暴走と、やっと決まる婚約者。

しおりを挟む
 言った言葉を取り消すつもりはないが、王女は辟易としていた。
 あれから、頭か心の病気を疑われ王宮専属医師達が招集され、しつこいくらいの検査をされたり。
当然の事、結果は“異常なし”となった訳で。

( 異常有りとでも言われたらとんだ詐欺集団だわ。)

 病の類ではないと結果が出た為、今度は祈祷師や魔女などが招集され「間違いない…! これは呪いの類だ!」と、真っ白な飾り気の一切ないシンプルなドレスを着させられ、祭壇の前で跪かされた王女は、得体の知れない存在に憑かれたと祓われそうになったりもした。

そこまでされると、流石に王女も何かがブチンと切れる音がした。
全ての表情が抜け落ちたスッと立つ王女、どよめく司祭たち。

「この者は、嘘吐きです。王族を謀りました。私は呪われてなどおりません。
衛兵、虚偽を口にしたこの祈祷師たちを捕えよ。
今の季節は冬。地下牢はさぞかし寒いでしょう。
魔女たちよ、同じ目に合わされたくなくば、真実を述べよ。」

と、ドスの効いた声で魔女へ真実以外は認めぬと促した。

魔女たちは全員祭壇前に整列し、王女に向かって涙ながらに跪くと、冷たい床に額を擦りつけ何度も謝罪を口にした。

何でも祈祷師たちに騙されて高額の薬草を買わされた。買う契約書を交わしてしまっつた為、支払いが出来ずにいた魔女は口裏を合わせるよう脅されていたんだとか。

魔女とは狡猾で貪欲な性質を持っている。
そんな魔女が祈祷師如きに騙される…? 騙した方ではなく?
魔女の訴えを訊いたものは全員「嘘くさ…大方祈祷師側から儲け話があるとでも言われて喜んで乗ったといったところだろう」と思った。
意図せず、全員正解である。

王女が半目になり白けた空気を漂わせているのを敏感に感じた魔女。
今度は涙を零しながら、昨今の魔女の貧しい生活事情を語りだした。
この国が平和過ぎて、呪いをかけて欲しいという依頼もとんとこない。
まじない道具の売れ行きもサッパリで、毎日飲まず食わずのギリギリの生活だったのだと。
飲まず食わずな割には随分丸い体だと、王女は責めるように魔女たちのお腹周りを凝視した。
飲まず食わずと言うのは絶対嘘だろうが、贅沢する程には稼げていないのだろう。
本来、魔女は狡猾で貪欲な性質を持つことから、人間が持つ七つの大罪と言われる欲の全てを常に欲しているような人種だ。
質素に生きねばならないのなら、生きている意味もないと考えるような集団である。

王女は取りあえず衛兵たちに、魔女たちを商人たちを呼ぶ時に使う広い部屋に軟禁するよう命じた。

王女をうまく騙し赦して貰えたと思った魔女たちは、嬉々としておとなしく連れていかれた。

頭痛を堪えるように眉間を撫でながら、王女は無言で神殿を去った。
王と王妃は大慌てである。
王女はぶち切れたら機嫌が治るまでが、とても長いのだ。

神殿の外で待機していた王族専用馬車に飛び乗り、王宮へとさっさと帰城し、到着するなり自分に与えられた王女宮まで足早に戻って行った。

そして、一週間もの間、宮から一歩も出なかった。

 王と王妃の面会を願う先触れが何度も送られてきたが、全て“拒否”して送り返した。

王女は今までの経験から、非常に捻じれに捻じれ捻くれたので非常に頑固だった。
 絶対に諦めないその性格を熟知していた兄王子は、王と王妃に自分の側近を紹介するから、その相手と婚約を結ぶように進言した。

兄王子の側近は何人か居る。
見目麗しいものばかりが居た記憶があるが…と、王は腑に落ちない。
悪いようにはしないと言う王子の言葉をひとまず信じる事にして、許可を出した。

 そして、ついに正式な婚約者として選ばれたのが、
 ひょろひょろと背だけは高く、折れそうな程に細い身体と手足、視力が悪い為分厚すぎるメガネをかけ、不健康そうに青白い顔色をしたルカリオン・コルベール公爵令息だった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

