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異世界転生したら竜族の姫になっていた。
王宮へ連れて来た、内緒の存在。
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小さいけれど牙の揃った口をクァっと開けて、欠伸をする子竜。
白い体は薄暗い照明が灯された室内でも、ぼんやりと発光してるように見える。
子竜を連れて戻ってきたアラクシエルとイオ。
御付の者の同行をアラクシエルが断った為、二人だけで仲良く庭園へと出かけた。
その際には居なかった筈の生き物。
お早いお帰りだなと思った侍従とメイドは、王女が抱きしめている“何か”に気付いて「王女様のお荷物をお持ちしなければ」と近づいた。
その“何か”が、白い生き物だと気付くと、目を見開き飛び上がらんばかりに驚いた。
白い色、それは尊い血筋の証。
古代竜の血脈を受け継ぐ五大竜族のひとつであり、それぞれの竜族が属性の色を持っている。
小さな子竜の真っ白なその体は、由緒正しき聖竜族の色。
その聖竜族の子竜が、王女の腕の中で丸まりおとなしく抱かれている。
人族や妖精族、魔族に、獣人族など、この世界には多種多様な種族が生息している。
その中でも他族の追随を許さぬほどの強大な力を持つ竜族。
最強の種族でありながら、その中でも更に力の強い古代竜の血を受け継ぐ五大竜族。たった一体で人族の国など一日で消滅させられる程。
これ程の強さを持ちながら、特別に警戒心が強い。
理由は竜族が子を成しづらい事もあるのだが。
そんな中で生まれた子らは、まだ力が育ちきってない為、ことのほか大切に育てられる。
過保護過ぎる程に警戒しながらも、真綿で包むようにそっと。
己らの血脈を絶やさぬ使命の為に、神経を張りつめている為に、異常な程に過保護なのは仕方のない事である。
その為、子竜の状態での五大竜族を外で見る事は、絶対にないのだ。
しかし、目の前には聖竜族の子竜――――
どういう事だ…? メイドも侍従も不安気にアラクシエルを伺う。
「大丈夫だ。怪我はないし病気の心配もない。誰かに強引に接触され攫われたようなら、纏わりつくような魔力の痕跡が見られる筈だが、その形跡も感じられなかった。何故王宮の庭園に居たのかは不明だがら、聖竜族の長に連絡を入れるつもりだが―――」
そこまで一息に話した所で、アラクシエルはふむ…と思案気にイオの腕の中に居る子竜を見つめた。
(連絡を入れる事を拒否するような素振りであったな…。何故だ――?)
「今日は少し様子を見る。長への連絡は私が直接取ろう。お前たちはこの事に対して一切見なかった事とする。いいね?」
「「承知しました。」」
うん。とひとつ頷き、アラクシエルは何処で子竜を滞在させたものかと悩む。
その時、鈴の鳴るような可愛らしい澄んだ声が上がった。
◇◆◇◆◇◆◇
聖竜族の子らしい子竜は、今、璃音の寝室に居た。
悩むアラクシエルに真っ先に声をあげたのは、イオだった。
「はいっ、私がお世話をしてあげたいです!」
元気よく立候補され、アラクシエルもイオの部屋なら元より警護も大袈裟な程に厳重であるし、子竜を滞在させるのに問題無い環境だと思った。
イオの部屋以外に滞在して貰ったとしても、聖竜族の子竜に何かあったら大問題は必至な為、厳重な警護を付けなければならず、誰がその部屋に滞在していると説明も出来ない為、悪目立ちしてしまう。
警護を付けないという選択肢はない為、ひっそりと事を運びたいアラクシエルとしては悩ましい所だったのだ。
「そうか。ではお世話を頼めるかな?」と問うアラクシエルに、喜び一杯でイオは「大切にお世話します!」と、返事を返したのだった。
イオの腕の中で丸まった子竜も、満足そうに尻尾を小さくゆらゆらと振っていた。
その子竜は、ベッドの近くに小さな籠を使って簡易的な寝床を作って貰い、そこでくるりと丸まり眠そうウトウトとしている。
ベッドの真下を覗き込みながら、璃音はクフクフと笑い声を漏らした。
(何て可愛いの!)
