34 / 38
雛木君がハマった、黒くて細長いアレ ~反省&実践編 6~
しおりを挟む
後ろ手に縛り直され、床に座らされた雛木の両足首には、黒い革の枷が左右それぞれに嵌められていた。脚の間では、血色を取り戻したペニスが勃ち上がり、放出の瞬間を今か今かと待ち侘びている。
工藤がボストンバッグから取り出したのは、手の平サイズの金属棒だった。ブンと振ると、金属同士がぶつかる嫌な音を立てて、その棒が長く伸びる。まるで特殊警棒のようなそれは、両端に輪のついた拘束棒だった。
工藤は拘束棒の両端にある五百円玉大の金属輪と、雛木の両足の枷を、麻縄でしっかりと結び付けた。
肩幅の倍はある拘束棒は、雛木の脚を割り開き、無慈悲に股間を晒させる。吊りから降ろされ、多少心身の余裕が生まれたことで羞恥心が甦ったのか、雛木は脚を閉じられないながらも慎ましく両膝を寄せようとしていた。しかし、拘束棒は長く、どう頑張っても膝同士を触れ合わせることはできない。
隠そうとしても剥き出しになってしまう股間では、パンパンに張った玉の周囲に、自らへの鞭打ちでつけた青痣がいくつも散らばっているのが見えた。
「顔を上げて、口を大きく開いてください」
工藤の要請に、雛木は従順に従った。だが、羞恥からか、いや、大部分は興奮からだろう、頬を染め、大きく開いた唇を震わせている。
そんな雛木の顎は細い。本人はもう若くないからと何度か口にしていたが、工藤から見れば充分に、『最近の若者』の骨格だ。華奢さは美しいが、実用的な奴隷向きではない。
「小さな口ですね。これからは自分で毎日ディルドを咥えて、顎を鍛えてください。噛まれるのはごめんです」
暗にフェラチオの予定を告げると、開いた口の中で雛木の舌が踊った。それきり、もう、どう舌を収めていいかわからなくなってしまったのだろう。緊張した舌は、喉奥に引っ込んだり、丸まったり、うろうろと口内をさまよい始めた。
だが、命じられた通り、開いた口を閉じようとはしなかった。代わりにぎゅっと目を瞑り、鼻からふんふんとやり場のない呼気を漏らしている。
「ただし、開口は無理をしすぎないように。顎関節症になっては困りますからね。オーラルセックスという言葉がある通り、口も立派な性器です。アヌス同様、大切にしてください」
今まさに恥ずかしい粘膜を晒しているのだと意識させた途端、雛木の口内で急激に粘液が分泌されたのが見てとれた。ほんの短い時間で、溢れるほどに増した唾液が、今にも下唇の真ん中から滴りそうになっている。想像力まで素直なところが、雛木の大きな美点だ。
「はひ……」
口を開けたまま間の抜けた返事をして、雛木は瞳をとろりと濡らす。
これで普段の生活でも、おいそれと人前に口内を晒せなくなっただろう。雛木が日常の中で羞恥や興奮を感じる様は、想像するだけで工藤の劣情を煽った。
「理解できたいい子には、新しい道具を使ってあげましょう。あなたが気に入ってくれるといいのですが」
そう言いながら、工藤が黒い革ベルト付きの短い筒状の道具を取り出して見せると、唾液を溜めた雛木の喉が大きく動いたのが見えた。
「今日は口での奉仕を覚えさせるわけではありませんから、小さめの口径の物を使いますね」
返事を待たず、唾液で満たされた雛木の口に筒部分を捩じ込む。それは、開口用の口環だった。中心についた短い円筒を上下の歯の間に捻じ込み、頭の後ろで革ベルトのバックルを留めると、口が閉じられなくなる。口淫を強制するのに便利な道具だ。
だが今は、円筒部分は排水溝の栓のような蓋でしっかりと封じられていた。蓋付きの口枷は、責め手が望む時だけ蓋を開けて、何でも口内に捩じ込めるため、支配感・被支配感を強く得られる。
