上 下
9 / 90

伝説を知る者!

しおりを挟む
 シャワーを浴び終え、嫌な沈黙が続く中、俺と相川は同じベッドで寝転がる。
 正直、心臓は壊れそうなほど動いてる。
 隣の相川に伝わっていないだろうかと不安になるが、ありがたいことに既に寝ているよう。

 わずかに聞こえてくる寝息が、俺の心を少しだが落ち着かせてくれる。
 そう、俺は緊張してただけだ!
 決してこの状況にワクワクドキドキしてたわけではない。

 俺は改めて自分の心と向き合い、自然と眠れるようになった。
 心臓も落ち着いたし、明日から頑張るぞ。



 「いつまで寝てる? 起きなさーい!」

 「う~ん、乱暴に起こすなよ」


 朝から相川に大声で起こされ、目覚まし時計の優しさを初めて知った。
 眠い目をこすりながら相川を見ると、既に出発の用意ができているよう。


 「相川準備早いな。確かに今日からが本番だけど、気合い入りすぎじゃ」

 「いいのいいの楽しみなんだから! それより、大樹も早く準備しちゃってよ」

 「はいはい」


 気の抜けた返事だけをし、早速俺は準備を開始。
 その途中、俺の後ろから何度か欠伸をする相川の声が聞こえた。



 「それじゃあ、早速聞き込みしていきましょー。地元の伝説なんだから、すぐに情報も見つかるだろうしね」


 確かに相川の言う通りだろう。
 流石に地元民ならば、全く知らないと言うことはないはず。
 これは楽にいきそうかも。



 ……しかし実際はそう簡単ではなかった。
 全く知らないと言う人はいなかったが、肝心の情報についてはほとんどナシ。
 伝説が残っていると言う事実だけが、皆の知るところだそうだ。


 「まさかこんなに苦戦するとは。これなら、ここにくる前の俺たちの情報と変わらないな。流石に昔の話だし、当然と言えば当然かもしれないけど」

 「確かに新しい話はないね。……こうなったら情報収集やめて、島を歩いてみる? 何か見つかったらラッキーだし」


 相川が笑顔で俺を見ながら提案してきた。
 このまま聞き込みしても同じだろうし、それならいいか。
 こうして俺たちは島を歩き回ることにした。
 


 歩き始めてしばらくし、村から少し離れた場所に小屋を見つけた。


 「村の人たちはこんな場所教えてくれなかったよな。まぁ、離れてるし仕方ないのかもしれないけど」

 「そうだね~、最後の望みにかけてみる? 村から離れた小屋には何かあるかもしれないよ」

 「事件じゃないからな」


 相川の興味津々さが伝わり、俺も何だかその気になってきた。
 人間これが最後だと思うと、不思議と元気になれるもんだ。
 俺たちはその小屋に近づき、ドアの前に立って。


 「あのーすみません。どなたかいますか? もしよかったら聞きたいことがあるんですが」


 軽くドアを2回叩き、人がいないか聞いてみた。
 すると、中から人が歩く音が聞こえてきた。
 こりゃ、誰かいるな。
 俺がもう一度ドアを叩こうとすると同時に、それは開かれた。


 「おやおや珍しいお客さん達だ。みたところ島の人間ではなさそうだけど、どうかしたのかい?」

 「えー、実はそうなんですよ。この島の伝説について、少し興味がありまして」

 「そうかいそうかい、それでここを見つけるとは運がいいですよ」


 白髪の少し腰の曲がった、優しそうなお婆さんだった。
 

 「その言い方だと、何か知ってるんですね? もしよかったら教えて欲しいんですけど」

 「ええ、ええ、知ってますとも。お嬢さんも一緒にいらっしゃい」

 「ありがとうございます」


 こうして、俺たちはお婆さんの家に入っていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

(完)私の家を乗っ取る従兄弟と従姉妹に罰を与えましょう!

