プレイメイト（ＳＭ連作短編）

同僚の秘密 3/3

　毒々しい色の間接照明の光が、雛木のワイシャツの胸に突き出した二つの突起を照らす。はっきりと透ける濃い色素が、たまらなく卑猥だった。
　ゴクリと唾を飲み込む音は、トランスミュージックに掻き消されて馬越自身の体内だけに響く。
　外界から隔絶された地下室で、いやらしい生き物が一つまた一つと、自らシャツのボタンを外していった。
　シャツの間から覗く白い胸は、徐々にその面積を増やし、しっとりとした質感で光の中に浮かび上がる。その平らな胸には、先ほど見せつけられた女の豊満な谷間とは全く異なる、暴きたくなる謎が満ちているように思えた。
　全てのボタンを外した雛木が、シャツの裾を掴み、前立てを肌に擦りつけるようにしながら徐々に左右に開いていく。馬越の目を釘付けにする突起が、開いていくシャツに引っ張られて歪むのが透けて見えた。
　シャツの前立ては乳首の上までたどり着くと、わずかに抵抗を受けて皺を作る。それを振り切るように更にシャツが開かれると、歪んで押し潰されていた乳首がついに、ぷるっと揺れて現れた。

　最後の鎧をはぎ取られた雛木の胸は、オレンジとピンクの照明の中で、ぬめるように艶かしく輝いている。その左右の胸の中心では、真っ赤に腫れ上がった乳首がいやらしく勃起していた。
「どう？　実際に見たら何てことないだろ？」
　軽い口調だったが、雛木自身がそう思っていないことは、胸を見下ろす表情で知れた。卑猥さを恥じるようでいて、どこか誇らしげにも見える目つきで、自分の乳首をうっとりと見つめている。
「何てこと……ありまくりだろ……」
　馬越は瞬きを忘れ、雛木の勃起乳首を凝視した。昨夜飲み屋で見た時よりも、明らかに腫れている。この一日の間にセックスをしたのだろう。それも、かなりしつこく、濃厚な。
　乳首が真っ赤に腫れ上がるまで愛撫されて、雛木はどんな声を上げたのだろうか。
　ズグン、と、馬越の股間が大きく疼く。
　――この乳首を思い切り吸い上げて、べろべろ舐め回して、摘み上げてこりこりしてやりたい。
　そんな風に考えた自分にぎょっとする。
　まだ雛木を女だとは信じ切れず、けれど男だとも思えない曖昧な状況なのに、はっきりと欲情している。同僚だとか性別だとかをぐるぐると考えて煮え切らない頭より、下半身の方が遥かに率直だった。
　そして大抵の男は、許されるのならば下半身の意見に従いたがるものだ。
「もっと、近くで見せてくれよ」
　認めてしまえば、欲望が馬越を素直にさせた。だが、触れようと伸ばした右手とは反対に、雛木は脅えるように体を引く。
「触るのは駄目だ。俺の体は、俺の大事な人のものだから」
　これまで匂わせることすらしなかった恋人の存在を口にされ、雛木の乳首に届くはずだった手が、ぐっと拳を握った。
　予想していたこととはいえ、自分でも驚くほどの落胆があった。

　雛木に恋愛感情を抱いた覚えはないが、目の前のこの秘密に満ちた体を全て手に入れている人間がいるのだと思うと、嫉妬と呼ぶしかない感情が沸き起こる。彼女か彼か、とにかくそいつは、このいやらしい乳首を弄くり回し、俺には見ることさえ許されていない足の間まで我が物顔で弄んでいるのだろうか。
　しかし、大事な人と口にするうっとりとした表情を見れば、雛木がどれほど相手に惚れているのかは火を見るより明らかで、自分の出る幕はないとわかってしまうのだ。
　だったらせめて、このラッキーな時間を楽しもうと思える程度には、馬越は前向きかつ欲望に対してアグレッシブな男だった。

