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もっとトイレが好きになるプレイ 3/7
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雛木にとって、フック状のそれは見慣れた道具だ。壁や梁に引っ掛け、螺子で調節して支点を作ることで、吊りを可能にする。工藤がそれを取り出したということはつまり、縛ってもらえるということに他ならなかった。
雛木たちが入っている個室は、個室同士を隔てる壁の上部にわずかな空間があり、隣と繋がっている。工藤は迷わず左右のその隙間にフックをかけ、安定するように螺子を締めた。一見するとただの作業だが、プレイのための準備だと思うと、欲望と羞恥で直視できない。
そして雛木の期待通り、続いてボストンバックから取り出されたのは麻縄だった。まさかこんなところで縛って貰えるなんてと、欲情と緊張が入り混じった震えが雛木の全身を駆け抜ける。
工藤は麻縄を頭上の左右のフックに渡し、何重にも捩じり合わせて一本のぴんと張った太いロープ状にすると、一旦縛って固定した。フックに直接吊るのではなく、麻縄で作った頑丈な橋に吊る形になるようだ。麻縄の橋は、ちょうど便器の真上にかけられていた。
「手を」
手短に命じられ、心臓がぎゅっと締め付けられる。
縛られるために自ら進んで動くのは、いつまで経っても慣れなかった。無理矢理縛り上げられるならどんなに楽だろう。けれど、工藤はいつもこうして、雛木が自分の意志で縛られるのだということをまざまざと思い知らせるのだ。
おずおずと両腕を揃えて持ち上げると、工藤は軽く頷き、手首に麻縄をかけ始める。交差した自分の両手首が何度も麻縄で巻かれ、ぐっと縛って固定されるのを、雛木は微動だにせずに見つめた。まだ、手首を拘束されているだけだ。それなのに雛木は、食い込む縄の感触だけで、ペニスの先端の窪みに溜まった透明の蜜が溢れそうになってしまう。
「便器を跨いで立ちなさい」
命じられて視線をやると、どこにでもある白い便器が、今更ながらに特別な存在感を放っているように感じられる。便器という排泄に直結した造作を跨ぐのは、人前で便座に腰かけるのとはまた異なる羞恥があった。しかも、乳首は触って欲しそうに勃起し続け、ペニスの先端は常に下着からはみ出しているのだ。
手首を戒められたことで少しバランスがとりづらい体をのろのろと動かし、工藤と向かい合わせになって便器を跨ぐ。温水式便座ではあるが、暖かいのは便座だけで、その下の陶器の部分からは、ひんやりとした冷気が脹脛へと伝わった。
下着と靴下と靴だけを身につけ、勃起を晒して便座を跨いでいる自分は、なんてみっともないのだろう。皺一つない三つ揃えを着こなす工藤を前にすると、余計に惨めさが際立つ。しかし惨めであれば惨めであるほど、自分の卑小さと工藤の高貴さの対比が際立って、雛木は倒錯的な悦びを感じてしまうのだ。
「あなたは便器がとてもお似合いですね」
吐息混じりに言われて、雛木はゾクゾクッと体を震わせる。優しい声による蔑みは、むき出しの肌を鳥の羽で撫でられたかのような官能だった。他の人間に言われれば侮蔑でしかない台詞でも、工藤が相手なら雛木にとっては愛撫になってしまう。
「ありがとう……ございます……」
小声で途切れ途切れに感謝を告げる雛木は、切なげに眉根を寄せ、まるで欲情を隠しきれていない。工藤はその様子に満足げに目を細めると、雛木の両手首を拘束した麻縄の端を頭上の縄橋へかけ、無言でゆっくりと引いた。ゆるゆると雛木の両腕が頭上に持ち上がっていく。
麻縄によって、自分の意志に関係なく体を動かされるのは、最高に被虐心を煽る感覚だ。自分の体をどうにもできない諦めは、相手に全てを委ねる安心感に変化し、雛木をいつも以上に素直にさせる。
両腕が麻縄に引っ張られ、頭上高く上がる。だがそこで止まらず、工藤が更に縄を引き続けたので、雛木はされるがままに便器を跨いだ状態で爪先立ちになった。
全体重がかかっているわけではないが、それなりに重いはずの縄を工藤は顔色一つ変えずに引いて、固定する位置を探っている。そしてあるところで工藤がじっと目を合せたので、雛木はこくりと頷いた。