青空一夏
ファンタジー
 婚約者(レミントン侯爵家嫡男レオン)は何者かに襲われ亡くなった。さらに両親(ランス伯爵夫妻)を病で次々に亡くした葬式の翌日、叔母エイナ・リック前男爵未亡人(母の妹)がいきなり荷物をランス伯爵家に持ち込み、従兄弟ラモント・リック男爵(叔母の息子)と住みだした。  私はその夜、ラモントに乱暴され身ごもり娘(ララ)を産んだが・・・・・・この夫となったラモントはさらに暴走しだすのだった。  ラモントがある日、私の従姉妹マーガレット(母の3番目の妹の娘)を連れてきて、 「お前は娘しか産めなかっただろう? この伯爵家の跡継ぎをマーガレットに産ませてあげるから一緒に住むぞ!」  と、言い出した。  さらには、マーガレットの両親(モーセ準男爵夫妻)もやってきて離れに住みだした。  怒りが頂点に到達した時に私は魔法の力に目覚めた。さて、こいつらはどうやって料理しましょうか?  さらには別の事実も判明して、いよいよ怒った私は・・・・・・壮絶な復讐(コメディ路線の復讐あり)をしようとするが・・・・・・(途中で路線変更するかもしれません。あくまで予定) ※ゆるふわ設定ご都合主義の素人作品。※魔法世界ですが、使える人は希でほとんどいない。(昔はそこそこいたが、どんどん廃れていったという設定です) ※残酷な意味でR15・途中R18になるかもです。 ※具体的な性描写は含まれておりません。エッチ系R15ではないです。

(完)実の妹が私を嵌めようとするので義理の弟と仕返しをしてみます

青空一夏
ファンタジー
題名そのままの内容です。コメディです(多分)

(完結)「君を愛することはない」と言われて……

青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら? この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。 主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。 以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。 ※カクヨム。なろうにも時差投稿します。 ※作者独自の世界です。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

最強魔術師が魔法世界で無双する?!

アルガス タイター
ファンタジー
ここでひとつ課題を出そう。 「君たちは自分が常識の範疇“外”で『知らない存在』を見たことがあるだろうか?もし見たことあるならそれはなんなのか教えて欲しい」と。 そして私はヒントを与えよう。 「所詮君たちは表面しか見ていない」と。 なに、答えを早急に出す必要は無いさ。知らないモノを考えたところで分からないのだから。 この物語は、クラスメイトたちの召喚に巻き込まれてしまった八鍵 零蒔という男が後に大英雄として名を馳せることとなり、神を殺すために英雄達を助け、世界を救う英雄譚! の筈だった……。一体どこでその歯車がズレてしまったのだろうか? ご都合主義のテンプレ勇者に裏切りに裏切りが重なり、精神を犯される勇者達。この先、彼らに待ち受けているものとは……。そして逃れられない運命とは一体なにか?! ※主人公の周りに少なくとも四人以上の女の子がいます。ハーレム系が苦手な人もいるかと思いイチャイチャする場面はあまり設けてませんので大好きって言う方はご了承ください。 物語を読むにあたり一応頭に入れておいてほしいことは地球には科学技術の他に『魔術』がありますが、一般の人々には『魔術』とは空想の技術と考えられています。 零蒔視点では「俺」と表記し第三者視点では「零蒔」と名称で表記しています。主人公や第三者視点以外では〜sideと明記しています。 【小説家になろう】さんの方にも載せている小説です。進行速度で言うとこちらは遅いです。 先を知りたい方は【小説家になろう】さんの方をご確認ください。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

あ、出ていって差し上げましょうか?許可してくださるなら喜んで出ていきますわ!

リーゼロッタ
ファンタジー
生まれてすぐ、国からの命令で神殿へ取られ十二年間。 聖女として真面目に働いてきたけれど、ある日婚約者でありこの国の王子は爆弾発言をする。 「お前は本当の聖女ではなかった!笑わないお前など、聖女足り得ない!本来の聖女は、このマルセリナだ。」 裏方の聖女としてそこから三年間働いたけれど、また王子はこう言う。 「この度の大火、それから天変地異は、お前がマルセリナの祈りを邪魔したせいだ!出ていけ!二度と帰ってくるな!」 あ、そうですか?許可が降りましたわ!やった! 、、、ただし責任は取っていただきますわよ? ◆◇◆◇◆◇ 誤字・脱字等のご指摘・感想・お気に入り・しおり等をくださると、作者が喜びます。 100話以内で終わらせる予定ですが、分かりません。あくまで予定です。 更新は、夕方から夜、もしくは朝七時ごろが多いと思います。割と忙しいので。 また、更新は亀ではなくカタツムリレベルのトロさですので、ご承知おきください。 更新停止なども長期の期間に渡ってあることもありますが、お許しください。

処理中です...