6 / 7
06
しおりを挟む
――――セイン視点続きます。
――――僕たちには双子ならではの特別で不思議な絆があった。
前兆はいくつかあった。
それは、カイトの口が動いていないというのに、カイトの話す声が聞こえていたり、
カイトが感じている気持ち・・・今何の感情で揺さぶられてるかが己の感情のように分かったり感じたりとか。
経験しないと分からない、恐らく双子である僕たち以外では感じ取る事の出来ない小さな事がたくさんたくさんあったのだ。
それが気持ち悪いとかは全くなく、一瞬戸惑うけど「ああ問題ないやカイトだし」と納得できて。
僕たちが五歳の年を迎える頃には「ああ、僕たちは双子だからか」と完全に受け入れていた。
元々ひとつだった僕たちが、母様のお腹の中で二つに分かれてしまったんだ。
元々ひとつだったから、きっとすべてを共有出来るんだ。と、理解した。
―――それから、ひとつしか無いものは、必ず半分にして分け合った。
それでも半分に出来ないモノがあれば、それぞれ交代で使用して大事に使った。
僕らは双子だったけれど、少し残念な事に似てないタイプの双子だったから、
カインに僕の振りをして貰ったり、僕がカインとして振舞ったりしてみる面白そうな悪戯は出来なかった。
ねえ様に誰か当てて貰うのとかすごく面白そうだったから、凄く残念だったけれど。
今は似てなくてよかったと思う。
見た目も性格もあまり似てないことで、色んな考えを共有出来るから得した気分だ。
僕は母様似という事もあるのか、男らしい容姿はしていない。
細身で女顔の僕は、筆頭公爵家の跡取り候補という事をしっかり理解していないバカが湧いたりすると、
カインではなく僕が大体侮られるのだ。
確かに公爵家の力を持っているのは父様と母様だ。その子供でしかない僕に力はない。
子供同士だからと家格何て関係ないと言いながら横暴な態度を取って来る。
力は無いがそんな横暴な態度をとるお前の代になった時、僕が公爵家当主だという事を忘れてないか?と思う。
子供のころの失敗だからと赦してなんてやらないけど。
そういうバカをどう料理するかカインと僕で秘密の会話をしながら案を出し合うのはちょっと楽しい。
ちょっとムッとするけど、カインはそういう態度を取られた事がない。
父様に似ているカインはキリっとして凛々しいからかな・・・
ちょっと・・・いや大分悔しい。
半分に出来ない大切なものの中で、一番一番大切なものは、ぶっちぎりでねえ様だ。
僕らよりひとつだけ年上で、貴族令嬢としては不思議な程に純粋で鈍感で少し抜けてて、それでも何でも一生懸命で努力は必ず報われると信じている。
まるで御伽噺にだけ存在する妖精のように可憐で綺麗で可愛くて。
視界に映るだけで思わず笑顔になってしまう程に可愛くて、
いつまでも、どんな時でも、全力で甘えたくなるくらい優しいお人よしで。
ほんの些細な事にも涙脆くて、他者の痛みにも敏感で気付いたら同調して一緒に泣いてしまうような人。
ねえ様の感情はいつも大忙しだ。
貴族令嬢としては宜しくないと理解しているのだろう。
十歳の年を迎えてから貴族として感情を伺わせない微笑みを必死に習得しようとしている。
そのままでいいのに。そのままがいいのに。
貴族として不完全でも僕らにとっては完全だよ。
けれど、ねえ様が望む事は叶えてあげたい。
そのままでいて欲しいけれど、それは我が家だけでいい事が一番だと気づいてからは僕らも積極的に協力している。
貴族令嬢として行う社交の会話を何十パターンも用意して、何度も練習している。
その微笑みをオンとオフを簡単に使い分けられるように、三人で特訓中だ。
筆頭公爵の長女という酷く大きな看板を持つねえ様は、豊かな情緒をしっかりと仕舞い込む。
