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工藤さんは本当にセックスしなくて平気なの? ~それ以来~
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朝日が白々しく差し込むラブホテルのベッドの上で、指一本動かせないほどの虚脱感に襲われ、このまま死にたいと思ったのは生まれて初めてだった。初体験の時ですら、重力が三倍になったような、肉体も精神も絞り尽くされたこんな脱力感は経験していない。
――死ぬかも。ていうか、死んだかも。
サイドテーブルに置かれたペットボトルが目に入った途端、喉の痛みと渇きを急激に自覚し、雛木は乾いた音を立てて咳き込んだ。
その瞬間、嫌というほど覚えのある固い物が、またもや後孔に差し込まれた。恐ろしいことに、何一つ抵抗感なく、ぬるりと、みっちりと。
「あひっ」
情けない悲鳴に、背後から応える声があった。
「後朝の別れ……の前に、しっかりと後戯をしておかなくては、ね。セックスとは、一般的にそういうものでしょう?」
工藤が何を言っているのかわからない。だが、問い掛けより先に、雛木の口からはあられもない嬌声が迸っていた。
「ああんっ、ああんっ、いくぅうっ、いくぅぅっ!」
筋力の限界を超え動かないはずの腰が、またひとりでに揺れ始める。
「あぁ、また声が出るようになりましたね。すばらしい。睡眠は偉大な回復のメカニズムなのだと思い知らされます。さぁ、まだいけますね?」
声音の穏やかさとは裏腹に、リモコンが無慈悲にカチカチと押される。マシンの前後動は再び凶悪さを露にし、雛木は身も世もなくよがり狂った。
「やだぁぁぁっ! いくうっ! いくうぅぅぅっ!」
あの狂乱の一夜から数日。体の疲れも粘膜の腫れもすっかり落ち着いた雛木だったが、看過できない後遺症に悩まされていた。
「いくぅ……」
小さな呟きを漏らすと、ハッと驚いたように周りを見回す。幸いなことに、営業連中が出払ったフロアは閑散としていて、神聖なる職場にふさわしからぬ爛れた言葉を聞いたものはいないようだった。
ーーまずい。社会人人生が終わるところだった。
我に返って顔を赤らめる雛木は、別に今いきそうになったわけではない。完全に、無意識に口をついて出たのだ。
一晩中繰り返したその言葉は、ふとした瞬間、場所も状況もわきまえず、雛木の口からポロリと零れ落ちるようになっていた。
こんなの普通じゃない、頭がおかしくなったとしか思えない。だが、自分の口が「いく」という動きと音に、あまりにも馴染んでしまったらしい。
しかも、それを口にした瞬間までは確かに欲情していなかったはずなのに、自分の声を耳で聞き、口と喉に追体験させれば、身体はあの夜の責めを勝手に思い出し、面白いように簡単に昂った。尻の中いっぱいに、腰の奥深くまで、あの強烈な掘削が甦る。雛木は切なく眉根を寄せ、太腿を擦り合わせて、腰を振らないように必死に堪えるしかなくなってしまう。
工藤の責めに、仕込まれてしまった。恥ずかしく、屈辱的で、どこか甘美な現実を、雛木は否応なく思い知らされていた。
ーーだめだ、仕事中なのに、どうしよう……。まずい、けど、もう……!
雛木は込み上げてきた欲情と、実際にディルドを嵌められているのではと思うほどの快感に負け、たまらず給湯室に駆け込んだ。その先にあるトイレまでもたなかったのだ。
廊下と隔てる扉もなく、いつ人が入ってくるかもわからない場所だが、もう我慢できない。雛木は少しでも顔を隠そうと、給湯室の奥の壁に額を押し付けた。固く大きくなった股間を扱きたい欲求を堪え、両腕を後ろに回す。そして、何かを思い出すようにつま先立つと、程なくびくりびくりと全身を大きく震わせた。
「いくぅ……いくぅ……!」
触れられもせず、体と脳裏に甦った激しい責め苦の記憶だけで、雛木ははしたなく下着を汚した。
ーーあぁ、こんな……こんなの……どうしよう……。
自己嫌悪と呼ぶにはあまりにも甘い罪悪感を抱え、雛木はずるずるとその場にしゃがみ込む。射精したのに一向に収まらない飢えが、工藤を、その責めを、求めろ、貪欲に強請れと強烈に唆す。恥ずかしい場所が、疼いて疼いて泣きそうな程切ない。
もう、きっと、知らなかった頃の自分には、戻れない。
一呼吸遅れて、沢山のマグカップをお盆に乗せた若い女性社員が、前触れなく給湯室に入ってきた。
「きゃっ! え、あ、雛木さん? 大丈夫ですか?」
壁に向かってしゃがみ込んでいる男に驚いたようだったが、それが雛木とわかると慌てた様子で駆け寄って来る。
股間の染みを見られるわけにもいかず、雛木はふらふらと立ち上がって、壁側を向いたまま誤魔化すしかなかった。
「えっと……貧血気味で。吐きそうだから、悪いけどちょっとだけ向こうに行っててくれる?」
荒い呼吸は幸いにも、雛木の嘘をもっともらしく演出した。名前も覚えていない後輩は「わかりました!」ときびきび応えると、給湯室からさっと離れてくれる。
漏れ聞こえる声から察するに、こちらへ向かってくる社員を「すみません、今ちょっと……」と健気にも押し留めてくれているようだ。
その隙に、雛木はスラックスの上から、疼く秘穴に指をぐっと押し込んだ。
全然足りないのに、その場所への軽い刺激だけで、雛木は快感に身震いする。
ーーここに、ここに、欲しい……!
その飢えが収まる気配は微塵も無く、雛木を果てしなく蝕む。
ーー工藤さん……く、どぉ、さ……!