「わかったわかった。触らないから、もっと近くで見せてくれ。それならいいだろ？」
　降参するように両手を上げる。こうなったら、あらゆる角度から目に焼き付けて、今夜のオカズになって頂こう。
　恥ずかしいのか、雛木は両手で自分のスラックスのベルトをぎゅっと掴み、ふるっと小さく震えた。切なげに眉を寄せる様が、馬越の加虐心を煽る。
「お前のこと、疑うわけじゃないけど……。力じゃ敵わないってよくわかったから、手だけ拘束させて貰っていいか」
　そりゃどんなプレイだと思うが、昨夜の自分の蛮行を思えば、雛木が警戒するのは当然だ。その手のプレイに興味はないが、仕方がない。好きにしろと、逮捕でもされるかのように両腕を差し出した。
「前じゃなくて、後ろに腕回してくれ」
　こうか？　と、腰の辺りで両腕をクロスさせる。雛木はぴたりと馬越に視線を定め、じりじりとソファの後ろに回り込んでくる。獲物を狙う猫みたいだと可笑しく思ったのと同時に、ガシャリと金属音がした。
「え……？」
　気付けば、金属の感触が手首にズシリと重い。
　まさか手錠が出てくるとは思いもせず、驚いて両腕を動かそうとするが、ガチャガチャと不快な音がするだけで、一定の幅以上に腕を離せない。
　振り返って確認しようとする馬越を制し、雛木が小さな鍵をゆらゆらと揺らして見せた。
「十五分経ったらちゃんと外すから」
　小さな鍵はサイドチェストの上に置かれ、シャツの前を開いたままの雛木が再び馬越の正面に戻ってくる。
「じゃあ、好きなだけ、見て」
　馬越は人生初の手錠拘束を受けながら、目の前に近づいてくる雛木の乳首に、地獄の十五分間を悟った。


　ソファに腰かけた馬越の両足を、雛木が跨ぐ。そのまま膝に座ってくれるのかと期待したが、服越しにも触れさせる気はないらしく、立ったまま自分の胸を揉みしだき始めた。
　目と鼻の先で、雛木の白くて薄い胸がぐにぐにと形を変える。鷲掴みにした中指と薬指の間からは、乳首の頭が飛び出していた。
　雛木は恥ずかしいのか俯き加減だが、既にはぁはぁと息を乱し始めている。スラックス越しにもわかるほどの反応を見せる馬越の股間を、何度もチラチラと盗み見ていた。
「んっ」
　中指と薬指の間で両の乳首をぎゅっと挟んだ途端、雛木の口から甘い声が漏れた。かなり力を入れているようで、乳首が横向きに潰れているのがわかる。
　強い刺激が心地いいのか、脂肪のない胸全体をきつく揉み続けながら、乳首を挟み込んだ指をこすり合わせるように動かした。
　指の間から飛び出した乳首の先端が、ぴこぴこと上下左右に動く。
　胸なんてぺったんこのくせに。デカくてエロい乳首に、こんなにも煽られるだなんて。
「もっと？」
　小首を傾げて尋ねる雛木の瞳は、はっきりとした欲望に潤んでいる。
　乳首が酷く感じるのか、見られながら弄っていることに興奮しているのか、その両方か。馬越は声が掠れるのを不格好に思う余裕もなく、欲にまみれた言葉を垂れ流した。
「もっとだ。そのデカイ乳首、指先で摘んで、こりこりしてみてくれよ」
　雛木は恥ずかしげに一瞬目を閉じたが、言われるがままに震える親指と人差し指で両の乳首を摘む。しかも、馬越に見えやすくするためか、手の平を馬越側に向け、自分の体から手を遠ざけるように軽く引っ張りながら、くりくりと小刻みに指を動かしてくれた。
「こ、こう……？」
　露わになった薄い腹筋が、びくりびくりと波打っている。
「何だ、感じてんのか？　男になったくせに？」
　煽られすぎて悔しいので、少し意地悪を言ってやる。だが、言い返すかと思った雛木は驚いたことに、小さくこくりと頷いた。
「男、だけど、でも……乳首、感じんの」
　快感を自ら認めた途端、もどかしい刺激に耐えられなくなったのか、乳首を摘み捻る指の動きが勢いづく。真っ赤に勃起した乳首をこりこりと動かす度、その口からは「あっ」と小さな喘ぎが漏れた。
　挙句の果てには、
「恥ずかし、から、やっぱ見んなよ……」
などと、ぎゅっと眉根を寄せた切なげな表情で言われたら。
「お前、マジでエロ過ぎるだろ……」
　無乳エロ乳首に完敗である。
「もう無理。ちんこ爆発しそうなんだけど。ちょっとでいいから触ってくれよ、な？」
　哀れっぽく眉尻を下げて、駄目元でねだってみる。相手が誰だろうが、こんな風に情けない頼み事なんてしたことがない。
　だが、快感でガードが緩くなっているかに見えた雛木はにべもなく
「ダメ」
　と撥ね付けた。
「そんなこと言うなら、もうやめにするけど」
　あまつさえ蔑みを込めた視線で見下されれば、諦めるしかない。
「わぁかった、悪かった。謝るから。でも俺の可哀想なちんこのためにも、もっとエロい感じで乳首弄ってくれよ」
　完全に雛木に主導権を握られているのに、それを不快だとも、悔しいとも思わなかった。
「エロい感じって、どうやって……？」
　乳首を親指と人差し指で捻り上げながら小首を傾げる姿は、もはや堕落を誘う悪魔にしか見えない。だが、上等だ。男だろうが女だろうが、エロければ、もうそれでいい。
「正直に答えろよ？　お前、自分でもしょっちゅう乳首弄ってるな？」
　確信をもって尋ねた問いへの答えは、小声の「……否定はしない」。だから馬越は最高のオカズを手に入れるべく、リクエストを口にした。
「じゃあ、いつもやってる乳首オナニー、見せてくれ」