子供だからとはいえ、他家の令嬢や令息に付け入る隙を与えぬように微笑みを浮かべて。
元来負けず嫌いなねえ様は、淑女教育は完璧だ。
微笑みの武装さえ完璧になれば、向かうところ敵なしだと思っている。
微笑みの武装に関しては、実はねえ様より僕らは大得意だ。
苦手な振りして一緒に特訓しようと共に頑張る姿勢で一緒に過ごす時間を確保しているだけだ。
僕らの感情を揺さぶるのはねえ様だけ。
揺さぶられる事のない僕らは冷静に笑顔の武装が出来る。
何を言われても何をされても揺らされる事がない為、冷静に物事を分析して計算できる。
だから、ねえ様が努力して制御している感情の操作なんて朝飯前なのだ。
公爵家嫡男が受ける教育は当然厳しい。
そこに建国から続く筆頭公爵家ともなると想像を絶するといっておく。
父様も息子だからと手心は加えない。
手加減のないレベルに地獄よりも地獄ってあるとカインと二人で絶望したこともある。
だけど、絶望のその先に待つ未来が欲しいから。
この世の何よりもどんなものよりも欲しいから。
カインと二人で掴み取るために今日も歯を食いしばって学んでいる。
それでもどうしようもないほど辛い時には、とっておきのねえ様の情報を二人だけの秘密の会話で話したり、
諦めるなら僕だけが手にする事になるねと闘争心を焚き付けあったり。
僕にはカインがいるから頑張れるし、カインにもセインがいるから頑張れると言われている。
そう僕らは二人でひとつ、何があっても。
双子ってこの国ではとても珍しいらしい。
他所の国は知らないけど、この国では吉兆の兆し扱いだ。
王都での筆頭公爵家の仕事や父様の宰相職を手伝ったり学んだりするのは僕が任されている。
そして、公爵家の広大な領地の管理や運営を一手に引き受けている母様の補佐をカインが任されている。
今は暫定的に候補扱いしているだけで、将来は僕らのどちらもが当主という事になるのだろう。
双子の場合はどちらか一人が当主となるのではない。
勿論、能力に差があり過ぎる場合は当主が一人とする例外もあるらしいけれど・・・
能力が同格の場合は、共に当主とするのが通例なのだ。
カインとなら絶対上手くやれる。
同格の高い能力を持つ僕らは、一人だけ当主の貴族よりも二倍の力を所有してるって事なのだから。
僕は双子で本当に良かったと思う。
「この二人が居れば公爵家は安泰ですな!ハッハッハ」と、母方の遠縁のヴェネト伯爵が父様に言っていた。
正直、いつも父様に媚びてるとこしか見たいことない伯爵が僕らは苦手だ。
苦手な存在・・・ただそれだけだったが、成長するにつれて優秀な双子という評判が広がった事で、
無謀で傍迷惑で厄介な野望を抱くようになったようだ。
よりにもよって僕らに伯爵の娘たちを薦めてくるのだ。
心底勘弁してほしい。
伯爵が義父になるのも絶対に嫌だが、あの娘たちと婚姻するのは死ぬ程嫌だ。
成人も迎えていない娘たちが、下品としかいいようのないレベルの化粧を顔に塗りたくり、
体臭を誤魔化すにしてはやりすぎではないか? と問い詰めたくなるようなキツイ匂いを身に纏って僕らにしなだれかかってくるのだ。
僕らは九歳・・・正直、大人の女性のような振る舞いをされても寒気しかしない。
一番年上の娘で十二歳・・・ねえ様と同い年の娘もいる。
本当にねえ様と同じ女の子という生き物なのだろうかと疑問に思っている。
しなだれかかる体を押しやると、今度はやけに甘ったるい声で僕らの名前を呼ぶ。
名を呼ぶ事を許可していないのだが。
伯爵令嬢の淑女教育とはレベルが低いのか?
今度父様経由で苦情を入れて貰うことにしている。
僕らの許可もない名前呼びをされるだけで鳥肌が止まらない。
父様にゴマすりをして、僕らに娘宛がって婚約者の座を狙っているなら、せめて好みの範囲の令嬢を用意しない?
