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前生徒会長、満を持して登場。
しおりを挟む前生徒会長、満を持して登場。
俺は困っていた。
相当困っていた。なぜなら、俺は新入生歓迎会の時に貰った指輪を今だに持っているのだ。
無くしたらいけないので、鎖を通して首にかけている。
が、確か愛鵡先輩はこの指輪は代々受け継がれてきたといっていた。
俺の記憶が確かなら、愛鵡先輩のお爺さまがパリで有数の貴族の出とかで、この指輪はいわば家紋みたいな…ものなのではないだろうか?
恐いことを考えながら、俺はじっと生徒会室の自分の机で、黙々と書類の束を処理していた。
「姫はいるか?」
コンコンと軽くノックされ、返事も聞かずに生徒会室にその人物は入って来た。
彼を見るなり、室内が驚愕に包まれる。
むろん、俺もその一人で……ただ名前を譫言のょうに呟いたのだった。
「帝先輩?」
「ああ、姫。いてくれて良かった」
俺を確認して、広大路帝(こうだいじみかど)、帝先輩はこちらへとゆっくりと歩いて来た。
距離は短いのにどこか悠然とした様は圧倒されるものがある。
他の事務員、小柴達に軽く挨拶をして俺の傍に来ると、ふわりと抱きしめられた。
そして軽く距離をとり、頭を優しく髪を撫でられた。
帝先輩の長い指が俺の銀髪を搦め捕って、弄ぶ。
「久しぶりだな、元気にしていたか?ますます綺麗になったな」
「全然久しぶりではないでしょう。たしか先日そちらに資料をお届けした時にお会いしたはずですよ?今回はどんな件で来られたんですか?」
苦笑しながらも、俺は帝先輩から離れた。この人はスキンシップが好きで、いつも後輩を構うのだ。
「帝前生徒会長様、用件を早く言ってくださいませんか?」
「よぉ真司。相変わらず不機嫌な顔をしているな」
帝先輩の後ろに振り返り、軽やかに挨拶をした。
真司先輩は何だか不機嫌そうな顔をしたが、その後ろでは無表情の愛鵡先輩や、睨み付ける早瀬と警戒している藤村や小柴達がいた。
「相変わらず俺の姫様はモテるようだな」
「誰が帝先輩のになったんですか。ふざけた事を言わないでください」
「つれないな」
帝先輩は、俺の言葉に肩を竦めたが、何とも思っていないみたいだった。
「所で、新入生歓迎会で面白い事をしたそうだな。なんでも姫に家紋つきの指輪を渡したそうじゃないか。俺としても心中穏やかじゃないんだよ、愛鵡」
「……は?帝先輩?」
先輩の言っている意味がよく理解できない。何故、指輪の事を知っているのかとか、何で穏やかじゃないのか、わからない。
「私は桜姫が好きです。だから指輪を渡したんです。羨ましいのでしたら、同じ事をしたらいいかがでしょう」
凛とした声で、愛鵡先輩が告げた。
帝先輩はまじまじと愛鵡先輩を見てから、爆笑した。
それこそ腹を抱えて。
その様子に愛鵡先輩が眉を潜めたが、帝先輩は気にしていないようだった。
「俺がそんな事をするわけないだろう。欲しいものは奪ってでも手に入れる」
ぞうさもない事だ。帝先輩はそういうと、ひらひらと手を振り、生徒会室を出ていことする。
俺は直ぐさま後を追い掛けて、帝先輩に問い掛けた。
「帝先輩!!結局、何しにいらっしゃったんですか?」
「ん?あぁ……敵情視察かな…………しかし、姫は愛鵡みたいなのがお好みか。まぁ渡すつもりはないけどな」
「……っな!何をざれ言を……!」
「……自覚なかったのか?愛鵡に好きだと言われて嬉しそうに笑っていたぜ?」
囁くように言われて、俺にもチャンスはまだありそうだなと、意味不明な言葉を残して帝先輩はその場を後にした。
俺は、無意識に胸の指輪を握りしめていた。
この指輪は返せそうにない。ふいに俺はそんな事を考えたのだった。
終幕
次回問題だらけの運動会。
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