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第十二話
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このところ眠ろうと思って眠ったわけではないという状況が続いた桃太郎は、この時も自分の状況が掴めておりませんでした。囲炉裏に炎が明々と燃えているため寒くはありませんでしたが、桃太郎が寝かされている見覚えのない布団は綿がまばらで、床板の固さが背中に響きます。あたたたたと声を出しながら、すっかり固まってしまった背中と腰を丸めて寝返りを打てば、布団の横には見覚えのある犬と猿が並んで座ってこちらをじぃっと見ておりました。
「気が付かれましたか。ほんによかった」
囲炉裏の傍から声をかけてきたのは、目鼻立ちのはっきりとしたなかなかの美丈夫でした。港町の男らしくよく日に焼け、着物は煤で汚れておりましたが、顔立ちや声にどことなく品があります。野卑な男臭さがあった駕籠かきの二人とは違う種類の人間だと一目でわかりました。
――おぉ、これは上玉。さて、人のよさそうなこの男の摩羅はどのようなものか。
その男より遥かに上玉の部類の桃太郎が、顔を見た途端に自分の摩羅を想像しているとは露ほども思わず、男はにじって桃太郎に近づいてきました。
「儂は渡し守を生業としておる者で、名を権座といいます。決して若様に無体を働いたりはいたしません」
どうやら桃太郎を脅えさせないように、体勢を低く、慎重に近づいてきたようです。私が何を脅えることがあるのかと、桃太郎はむしろ不審げな表情になりました。
「あのような目にあわれて、ほんに災難でしたね。ここは何もない荒ら屋ですが、ゆっくり体をお休めください」
桃太郎の不審げな顔をむしろ痛ましそうに見つめ、権座と名乗った男は、桃太郎の傍に静かに座る犬と猿の頭を交互に撫でました。犬と猿は、いつの間にかこの権座なる男に懐いたようです。
はて、「あのような目」とはと眉根を寄せて考えると、急に鼻の奥に嗅ぎ慣れた子種の青臭さが感じられました。しかも、少々鼻の奥と喉が痛みます。それでようやく、桃太郎は平次との一幕を思い出したのでした。
後ろ手に縛られたまま口を犯されるのは非常に具合がよかったのですが、具合がよすぎて桃太郎の神通力がどんどん増し、それに従って平次の摩羅もどんどん子種の量を増しておりました。しかし、桃太郎が好きな喉の奥まで摩羅は届かず、自分の摩羅への直接の刺激もなかったため、桃太郎が甘露を吐き出すことはありませんでした。甘露を出さない限り、快感と共に神通力は高まり続けます。そのため、増えすぎた子種を飲み込み切れず、窒息してしまったのでありました。
――ぬぅ。あやうく子種で溺れ死ぬところであった。
甘露を出さずに長く楽しむ作戦は成功でしたが、物には限度というものがあります。摩羅を咥えたまま子種で窒息すること自体には興奮しますが、死んでしまっては元も子もありません。手を縛ってもらうのはいい方法だと思ったのに、うまくいかんものよのぅと桃太郎は唸りました。
この権座とやらの摩羅に挑む際には、ほどよいところで縄を解いてもらって、自ら摩羅を扱くのがよいか。いや、やはり喉を突かれる快感だけで昇天したい。喉の奥のよい場所に届く長さの摩羅であれば、死ぬ危険を承知で最後まで縛られたまま挑むべきか。
――悩ましいのぅ。
つい数刻前に死にそうになったばかりだというのに、桃太郎は懲りるということを知らないのでした。
何はともあれ、ひとまずこの権座の摩羅を確認してからでないと話は始まらぬと、もう早速権座の褌を脱がす算段を始めます。権座は薄汚れた寒々しい着流し一枚で、貧しげな家の中には女人の気配はありません。嫁もおらず女を買う銭もなさそうな権座であれば、きっとすぐに摩羅を差し出すに違いないと思われました。
桃太郎が美男の摩羅は美摩羅かのぅなどと大層下劣なことを考えているとは思いもしない権座は、自分は弥助に鬼ヶ島への渡しを依頼されてあの場へ行き、倒れていた桃太郎を助けたのだということを説明し出します。その際に鼻に詰まったものを吸い出すために顔に触れ、ここまで運ぶのに背と足に触れ、縛られた腕を解くのに手に触れたが、それ以外の場所には決して触れておらぬというようなことを、真剣な顔で力説しております。
どうやら桃太郎のことを、平次に狼藉された可哀想な若君だと勘違いしている様子ですが、それも無理からぬことよと桃太郎とて思います。自ら進んで腕を縛られ、窒息するまで子種を飲まされて喜ぶ旅の男子がそうそういるとは思われません。
「あなたがお助けくださったのですね、権座さん。本当にありがとうございます。けれど、平次さんは悪くはないのです。私は桃太郎という者ですが、旅慣れず足を痛めて困っておったところを、弥助さんと平次さんがお代を取らずにここまで運んでくださったのです。私はそのご恩に報いようとしておっただけでございます。情けを受ければそれに報いるのが人の道。どうか権座さんにも、お礼をさせてくださいませ」