ただし、開口させたまま声を封じるのは、プレイとしては危険だ。何しろ、何かあっても窮状を訴えることができない。
だから、雛木が少しでも不安そうにすれば、すぐに外してやる気だった。だが、手足だけでなく口まで封じられた無力な雛木は、眉根を切なげに寄せながらも、一向に勃起を萎えさせない。それどころか、閉じようとしていたはずの膝頭の力が抜け、腿がしどけなく開いてしまっている。
意思表示さえ封じる拘束を、興奮をもって受け入れているのだ。その全幅の信頼と、隠し切れない欲情が堪らない。
何でも享楽的に受け取るタイプのマゾヒストもいるが、工藤としては痛みや恐怖に敏感でありながらも、快楽に対して欲深い雛木のようなタイプの方が、嬲りがいがあって抗いがたく魅力的に映った。
「奴隷の作法を仕込むとは言いましたが、罰も兼ねているのですから、そんなに喜ばないで下さい」
わざとらしく呆れて見せると、雛木はハッと目を見開き、大きく頭を左右に振った。「んぅ、んぅ」と、何事かくぐもった声を漏らしている。
当然、何を言っているのかまるでわからない。そのままならない様子が幼気で、工藤を昂らせるなどと雛木は知る由もないだろう。
だが、いくら雛木が可愛いとはいえ、自慰行為として自分を痛めつけることだけは許すわけにはいかない。
他人を傷つけることに対しては忌避感をもっているのに、自分自身にだけそれが向かない人間は意外と多い。他人を傷付けるのは怖くても、自分ならいくら傷付けても構わないと考えるのだ。しかも、マゾヒストは痛みと快感を繋ぐ回路ができあがっているため、常人以上にそのリスクが高い。
だが、そんな心配以外にも、工藤の胸を占める仄暗い想いがあった。それは、奴隷当人にですら、その体を自由にさせたくないという独占欲だ。
そんな身勝手な想いを、丸ごと伝える気はない。だが、あまりにもまっすぐな気持ちを雛木から向けられて、工藤は己の醜い欲望を、ほんの少し許すことに決めたのだった。
「私は、あなたが勝手に自分を傷つけることを決して許せません。さぁ、痣まみれの醜い尻を見せなさい」
雛木は羞恥と申し訳なさに目を伏せながら、両膝をぱかりと大きく開く。口枷に犯されている顔は哀れだったが、その瞳は明らかに更なる責めを求めていた。
「それではよく見えませんね……!」
開脚を強制する拘束棒を勢いよく蹴り上げてやると、雛木は驚いたように目を見開き、達磨のようにあっけなく転がった。
起き上がることを許さず、雛木の両脚を割り開く拘束棒を掴んで持ち上げる。そのまま雛木の頭の方へ押してやると、子供がおしめを替えられる時のように、尻がぐっと持ち上がった。
雛木は、玉の裏から尻の穴まで丸出しにするみっともない格好が恥ずかしいのだろう、ぎゅっと目を瞑っている。
だが、
「目を開けて、しっかりと自分のペニスを見なさい」
と命じると、はっと目を見開いた。
その素直な顔面に向け、開脚を強制する拘束棒を押して、更に性器を近づけてやる。
もう少しでセルフフェラチオが出来そうなところまで押すと、無理な体勢に雛木の脚全体がぶるぶると震え出す。だが工藤は容赦せず、手の代わりに足を使って、更に雛木の頭上方向へと拘束棒を踏み込んだ。すると、雛木の尻は更に持ち上がり、背中まで丸見えになる。
男にしては体が柔らかい方とはいえ、苦しさを感じているのだろう。雛木の眉根がぎゅっと寄せられている。体の下に敷くことになった縛られた腕も痛むはずだ。
