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うちのお嬢様
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「エレナ、私今日も1人、数学科から追放したのよ。」
「さようでございますか。」
ピッ
「エレナ、そこは呆れて何も言う気がしなくても、私を注意しておかないと。」
手に持っている録音機を止めると、シルビアお嬢様は私に優しく注意した。
「はあ。」
「さあ、やり直しよ。」
ピッ
「エレナ、私今日も1人、数学科から追放したのよ。」
「お嬢様、やり過ぎには注意されてください。」
「そんなこと言ったってルビーの書き出す数式を見るのは耐えられないわ。」
「どの科に在籍するかは、ご本人とご家族のお決めになることです。少々やり過ぎですよ。」
「何よわたしに意見するつもり。」
「申し訳ございません。お許しください。」
ピッ
「いい感じで録音できたわ。私は性格が最低だけど、エレナに火の粉が掛からないようにしておくから
この家から追放されるまでは、引き続きよろしくね。」
「はあ。」
お嬢様が私を守るためにコツコツとためている録音が、役に立つ日など来ないだろう。
何せお嬢様は、皆にツンデレお嬢様として愛されているのだから。
しかもお嬢様の指示に従えば才能を開花できるということで、お嬢様に関わる仕事は倍率が相当高いのだ。
私もお嬢様のおかげで公爵家で働けている。孤児院で年下の子たちを面倒みているところをシルビアお嬢様が見て、「あの子をわたくしの侍女にしますわ。」と言ってくださったのだ。身寄りのない私からすれば、これ以上ない幸運だった。孤児院の子たちもそれぞれの才能と興味に合った仕事に就いているのは、お嬢様のおかげだ。
窓から見える公爵家の美しい庭園。せっせと働いてる庭師のマーガレット様は、国際ガーデニング大会で、昨年、銀賞に輝いた。この国で女性の庭師でかつ貴族の出身者は、今まで存在していなかった。近隣諸国でも珍しいとのこと。
あの時は、マーガレット様を庭師にする為に、お嬢様はわざとマーガレット様の足にひっかかって噴水に落ちられた。そしてマーガレット様に、罰として、公爵家で庭師として働くように根回しされたのだ。
今回のルビー様の件だってそうだ。
ルビー様が密かに作家志望なのを知っていて、手を回したに違いない。
今頃、ルビー様は作家になる道が開けたことで、喜びにむせび泣いているに違いない。
子爵家の当主様もシルビア様の目に留まったとなれば、ルビー様の才能の開花に尽力をつくされるはずだ。
こんな風に、数学科から色んな科に追放という形で、転籍できるように助けるのは
もうかれこれ10年だ。
シルビア様に追放されるのは、縁起がよい証拠として貴族の中でも、注目の的なのだ。
ルビー様の処女作は出版されれば、飛ぶように売れることだろう。
シルビア様がお認めになった方だから、作家への情熱も粘り強さも、そして作品の素晴らしさも
お墨付きだ。
「エレナ、そろそろ次の働き口の希望は決まった?」
「いえ、まだ絞れていないです。」
「そう?私が婚約破棄される前までしか、公爵家の力は使えないから、早く決めてね。」
「分かっております。ですが、私は最後までお嬢様の侍女の仕事を全うしとうございます。」
「そう言ってもらえるのは嬉しいのだけれど、候補だけでも早く決めておいてちょうだい。エレナの次の勤め先が決まらないと落ち着かないのよ。」
「畏まりました。」
「本当に真剣に考えてね。卒業パーティーまであと1年と少ししか時間が無いのだから。」
お嬢様、何も悪いことをしていないお嬢様が婚約破棄されることはございません。そして、私はこんなに可愛いお嬢様の侍女を誰かに譲る気もございません。
ええ、ですから、お嬢様が王太子様とご結婚されるまでこの話題は、のらりくらりと交わし続けますね。
「さようでございますか。」
ピッ
「エレナ、そこは呆れて何も言う気がしなくても、私を注意しておかないと。」
手に持っている録音機を止めると、シルビアお嬢様は私に優しく注意した。
「はあ。」
「さあ、やり直しよ。」
ピッ
「エレナ、私今日も1人、数学科から追放したのよ。」
「お嬢様、やり過ぎには注意されてください。」
「そんなこと言ったってルビーの書き出す数式を見るのは耐えられないわ。」
「どの科に在籍するかは、ご本人とご家族のお決めになることです。少々やり過ぎですよ。」
「何よわたしに意見するつもり。」
「申し訳ございません。お許しください。」
ピッ
「いい感じで録音できたわ。私は性格が最低だけど、エレナに火の粉が掛からないようにしておくから
この家から追放されるまでは、引き続きよろしくね。」
「はあ。」
お嬢様が私を守るためにコツコツとためている録音が、役に立つ日など来ないだろう。
何せお嬢様は、皆にツンデレお嬢様として愛されているのだから。
しかもお嬢様の指示に従えば才能を開花できるということで、お嬢様に関わる仕事は倍率が相当高いのだ。
私もお嬢様のおかげで公爵家で働けている。孤児院で年下の子たちを面倒みているところをシルビアお嬢様が見て、「あの子をわたくしの侍女にしますわ。」と言ってくださったのだ。身寄りのない私からすれば、これ以上ない幸運だった。孤児院の子たちもそれぞれの才能と興味に合った仕事に就いているのは、お嬢様のおかげだ。
窓から見える公爵家の美しい庭園。せっせと働いてる庭師のマーガレット様は、国際ガーデニング大会で、昨年、銀賞に輝いた。この国で女性の庭師でかつ貴族の出身者は、今まで存在していなかった。近隣諸国でも珍しいとのこと。
あの時は、マーガレット様を庭師にする為に、お嬢様はわざとマーガレット様の足にひっかかって噴水に落ちられた。そしてマーガレット様に、罰として、公爵家で庭師として働くように根回しされたのだ。
今回のルビー様の件だってそうだ。
ルビー様が密かに作家志望なのを知っていて、手を回したに違いない。
今頃、ルビー様は作家になる道が開けたことで、喜びにむせび泣いているに違いない。
子爵家の当主様もシルビア様の目に留まったとなれば、ルビー様の才能の開花に尽力をつくされるはずだ。
こんな風に、数学科から色んな科に追放という形で、転籍できるように助けるのは
もうかれこれ10年だ。
シルビア様に追放されるのは、縁起がよい証拠として貴族の中でも、注目の的なのだ。
ルビー様の処女作は出版されれば、飛ぶように売れることだろう。
シルビア様がお認めになった方だから、作家への情熱も粘り強さも、そして作品の素晴らしさも
お墨付きだ。
「エレナ、そろそろ次の働き口の希望は決まった?」
「いえ、まだ絞れていないです。」
「そう?私が婚約破棄される前までしか、公爵家の力は使えないから、早く決めてね。」
「分かっております。ですが、私は最後までお嬢様の侍女の仕事を全うしとうございます。」
「そう言ってもらえるのは嬉しいのだけれど、候補だけでも早く決めておいてちょうだい。エレナの次の勤め先が決まらないと落ち着かないのよ。」
「畏まりました。」
「本当に真剣に考えてね。卒業パーティーまであと1年と少ししか時間が無いのだから。」
お嬢様、何も悪いことをしていないお嬢様が婚約破棄されることはございません。そして、私はこんなに可愛いお嬢様の侍女を誰かに譲る気もございません。
ええ、ですから、お嬢様が王太子様とご結婚されるまでこの話題は、のらりくらりと交わし続けますね。
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