貴方の事を愛していました

ハルン
恋愛
幼い頃から側に居る少し年上の彼が大好きだった。 家の繋がりの為だとしても、婚約した時は部屋に戻ってから一人で泣いてしまう程に嬉しかった。 彼は、婚約者として私を大切にしてくれた。 毎週のお茶会も 誕生日以外のプレゼントも 成人してからのパーティーのエスコートも 私をとても大切にしてくれている。 ーーけれど。 大切だからといって、愛しているとは限らない。 いつからだろう。 彼の視線の先に、一人の綺麗な女性の姿がある事に気が付いたのは。 誠実な彼は、この家同士の婚約の意味をきちんと理解している。だから、その女性と二人きりになる事も噂になる様な事は絶対にしなかった。 このままいけば、数ヶ月後には私達は結婚する。 ーーけれど、本当にそれでいいの? だから私は決めたのだ。 「貴方の事を愛してました」 貴方を忘れる事を。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

妹の嘘を信じた婚約者から責められたうえ婚約破棄されましたが、救いの手が差し伸べられました!? ~再会から幕開ける希望ある未来への道~

四季
恋愛
ダリア・フィーオンはある日のパーティー中に王子であり婚約者でもあるエーリオ・ディッセンヴォフから婚約破棄を告げられた。 しかもその決定の裏には、ダリアの妹であるローズの嘘があり。 婚約者と実妹の両方から傷つけられることとなってしまうダリアだった。 ただ、そんな時、一人の青年が現れて……。

【完結】私よりも、病気(睡眠不足)になった幼馴染のことを大事にしている旦那が、嘘をついてまで居候させたいと言い出してきた件

よどら文鳥
恋愛
※あらすじにややネタバレ含みます 「ジューリア。そろそろ我が家にも執事が必要だと思うんだが」 旦那のダルムはそのように言っているが、本当の目的は執事を雇いたいわけではなかった。 彼の幼馴染のフェンフェンを家に招き入れたかっただけだったのだ。 しかし、ダルムのズル賢い喋りによって、『幼馴染は病気にかかってしまい助けてあげたい』という意味で捉えてしまう。 フェンフェンが家にやってきた時は確かに顔色が悪くてすぐにでも倒れそうな状態だった。 だが、彼女がこのような状況になってしまっていたのは理由があって……。 私は全てを知ったので、ダメな旦那とついに離婚をしたいと思うようになってしまった。 さて……誰に相談したら良いだろうか。

冷遇された王妃は自由を望む

空橋彩
恋愛
父を亡くした幼き王子クランに頼まれて王妃として召し上げられたオーラリア。 流行病と戦い、王に、国民に尽くしてきた。 異世界から現れた聖女のおかげで流行病は終息に向かい、王宮に戻ってきてみれば、納得していない者たちから軽んじられ、冷遇された。 夫であるクランは表情があまり変わらず、女性に対してもあまり興味を示さなかった。厳しい所もあり、臣下からは『氷の貴公子』と呼ばれているほどに冷たいところがあった。 そんな彼が聖女を大切にしているようで、オーラリアの待遇がどんどん悪くなっていった。 自分の人生よりも、クランを優先していたオーラリアはある日気づいてしまった。 [もう、彼に私は必要ないんだ]と 数人の信頼できる仲間たちと協力しあい、『離婚』して、自分の人生を取り戻そうとするお話。 貴族設定、病気の治療設定など出てきますが全てフィクションです。私の世界ではこうなのだな、という方向でお楽しみいただけたらと思います。

悪名高い私ですので、今さらどう呼ばれようと構いません。

ごろごろみかん。
恋愛
旦那様は、私の言葉を全て【女の嫉妬】と片付けてしまう。 正当な指摘も、注意も、全て無視されてしまうのだ。 忍耐の限界を試されていた伯爵夫人ルナマリアは、夫であるジェラルドに提案する。 ──悪名高い私ですので、今さらどう呼ばれようと構いません。

処理中です...