あの大人顔負けの行動をとる娘たちの再教育が急務ではないの?
再教育されようと、僕らの好みをリサーチしてそういう風に仕立て上げる事が出来たとしても、
天地がひっくり返ろうとも、あの娘たちに奇跡がおきて最高の淑女になろうとも、
答えは一択、丁重にお断りするだけだけどね。
これは内緒だけど、でも必ず叶えるつもりのこと。
僕らのお姫様は半分に出来ないから、二人で大切に大切にする。
いつも半分に出来ないものは、交代で大切にしてきたけど、
ねえ様だけは別。
ねえ様だけは、いつも二人で、二人だけで、大切に大切にする。
三人でずっとずっと一緒に。
花の蜜に集まる虫の様に、明るい光に集まる蛾の様・・・に。
綺麗で可愛くて温かいねえ様には、今でも本当にたくさんの虫が寄ってくる。
子供だからと油断していたら、横から搔っ攫われる。
ねえ様は僕らにとって特別だけど、きっとその価値を虫たちも気付いてるんだ。
ねえ様本人は「私が公爵家の娘だからよ。」当然の事のように話すけど、本当に鈍いんだから。
権力に群がる虫の顔をしてない虫たちを何匹も目にしてるのに。
熱に浮かされたような瞳でねえ様を見つめてるの気付いてないのだろう。
このまま気付かないでいてくれる方が助かるけどさ。
駆除しても、駆除しても、しつこく湧く虫たちを脅したり牽制したりしていると、気付いたら虫除けはカイン共々得意になった。
最近は、僕らが隣にいると虫はあまり寄ってこなくなった。
特別大きい王家の虫は寄って来るけど。
あいつ、絶対ねえ様が大好きだ。
王家だから駆除が難しい―――――時間稼ぎとして父様に頑張って貰っている。
後何年か後にそろそろ婚約者をと大きな虫が強引な行動をし始めたら、駆除が凄く面倒になりそうだ。
厄介になる前に、僕らに群がる雌の虫を大きな虫に誘導しようとカインと考えている。
幸い大きな虫は見目が特別綺麗。
僕ら程ではないけれど、僕ら以外なら大きな虫はそれはそれはキラキラしている。
そこにやがて国最大の権力を有す存在になると囁けば、僕らに寄って来る雌の虫たちはこぞって群がるだろう。
今度、秘密の会話でカインとしっかり作戦を練らなきゃ。
僕らがこんな事考えてるなんて、ねえ様には絶対ひみつ。
◇◆◇◆◇
セイン視点…書き直したら物凄い長くなった… orz
付け足した部分もかなりの文字数。
削除した部分もそこそこあるけど、付け足した部分の方が何倍も多いので読み手が疲れそう…
大変申し訳ないですm( _ _ )m
セインやカインの説明が長いせいで、セインやカインが主人公なのでは?と感じる(笑)
結局、ねえ様最高!大好き!!ということです。
実はこのセイン、元々はセイルという名でした。
三話以降に間違えて「セイン」と書いていまして、もうセインでいいやと((´∀`*))ヶラヶラ
そんな適当な扱いのセインです。(酷い)
――――僕たちには双子ならではの特別で不思議な絆があった。
前兆はいくつかあった。
それは、カイトの口が動いていないというのに、カイトの話す声が聞こえていたり、
カイトが感じている気持ち・・・今何の感情で揺さぶられてるかが己の感情のように分かったり感じたりとか。
経験しないと分からない、恐らく双子である僕たち以外では感じ取る事の出来ない小さな事がたくさんたくさんあったのだ。
それが気持ち悪いとかは全くなく、一瞬戸惑うけど「ああ問題ないやカイトだし」と納得できて。