だがそれに構わず更に拘束棒を踏み込むと、雛木のつま先はついに、自身の頭上の床についた。
ちんぐり返しという俗称で呼ばれる恥ずかしい体位に、雛木は真っ赤になり、羞恥で顔を大きく歪ませている。
「これでよく見えますね」
工藤はくるりと体を返し、雛木の頭上の位置に立つと、拘束棒を踏み付け、いとも簡単に雛木を恥ずかしい体位で固定した。
縛られた後ろ手が背中を支えているせいもあり、一度こうしてひっくり返されると、容易には元に戻れない。
「んん……! んぐぅー……!」
意味の取れないくぐもった声は、抵抗か羞恥の訴えか。
だが、言葉より遥に雄弁なものがあった。雛木の言葉を封じる口枷の上に、目の前に近づいた己のペニスの先端から、滴った先走りがぽとりと垂れたのだった。
「あぁ、なんて醜い。鞭打ちに痣はつきものとはいえ、こんな大小も濃淡もまちまちな痣など、見るに堪えません」
晒された雛木の尻を見て、本心から工藤は嘆息する。
工藤とて、仕込んだ奴隷には当然痣を残すつもりで打つが、その際はあくまでも奴隷らしい装飾として浮かぶように、位置にも大きさにも気を配っている。
だが雛木の尻は今、親から虐待を受けた子供のような悲惨さしか感じられない有様だった。
「んぅぐ……」
雛木の口からはおそらく謝罪だろう声が漏れたが、もちろん罪の本質を理解できてはいないはずだ。それは、主人の言いつけを守らなかったことに対する謝罪でしかない。
それが工藤にとってはもどかしく感じられる一方で、中途半端な調教を施してきたことへの罪悪感を抱かせもした。
だが、当の工藤の口からは、辛辣な言葉が矢継ぎ早に放たれる。
「こんな物を見ながらでは、アヌスを可愛がる気にもなれませんね。今夜は急な呼び出しでしたから準備もしていないでしょうし、せっかくですからこの体勢のまま、漏らすまで浣腸でもして差し上げましょうか?」
もちろんそこまでする気はなかったが、雛木の羞恥に赤らんでいた顔からは、ざっと血の気が引いた。
恐怖に目を見開き、思わずといったように首を小さく横に振る。だが、はっと気付いた様子で動きを止めた。
そして、青ざめた顔で、小さくこくりと頷いたのだ。
それが奴隷に相応しい罰なら受け入れるという覚悟なのだろう。初めて会った頃、スカトロはNGだと言っていたのに、この子は。
工藤の唇に浮かんでいた強張りが、無意識にふっと弛んだ。
「冗談ですよ。いえ、そうして差し上げてもいいのですが、楽しみはまた今度にとっておきましょう。今はまず、奴隷の作法を覚えましょうね」
そう許してやると、雛木はほっとした様子を見せ、表情を寛げた。
これで、スカトロに比べればましだと、大抵のことは受け入れやすくなるというものだ。
工藤はボストンバッグを探り、鞭先が小さく固い革製の乗馬鞭を手に取った。
これはかなりの痛みを与える上、肌が切れさえするので、ほとんど雛木には使っていない。
だが、一点をピンポイントで打ち据えるには最適な形だった。
さっと鞭先で雛木のアヌスを掠めてやると、そこはまるで生き物のように目に見えて窄まった。体全体がびくりと震え、腹筋が波打つ。
アヌスのひくつきは一度では収まらず、面白いようにうねうねと複雑に動いた。
本人も言っていた通り、昨日のセルフウィッピングの際は玩具を咥え込んで楽しんだらしく、アヌスの縁はいまだに少しめくれ、赤く盛り上がっていた。皺も伸び気味で、ふっくらと柔らかい。
このままこの穴を抉じ開けてぶち込んでやりたい凶暴な欲求も込み上げるが、それと同時に焦らしてもやりたくなる。
工藤は荒淫の痕跡を見せるアヌスの縁を、小さな鞭先で擽った。
