女神の娘。

iBuKi

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女神の子。

次元の狭間にあるお家とフヨフヨ漂うもの。

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外国の人が描いたお伽噺…そんな絵本の中にあるお家みたい。


それが、この室内を見た耀の第一印象だった。


こういうの何ていうんだろう…。
モヤモヤッとした形にならない言葉を、何とか形にしようとして記憶を探る。

テレビでこんな家が映される度に、何故かママが懐かしそうにしていた。
外国に行った事でもあるのかなって思った記憶がある。
えぇっと…なんとりー調…?
まぁそんな感じの名前だった、たぶん。

いつまでも人の気配も物音もしないことに気づいて、記憶を探るのを止める。

(誰も居ないのかな?でも、空き家って感じでもないんだけど……)


ドサッと重たくて黒いリュックを床に置くと、ぐるっと室内を見渡した。
全て綺麗に整理整頓されているし、床には塵1つない。


木のテーブル、木の椅子、木の壁…全部木で作られた部屋。

木の椅子には自分の家で見かけたようなパッチワークカバーのクッションがいくつか置いてある。
座り心地が良さそう。


それにしても、沙也加ちゃん家に行く道を歩いていた私が、何で部屋にいるのかが分からない。



「すみませーーーん!」



未だ誰の気配も感じない事に不安になり、大きな声で呼び掛けてみた。



「おじゃましまーす!誰かいませんかー?」


――シーンとした室内。



先程と同じ静かな部屋。

誰もいないのかな……




はぁ……と溜息をついて、ガクッと項垂れた。


床を見つめていると、耀の膝辺りをフヨフヨと漂う何かを見つけた。
そのフヨフヨと漂うものは3つある。


丸くて真っ白いフワフワしたものと、丸くてツヤツヤサラサラしてそうな丸いものと、緑色の丸くてクルクルとカールしたもの。
生き物のようなそれらはフヨフヨと耀の膝辺りにいる。
大きさは一緒だけれど、丸いものを包む毛みたいなものは色違いで見た目も違う。

「なにこれ………」

どうみたって虫でもなさそうだし、鳥にしては形も変だしフヨフヨ漂ってるのもおかしい。


とりあえず触ってみようと手を伸ばすと、白くてフワフワで丸いものが耀の手の甲にちょこんと乗った。

《キュルルルル》

猫が喜ぶ時に喉を鳴らす音のように、白いフワフワはキュルルと音をさせている。

――こんな生き物は見た事がない。

顔の前にそのまま持ってきて、じーっと見つめる。
白いフワフワが乗った手を動かしながら、目や耳など生き物に付いてるものを見る位置を変えつつ探すが、フワフワした毛が長いせいで隠れてしまうのかよく分からない。

「よく分からないなぁ…ちっちゃなぬいぐるみ? にしては、あったかいし…」

手の甲に白いフワフワを乗せたまま、反対の手でそっと撫でてみた。

するともっと大きな音で《キュルルルル》と白いフワフワから鳴る。

フヨフヨ漂っていた他の2つも、耀の手の甲に白いのを押しのけるようにして乗る。
白いのもこの場を譲る気がないのか動かない。

(おしくらまんじゅうみたい…)


その様子を見つめていると、突然、黒いのが耀の鼻先にポスっとぶつかった。

「――!」

鼻先にぶつかり落下しそうになるサラサラとした毛並みの黒いのが、そのままストンと落下しそうになる。
地面に落ちる前に黒いのを支えようと、乗せてない方の手を落下場所に……

フヨフヨと体を空中に漂わせて、そのまま耀の左肩に乗った。
耀の頬へと黒いのが近付き、頬にスリスリしてきた。

ふわぁ……!可愛い…
黒いのをそっと撫でてあげる。
まだ撫でていなかった緑のも撫でてあげた。

2つとも白いのと同じように《キュルルルル》と音が鳴る。

嬉しいって事なのかな?
高めの鳴き声?は、撫でて貰えて嬉しいと耀に伝えているようで、胸がきゅうんとした。
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