僕たちが五歳の年を迎える頃には「ああ、僕たちは双子だからか」と完全に受け入れていた。
元々ひとつだった僕たちが、母様のお腹の中で二つに分かれてしまったんだ。
元々ひとつだったから、きっとすべてを共有出来るんだ。と、理解した。
―――それから、ひとつしか無いものは、必ず半分にして分け合った。
それでも半分に出来ないモノがあれば、それぞれ交代で使用して大事に使った。
僕らは双子だったけれど、少し残念な事に似てないタイプの双子だったから、
カインに僕の振りをして貰ったり、僕がカインとして振舞ったりしてみる面白そうな悪戯は出来なかった。
ねえ様に誰か当てて貰うのとかすごく面白そうだったから、凄く残念だったけれど。
今は似てなくてよかったと思う。
見た目も性格もあまり似てないことで、色んな考えを共有出来るから得した気分だ。
僕は母様似という事もあるのか、男らしい容姿はしていない。
細身で女顔の僕は、筆頭公爵家の跡取り候補という事をしっかり理解していないバカが湧いたりすると、
カインではなく僕が大体侮られるのだ。
確かに公爵家の力を持っているのは父様と母様だ。その子供でしかない僕に力はない。
子供同士だからと家格何て関係ないと言いながら横暴な態度を取って来る。
力は無いがそんな横暴な態度をとるお前の代になった時、僕が公爵家当主だという事を忘れてないか?と思う。
子供のころの失敗だからと赦してなんてやらないけど。
そういうバカをどう料理するかカインと僕で秘密の会話をしながら案を出し合うのはちょっと楽しい。
ちょっとムッとするけど、カインはそういう態度を取られた事がない。
父様に似ているカインはキリっとして凛々しいからかな・・・
ちょっと・・・いや大分悔しい。
半分に出来ない大切なものの中で、一番一番大切なものは、ぶっちぎりでねえ様だ。
僕らよりひとつだけ年上で、貴族令嬢としては不思議な程に純粋で鈍感で少し抜けてて、それでも何でも一生懸命で努力は必ず報われると信じている。
まるで御伽噺にだけ存在する妖精のように可憐で綺麗で可愛くて。
視界に映るだけで思わず笑顔になってしまう程に可愛くて、
いつまでも、どんな時でも、全力で甘えたくなるくらい優しいお人よしで。
ほんの些細な事にも涙脆くて、他者の痛みにも敏感で気付いたら同調して一緒に泣いてしまうような人。
ねえ様の感情はいつも大忙しだ。
貴族令嬢としては宜しくないと理解しているのだろう。
十歳の年を迎えてから貴族として感情を伺わせない微笑みを必死に習得しようとしている。
そのままでいいのに。そのままがいいのに。
貴族として不完全でも僕らにとっては完全だよ。
けれど、ねえ様が望む事は叶えてあげたい。
そのままでいて欲しいけれど、それは我が家だけでいい事が一番だと気づいてからは僕らも積極的に協力している。
貴族令嬢として行う社交の会話を何十パターンも用意して、何度も練習している。
その微笑みをオンとオフを簡単に使い分けられるように、三人で特訓中だ。
筆頭公爵の長女という酷く大きな看板を持つねえ様は、豊かな情緒をしっかりと仕舞い込む。
子供だからとはいえ、他家の令嬢や令息に付け入る隙を与えぬように微笑みを浮かべて。
元来負けず嫌いなねえ様は、淑女教育は完璧だ。
微笑みの武装さえ完璧になれば、向かうところ敵なしだと思っている。
微笑みの武装に関しては、実はねえ様より僕らは大得意だ。
苦手な振りして一緒に特訓しようと共に頑張る姿勢で一緒に過ごす時間を確保しているだけだ。