工藤に教わったことだが、安全に吊りプレイをするには、縛られる側にも多少の経験と協力が必要だそうだ。どんなに経験豊富な調教師でも、一人一人異なる関節の丈夫さを見た目だけで判断することはできない。痛みを感じる程度も人それぞれなので、あくまでもプレイの範囲で楽しむためには、縛られる側も自分の肉体が許容できる範囲を知り、相手に伝える必要があると、出会った当初に工藤は真剣に語った。だから今回も、これが両足の爪先と手首の縄とで体重を支えられるギリギリの高さだと、雛木は工藤に頷いたのだ。
どんなに乱れた行為の最中でも、工藤はプレイであることを忘れず、安全に配慮してくれる。それを信じられるから、雛木にとって工藤は、安心して体を任せられるマスターなのだった。
とはいえ、便器を跨いで爪先立ちし続けるのは、両手首を頭上に吊られていても、足にかなりの負担がかかる。その苦しさと、はしたない状態の体を晒している羞恥心が相まって、雛木の口からは既に、はぁ……はぁ……と吐息が漏れ始めていた。
何も咥えさせもらえないのは、自力で声を堪えろということなのだろう。だが、もしこのまま乳首を思い切り引っ張られるというのなら、悲鳴や喘ぎを我慢できる気がしなかった。
そんな雛木の心を読んだのか、工藤がぐっと雛木の顎を掴んだ。
「私からの問いに答える以外で声を出したら、このままここに放置します」
その冷たい声音には、できる自信がなくても無言で頷くしかない。雛木は固く勃ち上がった乳首を突き出し、工藤が触れてくれるのを無言でただ待った。
幸いにも、その従順な様子は工藤のお気に召したようだ。顎をきつく掴んでいた手を離し、その指先で胸の間から腹まですっとひと撫でしてくれた。
そんなわずかな刺激でもたまらず、雛木の体はびくりと揺れ、はみ出したペニスからはとろとろと透明な滴が零れる。早く触れて欲しくて仕方がなかった。
「乳首を引っ張って、いやらしい形にしてほしいんでしたね?」
一度も触れてもらえていない乳首はずくずくと疼き、強い刺激を求めている。どんなに痛くてもいいから酷く苛め抜いてほしくて、雛木は半ば涙目になりながらこくこくと頷いた。しかし、あくまで真面目なマスターは、冷静な口調で、今一度意思を確認してくれる。
「とはいえ、一度変形してしまった乳首は手術なしでは元に戻りませんから、よく考えなさい。本格的に綺麗に引き伸ばすには時間をかける必要がありますが、一度のプレイでもある程度は変形します。やめるなら今の内です。けれど、それでもしてほしいと言うなら、あなたの体を後戻りできないくらいもっといやらしく変えて差し上げましょう」
冷徹に事実を突きつけながらも、工藤のその視線は、彼に似合わないどこか請うような色彩を孕んでいた。
支配者が、奴隷にイエスと言って欲しがっているような気がする。
根拠のない直感ではあったが、途端に腰にずぐんと欲情が走り、全身が震えた。
元より、普通の体になんて戻れなくていい。工藤が手ずからそうしてくれるというのなら、日常生活に影響が出てしまうくらい、いやらしい体になって構わない。工藤とのプレイを、この体に刻み込んでほしい。
忠誠心にも似た想いが込み上げる一方で、長くなった乳首が誤魔化しきれないほど常に服を押し上げて、自分は変態なのだと他人に見せつけながら過ごす日々を想像すると、呻きを漏らしそうなほどの恐怖と陶酔があった。
雛木は全てを明け渡してしまいたい気持ちになり、興奮に途切れる小声で乞うた。
「乳首、伸ばして、ください。工藤さんの手で、変えて、ほしいです」
工藤の眉根が寄せられ、その瞳の中に明らかな欲望の揺らめきが見えた。
やはりそうだ。彼自身が、この体を更にいやらしく作り変えたいのだ。
その確信が、雛木の官能に更なる火をつけた。
「乳首、虐めてほしいです。俺が変態だってばれてしまうような……乳首にして、くだ……さい……」
いやらしい服従の願いを口にした雛木の唇を、工藤は驚くほど優しく指先でなぞった。まるで愛おしむようなその指先の熱を、雛木は無意識に舌を伸ばして味わおうとしてしまう。
