31 / 175
連載
6.-2
しおりを挟む
私は生唾を飲み込んだ。
このところ記憶にないほどうろたえていたが、狼狽と怯えを悟られてはならないとばかりに、必死で表情筋を制御して、まずは余裕ぶった笑みを浮かべて包囲網を見渡した。
とたんに、きゃあ、とか、素敵、とか、世にも奇妙な反応が返ってくる。
──なんて言ったらいいのか。
後が続かず沈黙していると、包囲網の中で最も華やかな女性が、
「トゥーラ准将閣下。お会いできて嬉しゅうございます!」
と、ついに口火を切った。
いわゆる、金髪碧眼の美女で、真っ赤なドレスを着ている。私よりは低いけれど、女性としては長身で、蜂のようなナイスバディである。
気押されて思わずちょっとのけぞると、心なしか一歩距離を詰められたような気がした。
「わたくし、ユーディトと申しますの。どうかお見知りおき下さいませ!」
彼女は──ユーディトは青い瞳を光らせて言った。
武士の勝ち名乗りみたいな勢いである。見知りおかないと首をとられそうだ。
「ウルマン少将閣下の妹君でいらっしゃいますわ」
と、誰かが言った。
へぇ、と多少緊張を緩めて、私は彼女の顔をあらためて眺めてみる。
……栗色サラサラヘアのウルマン少将に、こんな派手な妹がいたとは。まあ、少将も青い瞳がきれいな爽やか好青年だったっけ。そういえば瞳の色は同じだ。
彼とは手合わせで私が勝ったあと、なんどか剣の稽古に付き合ったり、今度の出陣のことで言葉を交わす機会があったけれど、妹君の話は聞いたことがなかったな。それよりも、熱愛中の婚約者がいて、ひと月くらい会えないのが寂しいと惚気ていたっけ。
私の、まだ数えるほどしかいない知りあいの妹君かと思うと、さすがにちょっと警戒心が緩んだ。
「兄君にはとてもお世話になっております。……お会いできて光栄です、ユーディト嬢」
私は座ったままではあったけれど、軽く騎士の礼をとった。
──またまた、理解に苦しむ黄色い声が上がる。
「ユーディト様、抜け駆けは許されませんわ!」
「ご一緒にご挨拶を、とお約束しましたのに!」
「おひとりだけ名前を覚えて頂こうなどと、ずるいですわ!」
ちょっと、このひとたち……
「先手必勝ですのよ」
ユーディトはふふん!とゆたかな胸を張って、
「それに、抜け駆けなどとは心外。わたくし自ら兄の名を出さなかっただけでも褒めて下さらないと」
と、傲然と言い放ち、鮮やかな朱唇をつり上げて微笑んだ。
そして、失礼致しますわ、と言いつつ、優雅にかつ強引に、一つだけ空いていた私の隣の席に腰を下ろす。
いい根性してるわ、この妹君。
感心して眺めていると。
「トゥーラ准将閣下、わたくしはカサンドラと申しますの」
「わたくしは、ラリサですわ」
「わたくしは」
「准将閣下、こちらもお向き下さいませ」
「お会いしとうございました、准将閣下」
──収拾がつかなくなってきた。
もちろん、私はオルギールではないからそんなにいっぺんにひとの名前と顔を覚えることはできない。
名前だけ聞いても記号のようなもので、記憶に残すのは難しいのだ。
でも、どうやら、ここにお集まりの方々は、私が怯えていたように非好意的どころか(女性特有の小意地の悪さや悪意に晒された思春期を過ごした私は、少しばかり女性恐怖症気味である)、侍女さん達と共通の嗜好をお持ちの方々のようだ。
「皆さま方。そんなに一度に仰られても、閣下は困ってしまわれますわ」
困惑する私の隣で、ユーディトは「私、一歩リード!」的な余裕をかまして言った。
歯噛みしつつもその通りだと思ったのか、多少、さえずりが静かになる。
「閣下。……トゥーラ准将」
ユーディトは嫣然と微笑んで言った。
同性の目から見ても、迫力のある美しさだ。
こちらのひとは大柄だし、骨格もしっかりとしている。ユーディトは紛うことなき美女なのだけれど、彼女と相対していると、なんかこう男性と話をしているような気分になる。
さっぱりした気性の、男性的な女性なら気が合うかも。
期待を込めて彼女を見やると、ユーディトはうふふ、とちょっと笑って、そして突然、くたりと身をくねらせ、媚びるような目で私を見上げた。