「手入れが悪いですよ。ここをめくれさせるなら、いっそのこと綺麗なアナルローズになるよう気をつけなさい。元には戻らないので、積極的にお勧めはしませんがね」
酷薄に叱りながら、解された柔らかさを残す縁を、鞭先で軽くなぞる。
「んうっ、んうぅっ」
雛木の口から漏れる呻きは今や、激しい羞恥ともどかしい快感を訴える響きに変わっていた。
「あなたが自慰をした後は、ここ、右側の縁や……」
ここ、と言いながら、鞭先でアヌスの縁を擽る。
「尾てい骨側の、ここが腫れていることが多いですが」
指摘しながら辿る度に、雛木の封じられた口から漏れる呻きは悩ましく大きくなっていく。
「今日はここ、左側の縁が特に腫れていますね。利き手で鞭を振るい、左手でバイブかディルドを乱暴に出し入れしましたか?」
はしたない行為を驚くほど正確に見透かされて、雛木の体に震えが走った。この人には何も隠せないのだという清々しい諦めが、激しい羞恥とない交ぜになって、雛木の胸を複雑に締め付ける。
だが体はあまりにも純粋で、濁った先走りがとろりと尾を引き、雛木の声を封じる口枷を汚し続けていた。
「上の口はきけないでしょうから、躾の悪い下の口に質問しましょうね。私に黙ってどんな嫌らしい遊びをしたんですか」
工藤は言葉で雛木を嬲りながら、執拗にアヌスの縁を鞭先で辿った。雛木のその場所は、固い鞭先に怯えているのか、それとも悦んでいるのか、不規則に収縮を繰り返す。
「ふ……ふ……」
無理な姿勢で、顔を真っ赤にしながら苦しげな鼻息を漏らす雛木の姿は、いつまでも見ていたいほど愛おしい。
だが、そんな時間は長くは続かなかった。雛木本人の強い忍耐や服従心に反し、浅ましいその場所が、綻んで淫らに開閉を始めたのだ。
ほんのわずかに鞭先を沈めたら、もう駄目だった。
「うぅっ、うぅっ」
雛木は洗ってもいない恥ずかしい場所を全て主人に晒しながら、呻き、腰を揺すった。
早くその場所を、自分で散々弄ってしまった罪深い場所を、その鞭で罰してほしいと。
可哀想なまでにペニスは腫れ上がり、限界を訴えているのに、雛木の身体も心も、アヌスへの手酷い淫虐を何より求めていた。
「うぅっ、うぅっ……うぅん……うぅうん……」
雛木の呻きが、徐々に高く細い切なげな鳴き声へと変化し始める。
「どうして欲しいんです? 言ってごらんなさい」
頃合いと見た工藤は、気密性を感じさせるぽんっという音と共に、開口ギャグの栓を抜いてやった。
口を押し広げる円筒の中に、唾液まみれの舌が覗く。
顎の感覚も無くなってきているだろう雛木は、押し広げられた不自由な口で、
「ほひいれふ……ほひい……」
と解放を求めてた。
「大丈夫。あげますよ」
工藤が微笑んでやると、雛木は頬を紅潮させ、目を細めた。尻の穴を責めてもらえると思って喜ぶ様子が、とても淫らで愛しい。
だから、そう簡単に叶えてはやらない。
工藤は拘束棒を踏みつけたまま、雛木の顔を見下ろして表情を消した。
「ところで、あなたは奴隷として、自らの欲望の発露で主人を煩わせてはいけないということはわかっていますか?」
質問の意味が汲み取れなかったのだろう。雛木の眉間に皺が寄り、瞳が必死な色を帯びる。
今この瞬間、この子の頭も視界も自分だけが占めているのだと思うと、工藤の胸には安堵に近い喜びが湧き上がった。
だが、その気持ちを伝える代わりに、工藤は口の端に笑みを浮かべ、わかりやすい言葉で教えてやった。
「そこらじゅうを汚して、私が片付ける手間を増やすなと言ったのです。奴隷なら奴隷らしく、自分の始末は自分でつけなさい。さぁ、首と舌を思い切り伸ばして。自分のザーメンを自分の口で受け止めるんですよ」