『乳首オナニー』と言われて、雛木は否定しなかった。つまり、ちょっと気持ちいいからと軽く弄っているわけではなく、しっかりとそこで自慰をしているということだ。その事実に、馬越は酷く興奮した。
　雛木はあっあっと小さく喘ぎながら、自分の乳首をギリギリと捻り、陥没しそうなほど押し潰し、時に爪を立てている。
　乳首を可愛がるというよりは痛めつけるようなそのやり方を、雛木がどうやって覚えたのかはわからない。しかし、一つだけ明らかなことがある。
　雛木は間違いなく、Мだ。
「我慢してないで、もっとアンアン声出せよ」
　横柄に命じても、嫌がるどころか、はあっと熱いため息を漏らす。そして、「あ……あぁっ、あぁっ」と喘ぎ始めるのだ。
「そんなにグリグリして、痛いのが気持ちいいんだろ？」
　興奮に息を乱しながら問えば、
「気持ち、いいっ……あぁ……あぁっ……痛いの、気持ち、いいっ……」
と乳首を虐めながら素直に答える。しまいには、乳首を弄り、喘ぎながら、腰をかくんかくんと前後させ始めた。
　馬越の太腿を跨いだまま腰を振るせいで、雛木の内腿がこすれてくすぐったく、熱い。馬越の太腿の外側が、雛木の内腿の汗で湿ってくる。
　――乳首だけでこんなに感じやがって。なのに、やっぱ勃ってねぇな。
　腰を振ってしまうほど感じているというのに、雛木の股間は平らなままだった。
　乳首を酷く弄りながら悶える雛木は、馬越の知っている男とも女とも程遠い。雛木のいやらしさに酔わされた馬越は、雛木のスラックスの下には、自分が知る男女どちらの性器もついていないように思えてきた。
　いやらしさを煮詰めたような雛木には、生殖のための性器ではなく、快感を追及するためだけの敏感なまたぐらが似合う。秘められたその場所には、雛木がどろりとした声で耳に流し込んだ『ペニス』といういやらしい存在が、じゅくじゅくと熟れて蜜を滴らせているような気がした。

