竜王の娘は父の隣でのんびり暮らしたい~竜族の男達は病み(闇)属性持ち~

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異世界転生したら竜族の姫になっていた。

聞けば聞くほどファンタジーな話 Ⅰ

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 説明回っぽくなる話。二話続きます。


 ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧




 ヴァーミリオン王国は竜王が治める竜族の国。
 世界の中心国に世界の始まりから君臨し、何千年の時が流れても常に最も権力を有する大国である。

 この世界には、竜族、人族、妖精族、魔族がいて、それぞれの種族が種族ごとに分かれ、それぞれがその種族の王を頂点として暮らしている。

 しかし、世界の始まりに創生神の眷属であった竜王がヴァーミリオン王国を建国の後に、ヴァーミリオン王国を中心として周辺国を作りその初代を己の信頼できる竜族の臣下に任せた。
 よって、どの国にも初代が竜である為、竜族の血が王族には流れているのだ。
 姫が生まれれば家臣に臣籍降嫁させ、竜の血は少しずつ高位貴族にも流れていった。
 竜族は竜王には本能で逆らえない、世界の中心として君臨するヴァーミリオン王国にとってとても都合が良い血筋達だった。


 魔法と魔物がいるファンタジー世界という事もあり、生きとし生ける者全てに魔力がある。

 魔力と生命力はイコールで繋がっており、魔力量が多い種族はおのずと寿命も長い。
 種族別では人族が一番短く、次点で妖精族、魔族、竜族と続く。

 四種族の中で、やはり竜族の寿命は他種族とは桁違いに長い。
 魔力量が他種族とは圧倒的に総量が違うのだから桁違いに違うのも当然だろう。

 璃音の父であるアラクシエルの見た目は十代後半か二十代前半にしか見えないが、既に三百歳を越えているらしい。

 悠久の時を生きる竜族の中では三百歳など人族の幼児程度の年齢だと豪快に笑ったのは誰だったっけ…?
 欠片も無いと思っていたイオフィエルとしての記憶の欠片のような物が浮かんだり消えたりする。
“この風景を見た事ある気がする”のような、デジャヴを感じるのに似ている。
 そんなデジャヴのような何処かで見た事、訊いた事が時々記憶の片隅を刺激している。
 でも―――実はそんなに記憶を取り戻す事を切望していない。
 戻れは戻ったで喜ぶだろうが、戻らなかったら戻らなかったで問題ないと思う。
 母様が居ないと分かった今、父様と仲良く合法的にいちゃいちゃする予定だから、全然問題ないのだ!
 むしろ、記憶を失った事を心配しているお父様が余計に過保護になって構ってくれているラッキー! と思うくらい開き直っている。
 可哀想な小さな娘とお父様が思ってるのを利用して添い寝辺り強請ったらしてくれるかもしれない。
 璃音は使えるものは何でも使うタイプである。






 竜族は寿命が尽きる百年前くらいまで、肉体の全盛期を保つ為、二十代くらいの見た目と能力や強さを保つ。
 よって竜族の見た目で年齢は推し量れないとのことだった。

 そんな世界の中で一番の規格外の竜族において、その中でも竜王は魔力が更に桁違いに高く、信じられない事に一万年程度は生きるとのことだった。

 初めて聞いた時、あまりにも凄い数字を訊いて茫然としてしまった。
 千年でも驚愕の寿命なのに、それの十倍だなんて想像も出来ない。
 流石、創生神の眷属。
 他種族との差別が半端ない気がします…。




 私には父しか居ないというのは、離縁、死別、そのような理由ではないとの事。



 私は特殊なスキルによって、父の娘になったと教えられた。
 スキルで娘…? と首を傾げた私に、お父様は丁寧な説明を始める。


 竜王の特別固有スキルというモノがあり、それは竜王の特別な魔力によって形成した物に対し、命を芽吹かせ誕生させる事が出来るという。

 え…それ神といっても遜色ないんじゃないの? 竜王チートなの?
 世界のパワーバランスとか大丈夫なの? と考えて、そもそもヴァーミリオン王国が世界の中心となって強い権力を誇ってるのだから関係ないのかもしれないけど、命を生み出すのは凄すぎでしょう、創生神様は何て力を授けてるのだ。

