桜姫の受難 

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桜姫の受難

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俺の名前は桜庭姫。
姫という女らしい名前とは裏腹に、身長177にノンフレームの眼鏡。
髪は母方の祖母がフランスの血を引いているために、銀色だ。
自分で言うのもなんだが中々の美青年だ。
全寮制の高校に進学して早二年。
俺は生徒会事務役員と副級長というポジションを持ち、周りからも結構慕われているはず。
実際に慕われているかは、さすがの俺でもはっきりとはいえない。

学校生活には問題なく、友人にも恵まれている。
そんな俺の頭を悩ませている事柄が一つ。

「よぉ、桜姫」

それは生徒会役員の上役の方々だ。
三年で生徒会長の池崎真司、同じく三年の副会長である 愛鵡(まなむ)・L・ノイマン。
俺と同じ学年で生徒会会計の早瀬稔。
一年でありながら生徒会書記に抜擢された藤村尚志。
目下この四人が俺の悩みの種であった。

今、食堂で一人夕食を食べていると、ありがたくもないあだ名で俺を呼んだのは生徒会長の真司先輩だ。
彼は紺に近い、艶やかな黒髪に、自身に満ちあふれた眼が魅力の美形だ。

「私たちも一緒にさせてもらうね」

すでに段定型で、俺の隣に座ってくる副会長の愛鵡先輩はきれいな長い金髪を一つに縛っている。紳士的な物腰と優しい物言いはまさに貴公子で憧れるが、いかんせん、発言内容がいただけない。

「相変わらず綺麗な髪だね。私の対、まるで運命に導かれたようだ。………嗚呼、それにしても早く君を犯して、私のモノをいつまでもくわえて、入れっぱなしにしたいよ。その時はいっぱい鳴かせてあげるからね?」

うっとり見つめられた後、にこりと優雅に微笑まれても、言われた言葉はえげつない。
俺は軽く聞き流して、黙々と食事を続ける。


「ダメですよ、愛鵡先輩。姫は俺の、ですから」

いつからこいつのものになったのかは、甚だ不明であるが、向かいに座った生徒会会計の早瀬に、俺は冷ややかな目線を送った。
奴はそのアッシュブラウンに染められた髪の毛をかきあげてから、何を思ったか、片目をつぶってウィンクをしてきた。
きもちわりぃ……。
こいつは万年タラシ男と言う異名をもつ。
因みに会長は万年発情野郎、副会長は変態野郎。
まぁ、今のところ呼んでいるのは俺だけだけど。

「先輩方、姫先輩は繊細なんですから、そんな変な事いわないでください」

静かな声音で、三人を制したのは一年で、生徒会書記の藤村尚志。
薄い色素の髪に、メタルブルー色の縁の眼鏡を掛けた今後期待の一年だ。
一見、常識人のように見え、無害そうではあるが侮るなかれ。

「それに、姫先輩は先輩方の使い古した粗○ンよりも、俺のモノで喘がせた方が一番喜びますよ」

こいつはもはや、第二の愛鵡先輩である。
本音で言えば、こいつら四人とも節操がない。
この男子校の中で、可愛い子や美人な子はほぼ生徒会に喰われたといっても過言ではないだろう。
そんな下半身を主張して歩いて回っている、下劣な生徒会四人に俺は今、言い寄られて迷惑している。

一年の頃は、俺になんの興味もなかったようなのに、二年になって、彼らが今の役職について過ごすようになってから、こんな風に卑猥な言葉を投げ付けれている。

幸いなことは、男子校にも関わらず、男に人気な彼らのシンパとの間に諍いや、嫌がらせなどかない事だ。
不思議なことに、他の奴らが彼ら四人に近づくと、酷いいじめや、呼び出しをするのに、俺は一度もない。


「ちっ、たくよ~前生徒会長達が大学部に進学して、やっと手が出せると思ったのに……お前らまで狙ってたなんてよ」

「それは、中等部でも桜先輩の美しさは有名でしたしね」

「一年時は帝前生徒会長達の牽制が凄くて、手がだせなかったッスからね」

忌々しそうな声音で俺以外を睨み付ける真司先輩に、どこか嬉しそうにする藤村。
しみじみと早瀬が言うと愛鵡先輩はそうだよね、と相槌を打った後に、俺の方へ顔を向けた。

「まぁ、でも今は牽制する人間もいないし、ゆっくり陥落してけばいいと思うな。ね?だから姫。今夜、私の部屋においで?君の可愛い所に突っ込んで、たっぷりと満足させてあげるから」

つつと太ももの、際どい部分に触れてくる愛鵡先輩の手を、ぴしりと叩いた。
俺は食べ終えた器の乗ったトレーを持って席を立ち、極上の笑みを浮かべながら言った。

「先輩、そんなに気持ち良くなりたいのなら、ご自分のケツの穴にでも、突っ込まれたほうが宜しいんじゃないですか? きっと今までにない快感が得られると思いますよ」

そう告げると俺はトレーを返却すべくその場を去った。
俺のために、変体どもを牽制してくれていた前生徒会の先輩達に感謝しつつ、今無き牽制と、現状の危うい立場をどう打破しようかと、意識を巡らせるのだった。











「やっぱ桜姫いいな。あの連れないところも、冷ややかな美貌も。たまんないぜ」

「本当、私と結ばれるためにあったんだよ、彼は」

「まさか、クラスが隣で、休み時間もいれる俺が、一番有利なのをお忘れですか?」

「早瀬さん、そんなものすぐに覆せますよ」


生徒会上役四人が、妖しい笑みを浮かべていることなんて、俺は知りたくもなかった。





end







後書き


シリーズ第一話。

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