「あぁん、あぁ、あぁ、きもち、きもちいぃ」
　乳首を弄り続けた雛木の声はいよいよ大胆になり、馬越の股間を直撃する。もはや取り繕うこともできない様子で『いつもやってる乳首オナニー』を披露していた雛木に、遂に限界が訪れようとしていた。
「あぁん、ぁ……あっ！　あぁっ！　どうしよう、どうしよう……！」
　眉根を切なく寄せたまま、脅えたように目が見開かれる。途端に馬越の太腿が、雛木の内腿に強い力で挟み込まれた。
　絶頂に駆け上がる女が男の腰に足を絡み付けるように、雛木が内腿に力を籠め、腰を大きくグラインドさせる。その間も、乳首を激しく弄くり回す指は止まらない。
「どうしよう、駄目っ、あっ、あっ、あっ、あっ！」
　喘ぎが細切れになり、雛木が足りない酸素を求めるように仰のいた。
「いやだっ！　いっちゃうっ、いっちゃうっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ！」
　哀れに詫びる声は、しかし限りなく甘く淫らだった。馬越の太腿の上で抉るように腰をグラインドさせ、乳首を自ら思い切り引っ張りながら、遂に雛木は絶頂を極めようとしていた。
「ごめんなさいっ！　ああっ！　ああっ！　いくぅっ……！」

《ガンガンガンッ》

　突如襲った木槌で鉄を叩くような轟音に、二人してびくりと硬直する。あれほどうるさかったトランスミュージックはいつのまにか止んでいた。一呼吸おいて、今度は控えめに鉄扉が叩かれる。
「お客様、お代わりのご注文はいかがですか？」
　マスターの声がサイドチェストの中から聞こえてきた。標本にされた虫のように絶頂の直前で縫い留められた雛木は、小刻みに体を痙攣させる。だが、歯を食いしばり、馬越から一歩離れた。
　太腿で感じていた雛木の熱が去り、どちらのものかわからない汗で濡れたスラックスがじっとりと張り付く。ふらふらとサイドチェストへ向かった雛木が、迷う様子もなく一番上の引き出しを引くと、中から前時代的な無線機が出てきた。
「すみません、お会計を」
　雛木が応じるや否や、室内の照明が一瞬で無機質な蛍光灯に切り替わる。あれほど怪しい淫夢が立ち込めていた空間は、瞬時に寒々しく現実的な小部屋に変わっていた。

　夢から覚めたような感覚に驚いて動けないでいる馬越をよそに、雛木はもうソファからシャツとジャケットを拾い上げ、俯き加減で身に着け始めている。
「これでもう、俺の乳首にも見慣れただろ。約束通り、これからは普通に接してくれよな」
　そう言葉少なに言い捨てると、サイドチェストの上に置いた鍵で馬越を拘束する手錠を外し、心もち背中を丸めてふらふらと部屋を出て行ってしまった。
　取り残された馬越は、勢いを失う気配のない股間を一瞥すると、どさりと背もたれに倒れ込み天を仰いだ。

　さっきのは一体何だったのだろうか。
　脳裏に焼き付いた雛木の淫らな姿は、明るい室内ではまるで幻だったようにも思える。だが、スラックスの太腿部分に浸み込んだ汗の冷たさが現実を物語っていた。
　雛木は確かに、イキかけていた。馬越とてそれなりに女性経験は豊富だが、乳首への刺激だけでイッた女はこれまでいない。しかも、あんなに強く引っぱって、思い切り捩じり上げて。
　マゾヒスティックな悦びに耽溺する人間を初めて目にした馬越にとって、あまりにも衝撃的な経験だった。乳首をあんな風に虐めて、痛いはずなのに、それだけで絶頂する人間がいる。それは、男とか女とか以前の問題だ。雛木のことはもう、いやらしい『雛木』という名の生き物なのだとしか思えない。
　ヤリマンだとかヤリチンだとか、そういう馬越が今まで知っていた性的な匂いのする人種とは異なる、快感を得るための肉体にいやらしいものが目一杯詰まった、ぬらりとしたとらえどころのない存在。例えば、船乗りを海底へ誘うというセイレーンは、雛木のような生き物だったのかもしれないと、埒もないことを考える。