工藤がボストンバッグから取り出したのは、手の平サイズの金属棒だった。ブンと振ると、金属同士がぶつかる嫌な音を立てて、その棒が長く伸びる。まるで特殊警棒のようなそれは、両端に輪のついた拘束棒だった。
工藤は拘束棒の両端にある五百円玉大の金属輪と、雛木の両足の枷を、麻縄でしっかりと結び付けた。
肩幅の倍はある拘束棒は、雛木の脚を割り開き、無慈悲に股間を晒させる。吊りから降ろされ、多少心身の余裕が生まれたことで羞恥心が甦ったのか、雛木は脚を閉じられないながらも慎ましく両膝を寄せようとしていた。しかし、拘束棒は長く、どう頑張っても膝同士を触れ合わせることはできない。
隠そうとしても剥き出しになってしまう股間では、パンパンに張った玉の周囲に、自らへの鞭打ちでつけた青痣がいくつも散らばっているのが見えた。
「顔を上げて、口を大きく開いてください」
工藤の要請に、雛木は従順に従った。だが、羞恥からか、いや、大部分は興奮からだろう、頬を染め、大きく開いた唇を震わせている。
そんな雛木の顎は細い。本人はもう若くないからと何度か口にしていたが、工藤から見れば充分に、『最近の若者』の骨格だ。華奢さは美しいが、実用的な奴隷向きではない。
「小さな口ですね。これからは自分で毎日ディルドを咥えて、顎を鍛えてください。噛まれるのはごめんです」
暗にフェラチオの予定を告げると、開いた口の中で雛木の舌が踊った。それきり、もう、どう舌を収めていいかわからなくなってしまったのだろう。緊張した舌は、喉奥に引っ込んだり、丸まったり、うろうろと口内をさまよい始めた。
だが、命じられた通り、開いた口を閉じようとはしなかった。代わりにぎゅっと目を瞑り、鼻からふんふんとやり場のない呼気を漏らしている。
「ただし、開口は無理をしすぎないように。顎関節症になっては困りますからね。オーラルセックスという言葉がある通り、口も立派な性器です。アヌス同様、大切にしてください」
今まさに恥ずかしい粘膜を晒しているのだと意識させた途端、雛木の口内で急激に粘液が分泌されたのが見てとれた。ほんの短い時間で、溢れるほどに増した唾液が、今にも下唇の真ん中から滴りそうになっている。想像力まで素直なところが、雛木の大きな美点だ。
「はひ……」
口を開けたまま間の抜けた返事をして、雛木は瞳をとろりと濡らす。
これで普段の生活でも、おいそれと人前に口内を晒せなくなっただろう。雛木が日常の中で羞恥や興奮を感じる様は、想像するだけで工藤の劣情を煽った。
「理解できたいい子には、新しい道具を使ってあげましょう。あなたが気に入ってくれるといいのですが」
そう言いながら、工藤が黒い革ベルト付きの短い筒状の道具を取り出して見せると、唾液を溜めた雛木の喉が大きく動いたのが見えた。
「今日は口での奉仕を覚えさせるわけではありませんから、小さめの口径の物を使いますね」
返事を待たず、唾液で満たされた雛木の口に筒部分を捩じ込む。それは、開口用の口環だった。中心についた短い円筒を上下の歯の間に捻じ込み、頭の後ろで革ベルトのバックルを留めると、口が閉じられなくなる。口淫を強制するのに便利な道具だ。
だが今は、円筒部分は排水溝の栓のような蓋でしっかりと封じられていた。蓋付きの口枷は、責め手が望む時だけ蓋を開けて、何でも口内に捩じ込めるため、支配感・被支配感を強く得られる。
ただし、開口させたまま声を封じるのは、プレイとしては危険だ。何しろ、何かあっても窮状を訴えることができない。
