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第七話 黒猫亭
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「いやー美味しかったねー」
『あの男、おそらくお前の本性に気づいたぞ』
「本性? やだなぁ私はずっと素で話してたよ」
『嘘つけ』
「あっ、そうだ金のこと教えてよ」
この世界のお金は、銅貨、銀貨、金貨、白金貨で分けられている。
価値は銅貨が日本円でいう100円で、銀貨が1000円、金貨が1万円だそうだ。
この流れだと白金貨は10万円になると思ったが、実際は100万円の価値があるらしい。
「ということはもらったお金は金貨10枚だから、10万円ってこと!?」
『そういうことになるな』
「うわぁーしばらく働かなくても生活できたじゃん。まあいいや、とりあえず宿探そう」
ハリーさんの屋敷を出る時、おすすめの宿を教えてもらっていた。
名前は黒猫亭。
従魔も一緒に泊まれて、ギルドからは少し離れたところにあるため空いているそうだ。
簡単に書いてもらった地図を見ながら探すと、それらしき建物を見つける。
「すみませーん」
「いらっしゃいませ! お泊まりですか?」
中に入るとカウンターに小学生くらいの女の子がいた。
「私はリン、あとこのダイスっていう鳥もいるんだけど」
「私はエバっていいます! リン様とダイス様ですね! 1泊銀貨2枚となります!」
『まあ妥当な値段だな』
「とりあえず5泊分であとは追加していく感じでいい?」
「はい! 食堂で部屋の鍵を見せてくだされば無料で食事できるので良かったらどうぞ!」
「時間とか決まってるの?」
「いえ、何食でも、好きな時間で大丈夫ですよ!」
朝昼晩の食費も含めて1泊銀貨2枚というのは安すぎる。
こんなに安くて破産しないのかと心配になるが、まぁ私には関係ない。
5泊分の料金、金貨1枚を支払い、部屋に案内してもらった。
「朝の10時にシーツ交換で伺います!」
「ありがとう。あっ、私と話す時は敬語じゃなくていいからね。堅苦しいのは苦手なんだ」
「わかった! それじゃあおやすみなさい、リンさん!」
「おやすみ~」
案内された部屋は一人部屋にしては広々としていて、落ち着く雰囲気だった。
体を魔法で綺麗にし、ベッドにダイブする。
「うわぁーふっかふかー」
久しぶりの柔らかい布団に安心する。
ダイスが何か言っているが、気持ちよすぎてすぐに寝てしまった。
『すず! 起きろ! エバが困っているぞ!』
「ん~?」
「あっ、リンさんおはよう! シーツ交換に来たんだけど」
ダイスにつつかれて起きるとは、なんて最悪な朝なのだろうか。
ん?
「もう10時?」
「そうだよ! リンさん全く起きないからどうしようかと思ったよ」
「ごめんごめん、ふかふかでつい寝過ごした」
すぐによけてエバちゃんの作業を手伝う。
「いつも手伝ってるの?」
「うん! でもうちはお客さん少ないからほとんどやることないけど」
「へぇーえらいね!」
「そんなことないよ! はい、できた! ご飯は食べる?」
「うん」
「じゃあ母さんに言っておくから食堂に来てね!」
そう言ってエバちゃんは部屋を出ていった。
『今日の予定は?』
「とりあえず身分証作って、時間あれば広範囲の気配探知の練習かな」
『今日は捕まえないのか?』
「いやー気配探知使えないから今日は無理だと思うけどねー。よし、ご飯行くよ」
『練習なんか必要ないと思うが……まあいいか』
後ろでダイスが何か呟いていたが、聞こえなかった。
それよりも遅いやつは置いていくべきだ。
ダイスが部屋に残っているのを見て、部屋の鍵を閉めた。
「おはようございまーす」
「リンさん! 好きな席に座って待ってて!」
食堂には誰もいなかった。
まあこんなに遅く起きたのだから当然だが。
すると1羽の鳥が飛んで食堂に入ってくる。
『おい! なぜ鍵を閉めるんだ!』
「えっごめんてっきり外に出てたと思った」
『嘘つけ! 絶対わざとだろ?!』
