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異世界バレンタイン!~御方様、チョコレート作りを思いつく~ 8.
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チョコレートと蒸留酒の香りの深い深いキス。
吐息が漏れることすら許さない、と言わんばかりにぴったりと唇を重ねられ、舌が捻じ込まれる。
驚きと共に、無意識に引っ込めようとした私の舌を追いかけ、絡めとり、唾液ごと吸い取られる。
ふむ、んん、と鼻で息をするのがやっとだ。
夫たちと交わすキスは嫌いじゃない。というより大好きだ。
けれど、穏やかで優しいルードの豹変ぶりについてゆけなくて、思わず頭を左右に振って逃れようとしたら。
「──逃がさないぞ」
低いのに熱量に満ちた声で、ルードは言った。
狩猟本能にスイッチが入ったのだろうか。
ぷは、とやっと解放された口で荒い息をついていると、
「あ!ルードっ」
じゅうっ!とうなじに強く吸いつかれた。
深呼吸のために顔を背けたのがまずかった。
反らせたうなじがルードの顔の正面に来た、そのタイミングを狙いすましたように、彼は私の無防備なうなじを吸い、なめ回し、幾度も甘噛みをする。
うなじの薄い皮膚は、熱い唇も舌も、彼の激情を丸ごとそのまま伝えてくる。
とうに慣れた、寝所での愛撫と同じ感触。
訳も分からずなし崩しに快楽に溺れるのは嫌だ、と、散らばりかけの自分の理性を必死にかき集めて平静を保つ。
「あの、ちょっと、ルード、落ち着いて」
「リヴェア、リヴェア、好きだ、大好きだ、愛してる」
全然、聞いていない。
抱きすくめられ、大きな胸の中に閉じ込められて、うなじだけではなく顎から頬から瞼からそこら中にキスをされる。キスのついでに舐められる。
いや、舐めるほうがほとんどで、もはやキスのレベルではないかもしれない。
いったんは快感に流されそうになったけれど、幸か不幸かかき集めた理性はちゃんと機能し始めた。
──なんだか、荒ぶる大型犬にじゃれつかれているような気がしてきた。
「ルードったら!」
「リヴェア、どうしたら俺の気持ちが」
「伝わってます!」
「だめだ、わかってない、抱くしかない」
「ちょっと!?」
私の体術は戦ってねじ伏せるため。下手に使えば相手を傷つける。
なぜだか一気にサカってしまったルードを、傷つけてまで撃退するつもりはない。
だから、抱きすくめられてしまったらこちらの負けだ。
しかしこのままでは寝室一直線。
「ね、ユリアス、レオン様!オルギール!」
美しい、赤い大型犬に組み付かれたまま、私は残る三人の夫を呼んだ。
いつもならこういう事態になると、他の夫たちがセーブしてくれるのに。
寝所では全員臨戦態勢の競い合いになるけれど、居間では大概セーブをしてくれる。
──はず、なのに。
「暑い、ルード!」
レオン様が立ち上がりながら、上着を脱ぎ捨てた。
ユリアスも立ち上がった。
上着どころか、ボタンを外すのももどかしげに(ぶち、と一つくらいボタンが飛んだような音がした)シャツも脱いでいる。
どんどんがんがん威勢よく脱いでゆくユリアスと目があった。
すべすべほっぺのユリアスはすっかり上気していて、ちょっとクセのある茶褐色の髪が乱れ、きりりとした暗緑色の瞳もうるうるしている。
四人の夫たちの中では一番線が細いけれど、それでもちゃんと鍛えられ、綺麗な胸筋、腹筋のついた体を惜しげもなくさらしたユリアスは美しい。
一瞬、その色気にあてられてぼうっとしたのもつかの間。
彼はとんでもないことを言った。
「ルード、早くリヴェアを脱がせてやれ」
「わかった」
「え、ちょっと待って」
脱がせてやれ、って何?
そもそも、セーブしてくれないの??