ゆっくりと布団から起き上がり、いかにも儚げな風情で権座に擦り寄った桃太郎ですが、袂で隠された唇はにやりと吊り上り、伏せられた目は権座の着物の奥の摩羅を狙って爛々としております。
――さぁ、見せてみぃ。
桃太郎が艶めいた吐息を漏らしてしなだれかかり、権座の足の間に指先を忍び込ませようとした刹那、突然その手が強い力でぎゅうと握り込まれました。
「気が付かれましたか。ほんによかった」
囲炉裏の傍から声をかけてきたのは、目鼻立ちのはっきりとしたなかなかの美丈夫でした。港町の男らしくよく日に焼け、着物は煤で汚れておりましたが、顔立ちや声にどことなく品があります。野卑な男臭さがあった駕籠かきの二人とは違う種類の人間だと一目でわかりました。
――おぉ、これは上玉。さて、人のよさそうなこの男の摩羅はどのようなものか。
その男より遥かに上玉の部類の桃太郎が、顔を見た途端に自分の摩羅を想像しているとは露ほども思わず、男はにじって桃太郎に近づいてきました。
「儂は渡し守を生業としておる者で、名を権座といいます。決して若様に無体を働いたりはいたしません」
どうやら桃太郎を脅えさせないように、体勢を低く、慎重に近づいてきたようです。私が何を脅えることがあるのかと、桃太郎はむしろ不審げな表情になりました。
「あのような目にあわれて、ほんに災難でしたね。ここは何もない荒ら屋ですが、ゆっくり体をお休めください」
桃太郎の不審げな顔をむしろ痛ましそうに見つめ、権座と名乗った男は、桃太郎の傍に静かに座る犬と猿の頭を交互に撫でました。犬と猿は、いつの間にかこの権座なる男に懐いたようです。
はて、「あのような目」とはと眉根を寄せて考えると、急に鼻の奥に嗅ぎ慣れた子種の青臭さが感じられました。しかも、少々鼻の奥と喉が痛みます。それでようやく、桃太郎は平次との一幕を思い出したのでした。
後ろ手に縛られたまま口を犯されるのは非常に具合がよかったのですが、具合がよすぎて桃太郎の神通力がどんどん増し、それに従って平次の摩羅もどんどん子種の量を増しておりました。しかし、桃太郎が好きな喉の奥まで摩羅は届かず、自分の摩羅への直接の刺激もなかったため、桃太郎が甘露を吐き出すことはありませんでした。甘露を出さない限り、快感と共に神通力は高まり続けます。そのため、増えすぎた子種を飲み込み切れず、窒息してしまったのでありました。
――ぬぅ。あやうく子種で溺れ死ぬところであった。
甘露を出さずに長く楽しむ作戦は成功でしたが、物には限度というものがあります。摩羅を咥えたまま子種で窒息すること自体には興奮しますが、死んでしまっては元も子もありません。手を縛ってもらうのはいい方法だと思ったのに、うまくいかんものよのぅと桃太郎は唸りました。
この権座とやらの摩羅に挑む際には、ほどよいところで縄を解いてもらって、自ら摩羅を扱くのがよいか。いや、やはり喉を突かれる快感だけで昇天したい。喉の奥のよい場所に届く長さの摩羅であれば、死ぬ危険を承知で最後まで縛られたまま挑むべきか。
――悩ましいのぅ。
つい数刻前に死にそうになったばかりだというのに、桃太郎は懲りるということを知らないのでした。
何はともあれ、ひとまずこの権座の摩羅を確認してからでないと話は始まらぬと、もう早速権座の褌を脱がす算段を始めます。権座は薄汚れた寒々しい着流し一枚で、貧しげな家の中には女人の気配はありません。嫁もおらず女を買う銭もなさそうな権座であれば、きっとすぐに摩羅を差し出すに違いないと思われました。
桃太郎が美男の摩羅は美摩羅かのぅなどと大層下劣なことを考えているとは思いもしない権座は、自分は弥助に鬼ヶ島への渡しを依頼されてあの場へ行き、倒れていた桃太郎を助けたのだということを説明し出します。その際に鼻に詰まったものを吸い出すために顔に触れ、ここまで運ぶのに背と足に触れ、縛られた腕を解くのに手に触れたが、それ以外の場所には決して触れておらぬというようなことを、真剣な顔で力説しております。
どうやら桃太郎のことを、平次に狼藉された可哀想な若君だと勘違いしている様子ですが、それも無理からぬことよと桃太郎とて思います。自ら進んで腕を縛られ、窒息するまで子種を飲まされて喜ぶ旅の男子がそうそういるとは思われません。
「あなたがお助けくださったのですね、権座さん。本当にありがとうございます。けれど、平次さんは悪くはないのです。私は桃太郎という者ですが、旅慣れず足を痛めて困っておったところを、弥助さんと平次さんがお代を取らずにここまで運んでくださったのです。私はそのご恩に報いようとしておっただけでございます。情けを受ければそれに報いるのが人の道。どうか権座さんにも、お礼をさせてくださいませ」
ゆっくりと布団から起き上がり、いかにも儚げな風情で権座に擦り寄った桃太郎ですが、袂で隠された唇はにやりと吊り上り、伏せられた目は権座の着物の奥の摩羅を狙って爛々としております。
――さぁ、見せてみぃ。
桃太郎が艶めいた吐息を漏らしてしなだれかかり、権座の足の間に指先を忍び込ませようとした刹那、突然その手が強い力でぎゅうと握り込まれました。
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