だから、雛木が少しでも不安そうにすれば、すぐに外してやる気だった。だが、手足だけでなく口まで封じられた無力な雛木は、眉根を切なげに寄せながらも、一向に勃起を萎えさせない。それどころか、閉じようとしていたはずの膝頭の力が抜け、腿がしどけなく開いてしまっている。
意思表示さえ封じる拘束を、興奮をもって受け入れているのだ。その全幅の信頼と、隠し切れない欲情が堪らない。
何でも享楽的に受け取るタイプのマゾヒストもいるが、工藤としては痛みや恐怖に敏感でありながらも、快楽に対して欲深い雛木のようなタイプの方が、嬲りがいがあって抗いがたく魅力的に映った。
「奴隷の作法を仕込むとは言いましたが、罰も兼ねているのですから、そんなに喜ばないで下さい」
わざとらしく呆れて見せると、雛木はハッと目を見開き、大きく頭を左右に振った。「んぅ、んぅ」と、何事かくぐもった声を漏らしている。
当然、何を言っているのかまるでわからない。そのままならない様子が幼気で、工藤を昂らせるなどと雛木は知る由もないだろう。
だが、いくら雛木が可愛いとはいえ、自慰行為として自分を痛めつけることだけは許すわけにはいかない。
他人を傷つけることに対しては忌避感をもっているのに、自分自身にだけそれが向かない人間は意外と多い。他人を傷付けるのは怖くても、自分ならいくら傷付けても構わないと考えるのだ。しかも、マゾヒストは痛みと快感を繋ぐ回路ができあがっているため、常人以上にそのリスクが高い。
だが、そんな心配以外にも、工藤の胸を占める仄暗い想いがあった。それは、奴隷当人にですら、その体を自由にさせたくないという独占欲だ。
そんな身勝手な想いを、丸ごと伝える気はない。だが、あまりにもまっすぐな気持ちを雛木から向けられて、工藤は己の醜い欲望を、ほんの少し許すことに決めたのだった。
「私は、あなたが勝手に自分を傷つけることを決して許せません。さぁ、痣まみれの醜い尻を見せなさい」
雛木は羞恥と申し訳なさに目を伏せながら、両膝をぱかりと大きく開く。口枷に犯されている顔は哀れだったが、その瞳は明らかに更なる責めを求めていた。
「それではよく見えませんね……!」
開脚を強制する拘束棒を勢いよく蹴り上げてやると、雛木は驚いたように目を見開き、達磨のようにあっけなく転がった。
起き上がることを許さず、雛木の両脚を割り開く拘束棒を掴んで持ち上げる。そのまま雛木の頭の方へ押してやると、子供がおしめを替えられる時のように、尻がぐっと持ち上がった。
雛木は、玉の裏から尻の穴まで丸出しにするみっともない格好が恥ずかしいのだろう、ぎゅっと目を瞑っている。
だが、
「目を開けて、しっかりと自分のペニスを見なさい」
と命じると、はっと目を見開いた。
その素直な顔面に向け、開脚を強制する拘束棒を押して、更に性器を近づけてやる。
もう少しでセルフフェラチオが出来そうなところまで押すと、無理な体勢に雛木の脚全体がぶるぶると震え出す。だが工藤は容赦せず、手の代わりに足を使って、更に雛木の頭上方向へと拘束棒を踏み込んだ。すると、雛木の尻は更に持ち上がり、背中まで丸見えになる。
男にしては体が柔らかい方とはいえ、苦しさを感じているのだろう。雛木の眉根がぎゅっと寄せられている。体の下に敷くことになった縛られた腕も痛むはずだ。
だがそれに構わず更に拘束棒を踏み込むと、雛木のつま先はついに、自身の頭上の床についた。
ちんぐり返しという俗称で呼ばれる恥ずかしい体位に、雛木は真っ赤になり、羞恥で顔を大きく歪ませている。
「これでよく見えますね」