「わざとじゃないって、それにほら、部屋の窓空いてたでしょ?」
『やはりわざとだったな!』
いや、部屋の窓が空いていたのは換気のためで本当にたまたまだったのだが、自分で首を絞めるような発言をしてしまった。
怒るダイスを宥めていると、料理が運ばれてくる。
「リンさんダイスとお話できるの?」
「そうだよー」
「へぇーすごい! 本当に仲良しなんだね!」
「いやー今もすっごい怒られてるけど」
テーブルに置かれた皿には美味しそうなトーストとスクランブルエッグがあった。
すると向かえにエバちゃんも座る。
「今からご飯?」
「そう! あとでお母さんも来るよ」
「そっか、じゃあ挨拶しないとだね。いただきまーす」
トーストに1口かぶりつくと、染み込んだバターの味が口の中に広がった。
夢中になって食べていると、一人の女性が皿を持ってやってくる。
「美味しそうに食べてくれるねぇ」
「美味しいですから」
「私はエバの母のマイアだ。よろしくね」
「私はリンで、こっちはダイスです。お世話になります」
「冒険者かい?」
「今日登録しようと思ってまして」
「そうかい、若いのにえらいねぇ」
「いえいえ、もうすぐ30歳のおばさんですよ」
「えっ?! リンさん10代じゃないの?」
「今年で26歳だったかな」
特に童顔という訳ではないのだが、この世界では若く見えるらしい。
「まだ私に比べちゃあ若いもんだよ」
そんな感じで少し世間話をしていると、あっという間に食べ終わってしまった。
どうやら今この宿に泊まっているのは私しかいないらしく、色々と貸切状態だそうだ。
「ごちそうさまでした!」
「気をつけて行ってくるんだよ」
「はい!」
『あの男、おそらくお前の本性に気づいたぞ』
「本性? やだなぁ私はずっと素で話してたよ」
『嘘つけ』
「あっ、そうだ金のこと教えてよ」
この世界のお金は、銅貨、銀貨、金貨、白金貨で分けられている。
価値は銅貨が日本円でいう100円で、銀貨が1000円、金貨が1万円だそうだ。
この流れだと白金貨は10万円になると思ったが、実際は100万円の価値があるらしい。
「ということはもらったお金は金貨10枚だから、10万円ってこと!?」
『そういうことになるな』
「うわぁーしばらく働かなくても生活できたじゃん。まあいいや、とりあえず宿探そう」
ハリーさんの屋敷を出る時、おすすめの宿を教えてもらっていた。
名前は黒猫亭。
従魔も一緒に泊まれて、ギルドからは少し離れたところにあるため空いているそうだ。
簡単に書いてもらった地図を見ながら探すと、それらしき建物を見つける。
「すみませーん」
「いらっしゃいませ! お泊まりですか?」
中に入るとカウンターに小学生くらいの女の子がいた。
「私はリン、あとこのダイスっていう鳥もいるんだけど」
「私はエバっていいます! リン様とダイス様ですね! 1泊銀貨2枚となります!」
『まあ妥当な値段だな』
「とりあえず5泊分であとは追加していく感じでいい?」
「はい! 食堂で部屋の鍵を見せてくだされば無料で食事できるので良かったらどうぞ!」
「時間とか決まってるの?」
「いえ、何食でも、好きな時間で大丈夫ですよ!」
朝昼晩の食費も含めて1泊銀貨2枚というのは安すぎる。
こんなに安くて破産しないのかと心配になるが、まぁ私には関係ない。
5泊分の料金、金貨1枚を支払い、部屋に案内してもらった。
「朝の10時にシーツ交換で伺います!」
「ありがとう。あっ、私と話す時は敬語じゃなくていいからね。堅苦しいのは苦手なんだ」
「わかった! それじゃあおやすみなさい、リンさん!」
「おやすみ~」
案内された部屋は一人部屋にしては広々としていて、落ち着く雰囲気だった。
体を魔法で綺麗にし、ベッドにダイブする。
「うわぁーふっかふかー」
久しぶりの柔らかい布団に安心する。
ダイスが何か言っているが、気持ちよすぎてすぐに寝てしまった。
『すず! 起きろ! エバが困っているぞ!』
「ん~?」
「あっ、リンさんおはよう! シーツ交換に来たんだけど」
ダイスにつつかれて起きるとは、なんて最悪な朝なのだろうか。
ん?