肩の線が、オンナになった。……いや、もともと女性なのだけれど、急に色気爆発と言おうか。
「准将閣下、わたくしはじめ、こちらにおります者たちは、ずっと閣下にお会いしたい、お目にかかりたいと思っておりましたのよ」
「それはまた、なぜ……?」
豹変ぶりについていけないなりに、なんとか聞き返すと、彼女はじれったそうに、豊満なからだをさらにくねらせた。
「んもう、閣下!それをわたくしに言えとおっしゃいますの!?」
お芝居だったら、ハンカチを噛んで流し目をくれそうな場面だ。
オーバーリアクション。激し過ぎる。
じゃあ別に言わなくても構いませんよ、と言おうとしたのだけれど、ユーディトは私の返答はまるで聞く気はなかったようだ。
「閣下は、あのわたくしの脳筋の兄を打ちのめしたからですわ!」
「脳筋の兄」
出陣を控えたウルマン少将になんてことを。
「幼少の頃から、わたくしの髪をひっぱったりお気に入りのおもちゃを隠したり、長じてからはドレスを着ていてもお前は男らしいと言ってからかったり」
あ、やっぱり兄から見てもそうなんですね。ユーディトは、美女なのに男らしいですものね。
「勉学ではわたくしに勝ったことがないくせに、剣の腕だけが取り柄の兄が、オーディアル公に恐れ多くも気に入られて少将などと言われて悦に入っているのがくやしくて」
公爵に重用されたら、ご家族なら、喜ぶところだと思うのですが。
「その脳筋の兄を、美貌の女性剣士が打ち負かしたと聞いて!その方が、今回の出陣で兵を率いられると聞いて!わたくし、どんなにお会いしたかったことか」
兄に対する敬意がみじんも感じられないユーディトの話に私は唖然としていたが、周知の事実なのか、周りの方々は平然としていた。
それよりも、一区切りついたところで口々に合いの手が入る。
「わたくしもですわ、閣下」
「閣下、わたくしも。お会いしたかった」
「間近でお会いして、こんな素敵な方だったなんて」
「こんなにお綺麗でお強いなんて、夢のようですわ……」
だめだ、またカオスだ。
このままでは、またあの口の悪いラムズフェルド公に、「麗人気取り」だのなんだの言われかねない。お目目キラキラ(ギラギラ)で私を鑑賞しているお嬢様、ご婦人方を、先ほどから近くを通る男性がちらちらと非好意的な視線で見てゆくのも気がかりだ。
私は、ようやく気を取り直して事態の終結を試みることにした。
いつもレオン様やオルギールが守ってくれるわけではない。
女性の人気取りをしようとは毛頭思わないが、もちろん好んで嫌われたいわけではない。
こういう「トゥーラ准将すてきぃ」という熱狂は、ちょっとしたきっかけですぐにも強烈なマイナス感情になりうるのだ。
対処の仕方を気を付けないと。頑張って、彼女たちと仲良くしないと。
私は腹をくくって、まずユーディトの綺麗な青い瞳を覗き込み(目が合ったとたん、真っ赤になった。男らしい美女だけれど、可愛らしかった)、他の女性方ひとりひとりに目を向けた。
「私も、皆さま方とこうしてお知り合いになれてとても嬉しい。けれど、ユーディト嬢を除いて、この距離ではお一人お一人とお話をすることもままならない。とりあえず、椅子を持ってこさせ、皆さま方座られてはいかがか」
「嬉しゅうございますわ、閣下!」
ピンク色のお人形みたいに可愛いお嬢さんが叫んだ。
可愛いけれど、やっぱりおめめはギラギラだ。
「お話をして下さいますのね!?」
「いえ。……お話、もよろしいが」
私はお人形さんと目線をあわせてにっこりした。
とたんに、お人形さんはドレスと同じく頬をピンク色に染める。
「お一人ずつ、そのお美しい御手を拝見。……皆さま方、占いはお好きですか?」
「占い?」
「もちろん、好きですけれど、、」
私は、手相を視ることができる。
お酒が飲めず、下手をすると場を白けさせるので、宴会芸代わりに手相を勉強したのだ。
ハマってしまい、本を買って暗記するほど読み込み、手あたり次第に周囲のひとたちの手を視せてもらっていたら、我ながらこれで食べていけるんじゃないかというほどよく当たるようになった。
逆に、あまりに当たるので怖くなって、ここ数年は視ていない。自分の手くらいしか視ない。