普段であればそんな勝手をすれば即座に鞭で打ち据えられるところだったが、工藤は雛木の舌が指先に触れるのを許した。
「私の奴隷に相応しい、可愛らしいおねだりができましたね。では、……覚悟しなさい」
雛木たちが入っている個室は、個室同士を隔てる壁の上部にわずかな空間があり、隣と繋がっている。工藤は迷わず左右のその隙間にフックをかけ、安定するように螺子を締めた。一見するとただの作業だが、プレイのための準備だと思うと、欲望と羞恥で直視できない。
そして雛木の期待通り、続いてボストンバックから取り出されたのは麻縄だった。まさかこんなところで縛って貰えるなんてと、欲情と緊張が入り混じった震えが雛木の全身を駆け抜ける。
工藤は麻縄を頭上の左右のフックに渡し、何重にも捩じり合わせて一本のぴんと張った太いロープ状にすると、一旦縛って固定した。フックに直接吊るのではなく、麻縄で作った頑丈な橋に吊る形になるようだ。麻縄の橋は、ちょうど便器の真上にかけられていた。
「手を」
手短に命じられ、心臓がぎゅっと締め付けられる。
縛られるために自ら進んで動くのは、いつまで経っても慣れなかった。無理矢理縛り上げられるならどんなに楽だろう。けれど、工藤はいつもこうして、雛木が自分の意志で縛られるのだということをまざまざと思い知らせるのだ。
おずおずと両腕を揃えて持ち上げると、工藤は軽く頷き、手首に麻縄をかけ始める。交差した自分の両手首が何度も麻縄で巻かれ、ぐっと縛って固定されるのを、雛木は微動だにせずに見つめた。まだ、手首を拘束されているだけだ。それなのに雛木は、食い込む縄の感触だけで、ペニスの先端の窪みに溜まった透明の蜜が溢れそうになってしまう。
「便器を跨いで立ちなさい」
命じられて視線をやると、どこにでもある白い便器が、今更ながらに特別な存在感を放っているように感じられる。便器という排泄に直結した造作を跨ぐのは、人前で便座に腰かけるのとはまた異なる羞恥があった。しかも、乳首は触って欲しそうに勃起し続け、ペニスの先端は常に下着からはみ出しているのだ。
手首を戒められたことで少しバランスがとりづらい体をのろのろと動かし、工藤と向かい合わせになって便器を跨ぐ。温水式便座ではあるが、暖かいのは便座だけで、その下の陶器の部分からは、ひんやりとした冷気が脹脛へと伝わった。
下着と靴下と靴だけを身につけ、勃起を晒して便座を跨いでいる自分は、なんてみっともないのだろう。皺一つない三つ揃えを着こなす工藤を前にすると、余計に惨めさが際立つ。しかし惨めであれば惨めであるほど、自分の卑小さと工藤の高貴さの対比が際立って、雛木は倒錯的な悦びを感じてしまうのだ。
「あなたは便器がとてもお似合いですね」
吐息混じりに言われて、雛木はゾクゾクッと体を震わせる。優しい声による蔑みは、むき出しの肌を鳥の羽で撫でられたかのような官能だった。他の人間に言われれば侮蔑でしかない台詞でも、工藤が相手なら雛木にとっては愛撫になってしまう。
「ありがとう……ございます……」
小声で途切れ途切れに感謝を告げる雛木は、切なげに眉根を寄せ、まるで欲情を隠しきれていない。工藤はその様子に満足げに目を細めると、雛木の両手首を拘束した麻縄の端を頭上の縄橋へかけ、無言でゆっくりと引いた。ゆるゆると雛木の両腕が頭上に持ち上がっていく。
麻縄によって、自分の意志に関係なく体を動かされるのは、最高に被虐心を煽る感覚だ。自分の体をどうにもできない諦めは、相手に全てを委ねる安心感に変化し、雛木をいつも以上に素直にさせる。
両腕が麻縄に引っ張られ、頭上高く上がる。だがそこで止まらず、工藤が更に縄を引き続けたので、雛木はされるがままに便器を跨いだ状態で爪先立ちになった。
全体重がかかっているわけではないが、それなりに重いはずの縄を工藤は顔色一つ変えずに引いて、固定する位置を探っている。そしてあるところで工藤がじっと目を合せたので、雛木はこくりと頷いた。