 しかし、その特別スキルは制限があり、連発出来ない。
 そして、スキルを使用するには使用する竜王自身の魔力量がかなり高くないと発動されない。
 その時の竜王によって魔力量の強さも違うようなので、そもそもスキルを使えなかった竜王も過去には居たそうだ。
 そして、命をひとつ生み出すと、千年程使用した分の魔力量が復活しない。など、それなり制限はあるらしい。
 竜王の寿命の一割程度の年数が適用されるって事だ。


 竜王の魔力の塊から生み出された命は、命の核が竜王の魔力のみで構成されている為、血や骨、細胞の隅々まで竜王の魔力を帯びている。
 という事は、娘や息子といっても、嘘ではない…のか? 竜王本人がそう言いきればそれが真実となるのだろう。

(けど、竜王そのもので構成されてるなら、息子や娘っていうより、竜王の対の双子的な感じじゃないのかなー? 力の弱い方の双子みたいな…)

 お父様にスキルで生み出された私の話を説明されながら、前世の知識がチラチラと頭をよぎる。

(魔力は生命力の源ではあるけど、遺伝子とはまた違うってこと?)
 魔力で構成された身体の仕組みは謎だが、ちょっと興味が湧く。

(妖精族って小さいのかな? 魔族ってやっぱり角とか生えてるのかな?)

 アラクシエルの説明が難しい話に入っている為に、小指の先程も理解出来ていない(しようとしていない)璃音は、自分の妄想の世界に没頭する。

 璃音がこっそりとアラクシエル博士の魔力生命学と心の中で仮に名づけた講義は、璃音の訊く気の無さから、もっと知能指数が要らない会話へと流れていく。

「私は歴代の偉大なる竜王達の中で最年少の年若い竜王だ。竜族の中ではやっと独り立ちをするよう促される程度の年齢だ。老齢の元竜王達からすれば幼子のような存在だろう。」

 ふう…っと切なげな溜息をつく、美麗な竜王様で私のお父様は、憂鬱そうに話し続ける。
 父親が真面目な話をしているというのに、目の前の鑑賞対象が凄すぎてそのパーツをついつい愛でてしまう事を許して欲しい。
 会話をする為に口を開くだけで、その整った形のいい唇の動きだけに集中してしまう。

(ここまで美し過ぎると、その場の視線を全てかっさらって奪う存在だろうなー、常に人に見られるって結構なストレス感じてそう…。世界最強の竜王だから良かったものの、力の無い存在だったら無理矢理手籠めにされちゃうよ、こわいこわい。)

 アラクシエルが頑張って話しているというのに、うんうんと相槌を打ち話半分で訊きつつも、思考は妄想世界へと飛んでいる。

「前竜王である私の父は私へと代替わりをすると、母を伴い悲願であった世界を巡る旅へ嬉々として旅立った。まだ独り立ちを促される程度の年齢の私を置いて旅立つ事に多少の心配はするかと思うだろう? 振り返る事なく旅立ったよ。酷い親だろう?」

 困ったように眉を下げ、私の目を覗き込むように見つめてくる。

(こ、これは…、視界の暴力…っ!)

 全く酷い親ですねというように、高速で前後にコクコクと頷き同意を示すと、アラクシエルは覗き込んだ事により璃音とかなり近い距離になっていた顔を上げてくれた。

(ふぅ…命拾いした。転生してそうそう動悸の激しさによる心臓麻痺で死亡とかなるとこだったわ。)

 アラクシエルの話は段々と愚痴っぽさを帯びてくる。

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