僕らの感情を揺さぶるのはねえ様だけ。
揺さぶられる事のない僕らは冷静に笑顔の武装が出来る。
何を言われても何をされても揺らされる事がない為、冷静に物事を分析して計算できる。
だから、ねえ様が努力して制御している感情の操作なんて朝飯前なのだ。
公爵家嫡男が受ける教育は当然厳しい。
そこに建国から続く筆頭公爵家ともなると想像を絶するといっておく。
父様も息子だからと手心は加えない。
手加減のないレベルに地獄よりも地獄ってあるとカインと二人で絶望したこともある。
だけど、絶望のその先に待つ未来が欲しいから。
この世の何よりもどんなものよりも欲しいから。
カインと二人で掴み取るために今日も歯を食いしばって学んでいる。
それでもどうしようもないほど辛い時には、とっておきのねえ様の情報を二人だけの秘密の会話で話したり、
諦めるなら僕だけが手にする事になるねと闘争心を焚き付けあったり。
僕にはカインがいるから頑張れるし、カインにもセインがいるから頑張れると言われている。
そう僕らは二人でひとつ、何があっても。
双子ってこの国ではとても珍しいらしい。
他所の国は知らないけど、この国では吉兆の兆し扱いだ。
王都での筆頭公爵家の仕事や父様の宰相職を手伝ったり学んだりするのは僕が任されている。
そして、公爵家の広大な領地の管理や運営を一手に引き受けている母様の補佐をカインが任されている。
今は暫定的に候補扱いしているだけで、将来は僕らのどちらもが当主という事になるのだろう。
双子の場合はどちらか一人が当主となるのではない。
勿論、能力に差があり過ぎる場合は当主が一人とする例外もあるらしいけれど・・・
能力が同格の場合は、共に当主とするのが通例なのだ。
カインとなら絶対上手くやれる。
同格の高い能力を持つ僕らは、一人だけ当主の貴族よりも二倍の力を所有してるって事なのだから。
僕は双子で本当に良かったと思う。
「この二人が居れば公爵家は安泰ですな!ハッハッハ」と、母方の遠縁のヴェネト伯爵が父様に言っていた。
正直、いつも父様に媚びてるとこしか見たいことない伯爵が僕らは苦手だ。
苦手な存在・・・ただそれだけだったが、成長するにつれて優秀な双子という評判が広がった事で、
無謀で傍迷惑で厄介な野望を抱くようになったようだ。
よりにもよって僕らに伯爵の娘たちを薦めてくるのだ。
心底勘弁してほしい。
伯爵が義父になるのも絶対に嫌だが、あの娘たちと婚姻するのは死ぬ程嫌だ。
成人も迎えていない娘たちが、下品としかいいようのないレベルの化粧を顔に塗りたくり、
体臭を誤魔化すにしてはやりすぎではないか? と問い詰めたくなるようなキツイ匂いを身に纏って僕らにしなだれかかってくるのだ。
僕らは九歳・・・正直、大人の女性のような振る舞いをされても寒気しかしない。
一番年上の娘で十二歳・・・ねえ様と同い年の娘もいる。
本当にねえ様と同じ女の子という生き物なのだろうかと疑問に思っている。
しなだれかかる体を押しやると、今度はやけに甘ったるい声で僕らの名前を呼ぶ。
名を呼ぶ事を許可していないのだが。
伯爵令嬢の淑女教育とはレベルが低いのか?
今度父様経由で苦情を入れて貰うことにしている。
僕らの許可もない名前呼びをされるだけで鳥肌が止まらない。
父様にゴマすりをして、僕らに娘宛がって婚約者の座を狙っているなら、せめて好みの範囲の令嬢を用意しない?
あの大人顔負けの行動をとる娘たちの再教育が急務ではないの?
