溺愛三公爵と氷の騎士 異世界で目覚めたらマッパでした

あこや(亜胡夜カイ)

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 エヴァンジェリスタ城へ戻るまでの間、傷に響かないようにだろう、ものすごくゆっくりと馬を進め、歩いたほうがマシか、というほど帰路には時間を費やしたため、黙っているのも怖いから私はひたすら話をした。感情をあまり交えず、事務的に。

 味方をまいて一人で飛び出したことは反省している。
 しかし、護衛対象を見失う衛兵、‘影’は問題がある。
 かつ、広大な城の敷地内に、間者ゼロ、というのは困難かもしれないが、警備体制は見直すべきでは。
 あれだけたくさんの刺客が潜んでいたことは問題視すべきでは。
 さらに公爵家による公式、非公式の情報管理体制について。情報省、もしくは情報室、といった組織の編成。
 ‘影’の制御。侯爵家、ではなく三公爵の指揮下になぜできないのか。その方向性にもってゆけないのか。

 レオン様は短く相槌を打ちながらじっくりと聞いてくれていて、警備体制は言わずもがな(城へ私の危急が知らされたときからその点は大騒ぎになっているらしい)、衛兵や‘影’の質の向上、情報室の編成については他の公爵や関係部署の長も集めて協議しよう、と言ってくれた。

 そして、‘影’の制御は難しいかもしれない、とのこと。

 私の思いつくことはとっくに三公爵の間でも囁かれ、できれば直下に置きたい、と思ってはいたものの、‘影’は代々世襲で侯爵に私淑しているものが多く、三公爵は侯爵を、この三百年は侯爵位はないもののその血筋の者を介さなくては‘影’を制御できないのだそうだ。

 「……まあ、今回は三百年ぶりに侯爵家の復権を認めた。それを恩義に感じさせ、ひきかえに‘影’に対する三公爵の影響力は強めたいものだ。それに」

 レオン様は、ひときわ強く、すんっ!と私の耳の後ろの匂いを嗅いだ。

 「いい機会かもしれん。オルギールの君への執着ぶりからすると、君の願いとあればあいつも、ひいては‘影’も動かしやすいかもしれんな」

 シグルドやユリアスとじっくり話を詰めてから、オルギールにもちかけるのがいいだろう。

 そう結論づけた頃、お城に到着した。



******


 
 お話をするうちに気が紛れ、痛みにも慣れてきたので、自分で馬を降りて歩こうとしたのだけれど、レオン様は私の足が地上に着く間も与えず、問答無用で私を抱き上げてしまった。すっかりいつものレオン様に戻ってくれたかな、とひそかに期待したのだけれど、甘かったらしい。なんとなく硬い表情のまま、同時に到着したシグルド様とユリアスに「一緒に来い」といってすたすた歩き、階段を昇っていつものところへ戻ってきた。

 城の最上階、廊下の突き当りの、広大な共用の寝室へ。

 オルギールを迎え入れたところは私の専用の寝室。こちらではない。
 この部屋は、侍女さんたち以外には私とレオン様しか立ち入ったことがないところなのだけれど。

 私の大好きな、広いバルコニーつきのパノラマビューの窓辺は、シグルド様もユリアスも揃って「見事な眺めだな」と感心してはいたが、多少居心地が悪そうだ。

 それもそうだろう。いきなり恋人同士の個人的な空間に招き入れられたのだから。

 ……レオン様は何を考えているんだろう。

 傷の痛みよりも常ならぬことに対する不安と胸騒ぎのほうがひどい。見慣れたいつもの寝所なのに落ち着かない。

 レオン様は迷いなく寝台へ直行すると、天蓋から垂れ下がるカーテンを開け放ち、私をそっと横たえた。
 そして、傷は痛むか?と、静かに訊いてきた。

 また、さっきの目。昏く光り、いっそう濃さを増した金色の瞳に私を映して、両手を私の顔の横について覗き込むようにして言う。
 サラサラの美しい純金色の髪が、私の顔の左右に天蓋の布の代わりのように零れ落ちる。

 思わず、うっとりしてしまって。
 さらに、心配させたくない、大事(おおごと)にしたくない、という気持ちがあって。

 私は大したことない、だいぶ楽になった、と答えた。

 そう答えてしまったのだ。
 痛い痛いすごく痛い、と言えば、「そのこと」はまだしばらくは先のことだったかもしれないのに。



 「……君を襲う者が多人数入り込んだと。君が一人で対峙していると聞いて、俺は気が狂うかと思った」

 レオン様は私から目線を逸らすことなく、じっとみつめたまま、淡々と言った。

 する、と胴衣を脱がされた。刀子を沢山仕込んだ胴衣。一瞬だけ、完全武装していてよかったな、とそれを見て考える。
 カチャリ、と音をたてて、吊るしていた剣を外し、ヘッドボードのほうへ放る。続いて、剣帯を外され、まだ少しだけシュルグの匂いを纏わせた革靴が脱がされる。