けれど、ここは異世界。彼女たちとはこれが初めてだし、このあとどれほど仲良くなるかわからないがこういった場で名前や顔を覚えるには格好の手段のはず。大体、女性で占いの類が嫌いなひとは本当に少ない。
私は通りがかった給仕に、人数分の椅子と飲み物を持ってくるようにお願いして、全員が腰を下ろすのを確認してから、もう一度、隣のユーディトの瞳を下から覗き込んだ。
耳まで、真っ赤になっている。私にこういう趣味嗜好はないけれど、可愛らしいなあ、と思う。
「──さて、ユーディト嬢。お嫌でなければ、御手を拝借」
私が冗談めかしてそういうと、さっきまでの堂々たる美女っぷりはどこへやら、おずおずと言ってもよい風情で私に右手を差し出した。
「あの、准将閣下」
「トゥーラ、でいいですよ」
「トゥーラ様。……どちらの手を?」
「差し支えなければ、両方同時に拝見します」
ユーディトの両手をとって、私は軽くくちづけの真似をした。
きゃあぁ!!と真っ黄色い悲鳴があがる。
トゥーラさま、とユーディトが声を失う。
──しまった。面白がって明らかにやり過ぎた。
このところ記憶にないほどうろたえていたが、狼狽と怯えを悟られてはならないとばかりに、必死で表情筋を制御して、まずは余裕ぶった笑みを浮かべて包囲網を見渡した。
とたんに、きゃあ、とか、素敵、とか、世にも奇妙な反応が返ってくる。
──なんて言ったらいいのか。
後が続かず沈黙していると、包囲網の中で最も華やかな女性が、
「トゥーラ准将閣下。お会いできて嬉しゅうございます!」
と、ついに口火を切った。
いわゆる、金髪碧眼の美女で、真っ赤なドレスを着ている。私よりは低いけれど、女性としては長身で、蜂のようなナイスバディである。
気押されて思わずちょっとのけぞると、心なしか一歩距離を詰められたような気がした。
「わたくし、ユーディトと申しますの。どうかお見知りおき下さいませ!」
彼女は──ユーディトは青い瞳を光らせて言った。
武士の勝ち名乗りみたいな勢いである。見知りおかないと首をとられそうだ。
「ウルマン少将閣下の妹君でいらっしゃいますわ」
と、誰かが言った。
へぇ、と多少緊張を緩めて、私は彼女の顔をあらためて眺めてみる。
……栗色サラサラヘアのウルマン少将に、こんな派手な妹がいたとは。まあ、少将も青い瞳がきれいな爽やか好青年だったっけ。そういえば瞳の色は同じだ。
彼とは手合わせで私が勝ったあと、なんどか剣の稽古に付き合ったり、今度の出陣のことで言葉を交わす機会があったけれど、妹君の話は聞いたことがなかったな。それよりも、熱愛中の婚約者がいて、ひと月くらい会えないのが寂しいと惚気ていたっけ。
私の、まだ数えるほどしかいない知りあいの妹君かと思うと、さすがにちょっと警戒心が緩んだ。
「兄君にはとてもお世話になっております。……お会いできて光栄です、ユーディト嬢」
私は座ったままではあったけれど、軽く騎士の礼をとった。
──またまた、理解に苦しむ黄色い声が上がる。
「ユーディト様、抜け駆けは許されませんわ!」
「ご一緒にご挨拶を、とお約束しましたのに!」
「おひとりだけ名前を覚えて頂こうなどと、ずるいですわ!」
ちょっと、このひとたち……
「先手必勝ですのよ」
ユーディトはふふん!とゆたかな胸を張って、
「それに、抜け駆けなどとは心外。わたくし自ら兄の名を出さなかっただけでも褒めて下さらないと」
と、傲然と言い放ち、鮮やかな朱唇をつり上げて微笑んだ。
そして、失礼致しますわ、と言いつつ、優雅にかつ強引に、一つだけ空いていた私の隣の席に腰を下ろす。
いい根性してるわ、この妹君。
感心して眺めていると。
「トゥーラ准将閣下、わたくしはカサンドラと申しますの」
「わたくしは、ラリサですわ」
「わたくしは」
「准将閣下、こちらもお向き下さいませ」
「お会いしとうございました、准将閣下」
──収拾がつかなくなってきた。
もちろん、私はオルギールではないからそんなにいっぺんにひとの名前と顔を覚えることはできない。
名前だけ聞いても記号のようなもので、記憶に残すのは難しいのだ。