「お客様、お連れ様はお帰りになりましたが、クォーターをお代わりされますか？」
　開けっ放しだったサイドチェストから再び聞こえてきた声に、どうしたものかと頭を抱える。だが、この状態で外に出られるはずがなかった。
「……もう一杯お願いします」
　見よう見まねで、極力平静を装って応答すると、マスターもごく普通のオーダーかのように応じた。
「かしこまりました。サイドチェスト内に小物もご用意しておりますので、ご自由にお使いください」
　ぶつりと切れた通信にほっと息をつき、気を取り直してサイドチェストの三段の引き出しを順に開けてみる。
　一番上の段には無線機のみ、二段目にはやはりというべきかコンドームと箱のティッシュペーパーが。そして一番大きな三段目には、新品と思われる大人の玩具がぎっしりと詰まっていた。
　オナホールも数種類あったが、パッケージは二次元にしろ三次元にしろ巨乳の女で、こんなに苦しいほど勃起しているのに全くそそられない。馬越は仕方なくティッシュだけを五枚ほど抜き取り、自らのベルトに手をかけた。
「雛木……マジでエロすぎる……女神か……」


　汗染みの残るスラックスの太腿部分を見つめながら、馬越は一心不乱に右手を動かした。
　もう二回出したというのに、一向に萎える気配がない。
　初めこそ怪しい小部屋でオナニーすることに抵抗を覚えていたが、三度目ともなると、もう警戒心はゼロに等しくなっていた。
「雛木……雛木っ……」
　脳裏に焼きつくその表情も、卑猥な乳首も、それを弄りながら漏らす喘ぎも、堪らずにグラインドさせていた腰も。その全てがいやらしすぎて、たまらない。
「あぁ……雛木……やばすぎるだろ……」
　もう右手を動かすだけでは追い付かない。いつの間にか刷り込まれていたトランスミュージックのリズムに合わせて、右手で作った筒に向けて腰を突き上げる。
　閉じた目蓋の裏側で、雛木の淫らな姿と、黙々とキーボードを叩く姿が二重写しになる。
　思えば、会社でもそこはかとなくいやらしかったのに、同性だからと意識から締め出して来たのだ。
「雛木……雛木っ……エロい……かわいいっ……」
　馬越の妄想の中で、雛木は卑猥すぎる体を地味なスーツに包み、困ったように眉尻を下げていた。
『もうお前には全部知られてるから、相談したいんだけど……。弄りすぎちゃって、仕事にも支障が出るくらい乳首が疼くんだ……。すごい勃っちゃうし……。なぁ、俺の乳首、目立ってる……？』
　どんどん膨らむ妄想に対する返答は、いつの間にか口から溢れていた。
「あぁ、目立ってる！　いっそブラジャーで隠すんだ！　スーツの下に、マイクロビキニと勃起乳首……！」
　オナニー中の妄想は、とんでもない方向へと加速する。いつの間にか馬越は、会社でも乳首オナニーを始めてしまう雛木を、庇い守るナイトと化していた。
『乳首疼いて、弄るの止まんない……助けて馬越ぃっ……！』
　こうなってくると、雛木が元女であることなどは些細な問題だ。本当に守るべき秘密は、雛木がデカエロ乳首を痛め付けながらイッてしまうような、マゾ可愛い奴だということだった。
「雛木！　お前の秘密は死んでも守るから！」
　燃え上がる使命感が、興奮の炎に油を注ぐ。
「お前のために何でもするから、今度こそ乳首イキを……」
　言い終わらない内に、こらえ切れない射精感が込み上げる。
「うおぉぉっ！　雛木！　雛木っ！　エロ過ぎるぅっ！」
　スラックスの汗染みを撫で回しながらの射精は、自慰とは思えないほどの興奮と快感をもたらした。

　ーーやばい……このネタであと百回くらい抜けそう……。
　ぜぇぜぇと荒い息をつきながら、精を吐き出した性器を尚も緩く扱き続ける。
　ピンクとオレンジの照明のすぐ側に埋め込まれた複数のレンズに気づかないまま、馬越は三度も部屋を延長し、これまでにない深い官能に酔いしれたのだった。