胸の内で狂おしく名を呼び、雛木はまた一つ、「いくぅ……」と小さく絞り出した。
ーーあぁ……! もう二度とガン突きされたいなんて言わない。
――死ぬかも。ていうか、死んだかも。
サイドテーブルに置かれたペットボトルが目に入った途端、喉の痛みと渇きを急激に自覚し、雛木は乾いた音を立てて咳き込んだ。
その瞬間、嫌というほど覚えのある固い物が、またもや後孔に差し込まれた。恐ろしいことに、何一つ抵抗感なく、ぬるりと、みっちりと。
「あひっ」
情けない悲鳴に、背後から応える声があった。
「後朝の別れ……の前に、しっかりと後戯をしておかなくては、ね。セックスとは、一般的にそういうものでしょう?」
工藤が何を言っているのかわからない。だが、問い掛けより先に、雛木の口からはあられもない嬌声が迸っていた。
「ああんっ、ああんっ、いくぅうっ、いくぅぅっ!」
筋力の限界を超え動かないはずの腰が、またひとりでに揺れ始める。
「あぁ、また声が出るようになりましたね。すばらしい。睡眠は偉大な回復のメカニズムなのだと思い知らされます。さぁ、まだいけますね?」
声音の穏やかさとは裏腹に、リモコンが無慈悲にカチカチと押される。マシンの前後動は再び凶悪さを露にし、雛木は身も世もなくよがり狂った。
「やだぁぁぁっ! いくうっ! いくうぅぅぅっ!」
あの狂乱の一夜から数日。体の疲れも粘膜の腫れもすっかり落ち着いた雛木だったが、看過できない後遺症に悩まされていた。
「いくぅ……」
小さな呟きを漏らすと、ハッと驚いたように周りを見回す。幸いなことに、営業連中が出払ったフロアは閑散としていて、神聖なる職場にふさわしからぬ爛れた言葉を聞いたものはいないようだった。
ーーまずい。社会人人生が終わるところだった。
我に返って顔を赤らめる雛木は、別に今いきそうになったわけではない。完全に、無意識に口をついて出たのだ。
一晩中繰り返したその言葉は、ふとした瞬間、場所も状況もわきまえず、雛木の口からポロリと零れ落ちるようになっていた。
こんなの普通じゃない、頭がおかしくなったとしか思えない。だが、自分の口が「いく」という動きと音に、あまりにも馴染んでしまったらしい。
しかも、それを口にした瞬間までは確かに欲情していなかったはずなのに、自分の声を耳で聞き、口と喉に追体験させれば、身体はあの夜の責めを勝手に思い出し、面白いように簡単に昂った。尻の中いっぱいに、腰の奥深くまで、あの強烈な掘削が甦る。雛木は切なく眉根を寄せ、太腿を擦り合わせて、腰を振らないように必死に堪えるしかなくなってしまう。
工藤の責めに、仕込まれてしまった。恥ずかしく、屈辱的で、どこか甘美な現実を、雛木は否応なく思い知らされていた。
ーーだめだ、仕事中なのに、どうしよう……。まずい、けど、もう……!
雛木は込み上げてきた欲情と、実際にディルドを嵌められているのではと思うほどの快感に負け、たまらず給湯室に駆け込んだ。その先にあるトイレまでもたなかったのだ。
廊下と隔てる扉もなく、いつ人が入ってくるかもわからない場所だが、もう我慢できない。雛木は少しでも顔を隠そうと、給湯室の奥の壁に額を押し付けた。固く大きくなった股間を扱きたい欲求を堪え、両腕を後ろに回す。そして、何かを思い出すようにつま先立つと、程なくびくりびくりと全身を大きく震わせた。
「いくぅ……いくぅ……!」
触れられもせず、体と脳裏に甦った激しい責め苦の記憶だけで、雛木ははしたなく下着を汚した。
ーーあぁ、こんな……こんなの……どうしよう……。
自己嫌悪と呼ぶにはあまりにも甘い罪悪感を抱え、雛木はずるずるとその場にしゃがみ込む。射精したのに一向に収まらない飢えが、工藤を、その責めを、求めろ、貪欲に強請れと強烈に唆す。恥ずかしい場所が、疼いて疼いて泣きそうな程切ない。
もう、きっと、知らなかった頃の自分には、戻れない。
一呼吸遅れて、沢山のマグカップをお盆に乗せた若い女性社員が、前触れなく給湯室に入ってきた。
「きゃっ! え、あ、雛木さん? 大丈夫ですか?」
壁に向かってしゃがみ込んでいる男に驚いたようだったが、それが雛木とわかると慌てた様子で駆け寄って来る。
股間の染みを見られるわけにもいかず、雛木はふらふらと立ち上がって、壁側を向いたまま誤魔化すしかなかった。
「えっと……貧血気味で。吐きそうだから、悪いけどちょっとだけ向こうに行っててくれる?」
荒い呼吸は幸いにも、雛木の嘘をもっともらしく演出した。名前も覚えていない後輩は「わかりました!」ときびきび応えると、給湯室からさっと離れてくれる。
漏れ聞こえる声から察するに、こちらへ向かってくる社員を「すみません、今ちょっと……」と健気にも押し留めてくれているようだ。
その隙に、雛木はスラックスの上から、疼く秘穴に指をぐっと押し込んだ。
全然足りないのに、その場所への軽い刺激だけで、雛木は快感に身震いする。
ーーここに、ここに、欲しい……!
その飢えが収まる気配は微塵も無く、雛木を果てしなく蝕む。
ーー工藤さん……く、どぉ、さ……!
胸の内で狂おしく名を呼び、雛木はまた一つ、「いくぅ……」と小さく絞り出した。
ーーあぁ……! もう二度とガン突きされたいなんて言わない。
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