でも、どうやら、ここにお集まりの方々は、私が怯えていたように非好意的どころか(女性特有の小意地の悪さや悪意に晒された思春期を過ごした私は、少しばかり女性恐怖症気味である)、侍女さん達と共通の嗜好をお持ちの方々のようだ。
「皆さま方。そんなに一度に仰られても、閣下は困ってしまわれますわ」
困惑する私の隣で、ユーディトは「私、一歩リード!」的な余裕をかまして言った。
歯噛みしつつもその通りだと思ったのか、多少、さえずりが静かになる。
「閣下。……トゥーラ准将」
ユーディトは嫣然と微笑んで言った。
同性の目から見ても、迫力のある美しさだ。
こちらのひとは大柄だし、骨格もしっかりとしている。ユーディトは紛うことなき美女なのだけれど、彼女と相対していると、なんかこう男性と話をしているような気分になる。
さっぱりした気性の、男性的な女性なら気が合うかも。
期待を込めて彼女を見やると、ユーディトはうふふ、とちょっと笑って、そして突然、くたりと身をくねらせ、媚びるような目で私を見上げた。
肩の線が、オンナになった。……いや、もともと女性なのだけれど、急に色気爆発と言おうか。
「准将閣下、わたくしはじめ、こちらにおります者たちは、ずっと閣下にお会いしたい、お目にかかりたいと思っておりましたのよ」
「それはまた、なぜ……?」
豹変ぶりについていけないなりに、なんとか聞き返すと、彼女はじれったそうに、豊満なからだをさらにくねらせた。
「んもう、閣下!それをわたくしに言えとおっしゃいますの!?」
お芝居だったら、ハンカチを噛んで流し目をくれそうな場面だ。
オーバーリアクション。激し過ぎる。
じゃあ別に言わなくても構いませんよ、と言おうとしたのだけれど、ユーディトは私の返答はまるで聞く気はなかったようだ。
「閣下は、あのわたくしの脳筋の兄を打ちのめしたからですわ!」
「脳筋の兄」
出陣を控えたウルマン少将になんてことを。
「幼少の頃から、わたくしの髪をひっぱったりお気に入りのおもちゃを隠したり、長じてからはドレスを着ていてもお前は男らしいと言ってからかったり」
あ、やっぱり兄から見てもそうなんですね。ユーディトは、美女なのに男らしいですものね。
「勉学ではわたくしに勝ったことがないくせに、剣の腕だけが取り柄の兄が、オーディアル公に恐れ多くも気に入られて少将などと言われて悦に入っているのがくやしくて」
公爵に重用されたら、ご家族なら、喜ぶところだと思うのですが。
「その脳筋の兄を、美貌の女性剣士が打ち負かしたと聞いて!その方が、今回の出陣で兵を率いられると聞いて!わたくし、どんなにお会いしたかったことか」
兄に対する敬意がみじんも感じられないユーディトの話に私は唖然としていたが、周知の事実なのか、周りの方々は平然としていた。
それよりも、一区切りついたところで口々に合いの手が入る。
「わたくしもですわ、閣下」
「閣下、わたくしも。お会いしたかった」
「間近でお会いして、こんな素敵な方だったなんて」
「こんなにお綺麗でお強いなんて、夢のようですわ……」
だめだ、またカオスだ。
このままでは、またあの口の悪いラムズフェルド公に、「麗人気取り」だのなんだの言われかねない。お目目キラキラ(ギラギラ)で私を鑑賞しているお嬢様、ご婦人方を、先ほどから近くを通る男性がちらちらと非好意的な視線で見てゆくのも気がかりだ。
私は、ようやく気を取り直して事態の終結を試みることにした。
いつもレオン様やオルギールが守ってくれるわけではない。
女性の人気取りをしようとは毛頭思わないが、もちろん好んで嫌われたいわけではない。
こういう「トゥーラ准将すてきぃ」という熱狂は、ちょっとしたきっかけですぐにも強烈なマイナス感情になりうるのだ。
対処の仕方を気を付けないと。頑張って、彼女たちと仲良くしないと。
私は腹をくくって、まずユーディトの綺麗な青い瞳を覗き込み(目が合ったとたん、真っ赤になった。男らしい美女だけれど、可愛らしかった)、他の女性方ひとりひとりに目を向けた。
「私も、皆さま方とこうしてお知り合いになれてとても嬉しい。けれど、ユーディト嬢を除いて、この距離ではお一人お一人とお話をすることもままならない。とりあえず、椅子を持ってこさせ、皆さま方座られてはいかがか」