「ちょ、待って、みんな、なんかへんっ、あ!」
まつわりつく大型犬、もといルード。
半裸になって大股に近寄ってきたユリアス。
シャツの首回りを緩め、暑い暑いと連呼しながら「脱がせてやる、リヴェア、風呂にでも入るか」とやはりとんでもないことを口にするレオン様。
三組、計六本の腕が伸びてきて、明るい居間で私はあっという間にマッパにされた。
なぜ、どうして、落ち着いてと言ってもサカってしまった夫たちを止めることは当然できず。
「ちょっと、オルギール!なんとかして!!」
最後の砦、オルギールを呼んでも、彼は動こうとしない。
赤い舌を伸ばして、妙に卑猥にも見える仕草でミルクチョコレートを舐めながら、着衣を剥かれ、体中を撫で回されている私を眺めている。
いつもは誰よりも率先して不埒な振る舞いに出るオルギールなのに。
出遅れようものなら、倍速の勢いで襲い掛かるオルギールなのに。
もちろん、一緒になって襲ってほしいのではない。
今みたいに、なぜか一人だけサカっていないなら、止めに入ってくれてもいいと思うのだ。
「ね、オルギール、見てないで助けて、……ん、ああっ!」
声が裏返る。
ユリアスが私の胸を掴んで、その先端にむしゃぶりついている。
吐息が漏れることすら許さない、と言わんばかりにぴったりと唇を重ねられ、舌が捻じ込まれる。
驚きと共に、無意識に引っ込めようとした私の舌を追いかけ、絡めとり、唾液ごと吸い取られる。
ふむ、んん、と鼻で息をするのがやっとだ。
夫たちと交わすキスは嫌いじゃない。というより大好きだ。
けれど、穏やかで優しいルードの豹変ぶりについてゆけなくて、思わず頭を左右に振って逃れようとしたら。
「──逃がさないぞ」
低いのに熱量に満ちた声で、ルードは言った。
狩猟本能にスイッチが入ったのだろうか。
ぷは、とやっと解放された口で荒い息をついていると、
「あ!ルードっ」
じゅうっ!とうなじに強く吸いつかれた。
深呼吸のために顔を背けたのがまずかった。
反らせたうなじがルードの顔の正面に来た、そのタイミングを狙いすましたように、彼は私の無防備なうなじを吸い、なめ回し、幾度も甘噛みをする。
うなじの薄い皮膚は、熱い唇も舌も、彼の激情を丸ごとそのまま伝えてくる。
とうに慣れた、寝所での愛撫と同じ感触。
訳も分からずなし崩しに快楽に溺れるのは嫌だ、と、散らばりかけの自分の理性を必死にかき集めて平静を保つ。
「あの、ちょっと、ルード、落ち着いて」
「リヴェア、リヴェア、好きだ、大好きだ、愛してる」
全然、聞いていない。
抱きすくめられ、大きな胸の中に閉じ込められて、うなじだけではなく顎から頬から瞼からそこら中にキスをされる。キスのついでに舐められる。
いや、舐めるほうがほとんどで、もはやキスのレベルではないかもしれない。
いったんは快感に流されそうになったけれど、幸か不幸かかき集めた理性はちゃんと機能し始めた。
──なんだか、荒ぶる大型犬にじゃれつかれているような気がしてきた。
「ルードったら!」
「リヴェア、どうしたら俺の気持ちが」
「伝わってます!」
「だめだ、わかってない、抱くしかない」
「ちょっと!?」
私の体術は戦ってねじ伏せるため。下手に使えば相手を傷つける。
なぜだか一気にサカってしまったルードを、傷つけてまで撃退するつもりはない。
だから、抱きすくめられてしまったらこちらの負けだ。
しかしこのままでは寝室一直線。
「ね、ユリアス、レオン様!オルギール!」
美しい、赤い大型犬に組み付かれたまま、私は残る三人の夫を呼んだ。
いつもならこういう事態になると、他の夫たちがセーブしてくれるのに。
寝所では全員臨戦態勢の競い合いになるけれど、居間では大概セーブをしてくれる。
──はず、なのに。
「暑い、ルード!」
レオン様が立ち上がりながら、上着を脱ぎ捨てた。
ユリアスも立ち上がった。
上着どころか、ボタンを外すのももどかしげに(ぶち、と一つくらいボタンが飛んだような音がした)シャツも脱いでいる。
どんどんがんがん威勢よく脱いでゆくユリアスと目があった。
すべすべほっぺのユリアスはすっかり上気していて、ちょっとクセのある茶褐色の髪が乱れ、きりりとした暗緑色の瞳もうるうるしている。
四人の夫たちの中では一番線が細いけれど、それでもちゃんと鍛えられ、綺麗な胸筋、腹筋のついた体を惜しげもなくさらしたユリアスは美しい。
一瞬、その色気にあてられてぼうっとしたのもつかの間。
彼はとんでもないことを言った。
「ルード、早くリヴェアを脱がせてやれ」
「わかった」
「え、ちょっと待って」
脱がせてやれ、って何?
そもそも、セーブしてくれないの??
「ちょ、待って、みんな、なんかへんっ、あ!」
まつわりつく大型犬、もといルード。
半裸になって大股に近寄ってきたユリアス。
シャツの首回りを緩め、暑い暑いと連呼しながら「脱がせてやる、リヴェア、風呂にでも入るか」とやはりとんでもないことを口にするレオン様。
三組、計六本の腕が伸びてきて、明るい居間で私はあっという間にマッパにされた。
なぜ、どうして、落ち着いてと言ってもサカってしまった夫たちを止めることは当然できず。
「ちょっと、オルギール!なんとかして!!」
最後の砦、オルギールを呼んでも、彼は動こうとしない。
赤い舌を伸ばして、妙に卑猥にも見える仕草でミルクチョコレートを舐めながら、着衣を剥かれ、体中を撫で回されている私を眺めている。
いつもは誰よりも率先して不埒な振る舞いに出るオルギールなのに。
出遅れようものなら、倍速の勢いで襲い掛かるオルギールなのに。
もちろん、一緒になって襲ってほしいのではない。
今みたいに、なぜか一人だけサカっていないなら、止めに入ってくれてもいいと思うのだ。
「ね、オルギール、見てないで助けて、……ん、ああっ!」
声が裏返る。
ユリアスが私の胸を掴んで、その先端にむしゃぶりついている。
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