工藤はくるりと体を返し、雛木の頭上の位置に立つと、拘束棒を踏み付け、いとも簡単に雛木を恥ずかしい体位で固定した。
縛られた後ろ手が背中を支えているせいもあり、一度こうしてひっくり返されると、容易には元に戻れない。
「んん……! んぐぅー……!」
意味の取れないくぐもった声は、抵抗か羞恥の訴えか。
だが、言葉より遥に雄弁なものがあった。雛木の言葉を封じる口枷の上に、目の前に近づいた己のペニスの先端から、滴った先走りがぽとりと垂れたのだった。
「あぁ、なんて醜い。鞭打ちに痣はつきものとはいえ、こんな大小も濃淡もまちまちな痣など、見るに堪えません」
晒された雛木の尻を見て、本心から工藤は嘆息する。
工藤とて、仕込んだ奴隷には当然痣を残すつもりで打つが、その際はあくまでも奴隷らしい装飾として浮かぶように、位置にも大きさにも気を配っている。
だが雛木の尻は今、親から虐待を受けた子供のような悲惨さしか感じられない有様だった。
「んぅぐ……」
雛木の口からはおそらく謝罪だろう声が漏れたが、もちろん罪の本質を理解できてはいないはずだ。それは、主人の言いつけを守らなかったことに対する謝罪でしかない。
それが工藤にとってはもどかしく感じられる一方で、中途半端な調教を施してきたことへの罪悪感を抱かせもした。
だが、当の工藤の口からは、辛辣な言葉が矢継ぎ早に放たれる。
「こんな物を見ながらでは、アヌスを可愛がる気にもなれませんね。今夜は急な呼び出しでしたから準備もしていないでしょうし、せっかくですからこの体勢のまま、漏らすまで浣腸でもして差し上げましょうか?」
もちろんそこまでする気はなかったが、雛木の羞恥に赤らんでいた顔からは、ざっと血の気が引いた。
恐怖に目を見開き、思わずといったように首を小さく横に振る。だが、はっと気付いた様子で動きを止めた。
そして、青ざめた顔で、小さくこくりと頷いたのだ。
それが奴隷に相応しい罰なら受け入れるという覚悟なのだろう。初めて会った頃、スカトロはNGだと言っていたのに、この子は。
工藤の唇に浮かんでいた強張りが、無意識にふっと弛んだ。
「冗談ですよ。いえ、そうして差し上げてもいいのですが、楽しみはまた今度にとっておきましょう。今はまず、奴隷の作法を覚えましょうね」
そう許してやると、雛木はほっとした様子を見せ、表情を寛げた。
これで、スカトロに比べればましだと、大抵のことは受け入れやすくなるというものだ。
工藤はボストンバッグを探り、鞭先が小さく固い革製の乗馬鞭を手に取った。
これはかなりの痛みを与える上、肌が切れさえするので、ほとんど雛木には使っていない。
だが、一点をピンポイントで打ち据えるには最適な形だった。
さっと鞭先で雛木のアヌスを掠めてやると、そこはまるで生き物のように目に見えて窄まった。体全体がびくりと震え、腹筋が波打つ。
アヌスのひくつきは一度では収まらず、面白いようにうねうねと複雑に動いた。
本人も言っていた通り、昨日のセルフウィッピングの際は玩具を咥え込んで楽しんだらしく、アヌスの縁はいまだに少しめくれ、赤く盛り上がっていた。皺も伸び気味で、ふっくらと柔らかい。
このままこの穴を抉じ開けてぶち込んでやりたい凶暴な欲求も込み上げるが、それと同時に焦らしてもやりたくなる。
工藤は荒淫の痕跡を見せるアヌスの縁を、小さな鞭先で擽った。
「手入れが悪いですよ。ここをめくれさせるなら、いっそのこと綺麗なアナルローズになるよう気をつけなさい。元には戻らないので、積極的にお勧めはしませんがね」
酷薄に叱りながら、解された柔らかさを残す縁を、鞭先で軽くなぞる。
「んうっ、んうぅっ」