可愛くて、嬉しくて、幸せで。
璃音はクフクフと笑い声が止まらない。
本当はベッドで一緒に眠りたかったのだけれど、父であるアラクシエルにダメだと注意されたのだ。
「一緒に寝たいな…ダメですか?」と食い下がるイオに、アラクシエルはハーッと溜息をついて説教モードになった。
「イオ、今は子竜の姿だから、ただの竜だと思っているかもしれないけれど、この子竜はやがて人化も出来る私達と同じ竜なんだよ。
男女が一緒に共寝するには、婚約者の間柄でも眉を潜められる事なんだよ。
まして婚約者でもない子竜とイオは絶対に共寝は許可できない。
それが守れないなら、イオにお世話を任せる事はできないな。」
そう強く言い切られてしまえば、璃音も余計な事を言ってアラクシエルから子竜を取り上げられるのは絶対に嫌なので、おとなしく口を噤んだのだった。
クフクフ、可愛いなぁ。
「子竜くん? ちゃん? どちらか分からないけれど、そろそろ私も寝るね。
おやすみなさい。いい夢を見てね。」
そろそろ寝ようとお休みの挨拶をする璃音。
呼びかけられて子竜は頭を上げ、璃音の方を見る。
ユラユラと尻尾を揺らしながら「キュー、キュキュ」と鳴く。
挨拶を返してくれた気がして、璃音は微笑むのだった。
白い体は薄暗い照明が灯された室内でも、ぼんやりと発光してるように見える。
子竜を連れて戻ってきたアラクシエルとイオ。
御付の者の同行をアラクシエルが断った為、二人だけで仲良く庭園へと出かけた。
その際には居なかった筈の生き物。
お早いお帰りだなと思った侍従とメイドは、王女が抱きしめている“何か”に気付いて「王女様のお荷物をお持ちしなければ」と近づいた。
その“何か”が、白い生き物だと気付くと、目を見開き飛び上がらんばかりに驚いた。
白い色、それは尊い血筋の証。
古代竜の血脈を受け継ぐ五大竜族のひとつであり、それぞれの竜族が属性の色を持っている。
小さな子竜の真っ白なその体は、由緒正しき聖竜族の色。
その聖竜族の子竜が、王女の腕の中で丸まりおとなしく抱かれている。
人族や妖精族、魔族に、獣人族など、この世界には多種多様な種族が生息している。
その中でも他族の追随を許さぬほどの強大な力を持つ竜族。
最強の種族でありながら、その中でも更に力の強い古代竜の血を受け継ぐ五大竜族。たった一体で人族の国など一日で消滅させられる程。
これ程の強さを持ちながら、特別に警戒心が強い。
理由は竜族が子を成しづらい事もあるのだが。
そんな中で生まれた子らは、まだ力が育ちきってない為、ことのほか大切に育てられる。
過保護過ぎる程に警戒しながらも、真綿で包むようにそっと。
己らの血脈を絶やさぬ使命の為に、神経を張りつめている為に、異常な程に過保護なのは仕方のない事である。
その為、子竜の状態での五大竜族を外で見る事は、絶対にないのだ。
しかし、目の前には聖竜族の子竜――――
どういう事だ…? メイドも侍従も不安気にアラクシエルを伺う。
「大丈夫だ。怪我はないし病気の心配もない。誰かに強引に接触され攫われたようなら、纏わりつくような魔力の痕跡が見られる筈だが、その形跡も感じられなかった。何故王宮の庭園に居たのかは不明だがら、聖竜族の長に連絡を入れるつもりだが―――」
そこまで一息に話した所で、アラクシエルはふむ…と思案気にイオの腕の中に居る子竜を見つめた。
(連絡を入れる事を拒否するような素振りであったな…。何故だ――?)
「今日は少し様子を見る。長への連絡は私が直接取ろう。お前たちはこの事に対して一切見なかった事とする。いいね?」
「「承知しました。」」
うん。とひとつ頷き、アラクシエルは何処で子竜を滞在させたものかと悩む。
その時、鈴の鳴るような可愛らしい澄んだ声が上がった。
◇◆◇◆◇◆◇
聖竜族の子らしい子竜は、今、璃音の寝室に居た。
悩むアラクシエルに真っ先に声をあげたのは、イオだった。
「はいっ、私がお世話をしてあげたいです!」
元気よく立候補され、アラクシエルもイオの部屋なら元より警護も大袈裟な程に厳重であるし、子竜を滞在させるのに問題無い環境だと思った。
イオの部屋以外に滞在して貰ったとしても、聖竜族の子竜に何かあったら大問題は必至な為、厳重な警護を付けなければならず、誰がその部屋に滞在していると説明も出来ない為、悪目立ちしてしまう。
警護を付けないという選択肢はない為、ひっそりと事を運びたいアラクシエルとしては悩ましい所だったのだ。
「そうか。ではお世話を頼めるかな?」と問うアラクシエルに、喜び一杯でイオは「大切にお世話します!」と、返事を返したのだった。
イオの腕の中で丸まった子竜も、満足そうに尻尾を小さくゆらゆらと振っていた。
その子竜は、ベッドの近くに小さな籠を使って簡易的な寝床を作って貰い、そこでくるりと丸まり眠そうウトウトとしている。
ベッドの真下を覗き込みながら、璃音はクフクフと笑い声を漏らした。
(何て可愛いの!)
可愛くて、嬉しくて、幸せで。
璃音はクフクフと笑い声が止まらない。
本当はベッドで一緒に眠りたかったのだけれど、父であるアラクシエルにダメだと注意されたのだ。
「一緒に寝たいな…ダメですか?」と食い下がるイオに、アラクシエルはハーッと溜息をついて説教モードになった。
「イオ、今は子竜の姿だから、ただの竜だと思っているかもしれないけれど、この子竜はやがて人化も出来る私達と同じ竜なんだよ。
男女が一緒に共寝するには、婚約者の間柄でも眉を潜められる事なんだよ。
まして婚約者でもない子竜とイオは絶対に共寝は許可できない。
それが守れないなら、イオにお世話を任せる事はできないな。」
そう強く言い切られてしまえば、璃音も余計な事を言ってアラクシエルから子竜を取り上げられるのは絶対に嫌なので、おとなしく口を噤んだのだった。
クフクフ、可愛いなぁ。
「子竜くん? ちゃん? どちらか分からないけれど、そろそろ私も寝るね。
おやすみなさい。いい夢を見てね。」
そろそろ寝ようとお休みの挨拶をする璃音。
呼びかけられて子竜は頭を上げ、璃音の方を見る。
ユラユラと尻尾を揺らしながら「キュー、キュキュ」と鳴く。
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