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第五章〜ディフォン〜

しばと不思議な花園

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『しばー!』

 別れたところに戻ってくるが、しばの姿はない。
 周りに人がいないことを確認して人間の姿に変身した。
 そして再び呼びかける。

「しばー?」

 しかし何度呼びかけてもしばは戻ってこなかった。
 魔法で探そうとも思ったが、先ほどの調子を考えるとほとんど使い物にならないだろう。

(遠くまで行ったのかな、とりあえず歩いて探すか)

 どの方向に行けばいいのか迷い、とりあえず別れた時にしばが走っていった方へ足を進めた。



 しばらく進んでいると、ふと森の匂いとは違う匂いがした。
 
「甘い……花の匂い?」

 気になって匂いをたどってみると洞窟にたどり着く。
 花の匂いはやはりここからきていたようで、風に乗って甘い匂いがきている。

「この先に何かあるのかな……」

(真っ暗で怖い……。でも風があるなら奥の方は吹き抜けになってるはず)

 魔法でライトをだし、辺りを明るく照らす。
 何も明かりがない時よりもいくらかマシになった。
 しかし怖いのは変わらず、ゆっくり足を進める。

 1歩進むごとに匂いは強くなっていき、しばらく進むと光が見えてきた。
 走って光の方に向かうと一気に視界が眩しくなる。
 私は咄嗟に目を瞑った。



 恐る恐る目を開けると視界には色鮮やかな花畑があった。

「うわあ、きれい……!!」
 
 そこは森とも洞窟とも違う雰囲気で、まるで別世界のように感じる。

「洞窟の奥にこんなところがあったんだ」

 高い岩に囲まれている花畑はとても広く、一面に色々な種類の花が咲いていた。
 すると何かが一直線にこちらへ向かってきているのが見える。

「しば!」

 勢いよく飛び込んできたしばを全身で受け止めた。

「ここにいたんだね!」
『ワンッ!!』

 全力で尻尾を振っているのがまた可愛い。
 するとしばは体をはなし、どこかへ向かおうとした。
 視線でついてこいと言われた気がしたため、後を追いかける。

 すると花畑の中なのに一切花が咲いておらず、代わりに大理石のような石が敷き詰められているところについた。
 まるで祭壇のようである。
 しばがある一点を見つめていたため私も同じところを見つめていると、そこが急に光り始めた。

「まぶしっ」

 すると先ほどまで何もなかったところに人が立っているのに気づく。

「えっだれ?」
「初めまして。あなたがカナさんですね?」

 その女性は会ったことがありそうな雰囲気の女性だった。
 しかしその反応は初めてのものである。

「はい、あなたは……」
「すみません。まだ私のことは話せないのです。しかしきっと、お話しする時がきます!」
「どういうことですか?」

 しかし話している間にも女性の体が透けてきている。

「私はいつでもあなたを見守っています。その時が……うぞこのせ……活を楽しん…………」

 だんだんと声も掠れて後半はほとんど聞き取れなっかった。
 同時に女性の姿も光の粒となって消えてしまう。

「……誰だったんだろうあの人」

 色々気になることはあるが、まだ話せないと言っていた。
 ならばきっとまた会えるだろうと思い、気持ちを切り替える。

「もしかしてしばが会わせてくれたの? ってそんなことないよね。とりあえず帰ろっか!」


 再び洞窟を通って森に戻った後、きた時と同じように鳥に変身して帰った。
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