桃太郎異聞(加筆修正版)

馬 並子

文字の大きさ
上 下
20 / 33

第二十話

しおりを挟む
 さて、死にそうな空腹はなんとか治まったものの、そうは言っても三日ぶりの食事ですので、量が全く足りません。
「そなたらがどうしても教えとやらを守りたいというのなら、まぁそれも仕方があるまい。そなたらの摩羅は諦めて、こやつらの子種で我慢しようかのぉ」
 口ではそんな殊勝なことを言いながらも、これ見よがしな流し目を送る桃太郎には確信がありました。きっと鬼どもは摩羅を吸うてくれと哀れに懇願するか、矢も盾もたまらず桃太郎を組み敷くだろう、と。
 しかし、予想と全く異なる光景が眼前にありました。鬼たちはいつの間にか跪いて両手の指を組み合わせ、涙を流さんばかりの感動の面持ちをしていたのです。
 桃太郎はぎょっとし、「な、なんじゃなんじゃ」と珍しく慌てた声を上げます。しかし、鬼たちにしてみれば、突然現れた美青年が自分たちの拘っていた教えを足蹴にした上、あろうことか下等な獣たちの摩羅を口で慰め、恍惚とした表情で子種を飲み、あまつさえ獣たちに礼まで言ったのです。
 獣たちに礼を述べた桃太郎の表情は慈愛に満ちて美しく、「シャクハチ」をされた猿も犬も、嬉しげに桃太郎に纏わりついており、かくも平和な光景です。それに引き替え、着るも食べるも苦労するような生活であり、更に禁欲の教えでまでも縛られていた自分たちは、あまりにも惨めで空しく思われてきます。
 鬼たちにとって桃太郎との出会いは、まさに天変地異に遇って新しい教えを説かれたようなものでした。

 鬼たちはアリガトウアリガトウと涙を流さんばかりに桃太郎に感謝を示し、最早一切の羞恥を見せず、一斉に自分たちの腰布を剥ぎ取りました。桃太郎は突如目の前に現れた三本の猛り立った摩羅に、目が点になります。それは桃太郎にとっては、もはや桃源郷の入り口に立ったような光景でした。
 三本の摩羅は形も大きさも三者三様でしたが、それぞれが雄々しく天を突き、鬼自身と同様、感動に震えるように透明な滴をこぼしておりました。桃太郎は一本一本摩羅をつぶさに吟味していきます。

 黄鬼の摩羅も赤鬼の摩羅も巨大で、桃太郎が知る人間の摩羅とは異なり茅色めいております。しかし、青鬼の摩羅は黒ずんでおり、目を引きました。寸法は黄鬼と赤鬼に及ばないのに、見慣れた人間の摩羅の色に近いせいか、最も卑猥に見えます。
 青鬼が、あどけなさを残す顔立ちの下に、黒々とした脈打つ摩羅をそそり立たせている様子は、少々怪異めいてすらおり、手で舌で触れて確かめてみたくなります。黄鬼と赤鬼と見比べておりましたので、青鬼の摩羅の寸法は小さく見えましたが、よく見れば常人よりははるかに大きいことに気付きます。或いはこれこそが、桃太郎の口に入り切るきわの太さ長さかもしれません。
 しかも、形も秀逸で、先端にかけてやや極端な反り返りを見せております。これは、間違いなく喉奥の上をごりごりと擦って、苦しみと悦びを与えてくれるはずです。その恍惚を想像しただけで涎が口いっぱいに溜まり、えずきすらこみ上げてきます。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...