再教育されようと、僕らの好みをリサーチしてそういう風に仕立て上げる事が出来たとしても、
天地がひっくり返ろうとも、あの娘たちに奇跡がおきて最高の淑女になろうとも、
答えは一択、丁重にお断りするだけだけどね。
これは内緒だけど、でも必ず叶えるつもりのこと。
僕らのお姫様は半分に出来ないから、二人で大切に大切にする。
いつも半分に出来ないものは、交代で大切にしてきたけど、
ねえ様だけは別。
ねえ様だけは、いつも二人で、二人だけで、大切に大切にする。
三人でずっとずっと一緒に。
花の蜜に集まる虫の様に、明るい光に集まる蛾の様・・・に。
綺麗で可愛くて温かいねえ様には、今でも本当にたくさんの虫が寄ってくる。
子供だからと油断していたら、横から搔っ攫われる。
ねえ様は僕らにとって特別だけど、きっとその価値を虫たちも気付いてるんだ。
ねえ様本人は「私が公爵家の娘だからよ。」当然の事のように話すけど、本当に鈍いんだから。
権力に群がる虫の顔をしてない虫たちを何匹も目にしてるのに。
熱に浮かされたような瞳でねえ様を見つめてるの気付いてないのだろう。
このまま気付かないでいてくれる方が助かるけどさ。
駆除しても、駆除しても、しつこく湧く虫たちを脅したり牽制したりしていると、気付いたら虫除けはカイン共々得意になった。
最近は、僕らが隣にいると虫はあまり寄ってこなくなった。
特別大きい王家の虫は寄って来るけど。
あいつ、絶対ねえ様が大好きだ。
王家だから駆除が難しい―――――時間稼ぎとして父様に頑張って貰っている。
後何年か後にそろそろ婚約者をと大きな虫が強引な行動をし始めたら、駆除が凄く面倒になりそうだ。
厄介になる前に、僕らに群がる雌の虫を大きな虫に誘導しようとカインと考えている。
幸い大きな虫は見目が特別綺麗。
僕ら程ではないけれど、僕ら以外なら大きな虫はそれはそれはキラキラしている。
そこにやがて国最大の権力を有す存在になると囁けば、僕らに寄って来る雌の虫たちはこぞって群がるだろう。
今度、秘密の会話でカインとしっかり作戦を練らなきゃ。
僕らがこんな事考えてるなんて、ねえ様には絶対ひみつ。
◇◆◇◆◇
セイン視点…書き直したら物凄い長くなった… orz
付け足した部分もかなりの文字数。
削除した部分もそこそこあるけど、付け足した部分の方が何倍も多いので読み手が疲れそう…
大変申し訳ないですm( _ _ )m
セインやカインの説明が長いせいで、セインやカインが主人公なのでは?と感じる(笑)
結局、ねえ様最高!大好き!!ということです。
実はこのセイン、元々はセイルという名でした。
三話以降に間違えて「セイン」と書いていまして、もうセインでいいやと((´∀`*))ヶラヶラ
そんな適当な扱いのセインです。(酷い)
3
お気に入りに追加
1,370
あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

働かなくていいなんて最高!貴族夫人の自由気ままな生活
ゆる
恋愛
前世では、仕事に追われる日々を送り、恋愛とは無縁のまま亡くなった私。
「今度こそ、のんびり優雅に暮らしたい!」
そう願って転生した先は、なんと貴族令嬢!
そして迎えた結婚式――そこで前世の記憶が蘇る。
「ちょっと待って、前世で恋人もできなかった私が結婚!?!??」
しかも相手は名門貴族の旦那様。
「君は何もしなくていい。すべて自由に過ごせばいい」と言われ、夢の“働かなくていい貴族夫人ライフ”を満喫するつもりだったのに――。
◆メイドの待遇改善を提案したら、旦那様が即採用!
◆夫の仕事を手伝ったら、持ち前の簿記と珠算スキルで屋敷の経理が超効率化!
◆商人たちに簿記を教えていたら、商業界で話題になりギルドの顧問に!?
「あれ? なんで私、働いてるの!?!??」
そんな中、旦那様から突然の告白――
「実は、君を妻にしたのは政略結婚のためではない。ずっと、君を想い続けていた」
えっ、旦那様、まさかの溺愛系でした!?
「自由を与えることでそばにいてもらう」つもりだった旦那様と、
「働かない貴族夫人」になりたかったはずの私。
お互いの本当の気持ちに気づいたとき、
気づけば 最強夫婦 になっていました――!
のんびり暮らすつもりが、商業界のキーパーソンになってしまった貴族夫人の、成長と溺愛の物語!
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。

彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる