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第五章〜ディフォン〜
戦
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「「「「「「うぉーーー!」」」」」」
その声はまるで合戦でも始まるのかというような、そんな力強い声だった。
気配を消し、声のする方に近づくと鎧をまとった兵士が戦っているのが見える。
それは時代劇などで見るような光景だが、実際に斬られて命を落としているのを見ると現実なんだということを思い知らされたような気がした。
「しば、危ないから隠れててね」
声を潜めて言うが、いつも返事をするしばが何も言わない。
すると突然、しばがどこかに向かって走り始めた。
「ちょっと、しば!」
はぐれないようについて行くが、どこに向かっているのか全く検討がつかない。
しばらくして森の中を流れる川に着いた。
「しば、急に走り出してどうしたの? 水が飲みたかったなら魔法でだしたのに」
川にくる理由は水を飲むためか、食料を調達するため、もしくは水浴びをしたかったか。
それくらいしか思い浮かばなかった。
しかし、朝ごはんは既に食べており、水もいつも魔法で出していたため、どれも理由にはならない。
当のしばは、川岸にちょこんと座るばかりで、特に水浴びをする様子もなかった。
私も隣に座り、しばに話しかける。
「急に走り出したからびっくりしちゃった。でも……」
正直言って、あの光景は見たくなかった。
人間が人間を斬り、強い方が弱い方を殺す。
動いてしまい気づかれたらどうなるか分からなかったため動けなかったが、人が死んでいくところを初めて見た私にはかなりショックを与えた。
すると突然、首の横に刀が当てられた。
「っ、」
「動くな。お前何者だ?」
(サーチで探っていたはずなのに全く気づかなかった?! 最近鈍ってるな……)
後ろにはあと2人の気配がある。
隣にいるしばは後ろの男達を見ているだけで、特に怖がっている様子もなかった。
「早く答えろ」
「……私は、何者なんでしょうか?」
「どういう意味だ?」
質問に質問で返す。
すると予想していた通り、刀を向けてきた男は動揺した。
(今!)
私がしゃがんでいて相手が立っているのをいいことに、回し蹴りをして男の足を払う。
もちろん子供の力では無理だとわかっていたため少しだけ身体強化の魔法を使った。
「うわっ」
男は体勢を崩し、しりもちをつく。
私はしばを背後に隠して、魔法で剣を作った。
「何も無いところから剣が?!」
「この子……」
「名前を聞く時は、先に自分から名乗るものではありませんか?」
どうすればいいかわからないが、そう口にした。
立ち上がった男に刃を向け、反応を待つ。
「……俺は山県昌景だ」
「私はカナといいます」
山県昌景、というと武田信玄に仕えた武将の名前だっただろうか。
確か二期四天王のうちの1人だった気がする。
他に馬場信春、高坂昌信、内藤昌豊がいたはずだ。
「お前は敵の間者か?」
「いいえ、と言っても信じてもらえないでしょうが、私は間者ではありません。第一にあなた達が誰かも知らないし、あなた達の敵も知らない」
「ではなぜあそこにいた」
「たまたま通りかかっただけです」
そう言うと男達は顔を合わせる。
(さすがに無理があるか、でも言ってることは本当だしな……)
「とにかく、お前の身の潔白が証明されるまで俺達とこい」
「えー、私用事があるので失礼したいんですけど……」
すると後ろにいた男の人が話しかけてきた。
「別にここで逃がしてあげてもいいけど、ずっと追いかけられることになると思うよ?」
そんなの振り切れるけど魔法がバレるし、正直言って面倒くさい。
「じゃあ、逃げないと約束するので拘束はしないでください」
「ああ、わかった」
「ちょっ、昌信さん?!」
この男の人が高坂昌信か。
「だってこんな小さな子供を拘束するなんて可哀想だろう? まあ、君は普通の子供じゃないようだけど」
(なかなか鋭いな……)
「逃げないって約束するんだよね?」
「はい、あなた達が私に危害を加えようとしなければ」
「よし、とりあえず戻ろうか」
ちなみに後1人の男の人は内藤昌豊というそうだ。
これでこの人達の主君が誰か検討がついた。
その声はまるで合戦でも始まるのかというような、そんな力強い声だった。
気配を消し、声のする方に近づくと鎧をまとった兵士が戦っているのが見える。
それは時代劇などで見るような光景だが、実際に斬られて命を落としているのを見ると現実なんだということを思い知らされたような気がした。
「しば、危ないから隠れててね」
声を潜めて言うが、いつも返事をするしばが何も言わない。
すると突然、しばがどこかに向かって走り始めた。
「ちょっと、しば!」
はぐれないようについて行くが、どこに向かっているのか全く検討がつかない。
しばらくして森の中を流れる川に着いた。
「しば、急に走り出してどうしたの? 水が飲みたかったなら魔法でだしたのに」
川にくる理由は水を飲むためか、食料を調達するため、もしくは水浴びをしたかったか。
それくらいしか思い浮かばなかった。
しかし、朝ごはんは既に食べており、水もいつも魔法で出していたため、どれも理由にはならない。
当のしばは、川岸にちょこんと座るばかりで、特に水浴びをする様子もなかった。
私も隣に座り、しばに話しかける。
「急に走り出したからびっくりしちゃった。でも……」
正直言って、あの光景は見たくなかった。
人間が人間を斬り、強い方が弱い方を殺す。
動いてしまい気づかれたらどうなるか分からなかったため動けなかったが、人が死んでいくところを初めて見た私にはかなりショックを与えた。
すると突然、首の横に刀が当てられた。
「っ、」
「動くな。お前何者だ?」
(サーチで探っていたはずなのに全く気づかなかった?! 最近鈍ってるな……)
後ろにはあと2人の気配がある。
隣にいるしばは後ろの男達を見ているだけで、特に怖がっている様子もなかった。
「早く答えろ」
「……私は、何者なんでしょうか?」
「どういう意味だ?」
質問に質問で返す。
すると予想していた通り、刀を向けてきた男は動揺した。
(今!)
私がしゃがんでいて相手が立っているのをいいことに、回し蹴りをして男の足を払う。
もちろん子供の力では無理だとわかっていたため少しだけ身体強化の魔法を使った。
「うわっ」
男は体勢を崩し、しりもちをつく。
私はしばを背後に隠して、魔法で剣を作った。
「何も無いところから剣が?!」
「この子……」
「名前を聞く時は、先に自分から名乗るものではありませんか?」
どうすればいいかわからないが、そう口にした。
立ち上がった男に刃を向け、反応を待つ。
「……俺は山県昌景だ」
「私はカナといいます」
山県昌景、というと武田信玄に仕えた武将の名前だっただろうか。
確か二期四天王のうちの1人だった気がする。
他に馬場信春、高坂昌信、内藤昌豊がいたはずだ。
「お前は敵の間者か?」
「いいえ、と言っても信じてもらえないでしょうが、私は間者ではありません。第一にあなた達が誰かも知らないし、あなた達の敵も知らない」
「ではなぜあそこにいた」
「たまたま通りかかっただけです」
そう言うと男達は顔を合わせる。
(さすがに無理があるか、でも言ってることは本当だしな……)
「とにかく、お前の身の潔白が証明されるまで俺達とこい」
「えー、私用事があるので失礼したいんですけど……」
すると後ろにいた男の人が話しかけてきた。
「別にここで逃がしてあげてもいいけど、ずっと追いかけられることになると思うよ?」
そんなの振り切れるけど魔法がバレるし、正直言って面倒くさい。
「じゃあ、逃げないと約束するので拘束はしないでください」
「ああ、わかった」
「ちょっ、昌信さん?!」
この男の人が高坂昌信か。
「だってこんな小さな子供を拘束するなんて可哀想だろう? まあ、君は普通の子供じゃないようだけど」
(なかなか鋭いな……)
「逃げないって約束するんだよね?」
「はい、あなた達が私に危害を加えようとしなければ」
「よし、とりあえず戻ろうか」
ちなみに後1人の男の人は内藤昌豊というそうだ。
これでこの人達の主君が誰か検討がついた。
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