「もう10時?」
「そうだよ! リンさん全く起きないからどうしようかと思ったよ」
「ごめんごめん、ふかふかでつい寝過ごした」
すぐによけてエバちゃんの作業を手伝う。
「いつも手伝ってるの?」
「うん! でもうちはお客さん少ないからほとんどやることないけど」
「へぇーえらいね!」
「そんなことないよ! はい、できた! ご飯は食べる?」
「うん」
「じゃあ母さんに言っておくから食堂に来てね!」
そう言ってエバちゃんは部屋を出ていった。
『今日の予定は?』
「とりあえず身分証作って、時間あれば広範囲の気配探知の練習かな」
『今日は捕まえないのか?』
「いやー気配探知使えないから今日は無理だと思うけどねー。よし、ご飯行くよ」
『練習なんか必要ないと思うが……まあいいか』
後ろでダイスが何か呟いていたが、聞こえなかった。
それよりも遅いやつは置いていくべきだ。
ダイスが部屋に残っているのを見て、部屋の鍵を閉めた。
「おはようございまーす」
「リンさん! 好きな席に座って待ってて!」
食堂には誰もいなかった。
まあこんなに遅く起きたのだから当然だが。
すると1羽の鳥が飛んで食堂に入ってくる。
『おい! なぜ鍵を閉めるんだ!』
「えっごめんてっきり外に出てたと思った」
『嘘つけ! 絶対わざとだろ?!』
「わざとじゃないって、それにほら、部屋の窓空いてたでしょ?」
『やはりわざとだったな!』
いや、部屋の窓が空いていたのは換気のためで本当にたまたまだったのだが、自分で首を絞めるような発言をしてしまった。
怒るダイスを宥めていると、料理が運ばれてくる。
「リンさんダイスとお話できるの?」
「そうだよー」
「へぇーすごい! 本当に仲良しなんだね!」
「いやー今もすっごい怒られてるけど」
テーブルに置かれた皿には美味しそうなトーストとスクランブルエッグがあった。
すると向かえにエバちゃんも座る。
「今からご飯?」
「そう! あとでお母さんも来るよ」
「そっか、じゃあ挨拶しないとだね。いただきまーす」
トーストに1口かぶりつくと、染み込んだバターの味が口の中に広がった。
夢中になって食べていると、一人の女性が皿を持ってやってくる。
「美味しそうに食べてくれるねぇ」
「美味しいですから」
「私はエバの母のマイアだ。よろしくね」
「私はリンで、こっちはダイスです。お世話になります」
「冒険者かい?」
「今日登録しようと思ってまして」
「そうかい、若いのにえらいねぇ」
「いえいえ、もうすぐ30歳のおばさんですよ」
「えっ?! リンさん10代じゃないの?」
「今年で26歳だったかな」
特に童顔という訳ではないのだが、この世界では若く見えるらしい。
「まだ私に比べちゃあ若いもんだよ」
そんな感じで少し世間話をしていると、あっという間に食べ終わってしまった。
どうやら今この宿に泊まっているのは私しかいないらしく、色々と貸切状態だそうだ。
「ごちそうさまでした!」
「気をつけて行ってくるんだよ」
「はい!」
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