「嬉しゅうございますわ、閣下!」
ピンク色のお人形みたいに可愛いお嬢さんが叫んだ。
可愛いけれど、やっぱりおめめはギラギラだ。
「お話をして下さいますのね!?」
「いえ。……お話、もよろしいが」
私はお人形さんと目線をあわせてにっこりした。
とたんに、お人形さんはドレスと同じく頬をピンク色に染める。
「お一人ずつ、そのお美しい御手を拝見。……皆さま方、占いはお好きですか?」
「占い?」
「もちろん、好きですけれど、、」
私は、手相を視ることができる。
お酒が飲めず、下手をすると場を白けさせるので、宴会芸代わりに手相を勉強したのだ。
ハマってしまい、本を買って暗記するほど読み込み、手あたり次第に周囲のひとたちの手を視せてもらっていたら、我ながらこれで食べていけるんじゃないかというほどよく当たるようになった。
逆に、あまりに当たるので怖くなって、ここ数年は視ていない。自分の手くらいしか視ない。
けれど、ここは異世界。彼女たちとはこれが初めてだし、このあとどれほど仲良くなるかわからないがこういった場で名前や顔を覚えるには格好の手段のはず。大体、女性で占いの類が嫌いなひとは本当に少ない。
私は通りがかった給仕に、人数分の椅子と飲み物を持ってくるようにお願いして、全員が腰を下ろすのを確認してから、もう一度、隣のユーディトの瞳を下から覗き込んだ。
耳まで、真っ赤になっている。私にこういう趣味嗜好はないけれど、可愛らしいなあ、と思う。
「──さて、ユーディト嬢。お嫌でなければ、御手を拝借」
私が冗談めかしてそういうと、さっきまでの堂々たる美女っぷりはどこへやら、おずおずと言ってもよい風情で私に右手を差し出した。
「あの、准将閣下」
「トゥーラ、でいいですよ」
「トゥーラ様。……どちらの手を?」
「差し支えなければ、両方同時に拝見します」
ユーディトの両手をとって、私は軽くくちづけの真似をした。
きゃあぁ!!と真っ黄色い悲鳴があがる。
トゥーラさま、とユーディトが声を失う。
──しまった。面白がって明らかにやり過ぎた。
22
お気に入りに追加
6,156
あなたにおすすめの小説
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~
ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。
ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。
一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。
目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!?
「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪
奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」
「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」
AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。
そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。
でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ!
全員美味しくいただいちゃいまーす。
ヤンデレ義父に執着されている娘の話
アオ
恋愛
美少女に転生した主人公が義父に執着、溺愛されつつ執着させていることに気が付かない話。
色々拗らせてます。
前世の2人という話はメリバ。
バッドエンド苦手な方は閲覧注意です。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。