工藤に教わったことだが、安全に吊りプレイをするには、縛られる側にも多少の経験と協力が必要だそうだ。どんなに経験豊富な調教師でも、一人一人異なる関節の丈夫さを見た目だけで判断することはできない。痛みを感じる程度も人それぞれなので、あくまでもプレイの範囲で楽しむためには、縛られる側も自分の肉体が許容できる範囲を知り、相手に伝える必要があると、出会った当初に工藤は真剣に語った。だから今回も、これが両足の爪先と手首の縄とで体重を支えられるギリギリの高さだと、雛木は工藤に頷いたのだ。
どんなに乱れた行為の最中でも、工藤はプレイであることを忘れず、安全に配慮してくれる。それを信じられるから、雛木にとって工藤は、安心して体を任せられるマスターなのだった。
とはいえ、便器を跨いで爪先立ちし続けるのは、両手首を頭上に吊られていても、足にかなりの負担がかかる。その苦しさと、はしたない状態の体を晒している羞恥心が相まって、雛木の口からは既に、はぁ……はぁ……と吐息が漏れ始めていた。
何も咥えさせもらえないのは、自力で声を堪えろということなのだろう。だが、もしこのまま乳首を思い切り引っ張られるというのなら、悲鳴や喘ぎを我慢できる気がしなかった。
そんな雛木の心を読んだのか、工藤がぐっと雛木の顎を掴んだ。
「私からの問いに答える以外で声を出したら、このままここに放置します」
その冷たい声音には、できる自信がなくても無言で頷くしかない。雛木は固く勃ち上がった乳首を突き出し、工藤が触れてくれるのを無言でただ待った。
幸いにも、その従順な様子は工藤のお気に召したようだ。顎をきつく掴んでいた手を離し、その指先で胸の間から腹まですっとひと撫でしてくれた。
そんなわずかな刺激でもたまらず、雛木の体はびくりと揺れ、はみ出したペニスからはとろとろと透明な滴が零れる。早く触れて欲しくて仕方がなかった。
「乳首を引っ張って、いやらしい形にしてほしいんでしたね?」
一度も触れてもらえていない乳首はずくずくと疼き、強い刺激を求めている。どんなに痛くてもいいから酷く苛め抜いてほしくて、雛木は半ば涙目になりながらこくこくと頷いた。しかし、あくまで真面目なマスターは、冷静な口調で、今一度意思を確認してくれる。
「とはいえ、一度変形してしまった乳首は手術なしでは元に戻りませんから、よく考えなさい。本格的に綺麗に引き伸ばすには時間をかける必要がありますが、一度のプレイでもある程度は変形します。やめるなら今の内です。けれど、それでもしてほしいと言うなら、あなたの体を後戻りできないくらいもっといやらしく変えて差し上げましょう」
冷徹に事実を突きつけながらも、工藤のその視線は、彼に似合わないどこか請うような色彩を孕んでいた。
支配者が、奴隷にイエスと言って欲しがっているような気がする。
根拠のない直感ではあったが、途端に腰にずぐんと欲情が走り、全身が震えた。
元より、普通の体になんて戻れなくていい。工藤が手ずからそうしてくれるというのなら、日常生活に影響が出てしまうくらい、いやらしい体になって構わない。工藤とのプレイを、この体に刻み込んでほしい。
忠誠心にも似た想いが込み上げる一方で、長くなった乳首が誤魔化しきれないほど常に服を押し上げて、自分は変態なのだと他人に見せつけながら過ごす日々を想像すると、呻きを漏らしそうなほどの恐怖と陶酔があった。
雛木は全てを明け渡してしまいたい気持ちになり、興奮に途切れる小声で乞うた。
「乳首、伸ばして、ください。工藤さんの手で、変えて、ほしいです」
工藤の眉根が寄せられ、その瞳の中に明らかな欲望の揺らめきが見えた。
やはりそうだ。彼自身が、この体を更にいやらしく作り変えたいのだ。
その確信が、雛木の官能に更なる火をつけた。
「乳首、虐めてほしいです。俺が変態だってばれてしまうような……乳首にして、くだ……さい……」
いやらしい服従の願いを口にした雛木の唇を、工藤は驚くほど優しく指先でなぞった。まるで愛おしむようなその指先の熱を、雛木は無意識に舌を伸ばして味わおうとしてしまう。
普段であればそんな勝手をすれば即座に鞭で打ち据えられるところだったが、工藤は雛木の舌が指先に触れるのを許した。
「私の奴隷に相応しい、可愛らしいおねだりができましたね。では、……覚悟しなさい」
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