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この貧乏人にお恵みを!

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 やばい、本当にやばい。
 サークル存続が決定して数日が経ち、特に何事もなく過ごしていた。

 変化と言えば、フローラの魔法がまた一段と上達したこと。
 それと、俺にもようやく火の魔法が使えるようになったこと。

 まだ本当に小さいけど。
 だが、それ以上に今はピンチなことがある。


 「金がない……」


 これほどまでに追い込まれるとは、正直思っていなかった。
 
 上手く魔法の使えない俺に、マスターは優しめの依頼もくれたし、いくつかこなした。
 だからこそと言うか、やっぱり報酬も少ない。


 「まさか、学食の飯で金がなくなったことに気づくなんて」


 目の前にある、できたてのうどんを見ながらため息をつく。
 
 ……働かないと!
 このうどんが、俺の最後の飯になってしまう。


 「おっ、大樹じゃないか。また今日もうどんとは、よほど好きなんだな」


 重たく感じながらも顔を上げると、隣にはランチセットを持ったリッシュが立っている。


 「リッシュか。いいなお前はランチセットを買えて。俺はこのうどんが最後になるかもしれないよ」

 「は? ……そう言うことか。金がないんだろ」

 「そう言うこと」


 それを聞いたリッシュは、笑いながらランチを食べ始める。

 そして、思い出したかのように。


 「いい仕事紹介してやろうか」



 いい仕事か。
 魔法も特に必要ないし、確かに俺向けではあるのかもしれない。


 「ほらほら新人さん? ぼーっとしてたらダメですよ。磨いて磨いて」

 「わ、わかりました」


 リッシュの紹介で、俺は町の魔道具店で働かせてもらっている。
 学園近くの町だし、当然寮からもすぐに通える。


 「大樹君は最近学園に来たんだよね? リッシュとは仲良くやってるの」

 「ええまぁ。同じサークルにも入りましたし」


 ここは店長が一人できりもりしていて、小さいながらも評判の良い店らしい。


 「そうかそうか、それは良かった。だけどごめんなさいね、あいつに頼んだ店の手伝いを任せちゃって」


 リッシュがここを紹介した理由。
 それは自分が手伝うのを嫌がったためだ。


 「いいんですよ、お金がなくて困ってたのは本当ですから。まだ魔法も使えないし、できることも限られてるので」

 「そっかー、まだ魔法使えないんだ。大変だよね」

 「もう慣れましたけどね。それより店長、リッシュとは仲良いんですか?」

 「そうだねぇ、私の家の隣に住んでたし、小さい頃から遊んでたよ。私の方が少し年上だから弟扱いしてたけどね」


 店長見た目若いと思ったら、本当に若いのか。
 てっきり、結構いってるのかと。


 「大樹くん? なにか失礼なことを考えてないかしら?」

 「あ、えっと、その、特には!? 決して失礼なことなんて」


 慌て始める俺に、店長は笑顔で。


 「おおかた、何歳なんだって考えてたでしょ。店長って言うと、同じ反応されるから言いにくいのよね」


 少し困った顔をして店長が言う。


 「私まだ二十歳なんだけど」



 「大樹くんお疲れ様。今日の仕事はこれでおしまいですよ」


 これで終わりか。
 正直思ってたほど疲れなかったな。
 お客さんの対応は店長がしてくれるし、俺は店内や商品を綺麗にしたりするだけ。


 「それじゃあ大樹くんにお給料ね。五時間働いて、気持ち少し足してこれくらいかな」

 「えっ、こんなにもらってもいいんですか?」


 これだけあれば、俺なら半月は生活できそう。
 ただ、そんなに貰うほど仕事できたのか?


 「いいのいいの。今日はお客さんが多く来る日だったし、私一人じゃ大変だったからね。その分の気持ちだよ」

 「そう言うことならもらっておきますね」

 「それでよし! また忙しくなりそうなら連絡するね」

 「わかりました」


 店長と別れの挨拶を交わし、寮へと戻る。
 その道中ふと、お店のことを思い出す。

 魔道具か、金がたまったら少し買いに行ってみるかな。
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