雛木の口から漏れる呻きは今や、激しい羞恥ともどかしい快感を訴える響きに変わっていた。
「あなたが自慰をした後は、ここ、右側の縁や……」
ここ、と言いながら、鞭先でアヌスの縁を擽る。
「尾てい骨側の、ここが腫れていることが多いですが」
指摘しながら辿る度に、雛木の封じられた口から漏れる呻きは悩ましく大きくなっていく。
「今日はここ、左側の縁が特に腫れていますね。利き手で鞭を振るい、左手でバイブかディルドを乱暴に出し入れしましたか?」
はしたない行為を驚くほど正確に見透かされて、雛木の体に震えが走った。この人には何も隠せないのだという清々しい諦めが、激しい羞恥とない交ぜになって、雛木の胸を複雑に締め付ける。
だが体はあまりにも純粋で、濁った先走りがとろりと尾を引き、雛木の声を封じる口枷を汚し続けていた。
「上の口はきけないでしょうから、躾の悪い下の口に質問しましょうね。私に黙ってどんな嫌らしい遊びをしたんですか」
工藤は言葉で雛木を嬲りながら、執拗にアヌスの縁を鞭先で辿った。雛木のその場所は、固い鞭先に怯えているのか、それとも悦んでいるのか、不規則に収縮を繰り返す。
「ふ……ふ……」
無理な姿勢で、顔を真っ赤にしながら苦しげな鼻息を漏らす雛木の姿は、いつまでも見ていたいほど愛おしい。
だが、そんな時間は長くは続かなかった。雛木本人の強い忍耐や服従心に反し、浅ましいその場所が、綻んで淫らに開閉を始めたのだ。
ほんのわずかに鞭先を沈めたら、もう駄目だった。
「うぅっ、うぅっ」
雛木は洗ってもいない恥ずかしい場所を全て主人に晒しながら、呻き、腰を揺すった。
早くその場所を、自分で散々弄ってしまった罪深い場所を、その鞭で罰してほしいと。
可哀想なまでにペニスは腫れ上がり、限界を訴えているのに、雛木の身体も心も、アヌスへの手酷い淫虐を何より求めていた。
「うぅっ、うぅっ……うぅん……うぅうん……」
雛木の呻きが、徐々に高く細い切なげな鳴き声へと変化し始める。
「どうして欲しいんです? 言ってごらんなさい」
頃合いと見た工藤は、気密性を感じさせるぽんっという音と共に、開口ギャグの栓を抜いてやった。
口を押し広げる円筒の中に、唾液まみれの舌が覗く。
顎の感覚も無くなってきているだろう雛木は、押し広げられた不自由な口で、
「ほひいれふ……ほひい……」
と解放を求めてた。
「大丈夫。あげますよ」
工藤が微笑んでやると、雛木は頬を紅潮させ、目を細めた。尻の穴を責めてもらえると思って喜ぶ様子が、とても淫らで愛しい。
だから、そう簡単に叶えてはやらない。
工藤は拘束棒を踏みつけたまま、雛木の顔を見下ろして表情を消した。
「ところで、あなたは奴隷として、自らの欲望の発露で主人を煩わせてはいけないということはわかっていますか?」
質問の意味が汲み取れなかったのだろう。雛木の眉間に皺が寄り、瞳が必死な色を帯びる。
今この瞬間、この子の頭も視界も自分だけが占めているのだと思うと、工藤の胸には安堵に近い喜びが湧き上がった。
だが、その気持ちを伝える代わりに、工藤は口の端に笑みを浮かべ、わかりやすい言葉で教えてやった。
「そこらじゅうを汚して、私が片付ける手間を増やすなと言ったのです。奴隷なら奴隷らしく、自分の始末は自分でつけなさい。さぁ、首と舌を思い切り伸ばして。自分のザーメンを自分の口で受け止めるんですよ」
11
お気に入りに追加
618
あなたにおすすめの小説





怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる