上 下
3 / 11

第三話 スパルタ

しおりを挟む
「それで、私は何をすればいいの?」

 異世界生活楽しんでと手紙に書いてあったが、まずこの世界がどういう世界なのか分からない。

『とりあえず冒険者になったらどうだ? 依頼をこなせば生活するぐらいは稼げる』
「ふーん、じゃあそうしよ」
『その前に、まず魔法の練習からだ! すずの発動速度ではすぐに魔物に襲われるぞ』

 確かに、異世界に連れてこられたとはいえ無惨な死に方はしたくない。
 相手にはダイスがなってくれるそうで、しばらくの間スパルタ教育を受けることになったのだった。



『まあ良くなってきたんじゃないか?』

 1週間ほどたった頃、やっとダイスの口から褒め言葉が出てきた。
 初めはただ力を込めていただけだった魔力も、今ではしっかりと認識して扱えるようになっている。
 またイメージもすんなりできるようになり、教えてもらった魔法は全て使いこなせるようになっていた。
 最初はボコボコにやられていた私も、今はダイスとほぼ互角というところまで追い詰められるようになってきている。

『まっ、まだまだだがな』
「はいはい、それで? もうそろそろ美味しくて温かい食事をしたくなってきたんだけど?」

 魔法を鍛えている間はずっと木の実を採って生活していた。
 ちなみに風呂なんかあるわけもないため、体は魔法で綺麗にする。
 美味しいご飯にあったかいお風呂。
 日本にいた時の生活がどれほど快適なものだったのか思い知らされた。

『まあこれくらいの実力があれば冒険者としてもそこそこやっていけるだろう。よし、では明日人里に向けて出発するぞ』
「はぁ、なんでダイスに仕切られてるわけ?」
『いくら主といえど、弱いやつには従う気はないからな』
「……もうちょっとで勝てたもん」
『だが、負けたのは事実だろ』
「……寝る、おやすみ」

 何も言えなくなり、とりあえず寝ることにする。
 魔法の練習をしていると時間はあっという間にすぎるものだ。
 魔物が襲ってこないよう周りに結界を張ってから眠りについた。




 この世界には魔物がいる。
 魔物は人に害をなすものとして認識され、冒険者が依頼を受けて討伐するようだ。
 とまあ、これは全てダイスに教えてもらったものなのだが、聞いてて本当に異世界に来てしまったんだと少し怖くなってきた。
 とは言っても帰る方法はないのだが。

 しかしこの状況の中で良かったこともある。
 それは私が異世界漫画を読み漁っていたことだ。
 まさか自分が異世界に転移してしまうとは思ってもみなかったが、ダイスの説明と照らし合わせても自分の認識とあまり変わっているところがなく、少しだけ安心する。

『おい、そろそろ起きろ!』

 どうやら回想シーンはこれで終わりみたいだ。
 しばらく続きそうなこの旅、憂鬱なのに変わりはないが少しだけ楽しんでもいいかもしれない。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...