 休むために楽な恰好にしてくれたのか、と思いたかったのだけれど、そうではなかった。
 
 ふつふつと貝釦を外され、左袖が切れ、血のついたシャツが脱がされ、ズボンに手をかけられ。

 「あの、レオン様……!」
 「おい、レオン!」

 ここまで脱がされる理由がわからず狼狽える私の声に、シグルド様の慌てたような声が重なる。

 なんだ、とレオン様は顔をあげず、作業も止めずに言った。

 私の腰を少し浮かせ、ズボンを抜き去ってしまう。
 あっというまに胸当てと、下穿き(紐パン仕様である)だけの、下着姿である。

 まさか、このまま、この状況で行為に及ぶわけでは……!

 「レオン様、ちょっと、どうして!?」
 「レオン、いったいどうした!?」
 「お前、何を考えてる」

 私のからだはレオン様という檻に囲まれていて、身を捩っても逃れられるものではない。
 それにシグルド様もユリアスも、レオン様を詰るような声を上げつつも、より寝台へ、つまり私の傍ににじり寄って来ていて、あられもない恰好を見られてしまう。お二人ともお下がり下さい!と言ったのに、聞こえなかったのか無視されたのか、もっと身を乗り出すことはしても退室してくれる気配はない。

 「レオン様!」

 私は悲鳴のような声を上げた。
 レオン様の手は、私の背中の胸当てにかけられている。

 「レオン様、何を考えてこんなことを」
 「……この二人は見張りだ」
 「俺たちが?」

 釣り込まれるように、シグルド様は言った。
 ああ、と応じながら、レオン様は、器用に片手だけでするすると胸当ての紐を解いてゆく。

 もうすぐ、ぜんぶ解かれてしまう。
 目が泳ぐ。ユリアスと目があった。シグルド様とも。
 困惑している様子なのに、立ち去ってくれない。

 「俺は以前、リヴェアを手酷く抱いたことがあった」

 レオン様の声音が少しだけ変わったようだ。みずからを嘲笑うかのように、口元を歪める。
 私が後に残される人のことを考えず、可愛くないことを言ったとき。
 あのときのことを思い出しているのだろうか。

 「あれは暴力だった。二度としない、と誓ったのに。……誰かが止めてくれないと、俺は同じことをしそうだ、今」
 「で、俺たちにここにいろと?」
 「ああ」
 「いるだけか?」

 シグルド様は畳み掛けるように言い、私を見下ろすと一言、拷問だな、と呟いた。
 空色の瞳が明らかに色を湛えて、半裸になった私と、レオン様を交互に見つめている。
 
 ユリアスの暗緑色の瞳は、ひたすら私だけに向けられている。理性と、困惑と……確かな欲情を滾らせて。

 ──恥ずかしい。こんな、二人に見られたまま──

 私は一縷の望みをかけてレオン様を振り仰いだ。

 「お願い、レオン様、イヤ、こんな、見られるのは……!」
 「見られるのがイヤなら同時ならいいか?」

 くくっとレオン様は皮肉っぽく笑った。
 最後の胸当ての結び目をするりと解き、ためらいなくそれを取り去ってしまう。
 まろびでた胸を両手で殊更に持ち上げ、二人の視線に晒すように見せつけられる。

 二人とも、なのか、どちらかなのか。固唾を飲む音がした。
 羞恥で脳が茹る。

 「や!……レオンさま、!!」
 「ルードもユリアスも俺の暴走を止める見張り役。そして」
 「ああ!」
 
 素早く寄せられたレオン様の唇に胸の尖りが吸い込まれ、じゅうっと音をたてられた。
 痛みよりもはるかに上回る快感に、大きな声を上げてしまう。

 「……二人とも君の夫となる。俺も君も慣れなくては。……三人で、四人で愉しむことを」
 
 くちゅ、くちゃ、と音をたてて胸を吸いながら、レオン様は容赦なく私の下穿きも取り去った。

 「やめて、恥ずかしいから、……!!」
 
 腰を抱え上げられ、両足を割られ。
 あまりの羞恥に足をばたつかせると、結果として奥の奥、秘裂の中までみずから見せつけることになって。
 三つの視線に暴かれ、犯されて、それだけで言いようのない感覚がこみ上げてくる。
 
 硬く立ち上がった尖りを咥えたまま、暴れると余計に見えるぞ、と言って、レオン様は私のからだの中心に手を伸ばした。 
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